黒崎一護なオリ主と五条悟   作:ラムセス_

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特級昇格

 

 現在、俺は虎杖達とは別行動で特級への昇格試験を受けていた。

 

 その間、どうも虎杖達は3人で西東京都の英集少年院で任務が別にあるらしい。

 呪胎とやらが出現したそうで、特級相当の危険度なのだとか。

 少々心配ではあるものの、彼らも呪術師として共に戦う仲間だ。

 

 信頼して場を預けるのが礼儀というものだろう。

 

 後日、釘崎と虎杖とは霊絡+共鳴りでの検証を行う予定だ。

 霊絡で芻霊呪法がどこまでの威力を発揮できるかや、虎杖の中の両面宿儺に対して直接攻撃できるかなども検証していく手筈となっている。

 特に両面宿儺の件に関しては、成功すれば虎杖の死刑を回避できる可能性もある。

 

 上手くいって欲しいと願うばかりである。

 

 さて。

 俺は五条と一緒に特級案件ということで山梨に来ている。

 

 なお、時間の節約のため五条は術式によるワープで特に何の説明もなく「先行ってるね!」とか言って現地に行ってしまった。

 俺も慌てて卍解瞬歩で追ったものの、やはり1分ほどはかかってしまった。

 

 五条の霊圧は比較的大きいためギリギリ見失わなかったが、俺は飄々と右手を上げた五条に怒鳴りかかった。

 

「お疲れー、早かったね」

「早かったねじゃねぇよ!?先に行くのは良いがなんか一言言えよ!場所わかんなくなるだろうが!」

「あはは、ごめんね!」

 

 これは何もごめんと思っていない顔だ。

 むすっとしながらも、真面目な顔で任務の説明をする五条に姿勢を正す。

 

「今回の呪霊は特定疾病呪霊といってね、疫病を発生源とする少し特殊な呪霊なんだ」

「ってーと、もとになった病気の特徴がある程度能力に表れてる可能性があるってことか」

「だね。暫定的な名称は「イヌガミ」。本当なら僕が処分するはずだった呪霊だけど、ちょうどよく君が現れたからね」

「俺にお鉢が回ってきた、と。いいぜ。やってやろうじゃねーの」

 

 とはいったものの。

 名称がイヌガミで、病気が元になってる呪霊となると考えるだけで非常に厄介そうだ。

 

 うげ、と俺は内心辟易とした。

 間違いなく元となった病は狂犬病だ。未だ根絶も治療もできぬ最悪の病の一つ。

 致死率はほぼ100%であり、死を防ぐには発症前にワクチンを打つしかない、現代において未だ猛威を振るう厄災。

 

 今現在いる場所は山間部だ。

 この見渡す限りの山奥のどこかに呪霊がいるということか。

 

「広いな。窓もこれでよくここに呪霊が出るってわかったな」

「この近くに三つほど集落があってね。そこが順に襲われた。派遣した呪術師も死体になって発見。その術師の死に際の報告で特級認定って流れさ」

「なるほどな。そりゃ俺も気合が入るってもんだ」

 

 感覚を研ぎ澄ませれば、三つ先の山の中腹に禍々しい霊圧を感じ取ることができた。

 そこそこにでかい霊圧だ。

 

 五条が軽く帳を下ろした。

 黒々とした闇が空を侵食していく。

 「君も早くできるようになりなよ」と言うものだから「わぁーったよ!」と破れかぶれに答えた。

 結界系鬼道なんて黒崎一護に習得できるわけねぇだろ!

 

「霊圧的に呪霊は向こうか。じゃ、行ってくる」

「行ってらっしゃい。やっぱ六眼並みに便利だね、その探査能力」

 

 しみじみと言う五条を置いて、一足飛びで呪霊の元へと接近する。

 そのまま瞬歩で山を彷徨く大山犬姿の呪霊の背後へと回り込み。

 

 勢いよく首を断つ。

 

 霊圧によって首を断たれたイヌガミは上半身を消し飛ばされて目を見開いた後、生首だけで高らかに遠吠えした。

 

 声と共に山が暗くなり、ドロドロとした血の河が辺りに垂れ込め始める。

 すごい鉄臭さだ。

 閉塞感に息が詰まりそうな感覚。どうやらこれが領域展開という奴のようだ。

 

 イヌガミは垂れ流した血を己の身体に変え、狼男のような歪な人形をとってこちらを見ている。

 どうも俺をせせら笑っているようだ。ギシギシと不快な鳴き声を漏らしている。

 

 しかし、こちらもだからと言って座してやられるような雑魚ではない。

 

 向こうの必中効果が発動する前。

 領域が閉じるのと同時に俺の方も滅却師としての技術の粋を発動させる。

 

「───滅却師完聖体(クインシー・フォルシュテンディッヒ)」

「!」

 

 輝く光輪(ハイリゲンシャイン)が卍型をとって出現し、その奇跡を具現化する。

 光が満ち、陰鬱な暗闇に覆われていた領域内が明るくなる。

 

 一呼吸置いたのち、狼男はギシギシと歯軋りをしたようだった。

 

 それもそのはず。

 必中だったはずの領域展開が俺に対して何の効果も発揮していないのを悟ったからだろう。

 俺は光輪の威光を強く激しくしていく。

 ざらざらと周囲の呪力が剥ぎ取られ、結界が内側から削り取られていく。

 

 俺が領域展開の効果を受けない理由は、この聖隷(スクラヴェライ)にある。

 

 領域展開とてその根本は呪術。そしてその呪術の根本は呪力に違いない。

 ならばこちらに相手の呪力が到達する前に聖隷(スクラヴェライ)で主導権を奪い取ってしまえば、領域展開とて効果は出まい。

 

 まぁ、今までは俺が唯一使える結界術、聖域礼賛(ザンクト・ツヴィンガー)の方で領域展開から身を守っていたのだが……あれ、使い慣れてなくて疲れるんだよな。

 鬼道はまともな形にならないし。

 

 俺は空中で佇んだままニヤリとして右手を上げた。

 上空には大聖弓(ザンクトボーゲン)が出現し、奪い取った呪力を弓につがえていく。

 

 ぎ、と狼男が鋭く唸り、こちらへと爆発的な速力で異形の爪を振り下ろしてきた。

 

 だが残念。

 俺の速力を前にして、その程度の攻撃など止まっているのと大差ない。

 軽く受け流して右腕を斬月で切断してやれば、霊圧によって……じゃなく、正の呪力によって肩ごとまるまる消し飛んだ。

 イヌガミが憎しみの籠った瞳でこちらを睨め付けてくる。

  

「小僧……」

「!?いやお前、喋れるのかよ!」

「獣に言葉など必要ない。去ね、去ね、去ね、忌々しい呪術師め」

 

 狼男はギシギシと歯軋りをして唸った。もう喋るつもりはなさそうだ。

 聖隷(スクラヴェライ)で削り取られた領域が限界に達したのか、するりと解けて消えていく。

 

 大聖弓のチャージも終わり、その発光は一つの太陽の如く山を照らす。

 コレで終わりだ。

 最後の足掻きに呪力を爆発させるイヌガミの、さらに数倍の呪力が弓から射出される。

 

「じゃあな。光の雨(リヒト・レーゲン)」

 

 降り注ぐ光の雨は一つ一つが月牙天衝の如き威力を誇り、逃れようともがくイヌガミの全身を消し飛ばしていく。

 ついでに山肌を消し飛ばし、地面を抉り大穴を開け、地形を変えてまだ降り止まず。

 ……うーん、環境破壊。

 

「おーい、やりすぎやりすぎ」

 

 いつの間にか隣に来ていた五条が気の抜けた声で俺に注意してきた。

 

「いや、もう撃っちまった後なんだよコレ!止まらねえよ!」

「えぇ………じゃあ仕方ないか。上のおじいちゃん達には手加減できなかったんですって言っとくから」

「悪ぃ」

 

 と、会話しているうちにやっと降り終えた光の雨がフッと消える。

 どうやらイヌガミは跡形もなく消えたらしい。呪力の痕跡すら残らず消し飛んでいる。

 

 ふぅ、と俺が息をつくと五条が労うように俺の肩を叩いた。

 

「派手にやったね。やっぱあの天使形態、領域展開対策になるんだ。ほんと難解だよね、一護の術式」

「さっきのは高専の教科書見て思いついた奴だから、コレまでは別の方法使ってたけどな」

「へー、今まではどんな方法で対処してたの?」

「それは追々な。もう疲れたから帰ろうぜ。都内の名店でラーメン食いたい」

「いや君ほとんど戦闘らしい戦闘してないじゃん」

「気疲れだよ気疲れ。ほら、あんたの財布ならラーメンぐらい余裕だろ」

 

 ぐだぐだ会話しながら適当に死覇装の汚れを払い、帰りの準備に斬月を背負い直す。

 振り返る五条が、俺に向かっておもむろに手を差し伸べてきた

 

「ん?」

「領域展開すら行う特定疾病呪霊の討伐。うん。合格だね。おめでとう、一護。世界でたった4人だけだった特級の世界へようこそ」

「……あー」

 

 頭をかき、俺はしげしげとその手を取る。

 護廷十三隊の隊長就任みたいなものだ。その責任の重さに自然と身が引き締まる。

 

「ま、楽に構えればいいよ。やることは今までと何も変わらない。呪霊を狩って、人を助ける。それだけさ」

「そうだな。それなら、俺の得意分野だ」

 

 差し出された手を強く握り返し、俺は不敵に笑みを象った。

 

 五条が子供のように無邪気に笑う。

 月明かりに彼の姿が照らし出され、その心底嬉しそうな様子を夜闇に露わにするのだった。

 




五条「ふん〜ふんふふふ〜♪」
伊地知(すごく…上機嫌だ……)
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