黒崎一護なオリ主と五条悟   作:ラムセス_

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宿儺の目から見て

 

 両面宿儺は心底イラついていた。

 

 己の宿主の浅薄さに失望していたと言ってもいい。

 いや、もとより期待などしていなかったが。

 それでもそこを突き抜けるというほどとは思わなかったのだ。

 

「小僧、奴らの手合わせを見に行けと言っている!」

「だーかーらー!五条先生に危険だからって止められてるんだよ!つか夜だし、もう寝るし!」

 

 宿儺は内側で青筋を立ててマジギレした。

 

 寝る!寝ると来たぞこの小僧!

 何故小僧を今すぐ粉微塵にできないのか本気で疑問だったし、己の今の状況に絶望的なまでに激怒していた。

 

 五条悟。

 今代の無下限呪術と六眼の抱き合わせ。

 その実力は受肉と同時に10秒ほどやり合った時に知っていた。

 呪力操作も体術も期待通りだが、所詮はその程度。

 

 ……そう思っていた男が、日に日に、呪力の流れも術式も洗練されていくことが疑問だった。

 

 所詮は宿儺のいない時代に生まれた凡夫だろうが。

 あのレベルの強さでまだ成長できるほど、周囲の有象無象は有益なものではないのだ。

 

 はてさて。

 疑問の答えは身近にあった。

 聞けば、命をかけた死合を毎晩同じ特級である黒崎一護としていると言うではないか。

 

 黒崎一護のほうは一目見た時から凄まじい呪力量の男だと把握はしていた。

 

 未知数の見たこともない術式。

 全盛期の宿儺が虫ケラに見えるほど莫大な呪力量。

 お粗末な呪力操作は少し気に障ったが、あれだけ途方もない量の呪力を操作できていることを褒めるべきか。

 

 2人とも、まず間違いなく宿儺に並ぶ可能性のある強敵である。

 

 その2人の手合わせを見る機会など、金銀財宝を山と積んだとて得られるものではないのに!

 人を助けるなど大層なお題目を掲げておいて、そのあげく自堕落に惰眠を貪るとは。

 ますますもって宿儺は虎杖のことが気に食わなかった。

 

 己が予定通り自由な体を手にしたら、まず最初にこの小僧を擦りおろす。

 そう宿儺は決意して今晩もイライラと足元の骸骨を踏み潰した。

 

 寝巻きのジャージに着替えてすっかり寝る態勢に入った虎杖に、いよいよもって我慢の限界が来る。

 しばらくの沈黙の末、宿儺は苦渋の決断で口を開いた。

 

「いいだろう。小僧、縛りを結ぼう」

「へ?」

 

 間抜け面で電気を消してモゾモゾと布団の中に入ったので、頬のところから口を出して語りかける。

 

「いいか、これは縛りだ。『俺が伏黒恵の体に受肉することはない』。その代わり五条悟と黒崎一護の毎晩の手合わせを俺に見せろ」

「?なんで伏黒がそこで出てくんの?」

「さっさと答えろ。忌々しい小僧め」

「……あー、もう、仕方ねーなぁ。見たら今度こそ寝るからな」

 

 縛りだというのに、期限も文面も気にせず呑気に承諾する姿にますますイライラが加速する。

 この千年できっと1番イラついている宿儺である。あまりのストレスに禿げ上がりそうだ。

 

 だが、これは宿儺に取っても重い縛りだ。

 当初の予定はこれでご破算になったと言ってもいい。

 それでも、それだけの価値がこの契約にはあった。

 

 ジャージ姿のまま虎杖が部屋を出て眠たい眼を擦る。

 しばらく校舎内をうろつけば、目標である運動場が見えてきた。

 

「お、先生と黒崎がいる。今から始めるみたいだな」

 

 よっこらせ、と虎杖が校舎入り口の花壇の淵に腰をかける。

 

「もう少し近寄れないのか」

「あんまり近づきすぎると危ないかもしれないだろ。それに気付かれて追い返されるかもしれないし」

「チッ」

 

 もう、とうに五条の方は虎杖がきたことを気付いているだろうに、それすらも気付かず呑気に座る小僧が気に食わなくて仕方がない。

 思わず手元にあった頭蓋骨を粉砕するも、空気が粉っぽくなるだけで余計に苛つきが加速するだけだった。

 

 瞬間、運動場が青白い結界に包まれた。

 

「お、始まった?」

「………」

 

 宿儺は無言でその結界を解析し、目を細めた。

 

 見たこともない結界だ。血液を介した広範囲結界?

 にしては異常過ぎる物理防御力だ。

 あれほどとなると、最早宿儺の捌とて小揺るぎもせず耐えるだろう。

 

 遠慮なしに攻撃する五条の術も非常に複雑で、元の術式から随分改良しただろうことが見て取れる。

 術式反転の無下限を使い、極度の回転を加えた衝撃波は一点突破型で抉るような凄まじい威力を発揮している。

 どれほど防御したとして普通なら回転に巻き込まれて肉片になる威力だが……。

 

 黒崎一護はそれを純粋な呪力の壁のみで逸らして、抉れた肩を反転術式で瞬時に回復してのける。

 

 お返しとばかりに角から射出するのは禍々しいほど呪力のこもった熱線だ。

 特段凝った技術は使われていない。ただ呪力をビーム状に吐き出すだけの単純な技。

 それがあれほど悍ましく、恐ろしく感じられるのはあまりに莫大すぎる呪力量で行われているからだ。

 

 時折織り交ぜる影を使った移動術は黒崎一護の生得術式か。

 だが持っている刀の形をした呪具が奇妙だ。

 構築術式のようにそれ自体が黒崎の呪力でできているように見える。

 

 そして時折織り交ぜるあの超速の移動術。

 

 おそらくその移動術対策なのであろう、五条が無下限の術式順転を所々に設置してその機動力を削ごうとしている。

 しかしあの複雑怪奇な移動法に単純な罠は意味をなさない。

 

「ふむ。概念として『その場にとどまる』ことを強制しているのか。厄介だな」

「え、どう言う意味だ?」

 

 宿儺は独りごちた。

 

 かなりの強制力を誇るであろう設置罠を、黒崎はただ呪力のみで引きちぎって移動している。

 ここまででかなりの呪力を消費したはずだが、後から後から補填されているとしか思えないような呪力量だ。

 

 当初、宿儺は黒崎のことを五条8000人分ほどの呪力量があると見積もっていたが。

 試合開始時の術式解放とともに指数関数的に増えていく呪力量に、もはや限界すらわからなかった。

 

「……宿儺はアレより強いのか?」

「生意気なことを聞くな。小僧は黙っていろ」

「まぁ、ちょっとあれはマーベルヒーローの世界観だもんな、付いていけないのはわかる気がする」

 

 この小僧絶対ただでは殺さん、と宿儺は内側でブチギレた。

 

 分かる気がするとか見当違いな共感をし腐った虎杖に対して殺意を燃やす宿儺だったが、同時にそれを一笑に付せない焦燥があった。

 

 こんな肉体ではあの場についていけない。

 あんな極上の死合を前に見ている事しかできないのでは、いずれ己は弱者へと堕ちるだろう。

 焦燥を激怒に、激怒を憎悪に変えて呪いを燃やす。

 

 アレらは俺の獲物だ。誰にも渡さない。

 

 

 そのように決意して、宿儺はその2人の死合を手の届かない宝物でも見るかのように羨望の眼差しで見続けていた。

 




・両面宿儺
苛つきが頂点に達してもう禿げそう。
俺の怒りが有頂天。

・虎杖
怪獣大決戦を呑気に鑑賞中
次はポップコーンを持ってこようと思っている。
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