呪いの王の後継   作:高天原降

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すぐ終わらないかも……。


六話 実力の把握

 

『此度のレーティングゲームにおいて失礼ながら、千光様のことは少々調べさせていただきました。今回、千光様がグレモリー眷属としてレーティングゲームにご参加なされる場合──追儺として活躍なされている千光様の実力を考慮し、出場時間の制限を設けさせていただきます』

 

 ライザー・フェニックスが自慢の眷属を見せびらかすだけ見せびらかし、冥界へ帰った後のこと。

 補足として、そんな説明がグレイフィアよりなされた。

 魔王の情報網とは伊達ではないようで、あっさりと千光が追儺であることがバレてしまったようだ。

 リアスにあっさりと白状した時もそうだが、別段隠しているわけでもないので、正直に言えばどうでもいいのだが。

 今大事なのは提示された制限時間である。

 時間は三分。

 これを呑めなければ出場そのものができない。

 タイマーは試合開始と同時に始まるとのことで、つまるところ、遊んでいる時間はない。

 リアスに聞けば、レーティングゲームの舞台(フィールド)となるような場所は、総じて広いらしい。

 チェスを模したといっても、行われるのは悪魔対悪魔を想定した疑似戦争遊戯(ウォーゲーム)だ。

 それに伴って遊戯盤も広大になるのは推して知るべし。

 そのことを考えて、三分という時間は非常に短い。

 初っ端からライザーと戦えるのなら、三分は十分どころか余らせる自信はあるが、当然ながらそうはいかない。

 まず広大なフィールドで、相手の(ライザー)を見つけ出す必要がある。

 この時点で見つからないよう、逃げの一手を使われたらキツい。

 ()()()()()()()()()()()()()()()()術がないわけでもないが、そんなのはそもそもグレモリー眷属の勝利とはみなされず無効試合になる可能性が高い。

 ……なるほど、悪魔(むこう)側も面白い手を考えるものだ、と千光は頷く。

 この条件の嫌らしいところは、千光ならば多少厳しくても不可能ではない、という点にある。

 大方、千光の実力を垣間見たグレイフィアの助言から作られたルールなのだろう。

 

「一誠、ペース落ちてるぞ」

 

 考え事の傍ら、隣にいる一誠のリュックを叩く。

 

「分かってるよ。つか! 千光てめえ、なんでお前だけそんな身軽なんだよ!」

 

 理不尽だと叫ぶ一誠の言う通り、千光の荷物は自分の着替えや歯ブラシなどが入ったボストンバッグ一つだ。

 それ以外の部員、一誠や木場、果てには小猫までもが尋常ではない重さのリュックを抱えている。

 小猫に至っては、巨大な岩石と見間違うほどの大きさを背負いながら、山を登っているのだ。

 そう、山である。

 修行と言えば山籠もりである。

 古いと言われればそれまでだが、現代日本で周りに人の居ない場所を探そうとすると、必然的に山に行きあたってしまうのは仕方ないだろう。

 それがグレモリー家所有の別荘地で、魔術的にカモフラージュもされていると言えば、文句はなかった。

 

「そんな基礎をしなくてもいいぐらい、強いから」

「うわウザ! でもホントのことだからなんも言えねえ!」

「……お先に」

「ほら、もたもたしてるから小猫に抜かされたぞ」

「……っ、うおおおらああああ!」

 

 発破をかけると余程悔しかったのか、一誠は無理にペースを上げて先頭集団に追いつこうとする。

 こりゃ即バテるな、と千光は笑いながら置いていかれないように一誠の横に並んだ。

 

 1

 

「んじゃ、全員揃ったな」

 

 別荘に辿り着き、休む間もなくジャージに着替えて修行を開始する。

 修行の内容は個々によって細かい違いはあるが、大まかには変わらない。

 というのも、今回の修行は千光との戦闘訓練を主軸にしたものだからだ。

 ライザーによって与えられた十日という猶予(モラトリアム)

 ──下僕の力を引き出してやらなければ即敗北。

 業腹ではあるが、このライザーの言葉に千光も頷かざるを得ない部分があるのも事実だ。

 ハッキリと言ってグレモリー眷属は弱い。

 殊更に一誠は最弱だ。

 いくら『赤龍帝の籠手(ブーステッド・ギア)』を持っていようが、肝心の宿主が使い物にならない。

 宿儺に言わせればリアス同様に宝の持ち腐れ、という奴だった。

 だがリアスの力は詳細が分からないのでともかくとして、一誠の神器はまだ見切りをつけるには早い。

 赤龍帝の籠手、その能力は至ってシンプルに力の倍加だ。

 これは基となる数字が大きければ大きいほどに、その強化幅は大きなものとなる。

 であるのならば複雑な訓練など必要なく、求めるものは一つ──肉体(フィジカル)の強化だ。

 それと合わせるように、他の部員も実戦形式で千光と戦い、強化を図る。

 

『ごめんなさい、チアキ。悔しいけれど、今は貴方に頼るほかないの。私たちの誰よりも強い貴方に』

 

 昨日のリアスの言葉を思い出す。

 悔しさを嚙み締め、素直に頭を下げられるのは美点の一つだ。

 千光もグレモリー眷属には少しばかりの期待をしているのもあって、否はなかった。

 

「まずは、そうだな。纏めてやりますか。チームワークも見たいし。あ、当然だけど、アーシアと一誠も参加で」

「わかったわ」

 

 リアスが頷くと、彼女の指示に従って眷属達は所定の位置に着く。

 一誠と小猫を前線に、木場がその機動力を生かした遊撃、そして最後の砦である女王の朱乃が、王のリアスと回復要員(ヒーラー)のアーシアを守っている。

 セオリーに沿った模範的(オーソドックス)な陣形だ。

 良くも悪くも逸脱しすぎない、堅い陣形。

 けれど、言い換えてしまえばつまらない布陣でもあった。

 

「じゃあ、この小石が地面に落ちたら開始ってことで」

 

 足元の小石を拾い上げて、宙に放り投げる。

 本当の戦闘には開始合図なんてない。

 敵を視界に入れた瞬間、その首を真っ先に飛ばしに行くのが千光の戦い方だ。

 けれど、今回の前提にあるのはレーティングゲーム。

 実戦的であるとはいえ人死にが出るわけでもなければ、ルールによって一定の線引きがなされている。

 であるのなら、たまにはこういうのも悪くはない。

 

 ──コツンッ。

 

 小石が地面を叩いた。

 

「──っ、がは!」

「はい、一誠脱落」

 

 どさりと、鳩尾に一撃を入れられた一誠が呼吸困難になり、膝から崩れる。

 

「イッセーさん!?」

 

 アーシアの声が耳朶を打つ。

 足元には蹲って一誠が藻掻いていた。

 回復要員(アーシア)を狙っても良かったが、今回の目的は実力を把握することだ。

 そこまで合理的に行かなくてもいいだろうと思い、目の前にいる人物から処理することにした。

 足元の一誠の意識が飛んでいないのは、千光がかなりの手加減をしたからだ。

 何故意識を飛ばさなかったのか、理由は単純、この苦しさを体験してもらうためである。

 一度でも攻撃を受けることの辛さを味わえば、忌避感が生まれ、否が応でも体が反応するようになる。

 引いてはそれが反射的な回避行動すらも可能にさせる。

 もしくは回避できなくても、痛みや苦しさに対しての一定の耐性が付くようになるため、あえて意識を奪わなかったのだ。

 

「そこ!」

「……えい」

 

 木場(ナイト)小猫(ルーク)による挟撃。

 一誠が倒されるや否や、逃げではなく攻勢に出る即時の判断。

 思い切りの良さや判断の速さ、加えて合図もなしに仲間同士で連携を行えるチームワークは悪くはない。

 

「狙いが分かりやす過ぎる」

 

 首に狙い定められた魔剣を身を捻って躱し、その際に繰り出された小猫の右腕を掴み、木場の方へ放り投げ二人纏めて呪力を込めた掌底を打ち込む。

 

「ぐっ」

「……っ!」

 

 小猫は直前で何とかガードを間に合わせるが、衝撃は後ろの木場まで貫通して、二人を雑木林に吹き飛ばす。

戦車(ルーク)』の特性を持つ小猫はわからないが、これで紙装甲の木場は気絶しただろう。

 残るは王と女王、そして僧侶。

 僧侶(アーシア)に直接的な戦闘力はないので無視するとして、王と女王だ。

 特にこの両名はどこまでできるのかを見極めておきたい。

 というのも、王と女王は他の駒と違って前線を張ることはそうそうない。

 だからこそ、その実力の全てを見る機会は少なく、底というものを知ることはできない。

 何ができて、どこまでならいけるのか。

 それを知る必要があった。

 一歩、千光が踏み出すと稲妻が宙を奔った。

 それを顔を僅かに逸らすことで回避する。

 

「お手柔らかにお願いしますね」

 

 嫋やかに微笑む朱乃だが、その瞳は見たことがないほどに真剣だ。

 気付いているのだろう、一瞬たりとも気が抜けないことに。

 朱乃の視線は千光の一挙手一投足を警戒している。

 それこそ少しでも動けばその瞬間に、雷を打ち込んでくるだろう。

 

「大丈夫っすよ。訓練なんで、ほどほどに加減します!」

 

 言って、地面を蹴った。

 

「っ!」

「おっと危ない」

 

 雷撃の嵐を身軽に躱す。

 二つ、四つ……十、進むごとにその苛烈さと数が増していく。

 眩く光る槍はまるで監獄のように、幾重も折り重なって地面を抉る。

 ふと、そう言えば前に遊んだRPGにこんなミニゲームあったなと思い出す。

 雷を二百回避けると貰えるアイテムを入手するために、頑張ったものだ。

 ゲームとは違って、実際に避けるほうが簡単だった。

 朱乃に近付くため、一歩力強く踏みしめる。

 

「攻撃がワンパターン過ぎです」

「……っ!?」

 

 魔力を放出する腕を掴んで、意識を奪おうとした瞬間、

 

「させないわ」

 

 死角から紅の魔力が飛来する。

 一瞬の思考。

 掴んでいる朱乃を楯にするか考えるが、防御行動を取るには遅すぎる絶妙のタイミング。

 狙ってやったのだとしたら、現状考えうる行動では最適であろう。

 パッと朱乃の腕を離して、軽く飛び退く。

 同時に後ろからの気配を感じるが、着地と同時に捕まり身動きを封じられてしまう。

 

「……捕まえました」

 

 背後から抱き着く形で千光をその場に縫い付けたのは、戦線復帰をしてきた小猫だった。

 ──ギチギチッ。

 小柄な体格からは想像も付かない、人外の膂力を持って千光を締め上げる。

 そこまでしなければ、一瞬にして振りほどかれるとわかっていたからだろう。

 

「おまけだよ」

 

 腕に力を込めようとした瞬間、意識を奪ったはずの木場の声がして視線を向ける。

 アーシアの傍らに木場の姿が見える。

 なるほど、と頷いた刹那、足元から無数の剣が生えた。

 

「拘束の魔剣。即席だけど、ちょっとは時間稼ぎになるだろ?」

 

 キザに笑う木場を見て、ニヤリと千光は口角を上げた。

 一つの気配を感じたからだ。

 そして、そこから一つの狙いを予測して──それを肯定するかのように、声が響き渡る。

 

 ──『Boost!』

 

「うおおおお!!」

 

『赤龍帝の籠手』を振り上げながら、のたうち回っていたはずの親友が一気呵成に詰めてくる。

 どうやら、根性だけはあったらしい。

 千光は今になって気付く。

 朱乃の無差別な雷撃は、どうやら仲間が復帰する時間を稼ぐためのものであり、そうしている間に小猫が木場と一誠を回収し、アーシアが二人を回復させた。

 そしてそれらを一瞬で脳内で組み立て、千光に悟られないよう指示を出したのがリアスなのだろう。

 そう考えれば、朱乃と千光を引き剝がしたあの一撃も狙っていたと考えるのが自然だ。

 なんだ、存外にも戦えるじゃないか、と千光は含み笑って。

 

「じゃあ、サービスタイムは終了ってことで」

「……っ!」

「うぇっ!?」

 

 小猫と木場の拘束をまるで何もなかったかのように振りほどき、難なく一誠の一撃を受け止めた。

 そして、今度こそ一誠の意識を一撃のもとに沈める。

 それからの勝敗は語るまでもないだろう。

 ただ一つ言うのならば、全員が全員、アーシアの治療を受けることになるのだった。

 

 





ハイスクールDxDなのにハーレムじゃないんだね、と友人に言われたのですが、初めの方は自分もハーレムのがいいかなと思っていたのですが、技量的に複数のヒロインを扱える自信がなくて(ビビったとも言える)、ちょっと見送りました。
けれどまあ、書いたことないし書いてみたいよなあ、とも思ってたりします。

そんなわけで、ちょこっとだけアンケートです。皆さんの意見を参考に出来ればなあ、と思っています。内容はハーレムについてです。※アンケート結果が必ずしも反映される訳ではありません。

  • ハーレム派(ヒロインはこれから考えます)
  • ノットハーレム派(リアスとネコのまま)
  • 作者に任せる派(私が悶々とします)
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