黒崎一護なオリ主と五条悟   作:ラムセス_

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受肉

 

 現場に到着した頃には、既に俺の肉体は奪われ、下手人である真人は見失ってしまっていた。

 

 「すまない、こちらの不手際だ」と真剣に頭を下げる夜蛾校長を見ては、こちらも何もいえなくなってしまう。

 どうも、真人は呪詛師の力を借りながら逃げ一辺倒、時々捕まりそうになったら改造人間を使うという非常に消極的な戦法をとったらしい。

 だからこそ高専側も苦戦し、取り逃す羽目になった。

 

 その上で、決定的だったのは真人が街中に出た瞬間無差別に改造人間を放って大混乱に陥れた件だ。

 勿論改造人間は四方八方に広がって被害は拡大していき、渋谷近郊では甚大な被害が出てしまったらしい。

 

 そのほか呪詛師は生け取りにして、現在高専地下にて拘束中とのこと。

 美々子と菜々子とか言ったか、まだ若い子女もいるようだ。

 そんな人間が悪事に手を染めるとは、まさに世も末である。

 

 全般的にそんな感じなので、今回のことは仕方なかったと納得はできる。できるが。

 俺は頭を抱えて叫んだ。

 

「いやいやいやいや、俺これからどうすんだよ!織姫はこの状態の俺のこと見えねーんだぞ!?」

「織姫とは誰のことだ、黒崎」

「俺の彼女!あーーまさか俺がぬいぐるみに入らなきゃならねーのか!?嘘だろおい!」 

 

 俺は「はぁ」と肩を落として今後の事を考えながら両手で顔を覆った。

 石田やチャドと会う時は包帯男みたいに布でぐるぐる巻きになるとして、織姫はどうしようか。

 再来月の冬休みを使って一緒に北九州へ行く予定なのに……。

 

 三輪が「いや、それより殺されるかどうかの瀬戸際ですよね!?」ともっともなツッコミを入れる。

 

 一緒に来ていたらしい加茂が一歩前へ進み出て、俺の死神姿をまっすぐに見た。

 

「その状態で肉体だけが殺されたらどうなる?」

「別にどうもならねーよ。ずっとこのままってだけだ。戻る体がなくなるんだから、不便は不便だけどな」

「っ!それは、肉体の死亡と同時に術式が解除されるわけじゃなく、呪力体のまま独立して存在し続けるということか!」

 

 加茂がなぜか驚いて取り乱した。

 ざわり、とその場にいる補助監督を含め慄くように視線を交わしている。

 

 夜蛾校長が鋭い視線をこちらに向けた。

 俺は場の空気に萎縮して若干肩を寄せておずおずと答えた。

 

「おう。そもそも俺の本体はこっちだし。まぁ、死んだら死んだで仕方ねぇよ」

「呪霊化に等しいな。……少々厄介なことになった。もしこれで黒崎の肉体が殺されることがあれば、少し呪術規定を見直す必要が出てくる」

「え」

 

 なんとなく不穏な空気に、俺は口をつぐむことになった。

 

 と、その時夜蛾校長の持っていたスマホが派手な着信音を鳴らした。

 帳が開けたので電波が復旧したのだろう。

 

 電話に出た夜蛾校長はしばらく眉を顰めて何事か話した後、こちらに向き直った。

 

「……一護、お前宛だ。五条が話したいことがあるらしい」

「お、おう。もうカタがついたのか。早ぇなやっぱ───五条か?どうした?」

『やっほー。取り逃しちった』

「は?」

 

 明るい声で前置きもせず情報を突き出してくるので、一瞬フリーズしてしまう。

 取り逃した?あの場にいた夏油もどきを?

 

「いや、あんだけキレてたのにお前、そんなことあるか?」

『いやぁ、あの場にいるクソ野郎は確かに殺したよ。けど、どうやら特殊な呪具で存在を二つに分けてたみたいでね。あの交流会の時に盗まれた呪具だ』

「分身ってことか。厄介だな。つかやっぱ殺したのかよ。殺さず捕えるって話だったじゃねーか」

『うっかり手が滑って』

 

 と、言いながらその声色に油断はない。

 これはどちらかといえば殺さず捕えるのが困難だったことを示している。

 それを認めようとしないのはプライドが故か。全く面倒な男である。

 

 はぁ、と俺は我知らずため息をついた。

 

 肉体には霊圧がないため、霊圧探査では追うことはできない。

 真人もかなり遠くに行っているのか、それとも小さ過ぎるのか霊圧が掴めない状況だ。

 

 これ即ち、完全敗北。

 

 苦い空気が漂う中、俺は今後の展望に頭を抱えて唸っていた。

 

 

 

 

 

 羂索はただ一人、安全圏にて手の中で宿儺の指を弄ぶ。

 

 呪力を消耗した真人を呆気なく取り込み、呪霊操術にて術式を抽出したのは先ほどのことだ。

 もういつでも死滅回遊は開催できる。

 

「ふむ」

 

 少しばかり今後のことを思案しながら、一つずつ、黒崎一護の肉体に宿儺の指を呑ませていく。

 

 一つ。二つ。三つ。

 

 すう、と宿儺の紋様が浮かぶものの、それは一瞬で消えて無言の肉体だけが取り残される。

 その後一分ほどの間を挟み、口だけが頬に浮かんだ。

 

 口は口角を硬く下げ、重々しく言葉を発する。

 

「羂索か。指は後どれだけある」

「7つはあるね。体を動かさないのはなぜだい?」

「この身体、異様に『重い』。何か特別な機能を所持しているのだろう。楔……か?」

「ますます興味深いな。ふむ。ひとまず指は全部入れるとして。話はそれからか」

 

 四つ、五つ。

 指を入れていく。

 それを受け入れてなおゆとりある空の肉体は、即ちそれ霊王の御身体そのものだ。

 

 十の指を入れ終わり、ようやく宿儺は眠たげに目を開けた。

 

「まだだ。小僧から中の指を取り出し、俺に統合する」

「そうかい。こっちはこっちで独自の計画を進めたいんだが、構わないかな?」

「勝手にしろ」

 

 にや、と悪辣に醜悪に宿儺が嗤う。

 眼下の東京を見下ろし、両手を広げてその受肉を寿ぐのだ。

 

「鏖殺はまだ先の楽しみとしてとっておこう。俺も、少し自分磨きに精を出したい」

「!……へぇ、それほど強いのかい、黒崎一護は」

「ではな。用があれば呼べ。気が向けば聞いてやらんでもない」

 

 返事もせずにそれだけ言って、すたすたと。

 宿儺は暗く深い夜闇の中へ消えていった。

 

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