*** 注意!! ***
このエピソードにて、原作では生存しているキャラが死亡?します。
それでもお付き合いを許せるならお進み下さい。
「超技! ダークブレード・メガインパクト《暗黒刃超弩級衝撃波》!」
「クリスタルランス《水晶騎士槍》!」
「封じ手、爆炎微塵隠れ!」
右を見ても、左を見てもアンデッド。大地を埋め尽くすアンデッドの群れ。
例え、それ等の一体、一体が雑魚モンスターと俗に分類される強さでも、塵が積もれば山となる。圧倒的な多数のアンデッドによって、リ・エスティーゼ王国は国土の五割を失っていた。
最早、アンデッドの群れを退けられたとして、リ・エスティーゼ王国の復興は困難。
アンデッドに踏み荒らされた土地は汚染されており、それを全て浄化させるには膨大な労力と費用がかかる。
当然、この戦いに生き残れた勇者達に与える褒美へ割ける予算は無い。
恐らくは名誉しか得られないと解っていたが、国の為、家族の為、友人の為、隣で今戦っている戦友の為に兵士達は命を賭して戦い続けていた。
だが、最大の支柱が崩れようとするその時がいよいよ迫っていた。
アンデッド達がリ・エスティーゼ王国王都へ到達。城門を打ち破ろうと、城壁を乗り越え壊そうとその圧倒的な数を取り付かせていた。
しかし、王都を守る城門は固く、城壁は高くて厚い。
雑魚モンスターのアンデッド達が何万、何十万と取り付こうが月単位でびくともしない。もしかしたら、一年以上を保つかもしれない。
だが、『しかし』である。
エ・ランテルの街から王都まで広がったアンデッドの域はとんでもない化け物を創造した。
今は呼び名がまだ付けられていないが、ユグドラシルに準じるならデスロード。
露わとなった頭蓋骨に茨の王冠を乗せて、見事な意匠が施された黒光りする全身鎧。右手には長剣を、左手には三角盾を持ち、腐った肉を持つ巨大な黒馬に騎乗する姿は威風堂々。
周囲に十数匹のデスナイトを付き従え、馬を歩ませるだけで戦い挑んできた者達を瞬く間に下して、その麾下に組み込んでゆく様子は正に王者の行進であり、今は城門から離れた位置で歩みを止め、城門での攻防を楽しむかのように裾がボロボロに傷んでいる赤いマントを向かい風に翻しながら悠然と佇んでいた。
「くそっ! キリがねぇ! ラキュース、いい加減に限界だぞ!
……って、本当にいい加減にしろ! 幾らなんでもテンドンは二回目までだろ! 絶対に手抜きじゃねえか!」
デスロードが最前線に姿を現したのは十日前。
その姿を目の当たりにした時、第二王子のザナックは驚愕のあまり両膝を大地へ落とした。
何故ならば、デスロードが持つ剣も、盾も、身に纏う鎧も見覚えがあった。
それ等は第一王子『バルブロ・アンドレアン・イエルド・ライル・ヴァイセルフ』の品だったからだ。
露わとなっている顔は骨の為、生前の容姿は解らないが、ザナックは兄だと断定。ガゼフ達と相談して、この事実を隠蔽する事とした。
なにせ、アンデッドの群れの中にいるデスロードは統率者にしか見えない。
誰よりも国を守らなくてはならない第一王子が実は国を率先して攻めているなんて皮肉が利き過ぎている。
もし、この事実が知られたら、士気はだだ下がり、離反者が続々と現れるのは目に見えていた。
今ですらギリギリの苦しい中、そんな事態になったら完全に戦線は崩れてしまうし、リ・エスティーゼ王国に戦後が有るとしたら周辺国から『アンデッドの騒動は第一王子が起こしたのでは?』と責任追及は免れない。
それ故、ザナックとガゼフは最前線を守る傍ら、デスロードの討伐を最優先目標にした。
兵士達もデスロードから感じる風格にデスロードを倒したらアンデッドの群れが退くかも知れないという期待感を抱かずにはおれず、多少の無謀は承知しながらも果敢に攻めた。
しかし、残念ながら届かない。デスロードの周囲を守るデスナイト達が行き手を阻む。
決死隊を編成して、既に何十回も突撃を仕掛けたが、その大半がデスロードの麾下に加わっただけの結果を生んでいた。
唯一、ガゼフの好敵手『ブレイン・アングラウス』がデスロードに一太刀を浴びせる事に成功したが、その代償にブレインは愛刀を折られて、魔法やポーションでは回復が難しい一撃を左肩から右脇腹にかけて受けてしまい、今は戦線を離脱している。
「ええ、そうね!
ティナ! ガゼフ様に伝えて! 阻止限界点はもう突破するって!」
「待って! 鬼ボス!」
「おっ!? 新展開か!
なら、自己紹介だな! 俺っちはまだ名前すら出てねえぞ!」
その絶望の代名詞といえるデスロードが遂に城門へ向けて歩み出す。
デスロードやデスナイト達の脅威を今まで何度も見せ付けられている兵士達が思わず後退り、城門が突破されるのは時間の問題だと悟ったその時だった。
「お城が……。お城が燃えている! 何故っ!?」
「俺っちの名前は……。」
王都中心の小高い丘の上に在る王宮の一角から炎が上っていた。
まだ城門は突破されていないにも拘らず、死守しようとしている王宮が先に燃えている光景は兵士達の士気をへし折るのに十分すぎた。
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「あはっ……。あははっ!
そうね! 何からはじめましょう!」
油が撒かれたダンスホールは火を瞬く間に広げて、紅蓮の炎と化して燃え盛る。
毛足の長い敷き詰められた赤い絨毯は良く燃え、その炎はユラユラと揺れて立ち上り、まるでダンスを踊っているかのようだった。
「夢にまで見た。夢の中
さあ、ほら、全てを忘れましょう」
その中心でラナーは一人踊る。
ドレススカートの裾に火が着き、下半身から火が上ってきていても気にせず、高らかに歌い笑いながら踊る。
「屍の上に立つ舞台に、二人以外の誰も要らない」
王都を避難する直前、ラナーは周囲の説得に頑として譲らず、王宮に残った。
その理由は言うまでもないが、王宮に人手は無い。戦場で役に立つだろう友人達はその戦場で戦っており、クライムの護衛を頼もうにもそれが出来ない。
馬に乗れなければ、馬車を操る事も出来ず、戦場へ向かうどころか、王都の城門へ向かう体力すら持っていない。
卓越した頭脳は持っていても、それが全く役に立たない状況下、ラナーはクライムの無事を一心不乱に祈った。それまで信じていなかった神を信じて願った。
「喜びに狂い踊りましょう。
幸せに溺れ歌いましょう。
どこまでも堕落するその限り、尽くすまで」
だが、クライムが今日の未明に戦死したという報告がラナーの元へ届く。
ただの一兵士でしかないクライムの戦死報告が届けられたのは間違いなくラナーの友人の優しさからだったが、ラナーはクライムを守ってくれなかった友人をこれでもかと何度も罵り、自分の部屋にあるものを手当たり次第に投げて叫んだ。
「あははっ……。あはははははははははははははははははははっ!」
そして、ラナーは心を失って狂った。
目の前で一緒に踊るクライムの幻が見える幸せの中、くるくると、くるくると回って。
ラナー様が歌っているのはアニメ四期最終回のアレです。
さあ、貴方も喜びに狂って踊りましょう!
作品コード「277-2313-5」