薄幸の美少女ミオリネ・レンブランは何もかも嫌になっていた!
そこに現れた運び屋! 念願の地球行きのチケットを迷わず手に入れようとしたミオリネに、すかさず襲い掛かる謎の黒い毛玉!
どうなる第6話!?
「今ならご希望通り、地球にお送り出来ます」
「地球へ!?」
「ニャんだとぉっ!?」
女子トイレの入り口手前から、困惑の叫びが上がった。
声の主は、以前学園地下の格納庫内にてレンと話していた、あの少年の声だ。
件の声の主は、その時、中に入っていたミオリネを待つため、その場で待機していた。
その最中、
それだけならば何も気に留める事などない。
しかし、その女性を眺めていて、少年の声は違和感を覚えた。
足音がしない。ふくよかな体形に反して、動きも洗練されていて無駄が無い。―― 一般人というよりも、荒事に慣れた、あるいはそういう訓練を積んだ人間のような、そういう動きをしていたのだ。
そんな女性の動き方が気に掛かった少年の声は、彼女がトイレ内に入ったのを見た後、自身も入り口から聞き耳を立てて見る事にした。
結果は大当たり。
女性の正体はミオリネが脱走の為に
「や、ヤバイぞっ! このままじゃミオリネが、地球に行っちまうっ!」
今、そんな事になられてはマズい。
あの少女の声も言っていたのだ。詳しい経緯こそ分からなかったが、
その彼女がこの場を、この山場を離れてしまえば、
何とかしなければならない。何とかして、ミオリネが地球に行くのを防がねば!
だが、どうする? ――少年の声は自問する。
少なくとも、
となれば――。
「……仕方ねぇ。レディを傷つけるなんてワガハイの流儀に反するが……アイツらを助けるためだ!」
悪く思うなよ、ミオリネ!
心を決め、少年の声は駆け出す。
その場から女子トイレ内へ。そしてミオリネ目掛けて、全速力で。
「これより、審問会を始めます」
ベネリットグループ本社、審議室。
平時ならばグループ内の重要方針を決める経営会議などの開催場所として使われる広大な室内は、外周三辺を覆うように席が並べられており、特に出入口が設けられた壁の対面側の席は最も高い中央席から順に山形に席が配されている。ともすれば、裁判を行う法廷のような様相だ。
実際、これからこの場で行われるのは文字通りの裁判だ。
それも、部屋の中央に設けられた被告席に立つ者以外は全てその罪を
その魔女裁判の厳粛な沈黙の中、最も高い席に座す最高判事とでもいうべき人物が、開催を告げた人物に続けて、その
「シン・セー開発公社代表、レディ・プロスペラに問う。――お前は魔女か?」
ベネリットグループ総帥、デリング・レンブラン。
白髪が多分に混じった髪に太い眉、年月を重ねた樹木の表皮のように深い皺が幾重にも刻まれたその面構えは、その肩書を背負うに相応しい
獲物目掛け迫る大鷲の如きその鋭利な双眸は、今はただ一点、被告席に立つ疑惑の人物を
「いいえ」
しかし、かの視線に刺し貫かれんばかりの鋭さで見下ろされている被告もまた、一筋縄ではいかない雰囲気を纏っている。
被告の名は、プロスペラ・マーキュリー。
ベネリットグループ内序列ランクD、売上高151位の下位企業“シン・セー開発公社”のCEO――すなわち、エアリアルの開発元の最高責任者にして、レンの雇い主でもあるその女性は、まず何よりもその姿が異様の一言に尽きた。
その理由は、彼女の頭上半分を覆い尽くす銀色のヘッドギア状の仮面。
スレンダーなシルエットを形作る薄水色のレディーススーツというフォーマルな姿の上に突然現れるその仮面は見る者に強烈な違和感を与え、そのすぐ下でルージュを塗った唇が形作る怪しげな笑みも合わさって、彼女を、それこそ童話の魔女のような近寄り難い存在にしている。
「ヴァナディース機関との繋がりはあるのか?」
「いいえ」
被告席を照らすスポットライト以外に光の無い、薄暗い審議室の中、
「では、どうやってガンダムを作った?」
「エアリアルはガンダムではありません。我々シン・セーが開発した、新型ドローン技術です」
プロスペラが告げたその言葉は、此度の審問会の核心に触れるものであった。
故に、それまで沈黙を保っていたグループ幹部達から初めてざわめきが上がる。
「シャディク」
その中から一人、動く者がいた。
サリウス・ゼネリ。ベネリットグループ御三家が一つ、グラスレー・ディフェンス・システムズのCEOを務めるかの老人の指示を受け、隣の席に座る彼の養子、シャディク・ゼネリが手元のキーボードを叩く。
「先の決闘においてあの機体は、パーメット流入値の基準を超えていました。これは、ガンダムの基幹システム、GUNDフォーマットの特徴を表しています」
褐色の肌に長い金髪を後頭部で結び纏めた利発そうな青年が、手元に表示した資料の下、
これに対し、プロスペラがこう返す。
「もしあれにGUNDフォーマットが搭載されているとすれば、“データストーム”が検出される筈」
如何です、というプロスペラの問い掛けに、シャディクの首が左右に振られる。
莫大な情報の逆流現象――“データストーム”。ガンダムを呪いのMSたらしめる最大の要因は、しかしエアリアルには見られなかった。
その答えを受けたプロスペラが、再びデリングへと向き直る。
「従来のパーメットリンクを基にした操作技術です。グループの技術条鋼にも沿ったものと自負しています」
「それだけでガンダムでないとは言えないわ」
続けてそう投げ掛けたのは、やはり御三家が一社、ペイル・テクノロジーズのCEOが一人、ニューゲン。
頭部の顔意外の部分をカバーで覆い隠したような、自らに次いで異様な風体のその老婆の指摘にも、プロスペラは平常のまま答える。
「ですが、断言も出来ません」
「レディ・プロスペラ」
サリウスが咎める。
「貴女はただ、エビデンスの欠落部分を言い訳にしているだけだ。――黒を、白と言い張るつもりかね?」
「我々も末席とはいえ、ベネリットグループの一員です。監査組織の協約も勿論存じております。――御信用頂きたい」
胸に拳を当て、そう主張するプロスペラ。
そこに、フン、と失笑するものがいた。
「その風体で信じろ、とでも?」
ジェターク社CEO、ヴィム・ジェターク。
訝し気に眉を
代わりに、纏っているジャケットのボタンに手を掛けた。
『?』
ヴィムを始め、何人かの幹部がその突然の行動を訝しむ。
その視線を一身に浴びながらもプロスペラは動きを止めず、ボタンを外したジャケットを脱いで、足下に落とす。
更にその下の黒いインナーの右袖を捲り上げるのだが――彼女の行動を見ていた者達が、そこで一斉に動揺の声を上げる。
何故ならば、袖の中から現れたプロスペラの右腕が、生身では無かったからだ。
手首から先は生身と
それに加えて、顕わになったその機械の腕の二の腕部分をプロスペラが握ったかと思いや、小さな機械音と共に腕が脱落。肩側の二の腕半ばからその接合部が
同時に、体から外れてダラリ、と垂れ下がった機械の腕を放り投げるプロスペラ。
投げられた腕がまっすぐにヴィムの方まで飛んで行き、そのまま彼にキャッチされる様子を目にする事無く、再び彼女は口を開く。
「この腕も、仮面の下の顔も、全て水星の磁場に持っていかれました。――水星の環境は過酷です」
太陽からたった5791万km、直射日光を浴びれば即座に血液が
「ですが、我々のドローン技術を応用出来れば、危険に身を晒す事無く、パーメットの採掘事業が可能になります。――どうかエアリアルの開発を認めて下さい。我々には、グループの支援が必要なのです」
取り外した腕の接合部を向けながら、仮面に隠された目でじっとデリングを見上げて訴えるプロスペラ。
そんな彼女に、デリングが下した決断は――。
「いや、アレはガンダムだ」
「――何故でしょう?」
理由を問い質すプロスペラの口元からは、笑みが消えていた。
当然といえば当然だろう。ここまでエアリアルはガンダムでは無い、必要な存在だ、と散々説明していたのだから。
なので、ここまでの主張を否定するに足る理由を求めるのもまた当然であったが、いざ返って来たそれは、
「私がそう判断したからだ」
あまりに強引極まるものであった。
……しかしそんな、ともすれば妄言としか受け取れないデリングの裁定に疑問を抱いているような表情を浮かべている者はいても、いざ異論としてそれを表に出す者は一人としていない。
そんな幹部達の様子を一通り見回した後、決まりだ、とデリングが立ち上がる。
「あのMSは廃棄処分、操縦者の生徒は抹消と――」
そう有無を言わせぬ口調で述べられていくデリングの判決は、しかし途中で止まる。
同時に、幹部達も、被告席のプロスペラも、順にその視線の向きを変える。
その場の誰もが、ついそうせざるを得なかった。
何故か?
「待てーッ! この恩知らずクソキャットォーッ!!」
招かれざる珍客が、室内に
魔女裁判に突如乱入した謎の闖入者、一体何リネ・何ブランなんだ!?(隠す気なし
さーて、次回の水星のトリックスターは、
①ついに登場、氷の君!
②ミオリネ、父と対面! 反発なるか?
③レンとエアリアル、脱出なるか?
3本です。
次回もまた見て下さいね? ジャンケン、ポン(親指と人差し指と中指を立てながら)!
うふふふふ~。