黒崎一護なオリ主と五条悟   作:ラムセス_

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死滅回遊開始

 

 今月頭。

 全国十ヶ所に、突如結界が展開された。

 

 死滅回游とかいうらしいそれに、一般人が何万人も囚われているようだ。

 呪術界はこれを重く見て、政府と会合を開き今後の対応を協議。

 

 該当地域を避難指定区域として一般人のこれ以上の流入を防ぎ、早期解決を図ることとした。

 

 

 空高く、空を蹴って東京第一結界上空で俺は五条と共に結界の破壊を試みていた。

 

 先ほど撃った王虚の閃光の余韻で雲に穴が開く中、俺は「はぁ」とため息をついて構えを解いた。

 五条が隣で虚閃の去っていった方角を呑気に眺めている。

 

「で、どんな感じ?」

「だめだ。多分俺対策をしてるんだと思う。空に向かって王虚の閃光を放っても、空間の歪みをいなして結界が元に戻るみてーだ」

「へぇ。なかなかの難物だね。僕の茈も素通りみたいだし。やっぱり術者を探した方が早いかも」

「でも、呪力も偽装されてるみたいで無色透明の変な感じだ。術者本人の呪力とは違うと思うぜ」

 

 「うーん、八方塞がり」と五条は肩をすくめた。

 

 この結界の外殻は実にしなやかだ。

 ゴムみたいなもので、緩やかに伸び縮みすることで空間を裂く攻撃にも耐える。

 

 術師は未だ姿を見せず。

 巧妙に計画されたこの呪術テロは、解決策の見えぬ泥沼に入りかけていた。

 

「僕のカンだとあの傑の皮をかぶったクソ野郎の仕業だと思うんだけどな」

「そいつなら霊圧を覚えてるから追えるけど……正直、異常に霊圧が小さいからな。よほど近くに来てでもない限り感じ取るのは至難の業だぜ」

「獄門疆といい、僕ら対策はバッチリってことか。有名税もここまでくるとやんなっちゃう」

 

 顔を見合わせて俺たちは頷き合った。

 午後は天元様のところへ行って、今回の大事件の下手人について何か情報がないか聞き取り調査を行う予定だ。

 

 地上に降りれば、虎杖が「すっげービーム!!」と言ってはしゃいでいた。

 釘崎がドン引きの表情で俺をみている。

 

「何アレ。まんまゴジラの熱線攻撃じゃない。内閣総辞職させる気かよ」

「いや五条だっておんなじような威力の茈を放ってただろうが!俺だけ弄られるのは道理にあわねーだろ!」

「五条のは見えないからよくわかんないのよね。その点アンタのはわかりやすくゴジラだから」

「理不尽!!!」

 

 俺は叫んだ。

 隣で五条が「やーい実質アニゴジ男!」と囃し立てている。ぶっ飛ばされてーのか。

 

 伏黒が「じゃあ、予定通り天元様のところに行くんですか」と冷静に聞いてくる。

 彼のクールなところには助けられてばかりだ。

 

「そだね。このまま行っちゃうか。君らも後学のため連れてくつもりだけどいいよね?」

「はい。虎杖の中の宿儺が少々気掛かりですが」

「ま、そのために僕ら二人がいるからね。問題ないでしょ」

 

 そう言って五条が俺にチラリと視線を向ける。

 信頼されたようで何よりだ。

 毎晩の手合わせで距離が近くなったからか、ダル絡みが増えたのは難点だが。

 

 

 そのまま向かったのは異界につながる扉だ。

 

 毎日変わるランダムな扉と鬱蒼と茂った森の中に立つ忌庫を超えて。

 薨星宮はその先の空間を超えた先にある。

 

 薨星宮入り口に残る血痕を、五条が苦々しい顔をして見つめている。

 過去に何があったのか、聞ける空気ではなかった。

 

 それを通り過ぎれば、真白い空間に出た。

 何とも不思議な空間だ。通常の世界とは違うように感じられる。

 

 「おーい、居る?」と友人にでも声をかけるように気軽に五条が声を張り上げる。

 

 すると、ぬるりと気配が背後数メートルほど先に現れた。

 

「お初にお目にかかります。………輪廻転生の理を支える神よ」

 

 そう言って、不可思議な人外は恭しく頭を下げた。

 顔見知りらしい五条がぱちくりと瞬いて俺を見る。

 

「ナニソレ。一護ってば神だったの?」

「神といえば神……?いやでもそんな格の高いやつじゃねーぞ」

「やっぱ神なんだ」

 

 虎杖が「四角顔!目四つある!」などと小さく叫んで隣の伏黒に殴られている。

 元気なことだ。

 

 五条はそんな一年ズを無視して本題を切り出した。

 

「いま死滅回游とかふざけた催しを開いてる黒幕。そいつの目的とか知ってたりする?」

「知ってるよ。あの子とは知り合いだからね。人類に希望を持ちながら、人の心を持ち得ぬ恐ろしい子だ」

 

 そう言って何もない空間から椅子を取り出して天元様は座った。

 その後人数分の椅子がするりと滲み出てくる。

 釘崎がそれに恐る恐る座った。

 

「あの子の目的は人類を私と同化させることだ。もしかしたら、今は別の目的もあるかもしれないが」

「同化?何のために」

「あの子は人類を信じている。もっと進化できる、もっと先に行けると思っている。だから、私との同化で人間を進化させたいのだろう」

 

 それを聞いてしばし呆然とした後、五条が「なにそれ。厄介迷惑な修造?」と口を引き結んだ。

 進化、と言われても正直ピンとこない。同化して何が進化なのか、どうなるのか。

 するとその疑問を天元様は感じ取ったのか、俺に視線を向けてくる。

 

「その理想系があなたなのです。輪廻転生の神」

「……俺?」

 

 すなわち呪霊に近しい呪力体で、かつ上位の魂を持つ姿。

 人の心を拡散させずに持ちうる、独立完全存在。

 そういうものに、人類を至らせようとしているらしい。

 

 俺を観察しているのか、天元様は無言のまままじまじと俺を見ている。

 五条が横から俺を肘でつついた。

 

「大人気じゃん一護」

「うっせ。アンタだって引く手数多だったろうが」

「このままコンビ組めば国立競技場も夢じゃないね。デビューしちゃう?」

「断る!!!」

 

 空気がどうにも締まらない。俺は五条を押しやって咳払いをした。

 天元様は「仲が良いね。良いことだ」と微笑ましそうにしている。恥ずかしい。

 

「まぁ、つまり、まず私を同化から守るための護衛が欲しいんだ。あの子、羂索は呪霊操術持ちだ。今の私では術式対象になりかねない」

「!……わかった。呪術高専のほうで人員を選定するよ」

 

 五条が頷いて視線を落とす。

 羂索とやらは呪霊操術持ちらしい。となると、本当にあの夏油もどきが今回の真犯人なのか。

 

 それから少しばかり今後の相談をして、その場は一時解散となった。

 天元様は相変わらず恭しく頭を下げて、俺へと敬意を示している。

 

「あの世とこの世を分ける神。輪廻転生の神よ。貴方が人の助けになってくれたことに感謝を」

 

 五条がこそこそと俺に話しかけた。

 

「一護ってばほんとに何者?」

「いや知らん知らん、俺何もやってねーから!」

 

 黒崎一護は霊王の卵だが、俺はマジで何もやっていない。

 なんとなく過分な評価をされているような気がして、俺は身を縮こまらせたのだった。

 




・宿儺(一護の方)
ご近所トラブルに悩まされている。
「かーえーれ!」という白い男の昼夜問わずのシュプレヒコール。
黒い長髪髭男の郵便受け漁りに早朝のピンポンダッシュ。
家賃は高いし。良いことは何もない。
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