ペルソナ5G 水星のトリックスター   作:shisuko

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今回から暫くオリジナル展開2.5話! やっとP5っぽい展開いけるかな?

それはそうとどーしよぉ! ストックが残り少ないよォ!



#8 I’ll tell you an old story.

「これと……あと、これもあった方が良いな」

 

 フロント73区、商店街(アーケード)エリア。

 学園からモノレールで二駅程度とそう遠くはなく、それ故その日のような休日であれば日々の勉強から解放された生徒達が思い思いに集まり、建ち並ぶ様々な施設を思い思いに満喫(まんきつ)する。

 そんな街中の一画にある生活用品店で調理器具を物色しているレンと、そんな彼の様子をすぐ(そば)で眺めているミオリネも、またそんな生徒達の一部といえた。

 

「行きたい場所があるって言うからどこかと思ったら……何か意外、アンタって料理とかするのね」

 

 ある時には包丁、ある時は鍋、ある時はコーヒーのドリッパー……別々の物を両手に取ってはそれぞれ見比べ持ち比べ、その内片方をカートに乗せたバスケットへ入れたり、かと思えば別の物を取って比べ直したりしている。

 そんなレンの(こだわ)りぶりを、全部同じにしか見えないけど、と傍で欠伸をしている彼の猫と共に呆れ半分感心半分でミオリネは観察していた。

 ちなみに、彼女の方は料理など(ほとん)どしない。もっぱらカップヌードルと自らが栽培した野菜の生食いばかりで、たまに気が向いたら人のいない時間帯を狙って学園内の食堂を利用するくらいである。

 

「これでも仲間内じゃ結構良い評価貰ってるんだよ、俺の料理。――良かったら御馳走(ごちそう)しようか?」

 

「ふーん。――じゃ、その内頼もうかしら?」

 

 気の無い声の後に冗談半分でそう言ってみれば、すぐに、OK、という返答が微笑みと共に返って来る。

 同時に買う物も一通り揃ったらしく、棚から商品を選ぶのを止め、レジの方へとカーゴを押し始めるレン。

 それに猫と共に続く傍らで、ミオリネは思う。

 

(その内……ね)

 

 我ながら意地の悪い事を言った、と微かにとはいえ良心の呵責(かしゃく)を覚える。――場合によっては、“その内”なんてもう来ないかもしれないのに。

 しかし、一方でこうも思った。――今度もきっと、レンは勝つんだろう、と。

 

「――と。レンブランさんはどこか行きたいところある?」

 

「私?」

 

「ああ。――俺にばかり付き合わせるのも、悪いからね」

 

 今度は俺が君に付き合う番だ、とレジの列の最後尾に着くなり言うレン。

 その顔に浮かんでいる笑みは変わらず余裕に裏打ちされたもので、だからこそ、敗北の可能性に対する危惧(きぐ)は一片も見当たらない。

 二度目の勝利も当たり前だと自然に捉えているような――そんな彼の在り方が、ミオリネにもそう思わせるのだ。

 ――ただ。

 

「じゃあ、そうね……」

 

 次の決闘の勝敗が如何な方向に転んだとしても。

 再びあの横暴なグエルが婚約者の座に収まり、手料理を振舞う事も無くレンが学園を去る事になったとしても。

 その結果はもう自分には何の感慨も(もたら)さないだろうと、何となくミオリネはそう思っていた。

 

 

 

PERSONA5G ―― TRICK STAR from MERCURY ――

#8 I’ll tell you an old story.

 

 

 

 父デリングとの予期せぬ遭遇(そうぐう)を果たした、あのベネリットグループ本社の審議室。

 あの場でそもそも行われていたのが、レンのMSエアリアルがガンダムだか何だかであるという嫌疑に対しての沙汰を決める審問会だったとミオリネが知ったのは、父とグループの重役達との討議が終わって解散となった後の事。彼女の腕を引いてその場から退出させた父の側近、ラジャン・ザヒからの説明を受けて(ようや)くの事であった。

 自分が生まれるよりもずっと前から直属の部下としてデリングに付き従っていたらしい彼は誰よりも忠実な父の腹心ではあり、勿論その優先度こそデリングの方がずっと上ではあるが、一方でその娘であるミオリネに対しても何かと便宜(べんぎ)を図ってくれる存在でもある。

 そのラジャンからレンの独房の場所を教えられ、先の審問会での決議をフロント管理会社に伝えておくから、と迎えに行く事を促されたミオリネは言われるがまま、つい先程までこれ以上無い程の怒りを向けていたレンの猫が同行する事も気にせず、そこへと向かった。――覚えているのはそこまでだ。

 気が付いた時には、彼女はもう学園に戻っていた。

 日が変わって休日を迎え、人の気配が平日の半分近くに失せた学園内で、いつものように温室へと向かっていた。

 辿り着いた温室の中はラウダ達によってちゃんと直されており、グエルにこれでもかと荒らされてしまったのが嘘のように整っていたが、それでも元通りというには足りなかった。

 なので、全く、と嘆息(たんそく)しつつ、完全に元に戻そうと温室内へ踏み込むミオリネであったが――足下に猫を引き連れたレンがその場に現れ、挨拶も適度に、案内を頼みたい、と彼女にアーケードエリアへ同行するよう頼み込んで来たのも、正にその時であったのだ。

 

 

 

「今日はありがとう、レンブランさん」

 

 おかげで良い買い物が出来たよ、と学園へ向かうモノレールの座席に座ったまま、脇に抱えている買い物の詰まった袋を示すレン。

 それに対し、彼の隣に座っていたミオリネは、別にいいわよ、と手をひらひら小さく振って返す。

 ちなみに、逆側の隣ではレンの猫が伏せており、時折彼の制服のポケットの辺りを見下ろしながら、――見ようによっては何かと話しているかのように――定期的に鳴いている。

 

「こっちも気になってたクレープ(おご)ってもらったし、戻ったら温室の整理手伝うって条件で受けたんだもの」

 

 そうレンの方を向かずに返すミオリネの素っ気無い態度に、特に気分を害した様子も無く、それでもさ、とレンが続ける。

 

「俺達だけだったら店を探すだけで半日は多分彷徨(さまよ)ってただろうし。それにホラ。俺、まだ学園(こっち)に来たばかりで、君意外に頼れる人もいないしさ」

 

 断られたらどうしようか、って不安だったんだ。

 そのレンの言葉に、そういえば、と彼が編入して来てまだ一週間も経っていなかったのをミオリネは思い出す。その一週間に満たない期間も、思えばグエルとの決闘やら妙な疑い掛けられて拘束されるやらで、(ろく)な目に遭っていない。そんな彼からすれば、自分は確かに唯一頼れる存在なのだろう。

 そう思うと少し愉悦感(ゆえつかん)のような良い気分を覚えないでもないミオリネであったが、一方でこうも感じていた。

 

「……今だけでしょ?」

 

「ん?」

 

「アンタなら、ほっといても友達とか、頼れる人間とか、一人二人くらい簡単に作れるでしょ? ――私しか頼れないってのも、今の内だけよ」

 

 そう出来ると思わせるだけの人柄が、説得力が、レンにはある。

 ――()が、彼にはある。

 

「……」

 

「……レンブランさん?」

 

 やっかむような物言いになってしまった自覚はあったが、されとて、素直にその事を謝れるような殊勝な性格でも無い。

 それ故、レンとは逆の方を向いて口籠(くちごも)ってしまうミオリネ。

 そんな彼女に、ふむ、と少しだけ思案する様子を見せたレンが、一拍置いて、もしかして、と訊いて来た。

 

()()()()()()()()()()()()()()()()?」

 

「ハァ~~ッ!?」

 

 刹那、弾かれるように振り返ったミオリネは、その勢いのままレンの鼻先まで顔を近づけ、早口で(まく)し立てる。

 

「誰がッ!? 誰の言葉気にしてるですってッ!? 私がッ! あのクソ親父に!? 力が無い唯の子供(ガキ)は黙って言われた通りにしてろ、って言われた事ォ!? 気にしてるェッ!? そう言いたいワケッ!?」

 

「レンブランさん、落ち着いて……」

 

「フッザけんじゃないわよッ!!」

 

 そう最後に激しく怒鳴り付けた後、フン、と鼻息を立てて乱暴に座り直したミオリネは、小さく肩を竦めるレンに、ていうか、と逆に尋ねる。

 

「何でアンタ、私がクソ親父と会ってた事知ってんのよ?」

 

 ガンダムだか何だかの未だに良く分からない疑いのせいで、昨日迎えに行くまでレンはずっと独房に閉じ込められていた筈だ。解放されてから今の今までも、少なくともミオリネは例の審問会の事も、それ以外の彼が拘束中に起きた事も、何も話していない。

 この質問に対し、ああ、と小さく頷いたレンは――ほんの少しだけその目を猫の方に向けてから――こう答えた。

 

「他にも知ってるよ? 昨日の審問会の事とか、コイツが君をそこに連れて行った事とか。あと、決闘やり直す事になったのも。――全部、風の噂でね」

 

「ふーん……」

 

 情報通な風の噂があったもんね、とミオリネは鼻を鳴らす。

 レンも言った通り、昨日の審問会の結果、彼とグエルの決闘は一旦無効となり、後日行われる再試合にてその決着が決められる事となった。

 というか、そう進言した者がいた。

 ヴィム・ジェターク。――ジェターク社のCEOで、かつグエルの父親である彼が、一旦は決まり掛けたレンの退学・水星への強制送還とエアリアルの処分に待ったを掛けたのだ。

 その際、他者グループとのシェア競争を有利に運ばせる起爆剤だとか色々と主張していた気がするが――要は息子の黒星を無かった事にし、再びホルダーの座に返り咲かせる事こそ本当の狙いだろう事は、想像に容易(たやす)い。

 とはいえ、この話自体はミオリネにとっても有難いものだった。彼と、彼に同調したグループ所属企業の幹部達の一部の意見をデリングが認めた事で、勝手に決められていた退学と、適当に見繕(みつくろ)われた相手との婚約という危機を彼女もまた回避出来たのだから。

 ……最も、その事についてミオリネは何故か今でも喜べないでいるが。

 

「てか、そこまで知ってたのね、アンタ」

 

 知っていて、その上で呑気に買い物になんて出かけていたのか? 今度こそ退学になって水星に追い返されて、MSも解体されるかもしれないと、分かっていて?

 

(……余裕あるじゃない)

 

 横目に睨み付けながら、そうミオリネは心中でレンへの嫌味の言葉を呟く。

 本当は口に出そうかとも思ったが、すぐに止めた。

 言っても無駄だと思った。

 単なる呑気では無い。油断があるワケでも無い。ただ本当に、次も勝てると、レンは心からそう思っているだけだ。

 そして、確かな自信の下にそう思える()がある。

 だから――()()()()()()()――言っても無意味だ。

 

――力の無い者は黙って従うのが、この世界のルールだ――

 

「……」

 

 あの審問会の場で父に言われた言葉が、脳裏に反復する。

 気づけばミオリネはレンから視線を外し、ただ俯いてモノレールの床を何の感慨も無く眺めていた。

 

「―― 一つ、昔話をしよう」

 

 突然レンがそんな事を言い出したのは、正にそんな時であった。

 脈絡も何も無いその切り出し方に、は、と振り返ったミオリネは胡乱気(うろんげ)に眉を(ひそ)めた。

 

「昔、ある男に本当に起こった話なんだ。――今日のお礼の一環、って事で」

 

「……好きにすれば?」

 

 別に断る理由も無いし、丁度気晴らしでも欲しかったところだ。

 素っ気無くミオリネが出した許可を受け、じゃあ、とレンが話を続ける。

 

「ある日の事だった。そいつはその日、ちょっとした用事でいつもより遅くなってしまった」

 

 ようやく帰路に着いた時には、辺りは既に真っ暗闇。当然ながら大急ぎで家へと向かっていたのだが、その最中、男は()()()()()()に出くわしてしまったのだと、レンは語る。

 

「酔っ払いがね、女性に乱暴しようとしていたんだ。周りには人っ子一人いなくてね、絡まれていた女性は助けを呼んでいたんだけど、その声に応えられる人は当然いなかった」

 

 唯一人、その男を除いて。

 

「そいつと酔っ払い達とは、そこそこ距離が離れていた。見て見ぬ振りして去る事も、その場で黙って遣り過ごす事も、多分出来ただろう。――でも、そいつはそうしなかった。意を決して、女性を助けるために前へ進んだんだ」

 

 そうして、彼は酔っ払いの背後まで近づき、女性への乱暴を止めるためにその肩を掴んだ。

 しかし、酔っ払いは彼のその行いが気に入らなかったらしく、矛先をそちらへと変換。覚束ない動きで彼に殴り掛かり――。

 

「――その場でスッ転んで、怪我したんだ」

 

「バカじゃないのソイツ?」

 

 口を突いて出たミオリネの感想に、だよね、と破顔するレン。

 だが、

 

「それだけで終わってれば、唯の笑い話だったんだけどね」

 

一通り笑った後に続く彼の昔話の続きは、残念ながら笑える話では無かった。

 

「その酔っ払い、結構な力を持った権力者だったんだ。タチの悪い事に」

 

 怪我もあって酔いが()めたその権力者は、あろう事か男を訴えると宣言。更にどういうワケか、助けた女性も彼が権力者に急に襲い掛かったと後に証言する事に。

 

「結果、何の力も無い学生でしかなかったそいつは傷害の冤罪(えんざい)で裁かれ、前歴持ちに。地元にも居られなくなって、たった一人で別の土地に移り住む事になった。――それまで持っていた、多くの物を失う事になったんだ」

 

「……何それ」

 

 たった一夜、たった一度の正義感の行使で破滅した――バカな男の、自業自得な顛末(てんまつ)。――そういう風に、ミオリネには受け取れた。

 

「バカよそいつ。とんでもないバカ」

 

 だってそうだろう?

 一時の気の迷いで、何の力も無い者が、例えそれが酒に呑まれた果てに自傷する様な馬鹿だったとしても、遥かに力を持った者に歯向かったのだ。理不尽な報復にあったとしても仕方ないだろう。――その場を去るか、立ち止まるのが正解だった。進んだのは、大間違いだ。

 そう吐き捨てるように告げたミオリネに対し、確かにバカだね、とレンが一部は肯定しつつも、こう返して来た。

 

「でも、()()()()()()()()よ」

 

「はぁ?」

 

 自身の感想に真っ向から歯向かうようなレンの意見に、眉間に(しわ)を寄せるミオリネ。

 それに対し、レンは意味有り気なウィンクをして来る。

 敢えて説明しない、何故かは自分で考えて見ろ。――そう言うように。

 少し、イラッと来た。

 

「――もういいわ」

 

 舌打ち混じりのその一言を最後に、再びそっぽを向いてミオリネはレンの昔話を強制的に切り上げた。

 それから暫くはその姿勢を維持していたが、ある程度のところで所在無くなってきたため、ネットサーフィンでもしようと生徒手帳を取り出す。

 しかし、いざ手帳を起動させるや、その画面に表示された()()()()に彼女は、え、と思わず声を漏らす。

 

「このアプリ……何で、また?」

 

 ミオリネにそう呟かせたのは、赤と黒に目の模様が入った、あの不気味なアプリ。

 確かに昨日消去した筈のあのアプリが、何故か今、再び彼女の生徒手帳内に表示されていたのだ。

 もしやウィルスか、と嫌な予想が浮かぶ。あくまで学園から支給されているだけの生徒手帳がそんなものに感染している、というのはハッキリいって宜しくない。運営に相談すれば対処して貰えるだろうが、場合によっては手帳の使用に制限が掛かりかねない。

 何なのよもぉ、という悪態が口を突いて出る。

 それが聞こえたのか、どうしたの、とレンが顔を覗かせて来たので、あー、と項垂(うなだ)れつつ、ミオリネは状況を説明する。

 

「変なアプリが知らない内に手帳に入ってんのよ。昨日消した筈なのに、何か復活してるし。……ウィルスかも」

 

「本当? 大変じゃないか、それ。ちょっと見せ――」

 

 そう言いながらミオリネの生徒手帳の画面を覗き込んだ、その刹那。

 レンが、明らかにそうと分かる程に息を呑んだ。

 同時に、これまで平静を崩す様子など一度も無かった彼の表情が、初めて緊張に強張(こわば)る。眼鏡のレンズの下でどこか怪しげな光を宿していた黒い瞳に、初めてそれ以外の光が差し込む。

 異様なまでの彼の変化が実直にミオリネに告げていた。――これは、自分が想像していた以上に深刻な事態である、と。

 

「ちょっと……? 何なの、急に?」

 

 ワケが分からず、ただ、急に重苦しくなっていく空気に耐えられず、とにかく何が起こっているのか問い質そうとするミオリネ。

 しかし、突如弾かれたようにレンは彼女とは別方向へ振り返り、これまでの穏やかな口振りが嘘のように激しく叫んだ。

 

「待て、モルガナッ! 今()()を――」

 

 その叫びを浴びせ掛けられた猫が驚き、ワケが分からない、とばかりに青い瞳を丸くして、ニャ、と漏らした、その次の瞬間。

 

<ナビゲーションを開始します>

 

 ミオリネの生徒手帳の画面の中で、問題のアプリが()()()()()()()()

 




小学生時代の陽介?「ゲートオープン! 魔界へGO! ……え、魔界じゃない!? じゃどこ行くんだよ!? おい犬!」

青い犬?「だから俺は犬じゃねー!!」

そんなワケで次回! ミオミオ、なぞのばしょへGO!
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