バトルスピリッツ 勇者と魔女   作:バナナ 

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#04「幽霊騒動」

 

 

 

整備されていない、数々の緑が生い茂る。夜という真っ暗な時間帯は、そこから生まれて来る闇が恐怖心を掻き立てる。

 

ここは児雷也森林。界放市ジークフリード区にある大きな森林区域だ。基本的に人通りはほぼなく、精々生態系調査やバードウォッチングで訪れる人がいる程度。

 

しかし、そんな真っ暗な夜の児雷也森林を歩く、2つの足音が聞こえて来る。

 

春神ライと水乃ツバサだ。

 

 

「ジークフリード区に来てからそれなりに経ちますが、こう言う殺風景な場所もあるんですね」

「……」

「そう言えばこの辺りでしたっけ、例の幽霊」

「……」

 

 

懐中電灯を片手に持って、規則正しい歩き方で森林内を歩くツバサが、横にいるライに話し掛ける。

 

しかしライは、何かが出てきそうな気がするだけの周囲の暗闇に意識が向いていて、その声が聞こえていない様子。

 

 

「ライ?……聞いてますか、ライ?」

「え、いやいやいやいやいやいや、なんでもないなんでもない」

「何かある時の言い方ですね」

 

 

ようやくツバサの声を聞き入れるが、何かに恐怖しているのか、その言動から挙動の何もかもがおかしい。

 

そんな中ツバサは、ライが何に恐れているのかを理解して。

 

 

「まさか怖いんですか、幽霊」

「ッ……な、なわけないじゃん。たかが幽霊、私は天下の春神ライ様ぞ?」

 

 

図星なのか、慌てふためくライ。直後、茂みから何かが葉を揺さぶる音が聞こえて来る。

 

 

「ァァァァ出たァァァァ!!!」

「痛い痛い痛い痛い、落ち着いてください」

 

 

その音にビビり散らかすライ。思わず横にいるツバサを強い力で抱き締める。

 

しかし、そこから姿を見せたのは幽霊ではなく………

 

 

「タ、タヌキ」

「いや、これはアライグマですね」

 

 

ただのアライグマだった。アライグマはその後何かをすることなく、ライとツバサの前をトコトコと通り過ぎて行った。

 

 

「よかった、タヌキで」

「だからアライグマですって。て言うかやっぱり怖いんじゃないですか、幽霊」

「そりゃあ怖いよ。だって幽霊だよ、白かったり、人魂だったり、舌をベロォって出したり、足がなかったりするんだよ?……怖くない?」

「思い浮かべる幽霊像がやたらポップですね」

 

 

ライは、遂に幽霊、引いてはオカルトチックなモノが苦手なことをカミングアウト。

 

 

「幽霊怖いなら、なんで幽霊騒動の原因調査の依頼なんて引き受けたんですか」

 

 

ツバサがライに訊いた。当然の疑問である。

 

 

「いやそりゃだって。日頃からお世話になっているここの管理人さんからのお願いだし、断れなくて」

 

 

そう。今宵、2人は依頼人のため、この暗闇の中へと足を運んでいるのだ。

 

なんでも依頼人は児雷也森林の管理人で、最近幽霊っぽいのがこの森に出ると言う噂が広まって、困っているらしい。

 

 

「この森の管理人さんから……なんでライはその人にお世話になっているんですか。事務所には関係ないですよね?」

「んーーーそれは説明すれば長くなるんだが」

 

 

日頃から児雷也森林の管理人にはお世話になっているライ。今回の依頼を断れなかった理由はそれなのだが、ツバサからしたらなんでお世話になっているのかは謎である。

 

 

「そんなことより、幽霊なんていませんでした〜で適当に報告することにして、もう帰らない?」

「管理人さんには日頃からお世話になっているんじゃなかったんですか。ダメですよちゃんと調べないと」

「いや別に幽霊なんているわけないし、いいじゃん」

「……そう言うことは、震える身体を抑えてから言ってください」

 

 

話を180度変え、さっさと帰ろうとするライ。しかしそんな中途半端はツバサが見逃さない。

 

 

「幽霊なんていない。は、確かにそうだと思います。私もそんな非科学的且つ不確定な存在は信じていません。ですが、今回、この森で幽霊騒動が相次いでいるのには、きっと何か原因があるんだと思います。この手の話でよくあるのは、大抵『何かが幽霊に見える』ですね。人間、どうしても暗い場所には大なり小なり恐れを抱くので、なんでもない存在を、ついつい幽霊などのオカルトなモノだと認識しちゃうらしいんです。例を挙げると、廃棄されたゴミ、風で巻き上がった袋、灯火などがあります」

「おぉ、流石ツバサ、頭良い」

 

 

名推理ツバサ。話が長いのが玉に傷だが、あまりにもそれらしい推理に、ライも納得。

 

 

「灯火……あぁ、あんな感じのやつ?」

 

 

ライが指を刺したのは、この森を僅かに照らす灯火。

 

見たところ、なんの変哲もない灯火だが……

 

 

「そうですね。あれなら幽霊に見えても……おかしく、ない?」

「おかしくない……よね?」

 

 

次の瞬間、灯火は定位置を離れ、青い火の玉となって宙を移動する。

 

そして、それはライとツバサの元へ現れて………

 

 

「あ、こんにちは」

「キャァァァァァァァァ!!!!」

「痛い痛い痛い痛い痛い痛い」

 

 

喋った。火の玉が喋った。しかもドスの効いた低めの男性の声で、これは怖い。

 

唐突に現れた怪異に、ライはまたツバサを強く抱き締める。

 

 

「『こんにちは』は違うか。もう夜だから『こんばんは』か。幽霊になるとそこら辺の感覚がばるな」

「……まさか、本当に幽霊なんですか。あ、ちょっと、ライ、気を確かに、ライ!?」

 

 

恐怖に対する許容量を超え、気を失うライ。残されたのは、驚きはしたものの、この手のオカルトには耐性があるツバサと、謎の幽霊のみで………

 

 

「なんか、ごめんなさい」

「……取り敢えず、お話お伺いしてもいいですか?」

 

 

ー………

 

 

あれから数分が経過した。ツバサは気を失ったライを背負いながら、幽霊と共に森の開けた場所を訪れる。

 

 

「で、貴方なんなんですか」

 

 

ツバサが幽霊に訊いた。いまいち抽象的な質問だが、目の前の存在がそもそも抽象的なので当然である。

 

 

「あ、私、幽霊です」

「それはそうなんですけど。いや、そうなんですかね。よくわからなくなって来ました」

 

 

不思議と、さっきとは僅かに声が高音になり、若干変わっている気がしないでもない。

 

しかしまぁ、そんなことはさて置き、言動からして悪い霊ではなさそうに感じる。だがツバサ自身、まだ目の前の奇怪な存在に不慣れな様子。

 

 

「あのですね。ここ最近、貴方の存在でびっくりしてしまう人がたくさんいるんです。私の背中にいる人みたいに」

「ほお」

 

 

ツバサは、自分の背中で寝ているライに視線を送りながら、そう幽霊に告げる。

 

 

「なので、申し訳ないんですけれども、これからは極力人との接触は避けてくれませんか?」

「おう、そうだったのか、それは大変申し訳ないことをした。これからは人が通りそうな道は避けよう」

 

 

話がわかってくれる人?…でよかった。

 

そう思ったツバサだったが………

 

 

「いやでもやっぱり人に会わないなんて嫌だなぁ」

「え」

「せめて最後に1回くらいバトスピしたいなぁ」

「……」

「バトスピしたいなぁ」

 

 

なんとわかりやすい。要するに「最後にツバサとバトスピしたいな」と言っているのと何も変わらない。

 

しかし「それくらいで依頼が完了するならいいか」と、ツバサは考えて。

 

 

「あの、じゃあやりますか。私と」

「いいの!?……ありがとう、生きててよかった、死んでるけど」

「……」

 

 

喜び、舞い上がる幽霊。直後に言い放った洒落になってない幽霊ジョークに、ツバサは苦笑い。

 

 

「そう言えば、Bパッドはお持ちですか?……コレがないとバトルができませんが、と言うかあったとしても持てますか?」

「質問の多い子だね」

「貴方が疑問だらけの存在なのがいけないんです」

 

 

確かに。ツバサの考えは全くその通りだ。このままでは幽霊はバトルできない。

 

Bパッドは最悪ライの物を使えばいい。しかし、肝心の幽霊がそれを使えないのであれば、話にならない。

 

 

「まぁでもそれは心配ご無用。神速召喚、ポン吉」

「ポン吉?」

 

 

幽霊がそう叫ぶと、再び茂みから物音が聞こえ、そこから1匹の茶色い毛皮で四足歩行の小さな獣が姿を見せる。

 

その可愛らしい獣に、ツバサは見覚えがあって。

 

 

「これ、まさかさっきの」

「驚いたかい。この子は私の親友、タヌキのポン吉さ」

「ポン」

「……これ、アライグマですよ」

「え、そうなの。でも「ポン」って鳴くよ」

「ポン」

「……アライグマ、ですね」

 

 

現れたのは、ついさっきライと自分の前を通り過ぎて行ったアライグマだった。

 

どうやら幽霊も、ライと同じくアライグマのことをタヌキだと勘違いしていたらしい。

 

 

「まぁもう今更何でもいいか。ポン吉、Bパッドを出してくれ」

「ポン!」

 

 

幽霊がアライグマ、ポン吉に指示すると、ポン吉は自慢のふさふさの毛皮からBパッドを排出。

 

 

「よし、じゃあそのBパッドを展開、開閉ボタンを押してくれ」

「ポン!」

「違う違う、そこじゃない、もっと横」

「ポン!」

 

 

Bパッドを展開し、バトルモードにする開閉ボタンのタッチを、ポン吉は2度のチャレンジで成功させる。

 

 

「よしよしよし、じゃあ初手になる4枚のカードをドローしてくれ」

「ポン!」

「おぉいいじゃないか、偉い、偉いぞポン吉」

「ポン!」

 

 

ポン吉は、幽霊の代わりに、Bパッドに装填されたデッキから、4枚のカードを手札としてドローする。

 

これでバトルの準備は整った。幽霊はいつでもバトルができるようになったわけだが、この時点で、ツバサはあることを察して。

 

 

「あの、まさかこのアライグマにバトルの操作を任せるつもりですか?」

「もちろん、そのつもりだ」

「えぇ……」

「安心したまえ、私とポン吉ならできる。なぁ?」

「ポン!」

 

 

ヤケに自信満々な幽霊とポン吉。

 

ツバサは少々戸惑いながらも、背負っていたライを、一番草の量が多い場所へと寝かせると、懐からBパッドを取り出して展開、自身の左腕に装着。デッキも装填して、同じようにバトルの構え。

 

 

「さぁ、楽しんでバトルしよう」

「相手は幽霊とアライグマですが、勝負は勝負。負けません」

 

 

……ゲートオープン、界放!!

 

 

界放市ジークフリード区にある森林区域、児雷也森林。

 

そこで、おそらくこの世で最も奇妙なバトルスピリッツが幕を開ける。

 

先攻はツバサだ。キツネ、いやタヌキに化かされてるように感じながらも、勝つためにターンを進めて行く。

 

 

[ターン01]水乃ツバサ

 

 

「メインステップ。先ずはネクサスです、凍れる火山」

 

 

ー【凍れる火山】LV1

 

 

ツバサの初手はネクサスカード。彼女の背後に凍てつく活火山と言う矛盾した存在が出現する。

 

 

「これがネクサス。初めて配置したからか、なんだか新鮮ですね。ターンエンド」

手札:4

場:【凍れる火山】LV1

バースト:【無】

 

 

ツバサは、初めてのネクサスカードの余韻に僅かな時間浸ると、そのターンをエンドとする。

 

 

「そう言えば、貴方の本当の名前はなんですか?」

「え」

 

 

ターンエンド直後、ツバサが幽霊に訊いた。

 

 

「ずっと『幽霊』とお呼びするのも、なんか味気ないというか。ちゃんと呼べる名前があった方がいいかなと思いまして」

「はは、そうかい。本名は事情があって教えられないが、ニックネームならあるぞ。「レイタロウ」だ」

「……とんでもないくらい安直なネーミングですね」

「ハッハッハ!!…まぁニックネームなんて、覚えやすいくらいがちょうどいいものだよ。お嬢さんの名前は?」

「あ、申し遅れました、私、水乃ツバサと申します」

「ツバサちゃんか。かっこいい名前だな」

「ふふ、全く同じことを、そこで横たわっている人も仰ってましたよ」

「……そうか」

 

 

互いの名前を教え、覚え合う2人。

 

次はレイタロウとポン吉のターンだ。レイタロウの指示に従い、ポン吉がBパッドのカードとコアを動かして行く。

 

 

[ターン02]レイタロウ&ポン吉

 

 

「さぁ、おじさんのメインステップだ。先ずはリザドエッジLTをLV1で召喚」

「ポン!」

 

 

ー【リザドエッジLT】LV1(1)BP1000

 

 

レイタロウの初手は赤の0コストスピリット。

 

背面に刃を背負った小型のトカゲ、リザドエッジが召喚される。

 

 

「続けて召喚。ライダースピリット、龍騎。LV2だ」

「ポン!」

 

 

ー【仮面ライダー龍騎】LV2(2)BP4000

 

 

「ッ……赤属性のライダースピリット」

 

 

様々な鏡像が重なり合い、その姿を顕にしたのは、赤きライダースピリット、龍騎。

 

ライダースピリットとは、モビルスピリットと並ぶ、特殊なスピリットの総称。外見に幅はあれど、ほぼ一貫して仮面を装着した戦士のような姿をしているのが特徴である。

 

 

「召喚時効果。デッキ上3枚をオープンし、その中にある対象カードを手札に加える。よし、なら『仮面ライダー龍騎サバイブ』のカードを手札に加えて、残りは破棄」

「ポン!」

「あのアライグマ、本当に指示通りカードを動かしてる……」

 

 

赤属性のライダースピリット、龍騎が持っている効果は、この手の3コストのスピリットにありがちなサーチ効果。

 

それにより、レイタロウは手札を1枚増やすが………

 

 

「だけどこの瞬間、凍れる火山の効果を発揮です」

「!」

「相手のターン中に相手の手札が増えた時、その枚数分、手札を破棄してもらいます」

「なるほど」

 

 

つまり、1枚だ。レイタロウは、ポン吉の持っている手札から1枚選び、それをトラッシュへと捨てさせる。

 

 

「ターンエンド。白のネクサス、なかなかに厄介だね」

手札:3

場:【仮面ライダー龍騎】LV2

【リザドエッジLT】LV1

バースト:【無】

 

 

凍れる火山により、手札の総合枚数は結局増えず。結果的に、手札3枚の状態で、そのターンをエンドとすることになったレイタロウ。

 

次はツバサの2度目のターンだ。このままペースを掴むべく、それを進めて行く。

 

 

[ターン03]水乃ツバサ

 

 

「メインステップ。翔け上がれ、自由の名を持つ勇者よ!!…ライジングフリーダムガンダム、LV2で召喚です」

 

 

ー【ライジングフリーダムガンダム】LV2(3S)BP5000

 

 

「おぉ、契約スピリットか」

 

 

ツバサが召喚したのは、暗き夜を明るく照らす青い機翼を持つ、契約モビルスピリット、ライジングフリーダムガンダム。

 

 

「さらにバーストをセットします」

 

 

ツバサのフィールドに、裏向きでカードが伏せられる。これはバースト。このゲームに於いての、謂わゆる「罠カード」であり、条件を満たした際に発動することで、自分が有利になる、様々な効果を発揮できる。

 

 

「アタックステップ。ライジング、お願いします!!」

 

 

このバトル、初めてのアタックを仕掛けたのはツバサだった。ライジングはその指示に応え、ビームライフルを構える。

 

 

「ライジングのアタック時効果、カウント+2し、その後ライジングのBP以下を持つ相手スピリット1体をデッキ下に送ります」

「……」

「【OC:2】により、今のライジングのBPは9000。よって、それ以下のBPを持つ、仮面ライダー龍騎をデッキ下へ!!」

 

 

ライジングがビームライフルの銃口を、龍騎へ向け、間髪入れずにそれを撃ち放つ。

 

龍騎はデッキ下に送られ、レイタロウの戦力は大きく減少する。かに見えたが………

 

 

「龍騎のLV2効果。系統に「戦騎」を持つライダースピリット全ては、相手の効果で手札とデッキに戻らない」

「なッ……ライジングの効果が効かない!?」

 

 

ライダーと言う、モビルスピリットよりも劣る体格でありながら、龍騎はライジングの放ったビーム攻撃を気合いだけで跳ね返してしまう。

 

 

「くっ……なら、リザドエッジLTをデッキ下に戻します」

 

 

標的を変え、ライジングはリザドエッジにビームライフルを向け、ビーム攻撃を放つ。当然龍騎の効果はそこまで及んでいないため、リザドエッジLTは被弾し、呆気なく粒子化して、デッキ下へと戻された。

 

 

「フラッシュマジック、ポン吉、バスタースピアだ」

「ポン!」

「!」

「不足コストは龍騎をLV1にして確保。効果により、ネクサス、凍れる火山を破壊して、デッキから2枚のカードをドロー」

 

 

ライジングの効果を受けつけない、龍騎の効果に驚く間もなく、レイタロウが放ったのは、炎を纏った一本の槍。

 

凍れる火山へと突き刺さると、それを容易く粉砕して見せる。

 

 

「ネクサスがこんなにあっさり破壊されるなんて……」

「知らなかったかい?……ネクサス破壊は赤属性の十八番なのさ。ライジングのアタックはライフで受けよう」

 

 

〈ライフ5➡︎4〉レイタロウ&ポン吉

 

 

ライジングは手に持つシールドを投擲。側面からビームの刃が出現したそれは、レイタロウのライフバリア1つを斬り裂き、ライジングの元へと帰還する。

 

 

「ターンエンドです。まさか、ライジングの効果が効かないばかりか、ネクサスまで破壊されるなんて」

手札:3

場:【ライジングフリーダムガンダム】LV2

バースト:【有】

 

 

今は他に使えるカードもなく、何もできないままターンをエンドとしてしまうツバサ。

 

ライジングの効果が通用しないのは、彼女にとっては辛い戦いになるだろう。

 

次はそんなライジングの効果を打ち破って見せたレイタロウのターンだ。

 

 

[ターン04]レイタロウ&ポン吉

 

 

「メインステップ。ポン吉、先ずは龍騎のLVを2に戻して、ディケイド響鬼を2体召喚だ」

「ポンポン!」

 

 

ー【仮面ライダーディケイド響鬼】LV1

 

ー【仮面ライダーディケイド響鬼】LV1

 

 

レイタロウが召喚したのは、鬼のような仮面を装着したライダースピリット、響鬼。に姿を変えているディケイドと言うライダースピリット。

 

1コストの小型であるが、それには龍騎と同様に強力な効果が内蔵されており………

 

 

「ディケイド響鬼の効果。ライダースピリットを召喚する時のみ、自身のシンボルに赤1つを追加する」

 

 

それが2体。龍騎のものと合わせて計5つだ。ライダースピリットを召喚する時のみ、レイタロウは赤の軽減シンボルを5つまで満たせることになる。

 

ここから呼び出されるスピリットは………

 

 

「そしてここで、エースの登場だ。行くぞポン吉!」

「ポン!」

「赤き灼熱のライダースピリット、龍騎サバイブをLV2で召喚!!」

 

 

ー【仮面ライダー龍騎サバイブ】LV2(2S)BP11000

 

 

「不足コストの確保により、ディケイド響鬼1体は消滅。ありがとう」

 

 

様々な鏡像が重なり合い、新たに姿を見せたライダースピリットは、龍騎の強化形態。炎のドラゴンをその身に纏った姿、龍騎サバイブ。

 

その召喚に際し、ディケイド響鬼が1体だけ維持コア不足で消滅する。

 

 

「龍騎サバイブ……コスト7の大型ライダースピリット。こんな切り札を隠し持っていたのか」

「隠してたつもりはなかったがね。さぁ行くよツバサちゃん。アタックステップ、龍騎サバイブでアタックだ」

 

 

龍騎サバイブを召喚したレイタロウは、颯爽とアタックステップへ。

 

龍騎サバイブは、赤いドラゴンを模したショットガンの銃口を、ライジングへと向ける。

 

 

「アタック時効果。BP15000以下のスピリット1体を破壊する」

「!!」

「BP9000のライジングを破壊だ」

 

 

銃口より放たれる火炎弾。それがライジングの胸部を撃ち抜き、爆散へと追い込む。

 

 

「くっ……しかし、ライジングは不死身の契約スピリット。破壊されても魂状態となって、私のフィールドに残ります」

 

 

爆発による爆煙が晴れても尚、ライジングは色素を失い、魂状態となって、ツバサのフィールドに止まっていた。ツバサは不死身だと称しているが、この状態だとアタックもブロックもできず、ほぼ死に体だ。

 

 

「龍騎サバイブのこの効果はまだ終わらない。効果で破壊した時、このバトル中、赤シンボル1つを追加する」

「ッ……ブレイヴ抜きの単体でダブルシンボル!?」

 

 

魂状態でフィールドに残ったとは言え、破壊には成功していることで、龍騎サバイブの追加効果が発揮される。

 

これにより、龍騎サバイブは一撃で2つのライフを砕くダブルシンボルと化した。

 

 

「フィールドにスピリットはなし。このアタック、どう受けてくれる」

「ライフ。ライフで受けます!!」

 

 

〈ライフ5➡︎3〉水乃ツバサ

 

 

再び放たれる、龍騎サバイブの火炎弾。今度はツバサのライフバリアを直撃し、それを一気に2つ破壊する。

 

 

「いきなり2つ。ですが、私のライフが減ったことにより、バースト発動!!」

「!」

「クリアウォール。効果でカウント+2、ライフ1つを回復です」

 

 

〈ライフ3➡︎4〉水乃ツバサ

 

 

「その後コストを支払い、フラッシュ効果も発揮。このバトルで、レイタロウさんのアタックステップを終了させます」

 

 

ツバサが表向きにしたバーストカード、白のマジック。それにより、ライフを回復するばかりか、レイタロウのこのターンのアタックステップを終了に追い込む。

 

だが………

 

 

「ほう。ならば、龍騎サバイブのLV2からあるもう1つの効果。ライダースピリットがアタックしたバトル終了時、そのシンボル分だけ、ライフをリザーブに置く」

「ッ……効果によるライフダメージ!?」

 

 

刹那。龍騎サバイブが呼び寄せたのか、その背後に、強固な鋼の装甲を身に纏った赤いドラゴンが姿を見せる。

 

 

「今の龍騎サバイブのシンボルは2つ。よって2点のダメージだ」

 

 

〈ライフ4➡︎2〉水乃ツバサ

 

 

「うわっ!?」

 

 

赤いドラゴンの火炎放射と、龍騎サバイブの火炎弾。その2つが、ツバサのライフバリアを再度襲う。1つ回復したと言うにもかかわらず、その残数は僅か2となってしまう。

 

 

「そしてクリアウォールの効果で、私のアタックステップは終了する。ターンエンドだ」

手札:2

場:【仮面ライダー龍騎サバイブ】LV2

【仮面ライダー龍騎】LV2

【ディケイド響鬼】LV1

バースト:【無】

 

 

レイタロウは、ツバサに己がエーススピリット、龍騎サバイブの圧倒的破壊力を見せつけ、ターンをエンド。

 

 

「たった一撃で4点のライフを破壊して来るなんて、凄まじいスピリットだ。クリアウォールがなければ、このターンで負けていました」

 

 

このターン、クリアウォールがなかったらと思うだけでゾッとしてしまう程、龍騎サバイブの効果は、ツバサにとって強烈なモノであった。

 

 

「でもターンは回って来た。ターンが回って来る限り、勝機はある」

 

 

しかし、だからと言って諦めはしない。次はツバサの反撃だ。

 

 

[ターン05]水乃ツバサ

 

 

「メインステップ。魂状態のライジングを対象に【契約煌臨】を発揮!!」

 

 

ターン開始早々にツバサが使ったのは、契約スピリット専用の煌臨である【契約煌臨】のカード。

 

魂状態となり、色素を失ったライジングが色を取り戻し、光と共に別の姿へと変化して行く。

 

 

「出撃です、フォースインパルスガンダム!!」

 

 

ー【フォースインパルスガンダムSpecⅡ】LV2(3)BP12000

 

 

こうして新たに出現したのは、白い装甲に黒い翼を持つモビルスピリット、フォースインパルスガンダム。

 

前のイモータルと同様、ライジングとは違う別種のモビルスピリットだ。

 

 

「【契約煌臨】を行ったこの瞬間、手札からゲルググの効果を発揮。自身をノーコスト召喚します」

 

 

ー【ゲルググメナース[一般機]】LV1(1)BP2000

 

 

効果によりフィールドへ現れたのは、群青色の装甲に一つ目が特徴的な低コストのモビルスピリット、ゲルググ。

 

 

「さらにここで、パイロットブレイヴ、キラ・ヤマトを召喚。そのままフォースインパルスに合体!!」

 

 

ー【フォースインパルスガンダムSpecⅡ+キラ・ヤマト[C.E.75]】LV2(3)BP18000

 

 

「召喚時効果でデッキ上から4枚オープン、その中にあるコンパスのカード、ネクサスのミレニアムを手札に加えます」

 

 

モビルスピリットを強化する存在、パイロットブレイヴ。

 

それがフォースインパルスと合体。そのスペックは大幅に向上するばかりか、召喚時効果により手札も増やした。

 

 

「今手札に加えたミレニアムを配置」

 

 

ー【ミレニアム】LV2(1)

 

 

ツバサの背後に、巨大な鋼の戦艦が配備される。

 

ミレニアムは、謂わゆる「母艦ネクサス」と呼ばれる、強固な耐性を持つネクサスだ。

 

 

「アタックステップ。フォースインパルスでアタックです!!」

 

 

メインステップを終了させアタックステップへ。ツバサは契約煌臨とパイロットブレイヴによってパワーアップしたフォースインパルスでアタックを仕掛ける。

 

 

「その【OC】効果で、トラッシュのソウルコアをリザーブへ。さらに契約煌臨元のライジングのアタック時効果。カウント+2、自身のBP以下の相手スピリット1体をデッキ下へ」

「でも、龍騎と龍騎サバイブは効果によって手札とデッキに戻らないよ」

「……ディケイド響鬼をデッキ下に」

 

 

今現在、フォースインパルスを上回るスピリットは存在しない。故に、全てのスピリットがアタック時効果の射程圏内であったのだが、またしても龍騎の効果がそれを阻む。

 

フィールドでは、フォースインパルスはビームライフルの銃口を、龍騎の効果の唯一の対象外であるディケイド響鬼に向け、そこからビーム攻撃を放つ。

 

ディケイド響鬼は、太鼓の鉢のような武器でそれを防ごうとするも、それごと弾き飛ばされ、呆気なく粒子化した。

 

 

「龍騎サバイブは倒せなくとも、フォースインパルスのアタックが死んだわけではありません!!…ダブルシンボルのアタックです!!」

「ふむ。ならばライフだ」

 

 

〈ライフ4➡︎2〉レイタロウ&ポン吉

 

 

レイタロウとポン吉の眼前にまで迫って来たフォースインパルスは、その銃口を彼らのライフバリアへ向け、そここら放つビーム攻撃の連射により、それを2つ砕く。

 

 

「よし。このまま一気に」

「行けると思ったかな?」

「え」

「私のライフが減少した時、手札から赤マジック、覇王爆炎撃の効果をノーコストで発揮」

「ポン」

「条件を満たした時に手札から発揮できる、手札誘発カード!?」

 

 

バトスピのカードは多種多様である。

 

その中でも一部のカードは、ライフの減少やスピリットの破壊などの、比較的緩い条件で、自身をノーコスト召喚したり、使ったりすることができる物も存在する。それらは大抵の場合、使い易く、且つ強力なカードが多い。

 

レイタロウが今から使おうとしている「覇王爆炎撃〈R〉」もその内の1枚。

 

 

「効果により、相手のBP20000以下のスピリットか、合体スピリット1体を破壊する。対象は当然、フォースインパルスだ」

「なッ!?」

 

 

天より降り注ぐ爆炎の柱。それが闇夜を明るく照らすのと同時に、フォースインパルスを焼き払って見せる。

 

ライジングの効果による連続アタックを狙っていたツバサにとって、今の一手は大きく響き………

 

 

「何かを狙っていたんだろうけど、先にそれを破壊して仕舞えば、打つ手もなかろうよ」

「ターンエンド……」

手札:1

場:【ゲルググメナース[一般機]】LV1

【キラ・ヤマト[C.E.75]】LV1

【ミレニアム】LV2

魂状態:【ライジングフリーダムガンダム】

バースト:【無】

 

 

残ったゲルググと1枚の手札ではどうすることもできず、ツバサは苦渋のターンエンドの宣言。

 

絶望的な状況の中、ターンはレイタロウへ。

 

 

[ターン06]レイタロウ&ポン吉

 

 

「メインステップ。龍騎サバイブのLVを3にアップ」

 

 

このターンの最初にレイタロウが行ったのは、龍騎サバイブのLVアップ。そのBPは13000まで上昇する。

 

 

「アタックステップ。龍騎サバイブでアタック。その効果でゲルググを破壊して、赤シンボル1つを追加」

 

 

再び悪夢のアタックステップが開始される。龍騎サバイブはショットガンより火炎弾を射出し、ツバサのゲルググを焼却。追加効果でダブルシンボルとなる。

 

これでツバサを守るスピリットはいない。この時点でほぼ負けが確定してしまう。

 

 

 

また、負けるのか。

 

 

 

瞬間。敗北を悟ったツバサの脳裏に浮かび上がって来たのは、界放市を訪れてから、負け続きとなった自分のバトルの数々。

 

自分がまだまだ未熟者であることはわかっている。そして、それをすぐに脱することができないことも。

 

だが、そうであったとしても勝ちたい。このバトル、何がなんでも勝って前に進みたい。今すぐ勝ったと言う証をこの手にしたい。

 

そう言った感情が、ツバサの心根に芽生えていて………

 

 

「!!」

 

 

その時、彼女の気持ちに応えるように、魂状態となったライジングの眼光が緑色に強く光り輝く。

 

 

「ライジング……?」

 

 

ライジングの不思議な現象に疑問を抱くツバサ。

 

ふと、フィールドだけでなく、Bパッドに視界を移す。するとそこには、僅かに白い光を放つライジングと、ネクサスである、ミレニアムのカードがあって………

 

 

「そ、そうか。まだ私は、私達は戦える。そう伝えたいんですね、ライジング!!」

 

 

ツバサはライジングの意図に気付く。

 

ライジングはツバサに教えようとしていたのだ。まだ使えるカードがあることを、諦めてはいけないことを。

 

 

「独り言なんて、どうしたんだいツバサちゃん」

「いえ何も。ただ教えてくれたんです。カードが、相棒が、諦めるなと!!……相手によってコンパスのスピリットがフィールドを離れたこの瞬間、ネクサス、ミレニアムのLV2効果を発揮!!」

「!」

「自分の手札が、相手の手札以下の時、デッキから1枚ドローします」

 

 

ライジングが教えてくれた、母艦ネクサス、ミレニアムのLV2効果。

 

これがツバサにとってのラストチャンスだ。

 

 

「たった1枚のドロー?……まさかその1枚でここから逆転するつもりなのか」

「そのまさかです。いつも一緒に戦ってくれるスピリット達の期待に応えるため、私はこのドローで、奇跡を起こします!!」

 

 

緊迫するドローの瞬間。ツバサはBパッドに装填されている己のデッキトップに指先を当てて………

 

 

「ドロー!!」

 

 

力強い、渾身のドローを披露する。

 

一か八かの大勝負。敗北か番狂せか。このドローの内容で、全てが決する。

 

 

「………」

 

 

ツバサは恐る恐る、そのドローカードを確認する。

 

 

「………よし!!」

 

 

結果、彼女の口元から口角が上がる。

 

強い信念が手繰り寄せたのか、見事に、目当てのカードを引いたのだ。今からそれが、この場に呼び出される。

 

 

「【契約煌臨】発揮。対象は魂状態のライジングです」

「ッ……ここでまた契約煌臨のカードをドローしたのか」

 

 

フィールドで、色素を失ったライジングがまた色を取り戻す。そして、新たな姿へと昇華せんと、装甲から強い輝きを放ち……

 

 

「聖域より飛び立て、空舞える勇者よ!!……ストライクフリーダムガンダム、LV2で契約煌臨!!」

 

 

ー【ストライクフリーダムガンダム弍式】LV2(3)BP18000

 

 

強き輝きの中、姿を見せたのは、黒き機翼と、二丁のビームライフルを両手に携えた、白きモビルスピリット、ストライクフリーダムガンダム。

 

フリーダムの名を冠する、ライジングの正統進化形態だ。

 

 

「このスピリット、今までのスピリット達と比べて、まるで気配が違う」

「当然です。このカードは私のデッキの切り札、エースカードなのですから。煌臨アタック時効果を発揮!!」

 

 

ツバサのエースカードであるストライクフリーダムガンダム。

 

その効果のヴェールが脱がれる。

 

 

「このターンの間、相手のスピリット1体の効果を発揮させず、その後スピリット1体をデッキ下に送ります!!」

「効果を発揮させないだって!?」

「これにより、龍騎の効果を発揮させず、そのままそれをデッキ下へ!!」

 

 

ストライクフリーダムは、二丁のビームライフルからビーム攻撃を連射。

 

それに被弾した龍騎は、手札デッキに戻らないと言う効果を発揮できずに、レイタロウのデッキ下へと送られてしまう。

 

 

「相手スピリットの効果の無力化。それが私のエース、ストライクフリーダムの力です!!……龍騎サバイブのアタックを迎え撃て!!」

 

 

龍騎サバイブは鋼鉄を纏った巨大な赤いドラゴンを呼び出すと、それの背部に搭乗。宙へと飛び出し、空を舞う勇者、ストライクフリーダムへ勝負を仕掛ける。

 

二丁のビームライフルによるビーム攻撃と、火炎弾が交差し合い、互いに牽制する中、遂に龍騎サバイブは赤いドラゴンの口内より放つ火炎放射と、自身の銃から放つ火炎弾を連射すると言う大技を放つ。

 

しかし、ストライクフリーダムは、その攻撃をほぼ全弾まともに被弾したにもかかわらず、まさかの無傷。

 

直後、大技の隙を突き、ストライクフリーダムは、左右腰部にマウントしていたレールガンよりレール砲を放って、龍騎サバイブと赤いドラゴンを撃ち抜いて爆散へと追い込む。

 

 

「ふふ、この布陣を白デッキで突破してくるなんてね。大したものだ。ターンエンド」

手札:2

バースト:【無】

 

 

ストライクフリーダムによるカウンターで、全てのスピリットを失ってしまったレイタロウ。

 

逆にピンチになってしまったにもかかわらず、何故か僅かに微笑みながら、そのターンをエンドとする。

 

次は見事に苛烈な赤属性の攻撃を跳ね返して見せた、ツバサのターンだ。

 

 

[ターン07]水乃ツバサ

 

 

「メインステップ。キラ・ヤマトをストライクフリーダムに合体!!」

 

 

ー【ストライクフリーダムガンダム弍式+キラ・ヤマト[C.E.75]】LV2(3)BP24000

 

 

場に残ったパイロットブレイヴと、ストライクフリーダムが合体。土壇場でBP20000を超えの、強力なスピリットが爆誕する。

 

 

「アタックステップ、ストライクフリーダムでアタック。ダブルシンボルでライフを2つ破壊します!!」

 

 

アタックステップへ直行。ストライクフリーダムで、気合いの籠ったアタック宣言。

 

レイタロウの残った2枚の手札では、もうこの状況を覆せる一手はなくて………

 

 

「良いバトルだった。ライフで受けよう」

 

 

〈ライフ2➡︎0〉レイタロウ&ポン吉

 

 

ストライクフリーダムは、レールガンと同じく腰部にマウントしていたビームサーベルを手に取り、そのままそれを縦一閃に振って、レイタロウの残り2つのライフバリアを全て斬り裂いて見せる。

 

 

「やった、私達の勝ちです!!」

 

 

これにより、勝者は水乃ツバサだ。諦めない気持ちが、強くなりたいと言う願いが、彼女に勝利を齎した。

 

界放市を訪れて以降、初の勝利に、ツバサは大いに喜んだ表情を見せる。

 

 

「いやぁ負けた負けた。でも最後に良いバトルができてよかったよ。オマエもそう思うだろ、ポン吉?」

「ポン!」

 

 

敗北こそしたが、レイタロウとポン吉は、バトルができてご満悦な様子。

 

 

「意外と、と言ったら失礼なのですが、レイタロウさん、とても強かったです。生前では有名なカードバトラーだったりしたのですか?」

 

 

ツバサがレイタロウに訊いた。彼のバトルを見た後だと、当然の疑問である。

 

 

「いや、特にそう言うわけではないよ。ただ」

「ただ?」

「私には、まるで神に選ばれた『バトルの申し子』みたいな1人娘がいてね。バトルのことは、その子に色々教わっていたんだ」

「へぇ、娘さん、そんなに強い方なんですね」

「あぁ、自慢の娘さ」

「娘さんとも是非、お手合わせ願いたいです」

 

 

自身に娘がいたことを明かすレイタロウ。彼の視線は笑顔で眠っているライへと向けられていたのだが、人魂みたいな霊体であるが故に、ツバサにその視線を気づかれることはなかった。

 

 

「じゃあねツバサちゃん。最後にバトルとは言ったものの、やっぱりまだまだやりたいから、ツバサちゃんがよければ、また遊びにおいで」

「はい、また来ます。お世話になりました、レイタロウさん、ポン吉」

「ポン!」

「そこで寝ている子にも、よろしくね」

 

 

最後にそう言い残すと、レイタロウとポン吉は闇夜に紛れて姿を消した。

 

不可思議と謎に満ちた未知なる体験。ツバサは、この体験を一瞬足りとも忘れることはないだろう。

 

 

 

******

 

 

「本当なんだって、信じてよヨッカさぁん!!」

「幽霊って、この世は大科学時代だぞ?….そんな非科学的な存在いるわけねぇだろ」

「自分も幽霊にビビって依頼来なかったくせに」

「そ、それはオレにも用事があったからであってだな」

 

 

翌日。

 

平日の昼間であるにもかかわらず、今日も春神探偵事務所はライとヨッカの言い合いで賑わっている。

 

なかなか幽霊の存在を信じないヨッカに、ライはもう1人の証人であるツバサに助け舟を求めて。

 

 

「ね、ツバサも見たよね幽霊。怖かったよね?…ね?」

「ひょっとして、昨日のアレのこと言ってます?…アレはただの灯火ですよ。風に揺られて私たちの目の前に倒れて来ただけです。危うく山火事になるところでしたが」

「だろ?…そんなことだと思ったぜ」

「えぇウソだって、絶対自分から動いて『こんにちは』って言ったよ夜だったのに!!」

「変な夢でも見たんじゃないですか?…昨日、気を失ったライをここまで運ぶの大変だったんですからね」

「えぇ、じゃあやっぱ私の見間違い?」

 

 

ツバサは嘘を吐いている。しかしそれは、レイタロウとポン吉が、あの森、児雷也森林で静かに生きて行くための、優しい嘘だ。

 

 

「さて、そろそろ乾く時間ですし、屋上に干してある洗濯物でも回収して来ますか」

「あ、私も行く行く〜〜!」

「洗濯したての物で遊ぶのはダメですよ」

「え〜〜」

「え〜じゃありません」

 

 

幽霊の話題など一瞬で過ぎ去り、ライとツバサは2人で、干した洗濯物を回収するべく、この雑居ビルの屋上へと歩いて行った。

 

事務所に残ったのは、九日ヨッカただ1人。

 

 

「今日も元気だな2人とも。にしても、児雷也森林の幽霊、か。まさかな」

 

 

一瞬、幽霊の話に、何かの可能性を感じたヨッカだったが、幽霊と言うモノが、あまりにも非科学的な存在であることから、すぐさま「それはない」と考えを改める。

 

彼が感じた可能性。それが語られるのは、もう少し先の話だ。

 

 





次回………

#05「影からの来訪者」


******


現在、王者の鉄華の大長編、執筆中です。
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