バトルスピリッツ 勇者と魔女   作:バナナ 

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#03「ライジング」

 

 

 

私、水乃ツバサは、日本で最もバトスピが栄えていると言われている大都市、界放市ジークフリード区へとやって来ました。

 

そこで噂されていた「魔女」に弟子入りして、強くなるためです。

 

そして「魔女」と呼ばれている少女「春神ライ」と出会い、紆余曲折あって彼女の弟子、ではなく、相棒?友人?となった私は、彼女が営む「春神探偵事務所」に厄介になることになったわけですが………

 

 

******

 

 

「お疲れ様です」

「お疲れツバサ、今日も来たのか」

「えぇ、一応ここで働かせてもらっている身ですので」

「真面目だな」

 

 

界放市ジークフリード区にある、とある雑居ビルの2階に構える「春神探偵事務所」……

 

今日もそこに長い青髪と、凛とした顔が特徴的な少女、水乃ツバサが足を運ぶ。それを出迎えたのは、自分の家を探偵事務所に魔改造された悲しき兄貴分、九日ヨッカ。

 

 

「ところで、ライは今日もですか?」

「あぁ、今日もだ」

 

 

ツバサがヨッカに訊くと、彼は親指でライの部屋の扉を指す。

 

それが指し示す意味は、昼前だと言うにもかかわらず、ライは未だ就寝中であるということだ。

 

 

「はぁ、やはりですか。仕方ない」

 

 

ツバサはため息を吐くと、ライの部屋の扉を開けると、パジャマを着用したまま、ベッドで気持ち良さそうに居眠りしているライの元へ足を運ぶ。

 

 

「起きてください、ライ。もうすぐお昼ですよ」

「ん〜〜むにゃむにゃ」

「過剰な睡眠は健康の大敵です。早く起きてください」

「ん〜〜フウちゃん、後5分待ってて」

「誰ですかフウって」

 

 

ツバサは、身体を揺さぶりながらライを起こそうとするが、寝惚けて違う人物の名前を口にした程度で、一向に起きる気配はない。

 

 

「もう、今日は久しぶりの依頼なんですよね?…私の初めての依頼だって喜んでたじゃないですか」

「は、依頼!!……そうだ、今日は依頼、しかも記念すべき、ツバサと一緒にする、初めての依頼だ!!」

 

 

「依頼」と言う言葉に反応し、ライは一気に覚醒、すぐさまベッドから飛び起きる。

 

 

「こうしちゃいられない、行くぞ相棒!!」

「先ずは服を着替えてください。あとは食事を」

「えぇ〜朝食はいいよ。服だけ着替えて行こ」

「ダメです。1日の健康のため、食事はきっちり摂るべきだと思います。因みにもうこの時間は朝食ではなく、昼食です。私が作りますから、さぁ早く」

「えぇ〜」

「えぇじゃありません」

 

 

色々とぐうたらなライとは違い、とにかく生真面目なツバサ。

 

そんな2人のやり取りを見て聞いて、九日ヨッカは今日も1人で微笑んでいた。

 

 

******

 

 

昼。着替えと昼食を終えたライとツバサは、依頼のある場所へと歩みを進めていた。

 

 

「ふふんふん、るんるんるん」

「歩幅、合わせてください」

 

 

ツバサとの初めての依頼だからか、ライは鼻歌交じりでスキップをする程にテンションが高く、ツバサはため息を吐きながらも、それに合わせてせかせかとついて行く。

 

 

「そう言えば、今日の依頼の内容ってなんですか?」

「あれ、言ってなかったっけ?」

「明日になってからのお楽しみだと、ライが言ったんじゃありませんか」

「ごめんごめん、そうだったね。まぁでも、もうすぐ答え合わせだよ」

「え?」

 

 

ライがツバサにそう告げると、2人の眼前には「カードショップ・ゼウス」と記された看板があって………

 

 

「じゃじゃあん。今日はこのカードショップ・ゼウスのお手伝いでぇす!!」

「……」

 

 

ここはカードショップ・ゼウス。界放市ジークフリード区を代表するカードショップの1つだ。

 

このゼウス、実は他のカードショップにない要素があり………

 

 

「凄い、このお店、カードショップだけじゃなくて、喫茶店もあるんですね」

 

 

窓から中の様子を見たツバサが、そう感想を零す。

 

そう、このお店、カードだけでなく、喫茶店も営んでいる。それ故に………

 

 

「うっひゃ〜〜……休日なだけあって、今日も人がたくさんだ。こりゃ骨が折れるぞ、ツバサ」

「は、はい」

 

 

とても大忙しな様子。ライとツバサは、息を飲み、依頼達成に向けて、その戦いへと飛び込んで行く。

 

 

******

 

 

カードショップ・ゼウスの内装は、喫茶店の要素も兼ねているからか、壁が花柄で彩られていて、華やかだ。

 

カード側は、ほぼパックの販売のみで、たまに仕入れたパックを並べたり、買い取りしたり、フリースペースのバトル場でバトルしているお客さんの様子を見る程度だ。

 

それに対し、喫茶店側は………

 

 

「いらっしゃいませ。ご注文お決まりでしたらベルでお呼びください。はい、ご注文ですね、直ぐにお伺いします。はい、ご注文は………はい、繰り返しさせていただきます。『ジークフリードチキン』『キングタウロスサラダ』『ヴルムカレー』辛さメテオ級でお間違いなかったでしょうか。はい、ではしばらくお待ちください。ライ、オーダー入ります。『ジークフリードチキン』『キングタウロスサラダ』『ヴルムカレー』辛さメテオ級でお願いします」

「はいよ〜任せな」

 

 

凄まじく忙しい。

 

店舗内ではエプロンを着用したツバサがテキパキと店内を縦横無尽に駆け回り、彼女から聞いたオーダーの通りの料理を、同じくエプロンを着用したライが調理場で調理する。

 

2人は今日、初めて共通の仕事に取り組んでいるのだが、初めてとは思えない、抜群のコンビネーションを披露していた。

 

 

「お会計ですね。ありがとうございます。合計で6780円になります。クレジットで、はい、かしこまりました………はい、お支払い完了ですね、ありがとうございました、またお越しくださいませ」

 

 

因みにこのツバサ。齢13歳とは思えない程に仕事ができる。

 

視野が広く、売り場からレジまで仕事ができるところは颯爽終わらせるのは当然として、お金の計算も早く、さらには調理場でたまにライの手伝いまでしている。オマケに常に敬語で話すのが、よりそれを助長していた。

 

 

「いやぁ助かってるわぁ、ツバサちゃん♡」

「店長さん」

 

 

レジ前で一息ついたツバサに声を掛けたのは、筋骨隆々で角刈りで、オカマなゼウスの店長。

 

彼、いや、彼女の名は「ランスロット・武井」

 

見た目こそアレだが、こう見えてこのゼウスをほぼ1人で切り盛りしている、敏腕経営者である。

 

 

「貴女本当に仕事できるわね。どう、この機会にウチでバイトしてみない?」

「いえ、お話は嬉しいですが、丁重にお断りさせていただきます。私は春神探偵事務所の者ですので」

「ふふ、冗談よ。オカマジョーク」

「オ、オカマですか」

 

 

どっちかと言うと「マネジメントジョーク」のような気がすると思ったツバサだが、店長の見た目の凄味もあり、何も言い返せずに終わった。

 

 

「ところで、ヨッカ様は?」

「ヨッカさんですか?……今日はご自身のお店だと思います、確かアポローンとか」

「そうなのよ〜〜…ヨッカさんはアターシと同じカードショップの店長。そのバトルの腕前は超一流なんだからん」

「そ、そうなんですね。初めて知りました」

「あぁ、愛しのヨッカ様。こんなにもアターシは貴方のことを愛していると言うのに、何故いつもこうも遠くへ行ってしまうのでしょう。あぁ」

「……」

 

 

ライと共に暮らす青年九日ヨッカ。実は彼もカードショップの店長で、若手経営者。

 

そんな彼に、ゼウスの店長、ランスロット・武井はお熱な様子。ツバサはちょっとだけヨッカが可哀想に思えた。

 

 

「それにしてもライちゃん。久し振りに会ったけど、元気そうでよかったわ」

「え、あんな日光の塊みたいな人に、元気じゃない日があったんですか?」

 

 

店長がポツリと呟いた言葉に、ツバサは調理場で楽しそうに料理を作っているライへ視線をおくりながら、そう反応を示す。

 

あのライに元気がない日があったかのような、思わせ振りな発言をしたからだ。まだ出会ってから日は浅いものの、ツバサには到底ライが元気を失くす日があるとは思えなかったのだ。

 

 

「えぇ、フウちゃんがいなくなってからね」

「フウちゃん?……そう言えば、ライも寝言でその人物の名前を口にしていたような」

「本名は『夏恋(かこい)フウ』……ライちゃんの親友だった女の子よ。ウチでバイトしてたんだけど……」

「だけど?」

「突然いなくなってしまったの」

「!!」

「いきなりで驚いたわ。未だに連絡がつかないままなの。あの子がいなくなって以降、多分それが原因で、ライちゃん暗くてね。正直心配だったのよ」

 

 

 

店長が口にした名は「夏恋フウ」

 

話を聞く限り、ライにとって、彼女の存在は余程大きかったのだろう。現に今のライが落ち込むなど、ツバサには一切想像できない。

 

 

「それは、辛かったでしょうね。大切な人との唐突なお別れ……か」

 

 

ライの話と思わず重ね合わせてしまったのか、ツバサの脳裏には、同じように唐突に別れてしまった、大事な人の顔が浮かび上がる。

 

大人の男、父親だろうか。

 

 

「でも、今は吹っ切れたのかな。とっても元気そうで安心したわ。これもツバサちゃんのお陰かな?」

「いえ、そんなことはありませんよ。私と出会った時、ライは既に元気を取り戻していました。きっと、他の誰かがライの心を救ったんだと思います」

「ふふ、きっとそうなんでしょうね」

 

 

直後、ツバサは「ところで」と、一旦区切り、別の話を始める。

 

 

「店長さん。閉店後、あちらのバトル場は利用してもよろしいでしょうか?」

 

 

バトル場への入り口に指先を向けながら、ツバサが店長に訊いた。

 

 

「もちろんいいわよ。可愛いお手伝いさんの頼みですもの。ライちゃんとバトルでもするの?」

「はい、特訓に付き合ってもらいます」

 

 

そこまで話すと、いい加減働けと言わんばかりに、注文ベルの音が鳴る。ツバサは仕事モードに入り「はい、直ぐにお伺いします」と、またせかせかと店内を歩き始めた。

 

 

******

 

 

「うひゃぁ、疲れた〜〜」

 

 

時間は経過し、時はオレンジに空が輝く夕焼け。この時間にもなれば、大人気カードショップ・ゼウスも、ようやく閉店だ。

 

昼からほぼ1人でずっと料理を作っていたライ。流石に疲労が溜まったか、お客さんが消え、ガラガラとなった客席にエプロンを掛け、着席。そのままテーブルに横顔を付ける。

 

 

「ライ、バトルです。お手合わせをお願いします」

「え」

「店長さんから許可をいただきました。ここのバトル場で、バトルしましょう」

「はい?」

 

 

ツバサの声掛けによって、ライの平穏な時間は終わりを迎える。ツバサは体力が有り余っているのか、既にヘトヘトなライと比べて、まだまだ元気そうだ。

 

 

「ちょちょちょ、今日は疲れたからなし。て言うか、いつも探偵事務所で相手してあげてるでしょ」

「いつものは、テーブルにカードとコアを並べて、すべて手動で行う、古参的なバトルじゃないですか。Bパッドを使っての実戦を経験したいんです」

「えぇ」

「はい、行きますよ。特訓に付き合ってもらわないと、なんで私が春神探偵事務所に籍を置いているのかわからないですからね」

「うへぇ、マジィ?」

 

 

座り込んでいたライの腕に手を回し、強引にバトル場へと連行して行くツバサ。

 

それを見守るように、店長、ランスロット・武井は熱い視線と笑みを浮かべていた。

 

 

ー………

 

 

どこのカードショップも大体あるバトル場。

 

いわゆるフリースペースとも言われるこの場所。先程のように花柄の壁のような華やかな存在はなにもなく、ラバー製の床と鉄の壁のみが敷かれている、まるで広いトレーニングルームみたいな部屋だ。

 

そこにて、ライとツバサは互いにバトル用端末、Bパッドを展開し、左腕に装着。バトルの準備を完了させていた。やる気満々なツバサに対し、働いていた反動によって、ライは既に疲弊していて。

 

 

「よし、始めましょうライ。今日は負けませんよ」

「うぅ、あまりにもブラック企業。まぁでもバトルならいいや、やろう!!」

「はい」

「さぁ、バトスピタイムの始まりだ」

 

 

……ゲートオープン、界放!!

 

 

オカマな店長が見守る中、ライとツバサによるバトルスピリッツが、このカードショップ・ゼウスのバトル場で開始される。

 

先攻はライだ。疲れをバトルの楽しさで吹き飛ばしながら、そのターンを進めて行く。

 

 

[ターン01]春神ライ

 

 

「メインステップ。先ずはネクサス、ニカ・ナナウラを配置」

 

 

ー【ニカ・ナナウラ】LV1

 

 

「配置時効果でデッキ上から2枚オープン、その中の対象カード「ミオリネ・レンブラン」を手札に加えて、残りはトラッシュに破棄」

 

 

ライの初手は契約カードではなく、ネクサスカード。フィールドには何も出現しないが、フィールドにシンボルを埋めるのと同時に、手札を増加させた。

 

 

「ターンエンド。さぁツバサ、私を攻略できるもんならやってみんしゃい」

手札:5

場:【ニカ・ナナウラ】LV1

バースト:【無】

 

 

「言われなくとも。私のターン、参ります」

 

 

第1ターン目をエンドとするライ。次は彼女よりも働いていたと言うのにもかかわらず、全く疲れを感じさせないツバサのターンだ。

 

 

[ターン02]水乃ツバサ

 

 

「メインステップ。翔け上がれ、自由の名を持つ勇者よ、ライジングフリーダムガンダム、LV1で召喚!!」

 

 

ー【ライジングフリーダムガンダム】LV1(1)BP3000

 

 

フィールドへ舞い降りたのは、青き翼を持つ、白属性のモビルスピリット、ライジングフリーダムガンダム。

 

ツバサを選んだ、契約モビルスピリットだ。

 

 

「おぉ、生で見るとやっぱ綺麗だねその子」

「余裕をこいてると、足元を掬われますよ。アタックステップ、ライジングでアタック。その効果を発揮、カウント+2」

 

 

颯爽とアタックステップに突入し、ツバサはライジングフリーダムでアタック。その効果で契約デッキらしく、カウントを増加させる。

 

 

「バッチ来い。ライフで受ける」

 

 

〈ライフ5➡︎4〉春神ライ

 

 

ライジングは、ライのライフバリアを目掛けてビームライフルからビームを照射。それを1つ撃ち抜き、粉砕して見せる。

 

 

「ターンエンド。先制点はいただきましたよ」

手札:4

場:【ライジングフリーダムガンダム】LV1

バースト:【無】

カウント:【2】

 

 

そのターンをエンドとするツバサ。ライから先制点をもぎ取ったからか、その表情は若干得意げになる。

 

 

「うっしし。先制点で喜んでるの、ちょっと可愛いな」

「なにか言いましたか?」

「いやなんも。ほんじゃ私のターンじゃ」

 

 

バトルは一周し、ライの二度目のターンだ。

 

おそらくあのスピリットが見られる頃合いだろう。

 

 

[ターン03]春神ライ

 

 

「メインステップ。先ずはネクサス、ミオリネ・レンブランとデリング・レンブラン」

 

 

ー【ミオリネ・レンブラン】LV2

 

ー【デリング・レンブラン】LV2

 

 

「トラッシュに、学園を持つカードがある場合、デリングの効果で、学園のネクサス全てのLVは2になる」

 

 

ライは何も出現しないタイプのネクサスを、追加で2枚配置。デリングの効果により、自身だけでなく、ミオリネ、ニカのLVが上昇する。

 

その後、さらにもう1枚、カードを引き抜いて………

 

 

「でもって行くよ、エアリアル!!」

 

 

ー【ガンダム・エアリアル】LV2(3S)BP4000

 

 

ライも契約スピリットを投下。丸みを帯びた白き装甲に、柔和なデザインが特徴的なモビルスピリット、エアリアルが召喚される。

 

 

「エアリアル。優しそうな見た目なのに、実際にこうして対面してみると、すごい迫力だ」

「ビビった?」

「まさか。燃えて来ましたよ」

 

 

予想通りの返答に、ライは「だよね」とだけ告げると、アタックステップへと突入する。

 

 

「アタックステップ、エアリアルでアタック……の前に、デリングのLV2効果を発揮」

「え」

「ガンダムのコア2個をリザーブに置く。ライジングは廃棄処分」

「な、黄色で紫みたいなコア除去効果!?」

 

 

アタックステップの開始直後、エアリアルがまだアタックをしていないにもかかわらず、ライジングのカード上に置かれていたコアが、ツバサのリザーブへと戻される。

 

コアを失ってしまったライジングは、維持コア不足により、たちまち消滅してしまった。

 

 

「私のライジングが。でも、契約スピリットは魂状態となり、次に備えます」

 

 

消滅したライジングは色を失った、半透明な状態で、ツバサのフィールドへ帰還する。

 

ただ、当然ながらこの状態では、アタックはおろかブロックもできず、シンボルによる軽減もできない。

 

 

「お待ちかね、エアリアルでアタック。その効果でカウント+1、デッキ下から1枚ドロー」

 

 

ここでエアリアルが動く。効果により、ライにカウントとドローをもたらした。

 

 

「ライフで受けます」

 

 

〈ライフ5➡︎4〉水乃ツバサ

 

 

今度はエアリアルのビームライフルのビームが、ツバサのライフバリア1つを貫く。これでライフの残り数は4対4、同点だ。

 

 

「ターンエンド」

手札:4

場:【ガンダム・エアリアル】LV2

【ミオリネ・レンブラン】LV2

【デリング・レンブラン】LV2

【ニカ・ナナウラ】LV2

バースト:【無】

カウント:【1】

 

 

僅か数ターンでネクサス含め、4枚のカードをフィールドに並べるライ。ライフが同点とは言ったものの、現在はどう見ても彼女が優勢だ。

 

 

「行きます、私のターン」

 

 

それを覆すべく、ツバサのターンが幕を開ける。

 

 

[ターン04]水乃ツバサ

 

 

「メインステップ。魂状態のライジングを対象に【契約煌臨】を発揮させます!!」

 

 

ツバサがターン開始早々に発揮させたのは、契約スピリットを強化する【契約煌臨】の効果。そのコストにより、一際大きな赤いコア、ソウルコアがトラッシュへと支払われる。

 

 

「お願いします、イモータルジャスティスガンダム!!」

 

 

ー【イモータルジャスティスガンダム】LV2(3)BP9000

 

 

色を失ったライジングが、眩く光輝き、その中で全く別種のモビルスピリット、赤い装甲と機翼を持つイモータルジャスティスガンダムへと姿を変え、復活する。

 

 

「イモータルが契約煌臨したことで、手札にあるゲルググの効果を発揮。自身をノーコスト召喚」

 

 

ー【ゲルググ・メナース[一般機]】LV1(1)BP2000

 

 

「さらにイモータルの煌臨時効果。デッキ上から3枚オープンし、同名以外のコンパスを1枚手札に加えます。よし、私はゲルググを手札へ、そしてオープンされたアルテミックシールドも手札に加えられます。今加えた、2枚目のゲルググを召喚!!」

 

 

ー【ゲルググ・メナース[一般機]】LV1(1)BP2000

 

 

イモータルの契約煌臨後は、効果発揮のオンパレード。

 

結果的にツバサは3体のスピリットをフィールドに召喚して見せると同時に、相手のアタックステップを強制終了させる強力な効果を持つ白マジック『アルテミックシールド』のカードを手札に加えた。

 

如何にも白属性らしい。攻防一体の展開である。

 

 

「アタックステップ。決めますよ、イモータル」

 

 

初めはイモータルで攻撃を仕掛けるツバサ。契約煌臨スピリットは、その契約煌臨元となっているカードの指定された効果を発揮できる。即ち今だとライジングの効果を発揮できて。

 

 

「契約煌臨元のライジングの効果。カウント+2、その後、このスピリットのBP以下のスピリット1体をデッキ下に戻します。エアリアルのBPは7000、その首もらいます!!」

「おぉ」

 

 

接近して来るイモータルを、ビームライフルで迎撃するエアリアル。

 

しかし結局接近を許し、イモータルのビームサーベルの一太刀により胴体を斬り裂かれ、爆散。色を失った魂状態でフィールドに残る。

 

 

「今のイモータルはライジングの、コンパスが疲労した時に回復する効果も得ています。2体のゲルググと合わせて4度のアタックで、私の勝ちです。この勝負、もらいましたよ、ライ」

 

 

初めてライをリーサル圏内に追い詰めるツバサ。

 

ようやく1勝できる、ようやく大きな一歩を歩める。

 

そう思っていたのだが。

 

 

「ふふふ、この春神ライ様を簡単に倒せると思ったら大間違いだぜ、ツバサ」

「え」

「フラッシュ【契約煌臨】」

「!!」

「対象はもちろん、魂状態のエアリアルだ」

 

 

このタイミングで、ライもツバサと同様に【契約煌臨】のカード。色を失ったエアリアルが、再び色を取り戻す。

 

 

「遥か未来を駆け抜ける、私の相棒、ガンダム・エアリアル・ガンビット、LV2で契約煌臨!!」

 

 

ー【ガンダム・エアリアル[ガンビット]】LV2(2)BP13000

 

 

復活したエアリアルのシールドが細かく分裂して行き、それぞれがビーム攻撃可能な兵器となって、エアリアルの周囲に球体を描くように飛び回る。

 

この武装、ガンビットを解放させた姿こそ、ライのエーススピリット、エアリアル・ガンビットだ。

 

 

「ライも既に、自分の契約煌臨スピリットを手札に持っていたのか」

「エアリアル・ガンビットの煌臨アタック時効果、LV1と2のスピリット1体ずつをデッキ下に戻す」

「!」

「イモータルとゲルググ1体を同時にデッキ下へ」

 

 

エアリアル・ガンビットが、周囲に浮遊するガンビット達に指示を促すと、それらはエアリアル・ガンビットの元を離れ、イモータルとゲルググをビーム攻撃で襲い、2体を粒子化。デッキ下へと送り出す。

 

そしてガンビット達はエアリアル・ガンビットの元へ帰還し、またその周囲を浮遊する。本体が一歩も動かないまま敵スピリットを葬るその様は、圧倒的強者感を演出していた。

 

 

「くっ……ターンエンド」

手札:4

場:【ゲルググメナース[一般機]】LV1

バースト:【無】

カウント:【4】

 

 

エアリアル・ガンビットにより、攻め手を欠いたツバサ。致し方なくターンエンドの宣言。

 

しかし、その視線の先には、自身の手札にあるマジックカード「アルテミックシールド」のカード。

 

 

 

これがあれば、次のターンは凌げる。

 

 

 

そう考えていた。そして、巡って来た次の自分のターンにまた【契約煌臨】を決めて大逆転を狙うつもりでもいる。

 

しかし、春神ライのバトルスピリッツは、ツバサが想像しているよりも甘くはなく。

 

 

「既に勝負はついてる」

「え」

 

 

さぁ、ラストターンの時間です。

 

 

ここでライはラストターンの宣言。彼女のこの勝利宣言は、絶対であり、何者にも覆せない。

 

 

[ターン05]春神ライ

 

 

「メインステップ。ここでパイロットブレイヴ投入、スレッタ・マーキュリーだ。エアリアル・ガンビットと合体」

 

 

ー【ガンダム・エアリアル[ガンビット]+スレッタ・マーキュリー】LV2(2)BP17000

 

 

モビルスピリットのデッキには必要不可欠な存在、パイロットブレイヴ。

 

それがこのタイミングで登場し、エアリアル・ガンビットと合体。見た目に変化はないが、より強力な合体スピリットとなる。

 

 

「アタックステップだ。エアリアル・ガンビットでアタック」

 

 

ラストターンが宣言されたアタックステップ。ライは合体したエアリアル・ガンビットで攻撃を仕掛ける。

 

その際に、付随した多くの効果が発揮されて。

 

 

「契約煌臨元となったエアリアルの効果。カウント+1、デッキ下から1枚ドロー。さらにエアリアル・ガンビットの煌臨アタック時効果、残ったゲルググをデッキ下に戻し、黄シンボル1つを追加」

 

 

ガンビットがまたツバサのフィールドのスピリットを襲う。唯一残ったゲルググがビーム攻撃で蜂の巣にされ粒子化、デッキ下に強制送還される。

 

 

「スレッタの【合体中】効果。相手スピリットを倒した時、デッキ下から1枚ドロー。でもってもう一丁、ミオリネのLV2効果、スレッタと同じ条件で、私のライフ1つを回復」

 

 

〈ライフ4➡︎5〉春神ライ

 

 

「くっ……たった1体のスピリットが倒されただけでこんなに効果が連鎖していくなんて」

 

 

僅か一度のアタックで大きなアドバンテージを得られるエアリアルデッキ。その凄さに驚くツバサだが、すぐさま「ですが」と切り替え、手札にある1枚のカードを引き抜き、それを自身のBパッドへと叩きつける。

 

 

「ライのアタックステップはこれで終わりにします。フラッシュマジック、アルテミックシールド」

「……」

「これにより、ライのアタックステップは、今行われているアタックで終了になります」

「フラッシュ、エアリアル・ガンビットの効果でマジックカードになったデリングを使用。アタック中のエアリアル・ガンビットを回復」

 

 

ツバサが白の防御マジック、アルテミックシールドを発揮させた直後、ライもエアリアル・ガンビットの効果でマジックカードになったカード効果を発揮させ、エアリアル・ガンビットを回復させる。

 

 

「エアリアル・ガンビットのアタックはライフで受けます」

 

 

〈ライフ4➡︎2〉水乃ツバサ

 

 

エアリアル・ガンビットは頭部に備え付けられたバルカン砲を連射し、彼女のライフバリアを一気に2つ粉砕。

 

 

「よし。重たい一撃に変わりはありませんでしたが、これでライのアタックステップは終了。次の私のターンで決着です!!」

 

 

目前に迫った次の自分のターンに意気込むツバサ。

 

だが、その巡りかけのターンは、魔女の見せるまやかしであり。

 

 

「ふふ、それはどうかな」

「え」

「ネクサス、ニカのLV2効果。学園のブレイヴがいる限り、相手は効果で私のアタックステップを終了できない」

「な……」

「よってアルテミックシールドの効果は無効。私は、エアリアル・ガンビットで再度アタックを仕掛ける!!」

「そ、そんな」

 

 

意気揚々と発揮させたアルテミックシールドの効果はまやかし。本当はライのネクサス効果によって無効となっていた。

 

フィールドではライの叫びに応えるように、エアリアル・ガンビットが背部にマウントしてあるビームサーベルを引き抜き、ツバサへと迫って行く。

 

そして………

 

 

「……やはり、まだまだ敵いませんね。お手合わせ、ありがとうございました。ライフで受けます」

 

 

〈ライフ2➡︎0〉水乃ツバサ

 

 

そのライフバリアをビームサーベルの一太刀で一刀両断。ツバサの残りのライフを0にして見せる。

 

これにより、勝者は春神ライだ。今回もエアリアル・ガンビットが彼女を勝利へと導いた。

 

 

「いよっしゃあ私達の勝ちじゃい!!」

 

 

バトル終了直後、本日の役目を終えたエアリアル・ガンビットがゆっくりと消滅して行く中、ライはそれを笑顔とVサインで見送る。意思疎通しているのか、エアリアル・ガンビットは、彼女に対して首を縦に振り、頷くと、完全に消滅する。

 

 

「お疲れ様でした。今回はネクサスの効果に散々振り回されてしまいました。私もネクサスをデッキに入れた方がいいんでしょうか?」

「え、ツバサネクサス入れてないの?」

「はい。アレを配置するくらいだったら、スピリットを召喚した方が強いと思いまして」

「ノンノン。今のバトスピはネクサス環境だよ?…最低でも6枚は入れておかないと、特に白のネクサスなんて強いのばっかだし」

「むぅ、なるほど。ではちょっと6枚程度デッキに入れてみます」

「うんうん。そうしなんせ」

 

 

バトル後のトーク。ライはいつもの笑顔でツバサにアドバイス。

 

次のツバサのバトルではネクサスカードが見られるに違いないだろう。

 

 

「よし。ではネクサスを入れたらもう一戦お願い致します」

「え」

「えってなんですか。当然でしょう。今日はとことんお付き合いしていただきますよ」

「ちょちょちょ待って待って、流石に疲れたと言うか、家に帰して欲しいと言うか………取り敢えず、さらばだ!!!」

「あ、逃げないでください、ライ!!」

 

 

あれだけ働いてバトルましたと言うのに、これでもまだまだ体力が有り余っている様子のツバサ。流石に耐えかねたライはこの場から逃走。ツバサがそれを追いかける。

 

しかし、疲れているのは本当だろうが、ライの表情はいつもの優しい笑顔であり。

 

 

「よかったねライちゃん。また一緒に笑い合えるお友達ができて」

 

 

再び絶やさなくなったライの笑顔を見て、ゼウスの店長、ランスロット・武井がそう呟く。

 

ライとツバサ、2人の少女の物語は、今日も誰かに優しく見守られながら、続いて行く。

 





次回………

#04「幽霊騒動」


******


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