ペルソナ5G 水星のトリックスター   作:shisuko

37 / 41
またまた長らくお待たせ致しまして申し訳ありません!

今回はタグにも付けてる自己解釈が多めな回。あくまで自己解釈、この作品内だけで原作は違うかもよ? というのを念頭にね! な36話、はーじまるよー!


#36 Please save “Her” with us!

「“あの子”?」

 

 より多く大衆の認知を集め、より深く大衆のパレスたるメメントスの奥へと進む。

 何故そのような事をしようとしているのか? ――その問いへの返答として告げられた言葉に、ミオリネは片眉を上げる。

 これに対して、エリクトが返した答えはこうだった。

 

「ボクにとって妹みたいな、大切な存在。この先――ずっと奥深くに“あの子”がいるんだ」

 

 だよね、とエリクトが振り返って確認を投げ掛け、それに、ああ、とモルガナが応じる。

 

「エリィが言った通り、コイツにとって大切な奴がおそらくメメントスの奥にいる」

 

「何でそんな事になってんのよ?」

 

 イセカイナビが無ければ入れない筈の認知の異世界の、その最深部に誰かがいるかもしれないと言われれば驚かざるを得ないというもの。

 その困惑(こんわく)(あら)わに問うたミオリネに、ふむ、とモルガナが腕を組んで思案混じりに語る。

 

「詳しい理由は分からねぇが……どうもこの世界の()()に飲まれちまったらしくてな」

 

 メメントスもまたパレス――大衆の歪みから生まれた産物であり、その中に存在するあらゆるものは歪みの影響を受ける。

 ミオリネ達のようなペルソナ使いならば怪盗服によってその影響はシャットアウトされるため問題は無いが、“あの子”についてはそうでなかったらしく、メメントスの歪みの影響をもろに受けて取り込まれてしまったらしい。

 ――という事らしいが、心なしか、その口調はどこか含みがあるようだった。

 それが少し気になったミオリネであったが、それを問う間も無く、そういうワケで、とレンが説明を引き継ぐ。

 

「俺とモナはエリィと取引を()わしているんだ。――このメメントスに(とら)われたエリィの大切な人を助けるため、心の怪盗団の一員として俺達と協力するって取引をね」

 

「――もしかして()()か? お前が何度か言っていた、()()()()()()()()()()()()()というのは」

 

「その一つなのは確かだな」

 

 何かを思い出したようなグエルの質問に肯定を返すレンを見て、言われてみれば、とミオリネは思い出す。

 確かに、先のジェタークパレスでも彼の口から何度か取引について言及する発言があった。あれは自分との取引だけを指しているものと当時は思っていたが、どうやらエリクトとの取引についても掛かっていたらしい。

 ……それにしても。

 

「一旦整理するわ。そのエリィの大切な人とやらをこの世界から助け出すため、大衆に怪盗団の事を認知させるのがアンタ達の()()――って事で良い?」

 

 ここまでレン達の説明を纏めた結論をミオリネは投げ掛ける。

 それに対してレンから返ってきたのは、そうなるね、という肯定の言葉だったが……そうなると、二点程気になる点が出て来る。

 まず一点目は、

 

「その大衆って、()()()()()なの?」

 

メメントスの最深部まで辿り着くために必要となる大衆の認知度そのものの()()だ。

 一口に大衆と言っても、どれ程の範囲を対象にするかでその人数は大きく変わって来る。その範囲が、例えばアスティカシアの一学年内の生徒達だけで良いならばまだ楽な話だが、もしも――多くの人々が地球を離れ宇宙に広がったこのA.S.(アド・ステラ)の時代なればこその――全宇宙中の人間全ての認知を得る必要があるのであれば……。

 

「全宇宙の人々に俺達の名を知らしめる――か」

 

「良いなぁ、それ! いっそ目指してみるか、全宇宙?」

 

「冗談じゃないっつーの!」

 

 全宇宙――ベネリットグループだけでなくその他企業グループに地球全土、それにレン達が元々いた水星やそれ以外の人が住む惑星に、更にはその周囲に点在するいくつものフロント……その全てに住まう人間の認知を得るなど、途方(とほう)も無い話だ。

 そんな話にさも興味あり気と言わんばかりの素振りを見せるレンとモルガナに思わず突っ込んだミオリネであったが、同時に二人の発言がほぼほぼ冗談だとも察してはいた。

 

「安心しろ、そこまでは必要無い。このメメントスは、そうだな……」

 

 ぐるり、と首を巡らせ、辺りを回したモルガナが暫しの思考を挟んでから告げる。

 

「このフロント73区――いや、()()()()()()()()()()()()()()に認知されれば十分だろ」

 

「ウチのグループの、ねぇ」

 

 となると、学園の生徒達とグループ所属企業の社員の大半、といったところか?

 全宇宙の人間などという途方も無い話に比べれば(はる)かに規模は下がるので有難い限りだが、何故ベネリットグループ内の人間の認知が得られれば十分と言えるのか?

 その根拠を尋ねたミオリネにモルガナが返したのは次のような話だった。

 

「人の心は集合的無意識で繋がっているって、さっき言ったよな?」

 

 この集合的無意識による繋がりは国境・距離や民族間・宗教間の違いといった物理的・精神的(へだ)たりを超越した更に深層に存在するものであり、故に繋がりそのものは決して途切れはしない。

 ただし、繋がりの()()については別で、こちらはそういった隔たりの影響を受けてしまう。遠く離れた地で暮らす人々が同じ自然現象から同じように神魔の存在を見出すが、いざ生み出されたその神魔の名や詳細が丸っきり異なるものになってしまうのも、この繋がりの強さの影響だ。

 そして、メメントスもまたこの繋がりの強さの影響を受ける。

 何故なら、メメントスとは集合的無意識による心の繋がりを介して積み重なり、肥大化した大衆の欲望の産物。それを形作る大衆の範囲は集合的無意識の繋がりの強さによって定まり、その範囲の中で欲望や歪み、認知が共有される事によって生み出されるものだからだ。

 

「で、ベテランのワガハイはそういうのをある程度だが感じ取れるってワケだ」

 

 そのモルガナの感覚が、彼らが今いる()()メメントスはベネリットグループ内の人間の繋がりから生まれたものであると告げている。それ故グループ内の人間の認知さえ得られればこの世界の最深部まで辿り着けるだろう――という事らしい。

 

「まぁ、(かん)みてぇなもんだから絶対とは言えねぇ。――()()()()方面に特化した奴でもいれば、もうちょっとはっきりするんだけどな」

 

「そういう方面って?」

 

()()()()だな、一口で言えば」

 

 パレス等の異世界内の構造把握や進路指示に、シャドウとの戦闘における補助や戦況連絡。そういったものを一手に(にな)えるサポート能力特化型のペルソナと、その使い手だ。

 

「今の俺達のペルソナを見てもらえば分かると思うけど、そういうペルソナは貴重でね。一人仲間にいるだけで、探索も戦闘もぐっと楽になるんだ」

 

 そう言うレンの言葉通り、確かに今の怪盗団の面々が使えるペルソナは――ワイルドであるレン自身が複数所有しているものも合せて――どれも戦闘特化で、モルガナの言うようなサポート特化型は一体も無い。ペルソナ能力自体が容易く持ち得る力じゃない事を考えれば、確かにそういったペルソナは貴重な存在といえるだろう。

 まぁ、この際それはどうでもいい。無いもの強請(ねだ)りしたところで仕方ないのだから。

 それよりも、だ。

 

「――で、結局ウチのクソ親父後回しにする理由は何なの?」

 

 

 

PERSONA5G ―― TRICK STAR from MERCURY ――

#36 Please save “Her” with us!

 

 

 

 デリングの改心は時期尚早。今改心させたとしても、怪盗団の認知には繋がらない。

 メメントスに入ってすぐの段階でレンはそう説明していたが、その理由は未だ不明だ。

 いや(むし)ろ、ここまでのメメントスの仕組みに関する説明を聞いた後では、その言い分に矛盾すら感じる。

 

「グループの人間に怪盗団の事知らしめれば良いって言うんなら、尚の事アイツを改心させれば良いじゃない」

 

 デリング・レンブランの名を知らない者はベネリットグループにはいない。グループ所属企業の社員にとっても、学園の生徒達にとっても、誰にとっても彼はグループを束ねる最高権力者――()()なのだ。

 その王様が心を盗まれたとなれば、当然それを為した怪盗団の名もグループ中に知れ渡る事となり、メメントスの最深部まで一気に進めるようになると考えられるが、その認識が間違っているとでもいうのか?

 

「――その考え自体は間違っていないよ。だからこそ、俺達は最後の標的(ターゲット)として総裁を狙っている」

 

「だったら何で――」

 

「大物()()()んだ」

 

「はぁ?」

 

 一旦は自分の考えを認めたレンが返した意外な言葉に、ミオリネは怪訝な声を上げる。

 それに構わずといった感じで、彼が言葉を続ける。

 

「君のお父さんは有名過ぎるんだ。今の怪盗団の認知度じゃ()()()()()()()()()くらい遥かに、ね」

 

 今の心の怪盗団は最初のターゲットの改心を終えたばかりで、この場まで辿り着くに至ったのも確証の無い噂によるところが大きい。――まだまだ大衆の認知を得られていないのが現状だ。

 対して、デリングは前述したようにベネリットグループの人間なら誰しもその名を知る王様。改心のような大きな変化があれば、その情報は間違い無くグループ中に知れ渡る事になるだろうが、その中に怪盗団の存在までもが含まれるかどうかは現状では怪しいと言わざるを得ない。例えどれ程派手な予告をしたとしても、彼の圧倒的な知名度に吞まれてしまうだろう可能性の方が高いのだ。

 故に、今の段階ではデリングの改心は怪盗団の知名度に繋がらない。然程(さほど)大衆の認知が得られていない現状では、彼は狙えない。

 

「もっと他の、別の誰かを改心させて大衆に認知される必要がある。総裁の知名度に押し流されないくらい、心の怪盗団の名を知れ渡らせなきゃいけないんだ」

 

 そう説明するレンに、しかしミオリネは納得し切れず、口元に当てた手の下で(うな)る。

 彼の言わんとしている事は分かる。父と今の怪盗団とでは知名度に差があり過ぎるというのは確かだし、それ故に改心させても怪盗団の仕業とまで大衆に認知されるかは微妙というのも分かる。

 だが、そのデリングを改心させたいから彼女は怪盗団に加わったのだ。その目的が後回しにされるのは、如何にそれらしい理由があろうと簡単に受け入れられるものではない。

 それ故首を縦に触れないミオリネであったが、

 

「それと、今の時点で総裁を狙わない、というか()()()()理由がもう一つあって」

 

「何?」

 

()()()()()()()()()()()

 

「――あ」

 

続くレンの言葉には流石に観念せざるを得なかった。

 

「俺達が総裁について突き止めているのは、彼がパレスを持っているってところまでなんだ」

 

 それ以外の――パレスの元となっている“場所”と、その場所を“何と考えているか”についてはまだ判明していない。

 そのため、そもそもデリングのパレスに侵入する手筈すら整っていないのだ。

 

「ちなみに、ワガハイらがお前に取引持ち掛けたの、娘なら親父のパレスのキーワードに繋がりそうな事何か知ってるんじゃないかって期待してたのも実はあるんだよなぁ。――実際どうだ? 何か思い当たるモン、あるか?」

 

「ぐっ……」

 

 キーワードに繋がりそうなものの心当たりを問うモルガナに、ミオリネは答えられない。

 (ろく)に顔も(あわ)せないデリングのパレスのキーワードなど寧ろ彼女の方が知りたいくらいで、それ故に苦虫を嚙み潰したような顔で口籠るしかない。

 そんな彼女の心情をフォローするように、レンが言う。

 

「――別に総裁を狙わないとは言っていない。このグループで総裁以上の大物はいないんだし、君との取引だってある。だから、もう少しだけ――」

 

「あーもう! 分かったわよ!」

 

 遂に耐え切れなくなり、ミオリネは降伏の声を上げた。

 

「ハイハイ、クソ親父は後ね! それまで私はホルダー用の賞品(トロフィー)のまんまね! あーハイハイ、分かった分かった! 分かったから、ちょっと黙りなさいよ!」

 

 そうヤケクソに(まく)し立てたミオリネは、は~ぁ、と落胆の籠った溜息を吐き出すと共に両腕をダラリと下げて項垂れた。

 長年反抗一つまともに出来なかった父にようやく一矢報いられると意気込んでいたところでのこの()()()は、いずれ再びその機会がやって来ると分かっていても(こた)えるものがあった。

 なので、

 

「――()()()()()

 

ならせめて、とゆっくり(おもて)を上げた彼女ははっきりと告げる。

 

「婚約者のルール、アレ、私の今年の誕生日が期限なの」

 

 ミオリネが誕生日を迎えて17歳となった、その瞬間を以て彼女の婚約者はその時点のホルダーに決定される。それ以降は決闘によるホルダーの称号、及びミオリネとの婚約とベネリットグループ次期総帥の座の移動は無くなるのだ。

 

「アイツがルールそのものを撤廃するって言えばそれ以降でもどうとでもなるかもしれないけど、念のために期限を切らせてもらうわ。――私の誕生日()()()にクソ親父を改心させる。それを、アンタ達との取引の条件に加える」

 

 良いわね、と強い口調で突き付けるミオリネ。

 それに特に難色を示す事も無く、構わないよ、と了承を返したレンが続けて、もののついでなんだけど、とエリクトの方に顔を向ける。

 

「俺達とエリィとの取引、ムーンライトとレーベも加わってくれないか?」

 

「エリィとの取引に?」

 

「さっき言っていた、エリィの大切な奴を助け出すっていう奴か?」

 

「そう」

 

 聞き返すミオリネとグエルに肯定を返したレンの顔が、今度は先程解放された下層へのエスカレーターへと向けられる。

 

「この先にもシャドウが潜んでいる。奥へ進めば進む程、より強力な奴らがね」

 

「そいつらを搔い潜りながら先へ進むってのも、流石にワガハイらだけじゃ骨だ。人手が要る」

 

 もちろん、戦力になれるペルソナ使いが、な。

 腕を組んでそう告げたモルガナの蒼い双眸がミオリネとグエルを見る。

 レンの仮面越しの黒い瞳も。

 そして、額まで仮面を上げて(たたず)まいを整えたエリクトの青い目も。

 

「ボクは“あの子”を助けたい。“あの子”が生きていく現実を、絶対に奪わせたくない。レンやモルガナのところまで行ったのも、怪盗になったのも全部そのためなんだ。だから――ミオリネ、グエル君、お願い。ボク達と一緒に、“あの子”を助けて!」

 

 そう言い、頭を下げるエリクト。

 その心からの求めに対し、ミオリネとグエルは、

 

「なーにが()()()よ」

 

二人揃って呆れ返っていた。

 

「とっくの昔にお前らの取引に俺達を()()()()()()()()、今更良いも悪いもあるかよ」

 

 ライオンマスクから覗く目を細めるグエルの、その指摘の通りであった。

 というのも、二人が怪盗団に加わる際にレンが出した条件はどちらも“俺達に協力する”であったが、この()()の詳細を彼は未だ語っていないし、またミオリネもグエルも追究した事は無い。まぁ、二人の場合は“デリング、あるいはヴィムを改心させるため”という前提から入ったから、というのもあるが。

 そして、協力の範囲にはやはりエリクトの取引も含まれていたようで、

 

「あ、バレてた?」

 

つい先ほどまでの切実な様子が一転、すくっと上半身を上げたエリクトがあっけらかんとした調子で舌を出して見せる。

 そこに続けて、レンからもフォローが。

 

「取引交わした時点ではそこまで話してなかったし、ちゃんと二人の了解も取っておきたかったから、一応ね」

 

「――なら、こっちも一応()()って事にしといてあげる」

 

 デリングの改心という希望が別に失われたワケでもないし、それを為すのにレン達の助力が必要なのも変わらない。なら、いずれ時が来るまでエリクトとの取引なり怪盗団の認知度上げなりに協力するのもやぶさかじゃない。

 そう考えつつ鼻を鳴らすミオリネに続き、こっちもだ、とグエルも了解を返す。

 

「父さんの件でお前らには借りが出来たからな。そいつを返すには丁度良い」

 

「決まりだな」

 

 ミオリネ達の了解が得られた事に、レンが鷹揚(おうよう)に頷いた。

 かと思った次の瞬間、彼は人差し指だけを立てた右手を顔の横に掲げて言う。

 

「もう一つだけ、君達の力を借りたい事があるんだ」

 

「何よ?」

 

「実は今、()()を探していてね。良い場所が無いか、二人の意見も聞きたいんだ」

 

 ミオリネの問い掛けに対しそう答えたレンが腕を下ろし、不敵な笑みを浮かべて告げる。

 

「怪盗団の()()()に相応しい場所を、ね」




そんなワケで、この作品内でのメメントスを作り上げた大衆はベネリットグループ+αくらいの規模になります。だから他の企業グループならその企業グループの大衆のメメントスがあるかもしれないし、地球なら地球だけのメメントスがあるかもしれない。そんな感じです。

でもって次回はアジトを決めて……な感じで、こうご期待!
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。