鷺澤有里栖、小話集   作:サーたん

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有里栖と幼馴染設定の二人のヒロインがいますが、あまり原作では使われていない設定だったので深堀してみました。その1はひよりんです。例によって有里栖と付き合ってる世界線です。


悪戯っ子、ひよりん

「有里栖、白河とは幼馴染だったよな?」

「うん、そうだよ。ね、ひよりん?」

 

 とある日の放課後。屋上の気温はちょうど良く過ごしやすい気温だった。白河と有里栖と一緒に休憩がてらお茶をしてる。他の面子は用事があるらしく三人だけだ。

 

「はい、鷺澤とは実に長い付き合いです。幼い頃の鷺澤はすごく可愛らしいものでした」

「そ、そんなに小さな有里栖は可愛いかったのか?」

 

 思わず俺は食いつく。白河はスマホを操作し、画面を突き出す。有里栖の幼き日の姿が俺の視線を釘付けにする。か、可愛いっ! 何この可愛い生き物……待ち受け、いや額縁に入れて部屋に飾りたいくらいだ。

 

「ひよりんったら何恥ずかしい写真持ってるの! 一澄もあまり見ないで!」

 

 スマホを見せまいと有里栖は俺と白河の間に入った。顔を真っ赤にし可愛らしい睨みを白河に向ける。

 

「小さな鷺澤はこの通り、破壊力抜群の可愛らしさだ。鷺澤とは同い年だけど、あれは卑怯だったね。思わずからかいたくなる」

「恥ずかしいから一澄にこれ以上写真は見せないでね」

「ああ、悪かった悪かった。もう見せないよ」

「ひよりんは全く……昔からこうだよ」

 

 有里栖は深い深いため息をつく。

 

「ひよりんは昔から私に意地悪するんだよ。ひよりん私より背が高いから、美味しそうお菓子を上でひらひらさせて、何とか取ろうとする私をからかってくるの」

「仕方ないさ。鷺澤のお菓子を見る目があまりにも純真で、時々遊んでやりたくなるんだよね」

「ね? ひよりんって酷いでしょーお菓子で遊ぶなんて。お菓子は上でひらひらするものじゃなくて、食べるものだよ」

「……有里栖の怒りの沸点はそこなのか」

 

 幼き有里栖が白河にからかわれる姿が微笑ましく想像できる。話が一段落し、一同飲み物を味わう。

 

「それにしても、鷺澤と常坂兄が結ばれるなんてね。今更だけど感慨深いですね。どうせならボクが恋愛請負人として、キューピットをしてやりたかった」

「ひよりんの力で結ばれたらそれはそれでロマンチックだったのかもね」

「ふふ、告白はどっちからかな?」

「……俺から言った」

 

 有里栖は俺の言葉に、無言でこくこくと頷く。恥ずかしそうに目を閉じ、プルプル震えていた。可愛い。

 

「鷺澤は食べ物に一生恋するのかと思ったけど、ちゃんと人並みに恋をしてるようで安心したよ」

「私、そんなに普段から食べ物に目がない?」

 

 不服そうに有里栖は俺や白河に聞いてくる。白河と顔を見合わせて頷く。

 

「うう……確かに食べるのは大好きだけど、私は食いしん坊さんじゃないよ」

「わかってる、わかってる。あくまでも有里栖は食べキャラ。美味しいものが多く食べたいだけ。そうだろう?」

「そうだよ。私はほんの少しだけ多く食べる……食べキャラ有里栖さんだもん。決して食いしん坊さんじゃないよ」

「ほら、鷺澤。最近新発売したチョコレートがここにありますよ」

 

 白河がどこからか、開封済みのチョコレートのパッケージを取り出す。ぱっと有里栖の顔色が明るくなり、白河に食いつく。

 

「あ、あの話題沸騰中で、販売数が限定されてるチョコレートだよ! もしかして、ひよりん私に食べさせてくれるの? そうなの?」 

「ええ、美味しく食べてくれる人にプレゼントしてこそ、チョコを作った方々も喜んでくれるでしょうからね」

「すごく嬉しい! うわあ、美味しそーひよりんありがとー!」

 

 チョコに夢中な有里栖はどこまでも幸せそうだ。さっきまでからかっていたことなんて忘れている。ふと、有里栖はチョコを少し割って俺に差し出す。

 

「良かったら一澄もチョコレートどうぞ。ひよりんも」

「良いのか? かなり希少価値のあるものみたいだが」

「うん、美味しいものは皆に共有したらもっと幸せになれるし。この喜びを分かち合いたいなあって。買ってきてくれたのはひよりんだけど」

「有里栖ありがとう。せっかくだから俺も食べてみる」

「それではボクもお言葉に甘えて」

 

 有里栖から俺や白河はチョコレートを受け取る。

 

「このチョコレート、すごく口溶けが良くて味わい深いから、じっくり味わって食べてね」

「ああ、堪能させてもらう」

 

 チョコを口にいれると市販品とは違った、上品な甘さが口一杯に広がる。嫌な後味や甘ったるい感じは残らない。これは旨い。

 

「どう? チョコレート美味しいでしょー」

「ああ、旨いな。こんなチョコレート久しぶりに食べた気がする」

「そっか、一澄のお口に合って良かった」

 

 有里栖は俺の反応に満足し微笑を浮かべる。

 

「ひよりんありがとうね。こんな美味しいチョコレートもらって」

「礼はすべて食べてから聞かせてもらいたいな」

「う、うん……?」

 

 意味深な笑みを浮かべる白河。それに有里栖は不思議そうにチョコレートを最後の一片を口にした。咀嚼しているうちに、有里栖の表情が変わる。

 

「か、辛いよ! このチョコレート!」

 

 そう言いつつもちゃんとチョコレートを飲み込む。有里栖は辛いものも好きだから不意の辛さにも対応できたが、辛いとはどういうことだろうか。白河に視線が集中する。

 

「どういうこと……ひよりん?」

「ふふふ、まだまだ甘いね鷺澤! ボクが差し出したチョコレートのパッケージ、あの時に既に開いていただろう? 実はついさっき、一回チョコレートを取り出してから、右端にだけ辛味を塗ったんだ。鷺澤がどんな反応するか気になってね」

「こらーひよりん! チョコレートで遊ぶなんて……いけないよ!」

 

 怒るべきポイントが少しズレてるな。有里栖らしいと内心笑ってしまう。

 

「はははー道徳心は好奇心には勝てなかったのだよ。さらばです!」

「ひよりん、チョコレートの恨みは恐ろしいからね? 食べキャラとしてひよりんの所業見逃せないよ!」

 

 ぴゅーと逃げる白河を追うプンプンと鼻を鳴らす有里栖。何だか楽しくなって二人を観客として追いかける俺。こんなバタバタした楽しい時間を、これからも過ごしていきたいと有里栖たちを見て改めて思うのだった。

 

 




ひよりんはこっちの幼馴染からも追いかけられる運命なのです。
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