界放市ジークフリード区の裏路地にある、もう使われていない、廃れた工場。
そこで行われているのは、春神ライとクロユキによるバトルスピリッツ。
その最中、ライが己の相棒、モビルスピリットのエアリアルを召喚。自分こそが本物の魔女であると主張するのであった。
******
ツバサとクロユキの取り巻きである2人組の男達が見守る中、ライとクロユキのバトルスピリッツが続く。
現在はライのターン。クロユキのフィールドには黒い装甲に1つ目のモビルスピリット、ディランザ・ソル。
そしてライのフィールドには、たった今、白い装甲を持ち、さらにはガンダムの名を持つ契約モビルスピリット、エアリアルが召喚された。
「オマエみたいな小娘が、魔女だと?」
「そ。まぁ魔女って言うのは通り名で、私が付けたわけじゃないんだけどさ」
未だに半信半疑のクロユキ。しかし、彼女が疑うのも無理はない。ジークフリード区で話題になっていた魔女は、バトルが強く、弱きを助けて、悪しきを挫く。その程度の情報しか出回っていなかったからだ。
それがまさか、こんな華奢で天真爛漫な少女が正体だとは、到底結びつかないだろう。
「ライさんが、魔女!?……なら何で最初に教えてくれなかったんですか!?…私は、ずっと貴女を探していたのに」
ツバサがライにそう訊いた。
彼女は魔女に弟子入りするためにジークフリード区に赴き、春神探偵事務所でライに依頼したのだ。何故最初から魔女を名乗らなかったのか疑問に思うのは至極当然である。
「あ、あぁ、それね。せっかくだから、親睦を深めるために、先ずは一緒に魔女を探すフリをして、後で『実は私が魔女でした〜!』って言う感じのサプライズをしようかなぁと」
「……」
「よ、喜んでくれるかなぁと」
「……」
「ごめんなさい」
ツバサからジト目で無言の圧を掛けられるライ。耐えられなくなり、しょんぼりとしながら謝罪の言葉を告げる。
因みにコレばかりはライが悪いとしか言いようがない。
「あああぁッ!!……思い出した、あのガキ。クロユキ様、アイツですよ、この間オレをボコったの!!」
「なに」
「夜で顔がわかりづらかったが、間違いねぇです」
「なるほど、どうやら間違いはないようだねぇ。にわかには信じ難いが」
クロユキの取り巻きである2人組の男性。その内の鼻が長い方が、ライの顔とエアリアルの事を思い出す。
「テメェ、この間はよくもやってくれたな!!」
「……誰?」
「覚えろよ!!」
「いや、ちびっ子からカード巻き上げる奴、別に覚えたくないかな」
「覚えてるよね?…え、絶対覚えてるよね!?」
夜道に急に現れてボコボコにされた挙句、奪ったカードを奪い返された事に対して憤慨する男性。
コレに関しては彼の自業自得である。
「小娘、いや魔女よ。どうやら私の子分が、オマエの世話になっていたようだねぇ」
「そうみたいだね」
「なら、その借りを返させてもらうついでに、魔女の称号をいただくよ」
クロユキが、魔女の異名を持つライにそう宣言する。対してライはその発言に全く興味がなさそうで。
「魔女なんて、名乗りたきゃ勝手に名乗れよ。ただし、アンタ達が人の大事なモノを理不尽に奪って行くって言うなら、私は容赦しない」
「フ……小娘が、粋がりよる」
ライとクロユキの衝突を歯切れに、バトルは再開。
ライは、手札にある1枚のカードを、己のBパッド、引いてはエアリアルのカードの上に重ね合わせる。
「さぁ続きだ。手札からパイロットブレイヴ、スレッタ・マーキュリーを召喚し、エアリアルに合体」
ー【ガンダム・エアリアル+スレッタ・マーキュリー】LV1(1)BP6000
ライが召喚したのは、合体する事で、スピリットを強化するブレイヴ。その内のモビルスピリットと相性の良いパイロットブレイヴ。
エアリアルの見た目に変化はないが、その力は数段パワーアップを果たした。
「アタックステップ。その開始時に、ネクサス、ミオリネ・レンブランの効果を発揮」
「なに、このタイミングでネクサス効果?」
「ステップ開始時、私のフィールドにスレッタがいれば、相手スピリット1体を指定する。私はディランザ・ソルを指定」
ライはクロユキのフィールドにいるディランザ・ソルを指差すと、ディランザ・ソルは、眩い黄色い光に包まれる。
「指定されたスピリットは、このターン、アタック時、ブロック時効果1つを発揮できず、可能なら最初にバトルを行わなければならない」
「なんだと!?」
「エアリアルでアタック、そのアタック時効果で私のカウントを+1し、デッキ下から1枚ドロー。そしてOCを達成し、BPは4000上昇する」
契約スピリットにして、相棒、エアリアルでアタックを仕掛けるライ。エアリアルのアタック時効果を解決した後、クロユキはミオリネの効果で指定されたディランザ・ソルで必ずブロックの宣言をしなければならなくて………
「くっ……ディランザ・ソルでブロック」
「叩き潰せ、エアリアル」
黄色い光に包み込まれ、身動きができなくなってしまったディランザ・ソル。それをエアリアルは、ビームライフルで容赦なく射抜く。
貫かれたディランザ・ソルは、たちまち爆発し、散って行った。
「やるねぇ。だがディランザ・ソルはただでは転ばないよ。相手によってフィールドを離れた時、トラッシュにあるグエルを手札に戻す。私はこの効果でトラッシュにある『グエルCEO』を手札へ」
ここもツバサのバトルの時と同様だ。クロユキはトラッシュからパイロットブレイヴの1枚『グエル・ジェターク[CEO]』のカードを手札へと回収した。
しかし……
「へぇ。ならその後に、スレッタの【合体中】効果と、ミオリネのLV2効果を解決しようかな」
「!」
「スレッタの【合体中】効果、系統に学園を持つ自分のスピリットが、相手スピリットをフィールドから離した時、デッキ下から1枚ドロー。ミオリネのLV2効果、自分のターン中、スレッタと同じ条件で、私のライフ1つを回復する」
「なに、ドローとライフ回復を同時に!?」
〈ライフ5➡︎6〉春神ライ
ただ、相手のスピリットを倒す。
たったそれだけの条件で、ライはドローとライフの回復を行う。コレこそが、彼女のエアリアルデッキの特徴。進めば2つ、もしくはそれ以上手に入るのだ。
「私はこれで、ターンエンド。さぁ来いよニセモノ。格の違いってヤツを見せてやる」
手札:5
場:【ガンダム・エアリアル+スレッタ・マーキュリー】LV1
【ミオリネ・レンブラン】LV2
バースト:【無】
カウント:【1】
僅か一度のアタックで、多くのアドバンテージを獲得し、ライは余裕綽々でそのターンを終了する。
次はクロユキのターンだが………
確かに強い、これが魔女の実力。
フフ、だけどね、私には奥の手があるのよ。
内心でそう笑いながら、彼女は右手の人差し指に嵌められた指輪を、さり気なく横に捻る。
これは、マジックカードがBパッドに反応しなくなる、特殊な電波を放つ指輪。
どんなに強かろうとも、奴のデッキはマジックの扱いに長けた黄属性。必ずマジックカードに頼る時が来る。
その瞬間が、オマエの負けだよ。因みに、私のBパッドだけは、その電波を遮断するように造られているから、問題なく使用できる。
彼女が行っていたのは、まさかのチート。おそらく、ツバサがマジックカードを使えなかった原因もコレのせいだろう。
カードバトラーとしては、間違いなく恥ずべき行為だ。
「どうした、オマエのターンだぞニセモノ」
「フフ、わかっているとも、今に見てなさい」
ライのみ、マジックカードを使えない状態にし、あたかも、何事もなかったかのように、クロユキは巡って来た己のターンを開始して行く。
[ターン04]クロユキ
「メインステップ、デスルター3体を連続召喚」
ー【デスルター】LV1(1)BP1000
ー【デスルター】LV1(1)BP1000
ー【デスルター】LV1(1)BP1000
瞬間、クロユキのフィールドへ3体の小型で1つ目のモビルスピリットが投下される。
「さらにパイロットブレイヴ、グエルCEOを召喚するよ」
ー【グエル・ジェターク[CEO]】LV1(0)BP1000
「このパターンは、私の時と同じ……!!」
追加でパイロットブレイヴを召喚。その刹那、ツバサは、自分が敗北したパターンと全く同じである事を察する。
クロユキは、勝ちを確信したのか、嘲笑うような笑みを浮かべると、召喚したパイロットブレイヴの効果を発揮させて行く。
「グエルCEOの効果。手札にあるダリルバルデをノーコスト召喚し、このターン、グエルと合体している全てに黄シンボル1つを追加する」
「ふうん。オモロ」
「鼻で笑っていられるのも今のうちさ。LV1で現れなさい、我が眷族、ダリルバルデ。そして、グエルCEOと合体よ」
ー【ダリルバルデVSミカエリス+グエル・ジェターク[CEO]】LV1(1)BP13000
立て続けにクロユキのフィールドへ現れたのは、深紅の装甲を持つ、巨大な1つ目のモビルスピリット、ダリルバルデ。
クロユキのエースカードにして、ツバサを敗北に追いやったスピリットだ。
「クロユキ様のエースカード来たァァァ!!…クソ生意気な小娘なんかやっちゃってください!!」
「ホンマに!!」
ダリルバルデの登場に、取り巻き2人も騒ぎ始める。
「オマエ達に言われるまでもないねぇ。さぁアタックステップだ、ダリルバルデ、やあっておしまい!!…アタック時効果でエアリアルのBPをマイナスし破壊。その後2枚のカードをドローするよ」
「ッ……ライさん!!」
このターンのアタックステップに突入するクロユキ。早速ダリルバルデの強力なアタック時効果を発揮しようとする。
しかし……
このフィールドは、既に魔女に支配されていて。
「ちょいちょい、勝手に進めんな。アタックステップの開始時、アンタのアタックの前に、再びミオリネのLV2効果を発揮させる」
「!」
「ダリルバルデを指定。そのスピリットは可能なら必ず最初にアタックしなければならず、さっきベラベラ説明してたアタック時効果は使えなくなる」
「その効果、私のターンにも使えるのか!?」
ディランザ・ソルの時と同様、ダリルバルデは眩い光に包み込まれ、その力の大半を失ってしまう。
そんな状況の中でも、効果でアタックを強制させられているため、ビームジャベリンを手に、敵であるライのフィールドへと突撃する。
「だけど、そのモビルスピリットの首はいただいていくよ。グエルCEOの【合体中】効果。相手のスピリット1体を指定アタックできる」
「!」
「対象にエアリアルを指定。バトルで破壊だ!!」
ダリルバルデが突撃した先は、ライのライフバリアではなく、彼女にフィールドに居座るエアリアル。
そのBPは10000。ダリルバルデの方が3000も上である。
「効果で破壊できないと見て、BP比べによるバトルで破壊しに来た」
ツバサがそう呟くと、フィールドで両者が激突。ダリルバルデのビームジャベリンによる一撃を、エアリアルが素手で受け止める。
互角に競り合っているように見えたが、やはり力はダリルバルデの方に分があるか、エアリアルはジリジリと押され始めて………
「エアリアルのアタック時効果は、ブロック時にも発揮される。カウント+1し、デッキ下から1枚ドロー」
「だからどうした。そいつさえ倒せば、バトルのペースはこっちのモノ。ダリルバルデ、一気に畳み掛けるんだよ」
「ライさん!!」
ライとエアリアルのピンチに、ツバサが声を荒げる。
だが、ライはこんな状況でさえも鼻で笑い………
「ふ……まさか、そんだけで勝ったつもりか?」
「なに」
「見せてやんよ。エアリアルの真の力、フラッシュ、バトル中のエアリアルを対象に【契約煌臨】を発揮!!」
「ッ……マジックではなく、煌臨だと!?」
ライが発揮させたのは、クロユキの予測していたマジックカードではなく、スピリットカードによる煌臨。
コストとして、赤く、一際大きいコア、ソウルコアがトラッシュに送られると、フィールドでは、エアリアルが突如強い光と覇気を放ち、ダリルバルデを吹き飛ばす。
「遥か未来を駆け抜ける、私の相棒!!……ガンダム・エアリアル・ガンビット、LV1で契約煌臨!!」
ー【ガンダム・エアリアル[ガンビット]+スレッタ・マーキュリー】LV1(1)BP16000
エアリアルのシールドが複数のビット、ユニットとして展開。それらは踊るように宙を舞い、エアリアルの周囲で美麗な球体を描く。
そのユニット、ガンビットを操るエアリアル、エアリアル・ガンビットこそ、エアリアルの真の姿にして、春神ライのエースカードだ。
「見た目は大して変わっていない……だが、BPが跳ね上がった……!?」
「跳ね上がったのはBPだけじゃない。煌臨アタック時効果を発揮、LV1と2のスピリット1体ずつをデッキ下に送る」
「!!」
「LV1のデスルター1体をデッキ下へ」
エアリアル・ガンビットは、登場するなりビームライフルの銃口を、3体いるデスルターの内の1体に向けて照射。
貫かれたデスルターは呆気なく粒子化、クロユキのデッキ下へと送られた。
「相手スピリットを倒した事で、スレッタの効果。デッキ下から1枚ドロー、さらに同名1でトラッシュのソウルコアをリザーブに戻す」
「くっ……」
「そして、エアリアル・ガンビットとダリルバルデのバトルが続行。私のエアリアル・ガンビットが勝利する……!!」
エアリアル・ガンビットの周囲を飛び回っていたガンビット達が、ダリルバルデを襲う。
それぞれから放たれたビーム攻撃が、ダリルバルデの深紅の装甲を次々と焼き切り、切断。最後にはバラバラにし、それを爆散させた。
「馬鹿な。私のダリルバルデが、負けるだと!?」
「どうする、残った2体で殴るか?」
「……アタック、アタックだデスルター!!」
少しでも多くのライフを削ってやろうと躍起になるクロユキ。残った2体のデスルターが、ライにビームライフルの銃口を向ける。
「全部ライフだ、来いよ」
〈ライフ6➡︎5➡︎4〉春神ライ
照射されたビームにより、2つのライフバリアを貫かれるライだが、元から1つ回復し、6になっていた分、大した痛手にはならなかった。
「あのクロユキ様の攻撃を受け切っただと」
「ほ、ホンマに……」
「これ、まさかクロユキ様負けるんじゃ」
「お黙り!!……私がこんな小娘相手に負けるわけないだろ。ターンエンドだよ」
手札:2
場:【デスルター】LV1
【デスルター】LV1
【グエル・ジェターク[CEO]】LV1
バースト:【無】
エアリアル召喚以降、ライの手のひらの上で転がされ続けるクロユキ。
なす術がないまま、ターンはエアリアル・ガンビットを従えたライのターンへ移る。
[ターン05]春神ライ
「メインステップ。既に勝利のピースは揃った」
さぁ、ラストターンの時間です……!!
ライは指を鳴らし、このバトルのラストターンを宣言。
彼女を知る者にしかわからない事だが、彼女のラストターン宣言は、絶対である。
「エアリアル・ガンビットと、ミオリネのLVを2にアップし、アタックステップ。エアリアル・ガンビット、行け」
ラストターン宣言後のアタックステップ。ライはフィールドにいる唯一のスピリット、エアリアル・ガンビットでアタックを仕掛ける。
「契約煌臨元のエアリアルの効果、カウント+1し、デッキ下から1枚ドロー。さらにエアリアル・ガンビットの煌臨アタック時効果、デスルター1体をデッキ下に戻し、その後スレッタがあれば、バトル中、黄シンボル1つを追加する」
「自らダブルシンボルになった!」
その瞬間、2つのアタック時効果が発揮される。フィールドではエアリアル・ガンビットがガンビットを操り、デスルターをビーム攻撃で粒子化させ、デッキ下へと叩き落とす。
結果的に、ライはカウントと手札を増やし、クロユキのスピリットをデッキ下に消しつつ、エアリアル・ガンビットのシンボルを増やした。
「まだある。スレッタの効果でデッキ下から1枚ドロー。ミオリネの効果で、私のライフ1つを回復」
〈ライフ4➡︎5〉春神ライ
「くっ……どれだけ効果を重ねれば気が済むんだい」
さらにドローとライフ回復の効果を発揮させるライに、クロユキの怒りが募る。
だが、ラストターンを宣言した手前、彼女がそれ如きで終わるわけがなくて。
「気が済むまでやるさ。フラッシュマジック」
「ッ……来た、マジックカード」
ライが次に行おうとしたのは、フラッシュタイミングでのマジックカードの使用。この局面で使用するのだから、それはかなり強い効果を持つモノなのだと、誰もが推察する。
しかし、残念ながらそれは使えない。クロユキの指輪からマジックカードがBパッドに反応しなくなる電波が放出されているからだ。
クロユキにとっては待ちに待った、彼女のマジックカードの使用。これで自分がこのバトルを支配できる。
そう、思っていた。
「効果により、エアリアル・ガンビットは回復する」
「フフ……ん?」
瞬間、エアリアル・ガンビットは眩い光に包まれ、それを糧とする。
その行為は、Bパッドを使ったバトルにおいて、スピリットが回復した証拠。つまり、ライが使用したマジックカードは、しっかりと発揮されたと言う事である。
もっと言えば、マジックカードが使えない状況で、マジックカードを使ったと言う事だ。その矛盾に、クロユキは瞬時に気づいて……
「ま、待て。オマエ、何故マジックカードが使える!?」
「んん?……どうしたどうした、バトルスピリッツなんだから、マジックカードを使うのは当たり前だろ?」
「……」
「それにしても、なんか、まるで私がマジックカードを使えないのが、当たり前みたいな反応だな」
「……!!」
ライがそう告げると、クロユキは、図星であると言わんばかりの表情を見せる。自らイカサマをバラし、慌てふためくその様は、余りにも愚かが過ぎる。
「最近、オマエらみたいな悪党の間で流行ってんらしいじゃん。マジックカードが使えなくなる、指輪」
「なッ……!?」
「ふふん。私が知らないと思ったか?…バトルが始まった瞬間から、ずっと気づいてたっての」
クロユキのイカサマをズバリ言い当てるライ。それを聞くなり「私はアレにやられたのか」と、ツバサは納得する。
「残念だけど。この状況だとそれは無意味。私が使ったのはマジックカードとしても扱っているだけの、スピリットカードだからね」
「……は?」
「エアリアル・ガンビットのもう1つの効果。手札にある系統、学園を持つカード全てを『エアリアル1体を回復する』効果を持ったマジックカードとしても扱う事ができる。つまり、マジックカードが反応しなくなる、その指輪を使われても、元がマジックカード以外なら、問題なくその効果を発揮できるって事さ」
クロユキが使った指輪は、マジックカードその物が、Bパッドに反応しなくなる。しかし、ライが使ったのは、ゲームのルールとして、マジックカードとして発揮されているだけの、あくまでただのスピリットカード。
その効果の発揮には、なんの障害もない。
「もういいだろ、ダブルシンボルになった、エアリアル・ガンビットのアタックを受けてみんしゃい」
「!!」
〈ライフ5➡︎3〉クロユキ
エアリアル・ガンビットのガンビットによるビーム攻撃。それが今度はクロユキのライフバリアを襲う。
その行為は、それら全てなくなるまで続く。
「回復したエアリアル・ガンビットで再度アタック。カウント+1&ドロー。デスルター1体をデッキ下に置き、バトル中、黄シンボル1つを追加」
「あぁ……」
最後のデスルターが、エアリアル・ガンビットのビームライフルの銃口から照射されるビーム攻撃によって粒子化。
これでクロユキのフィールドに残されたのは、フィールドには見えないパイロットブレイヴのみ。
「スレッタの効果でまたドロー。さらにフラッシュマジック、今度は学園を持つネクサスカードを使い、エアリアル・ガンビットを再々回復」
「ライフだ!!」
〈ライフ3➡︎1〉クロユキ
「あぁ!?」
ガンビットは、ビーム攻撃で再びクロユキのライフバリア2つを貫く。その数は遂に風前の灯、1となる。
「トドメだ。エアリアル・ガンビットで、ラストアタック……!!」
容赦のない、ラストアタックの宣言。
その直後にもエアリアル・ガンビットの効果は発揮され、クロユキのBパッド上に唯一残されたパイロットブレイヴのカードも、カウント+、ドローの効果と同時に、彼女のデッキ下へと誘われた。
「ひぃィィィ……ら、ライフで受ける」
〈ライフ1➡︎0〉クロユキ
「あ、ぁぁぁあ!!!」
結局、ガンビットの猛攻を止める事はできず、その攻撃を全て諸に被弾してしまうクロユキ。そのライフバリアは、1つ残らず塵芥と化す。
「私達の勝ちィィィ!!」
これにより、勝者は春神ライだ。有言実行、クロユキを圧倒的な実力で、そのイカサマごと容赦なく叩き潰して見せた。
「す、凄い。これが魔女……春神ライ」
魔女と呼ばれるライを見て、ツバサは『この人と一緒にいれば、必ず自分も強くなれる』………
そう確信した。
「さぁさぁさぁ、私が勝ったわけだけども、どうしてくれようか」
「ひぃィィィ、お助けを。慈悲を〜〜……罰を受けるのは、そこの鼻とデブだけにしておくれ」
「クロユキ様ズルイ!!」
「ホンマに!!」
ライに負けた途端、魔女のキャラ作りで被っていた猫が剥がれたか、急に土下座し、ヘコヘコするクロユキ。平気な顔で取り巻き2人を生贄に捧げようとする。
「うっしし。ダメ♡……私の可愛い依頼人を傷つけた罰だ。全員まとめて界放警察に突きつけまぁす!!」
「いやァァァァ!!!」
「ホンマに!!!」
界放市の警察「界放警察」を呼び出すために、ライがBパッドに110番通報を掛けると、3人の悲鳴が轟く。人のカードを奪うと言う悪行に手を染めていたのだから、この結果は因果応報である。
******
数十分後、到着した界放警察の面々が、しょんぼりとしていた悪行3人組を引き連れ、まとめてパトカーに乗せる。
「ご苦労だったな、春神」
「アルファベットさん。おっす!!」
「あの3人組は、ここ最近頻繁に起きていたカード窃盗の常習犯だったのだ。捕まってよかった」
「その程度、美少女探偵ライちゃんに任せれば朝飯前だよっと」
「ふ……相変わらずだな」
ライと会話していたのは、コードネームなのか「アルファベット」と呼ばれる、界放警察のお偉いさんらしき男性。高身長に短い茶髪、顔を隠すような黒いサングラスが特徴的だ。
「春神、事情聴取は」
「要らない要らない〜……いつも言ってるでしょ。めんどくさいからいいって」
「わかった。何か聞きたいことがあったら、メールで連絡する」
「オッケー」
最後にそう告げると、アルファベットは他の界放警察官達と共にパトカーへ乗り込み、悪行3人組を連行。この場から去って行った。
そんな彼とライのやり取りを見て、ツバサは、この街ではこう言った事件は割と頻繁に起きていること。そして、ライはたびたびそれらの事件を解決し、界放警察のお偉いさんから一目置かれる程の人物なのだと悟る。
「んんん〜〜……にしても疲れたぁ〜〜……これは甘い物を摂取するためにコンビニ直行ですな」
「ライさん」
「ん?」
疲労の溜まった身体を伸ばすライ。その直後、ツバサから声を掛けられ、そこへ振り向くと、ツバサは彼女へと頭を深々と下げて来て。
「危ない所を助けていただき、ありがとうございました」
「え、ちょちょい。いいって別に。顔上げなよ」
「もう少しで、大事なカードを取られる所でした」
「契約スピリットの事?」
「ッ……知ってたんですか!?…私が契約スピリットを持っていると」
「うん。私、同じ契約スピリットを持っている人は、なんとなくわかっちゃうんだよね」
「そうだったのですか、私も契約スピリットを持っているのに、全然そんな事は……やっぱり、貴女は凄い人です」
それから一瞬間を置き、ツバサは一度唾を飲み込み、意を決する。
「助けられておいて、虫の良い話なのはわかっています。でも、私、貴女のように強くなりたいです。どうか、この私を、貴女の弟子にしてくれませんか」
「……」
もう一度、頭を深々と下げ、想いを込めてそう告げるツバサ。
力の籠ったその気持ちに、春神ライが応えないわけもなく………
「ダメ」
「……」
「でも、友達ならいいよ」
「!」
「あ、そうだ。いっそウチで働かない?」
「え、春神探偵事務所で、ですか?」
「そ。ツバサは今日から、私の相棒って事で。ちょうど欲しかったんだよね」
ライが提案して来たのは、師弟の関係ではなく、友人関係の構築。そして探偵事務所への勧誘。
ライのように強くなりたいツバサにとって、彼女の強さを間近で触れ続ける事ができる環境は、願ったり叶ったりで………
「もちろん、ツバサがよければだけど」
「……いえ、お邪魔じゃなければ、喜んで」
「うっしし。そう来ると思ったぜ。よろしく、相棒!!」
意気揚々と握手を要求するライ。ツバサはそれを徐に握り返す。
「こちらこそ、これからよろしくお願いします、ライさん」
「はい、ソレ禁止」
「え」
「私達はもう、友達で、相棒同士だろ?…なら、その堅苦しい喋り方はナンセンス。当然『さん』付けもナンセンス。タメ口オンリー、呼び捨てオンリー、OK?」
「……」
ライが腕全体でバツの字を作る程、オーバーなリアクションを取る。ツバサはそれを見るなり、初めて彼女の前で小さな笑みを浮かべて………
「ふふ。わかりました。これから、よろしくお願いします、ライ」
「だぁかぁらぁ、タメ口オンリーだってばぁ」
「すみません、敬語は癖で」
バトスピが盛んな大都市、界放市ジークフリード区に探偵事務所を構える少女、春神ライ。
そこにやって来たもう1人の少女、水乃ツバサ。
2人の、狂騒に満ちた日々が幕を開ける。
次回……
#03「ライジング」
******
《キャラクタープロフィール》
【
性別:女
年齢:13
身長:156cm
誕生日:11月11日
使用デッキ:【コンパス】
概要:もう1人の主人公。魔女の弟子入りをするために春神探偵事務所へ赴く。誰に対しても敬語で話す癖あり。ライの相棒となる。