聖なるガイコツ   作:やまみち

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二十八本目 聖王親衛隊、参上

 

 

 

「な、何だっ!?」

 

 

 上空で横一列に並んで眩しく光り、白煙の尾を引きながらゆっくりと落下する幾つもの白い玉。

 それは真夜中を昼間のように照らし、ガゼフとリ・エスティーゼ王国の兵士達が思わず戦いの手を止めて、空を見上げる。

 

 

「夜空の星が輝く陰で悪の笑いが木霊する!」

「に、西から東へ泣く人の涙背負って、悪の始末!」

「聖王親衛隊! お呼びと有らば、即参上!」

 

 

 だが、その茫然を我に返す声が戦場に響き渡る。

 釣られて、誰もが声の発生源を頻りに探して、誰かがソレを最初に見つけて指をさす。城門上の櫓の屋根に三人の女性がポーズを決めて立っていた。

 

 屋根の中央に立つカルカは、前方の戦場へ向かって勇ましく足を肩幅に開きながら両手を大きく掲げて。

 カルカの左側に立つネイアは、開いた両足の左膝を折り、右足はピンと伸ばして、右手は頭上に、左手はカルカへと向けて。

 カルカの右側に立つクレマンティーヌは、膝を折った左足を前に置きながら腰を少し落として、招き猫を連想させる形の両手をカルカへと向けて。

 

 ちなみに、声はネイア、クレマンティーヌ、カルカの順番であり、悪は『ワル』と発音している。

 クレマンティーヌだけがカルカ様御一行のノリにまだ慣れておらず、声を上擦らせ気味。カルカはあとで反省会の必要性を感じていた。

 

 カルカ様御一行は『誰かが困っていたら助けるのは当たり前!』を夢中になり過ぎた。

 数々の世直しに救われた人々は確かにいたが、肝心のリ・エスティーゼ王国王都への到着が遅れ、避難民の情報から一昨日の時点で王都での決戦に遅参が確定した。

 

 古今東西、戦場への遅参は大罪。

 それが国家存亡を賭けた大決戦となったら尚更であり、カルカ様御一行は当然の事ながら困った。

 どうしたら良いのかを相談して、遅参など問題にならないインパクトをガツンと与えるべきという結論になった。

 王都までの道中、今日は誰一人として会わず、世直しの必要が無かった為、試行錯誤した練習をたっぷりと重ねていた。

 

 

「せ、聖王親衛隊っ!? も、もしや、ローブル聖王国が救援をっ!?」

 

 

 その成果が結び、効果は抜群。今や、リ・エスティーゼ王国の兵士達の視線は三人に釘付け状態。

 ガゼフはいつの間にそんな場所へ上ったのか、そんな目立つ事をしていたらすぐ近くに居る自分が絶対に気づく筈だという疑問は有ったが、絶望の中に希望を抱く。

 

 ガゼフの至極当然な疑問は正しい。

 カルカ達は櫓の壁に梯子をかけて、屋根へ上った訳ではない。

 

 手品の種はモモンガの魔法。

 今さっき、カルカ達は屋根の上に転移で現れており、戦場を明るく照らしている幾つもの照明弾もモモンガの仕業によるもの。

 

 では、そのモモンガは何処に居るのかと言ったら、アンデッド達のど真ん中だった。

 カルカ達を屋根の上へ送り届けた後、ガゼフから見たら右手側の城門からかなり離れた位置に出現。脇構えにした大剣の剣先を敢えて大地に落として、地面をガリガリと音を立てて削り、土煙を巻き起こしながら城門前へと一直線に疾走中。

 

 

「よくぞ、耐えたぞ! リ・エスティーゼの勇者達よ!

 お前達の姿に懐かしき我が友人、たっち・みーさんの姿を見た!

 正義とは諦めず戦い続ける事にこそ、その意味も有れば、価値も有る!

 ローブル聖王国の一同に代わって、礼を言おう!

 ならば、リ・エスティーゼの勇者達よ! 我等、聖王親衛隊にここは任かされよ!」

 

 

 これまた効果は抜群だった。

 行く手にあるアンデッド達を海が割れたように次々と左右に吹き飛ばしてゆく姿は正に一騎当千。

 カルカ達に集っていた視線はモモンガへと集い、モモンガの目指す先がデスロードとデスナイト達だと知り、まさかたった一人で突撃するのかと心に期待と不安を入り混ぜた次の瞬間。

 

 

「おおっ!?」

 

 

 モモンガは立ち塞がったデスナイト達をものともせずに吹き飛ばすと、爆発と水柱を合わせたような土煙を大きく立ち昇らせた。

 一呼吸を遅れて、頭から股下まで真っ二つになったデスロードが土煙の頂点に舞い上がり、骨を爆散。ガゼフは目を輝かせて、剣を持っていない左手に思わず力拳を作る。

 

 

「オーバーマジック《魔力上昇》!

 サイレントマジック《魔法無詠唱化》!

 トリプレットマジック《魔法三重化》!

 ペネトレートマジック《魔法抵抗難度強化》!

 マキシマイズマジック《魔法最強化》!

 ワイデンマジック《魔法効果範囲拡大!》

 エクステンドマジック《魔法持続時間延長化》!」

 

 

 だが、まだ終わらない。モモンガは続けざまに詠唱を重ねてゆく。

 土煙が収まると、モモンガを包む積層球体型の大きな魔法陣があり、その中に幾つもある小さな魔法陣のそれぞれが青白い輝きを強めてゆくと共に回転する速度を早めてゆき、それは素人目にもこれから何か凄い事が起きると確信させるものだった。

 

 

「土は土に! 灰は灰に! 塵は塵に! リアリティ・スラッシュ《現断》!」

「な、なんとぉっ!?」

 

 

 モモンガは大剣を横薙ぎした後、踏み出した左足を軸にして、そのまま一回転。

 数百メートルに亘り、モモンガを中心としたアンデッド達が一瞬にして真っ二つ。爆散して、大地へと還る。

 

 しかも、その範囲に入っていた城壁が剣閃を刻んで揺れる。

 ガゼフは信じ難い現実にただただ唖然。揺れを踏ん張りで耐えながら世の広さと剣の道の険しさを知る。

 

 

「お、後れを取るな!」

「はい!」

 

 

 だが、まだ終わらない。クレマンティーヌは右へと、ネイアは左へと駆けて、櫓の屋根から跳躍。

 二人は普通なら骨折してもおかしくない高さからの着地と共にすぐさま駆け、クレマンティーヌが左手に持つ短杖を、ネイアが右手に持つ短杖を真横に突き出すと、それぞれから雷光が走って、二人を繋げる稲妻の網が現れる。

 

 

「ね、狙った獲物は逃さぬと!」

「二人の後には悪を逃さず!」

「に、「逃げねば全て召し捕るぞ!」」

 

 

 デスナイトはどんな攻撃を受けても体力を最低値で耐えきるアンデッドモンスター。

 モモンガの信じ難い一撃に片膝を下ろすも再び立ち上がったデスナイト達を稲妻の網が絡め取り、雷音をバチバチと鳴らしながら爆散してゆく。

 

 

「す、凄い……。す、凄すぎる」

 

 

 最早、ガゼフは語彙力を失った称賛の後に言葉も失い、口をパクパクと開閉させる。

 自分達が苦労しても退けるのが困難だったデスロードとデスナイト、アンデッドの大軍を一分足らずで消滅させた聖王親衛隊の脅威にリ・エスティーゼ王国の兵士達も言葉を失う。

 

 

「集いし星の輝きが新たな奇跡を照らし出す!

 光差す道となれ! 召喚! 光来せよ! メタトロン!」

 

 

 だが、まだ終わらない。本命が満を持して登場。

 カルカが前方へ向けた錫杖を両手でくるくると回転させて、その先端にある輪をシャラシャラシャラシャラーンと鳴らすと、その背後に腕を組んで胸を反らす数多の翼を持った超巨大な天使がその姿を頭からゆっくりと現す。

 

 無論、これもモモンガの魔法であり、カルカのアクションはカルカを目立たせる為のものに過ぎない。

 いつの間にか、モモンガはカルカを守るようにその右隣で大剣を肩に乗せて立っており、兜の中で呪文をこっそりと詠唱をしていた。

 

 

「喝采せよ! アルティメット・シャイニング・バースト《光り輝く究極爆裂》!」

「シェアッ!」

 

 

 しかし、それを知る由もないガゼフとリ・エスティーゼ王国の兵士達は神々しい天使の姿に畏怖する。

 カルカが前方を錫杖で指し示し、輪がシャラーンと鳴るのを合図にして、天使が数多の翼を大きく広げて、光の粒子が舞う輝く羽を周囲に撒き散らすと、それが幾千、幾万の光弾となり、アンデッドの群れへと降り注いで爆発した。

 

 

「せ、聖王親衛隊とは……。お、俺は神話を見ているのか?」

 

 

 まるで太陽が地上に現れたかのような眩しさ。

 たまらずガゼフが目の前に左腕を翳して、その眩しさが少し収まったところで左腕を下ろしてみれば、戦場を埋め尽くしていた筈のアンデッド達の大半が消滅していた。

 

 

 

 ******

 

 

 

「まさか……。今代の聖王はプレイヤーなのか?」

「はあ? 何だ、そりゃ?」

「待って、鬼ボスの様子がおかしい」

「決めた! 私、冒険者を辞めて、聖王親衛隊に入る! だって、格好良いもん!」

「ヤバい。闇ラキュースのお出まし」

 

 

 目論見通り、カルカ様御一行が与えたインパクトは絶大だった。

 遅参なんてどうでも良くなるほどの影響をリ・エスティーゼ王国の兵士達に与えていた。

 

 

 

 





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