バトルスピリッツ 勇者と魔女   作:バナナ 

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#05「影からの来訪者」

 

 

 

こんにちは。私は春神ライ。色々あって探偵やってます。まぁ言っても、そんなに探偵っぽいことはしてないんだけどね。

 

そんな私にも、最近相棒ができました。しかもめっちゃ可愛い子。ありえんくらい嬉しい。私と並んだら、もうプリキュアできるんじゃないかってくらい可愛い。

 

もう今からいつでもプリキュアになれるように変身ポーズでも考えておこうかな………

 

ヤバ。話脱線しちゃった。どこまで話したんだっけ。

 

あ、そうそう最近可愛い相棒ができてですね、ツバサって言う子なんですけど。ちょっとその子に関してある発見があったので、今回、ここでお話ししたいなと思っております。

 

では、第5話です。どうぞ〜

 

 

******

 

 

 

「私、ナレーション、クソ下手だな」

「なんの話してるんです?」

「いや、別に」

 

 

冒頭から思いっきりコケたライ。事務所のソファで寝そべりながら、己の説明の下手さを痛感する。

 

今は仕事なのか、ヨッカはいない。ツバサがライのカップにコーヒーを注ぎ、手渡す。ライはそれを飲んで「美味い」と笑みを浮かべながら一言。

 

 

「あ、そうそう。最近マジでずうっと思ってたことあったんだけどさ、訊いていい?」

「はい。なんでしょうか」

 

 

コーヒーを飲み終えると、カップをテーブルに置くライ。いつになく真剣な顔つきだ。

 

ツバサは何か重大な話でもされるのかと身構えたが………

 

 

「ツバサってさ。いつも服、同じだよね」

「は?」

「いやだから服!!……水色のカーディガン、翼マークの入った黒いTシャツ。なんかアメリカンなジーパン!!……いつも一式全部同じ服じゃん!!」

 

 

ライが指摘して来たのは、ツバサの身につけている衣服であった。

 

彼女らが出会ってから、やがて2ヶ月が経とうとしているが、ツバサは最初にライと知り合ってから今日まで、毎日同じ衣服を着用している。ライは最近、それが気になってしょうがなかったのだ。

 

 

「え、似合ってませんか?」

「いや違う。似合ってる。それは凄く似合ってるよ?…可愛いよ?…でもね、そう言う問題じゃないの。洗濯はしてるのか?…お?」

「なんですか、その変な話し方。洗濯くらいしてますよ。まぁ、同じ物を4着持ってるので、疑うのは仕方のないことですが」

「はぁ!?……全く同じ服を!?……どう言うこと、他の服はないの!?」

「持ってません」

「えぇ!?」

 

 

ライは驚く。あれだけ家庭的能力の高いツバサが、まさか己の衣服にここまで興味がないとは思ってもいなかったからだ。

 

 

「どんだけオシャレに無頓着なんだ。新しい服を買おうとは一度も思わなかったの?」

「はい。この服はお師匠からのお下がりで、似合っているからと」

「お師匠?」

「あ、えと、私の父親代わりの方です」

「ふ〜ん」

 

 

ツバサの口から出た「お師匠」と言う人物。呼び方からして、何か普通ではない、特別な関係の匂いがするが、今はそんなことに構っている場合ではなく………

 

 

「え、いやちょいちょい、待って。父親代わり?……まさかその『お師匠』って男の人?」

「はい」

「じゃ、じゃあ、そのお下がりの服はメンズってこと?」

「そう、なんですかね」

「そうだよ。変だと思った、よく見たら肩のとことか若干サイズ合ってないし!!」

 

 

重要なことに気がつくライ。ツバサは何も知らずに男物の衣服を身につけていたのだ。

 

 

「よしツバサ、明日服買いに行こう、服!!……飛びッキリ女の子っぽいやつをね」

「え。いや、別にいいですよ、服はこれで」

「ダメ!!……女の子がオシャレしないとなありえないから。好きな男の子とかいないの!?」

「いません。ライはいるんですか?」

「そ、それは……」

 

 

ツバサの思わぬカウンタートラップに、ライは立ち所に赤い髪の少年を思い浮かべて赤面してしまう。

 

 

「とにかく行く!!……行くったら行くぞ!!」

「えぇ……」

 

 

ツバサ本人はあまり乗り気ではないが、彼女に女の子らしいオシャレをさせるべく、ライは彼女を半ば強引に、ジークフリード区にあるデパートへ連れて行く。

 

その決行は明日だ。

 

 

******

 

 

界放市ジークフリード区にある大きなデパート「ニュージーク」………

 

8年前に開店してから現在まで、常に多くの人々から愛されている有数のデパートだ。

 

平日の昼間。まだ若干人足が少ない中、ツバサはいつもの格好で、そのデパートの門前でライを待ち続けていた。

 

 

「お、いたいた。お待たせ〜」

「ライ。遅いですよ、2分遅刻です」

「2分くらいいいじゃん。性懲りも無く同じ服着て来やがって」

「ライは、いつもと違いますね」

「そりゃそうさ。女の子は出かける時は、必ずオシャレするもんだからね」

 

 

ツバサとは正反対に、ライは現代の女の子らしく、とてもオシャレだ。

 

基本的には虎の刺繍の入った赤いスカジャンを着こなす彼女だが、今日は黒いキャップに、透け感のあるメッシュ素材の黒いベスト、白いインナー。下には白いカーゴパンツに白いスニーカーと、全体的に鮮やかで、ゆったりとしたシルエットが特徴的なホワイトコーデだ。夏という季節にもピッタリである。

 

 

「まぁいいや。取り敢えず入るぞコノヤロー」

「なんでちょっと怒ってるんですか」

 

 

ポケットに手を入れ、偉そうに胸を張って歩きながらデパートの中へと入って行くライ。

 

彼女が何かに怒っていると思っているツバサだが、それはとんだ勘違いであると、直ぐに気がつくことになる。

 

 

ー………

 

 

「ど、どうでしょうか」

「わぁかわいい!!……めっちゃ似合ってんじゃん!!…ツバサ、やっぱ良い素材だわ。よし、次はこれを着てみよう!!……あ、コレもいい、コレも似合いそう!!」

「………」

 

 

デパートの中にある洋服店に足を運ぶこと、およそ1時間。ツバサは精神的に疲労していた。

 

無理もない。これだけ長い時間の間、ライの着せ替え人形として拘束されているのだから。何度も服を着替える作業をするのは、慣れてない者にとっては虚無感極まりない。

 

 

「あの、ライ」

「ん、なに?」

「こんなに服を着替えて、意味はあるのでしょうか?」

「あるに決まってんでしょうが。似合ってるかどうかわかんないと、買う意味ないじゃん」

「全部似合っていると仰っていたような……」

「じゃあ今まで着たヤツ、全部買っちゃおう!!」

「は!?」

 

 

そう告げると、ライは、ツバサが着用して来た推定15着以上の衣服が詰まった買い物籠4つを手に持ち、会計の方へと進み始める。

 

 

「ちょっと待ってください。今まで着たヤツって、まさか試着した服を全て買う気ですか?」

「そだよ。あ、今着てるヤツも脱いでね、買うから」

「そんなお金、どこから出て来るんですか」

「おいおい、私の可愛い相棒ちゃん。いつも何のために働いてると思ってんだい」

「生活のためでしょ!!……考え直してください。絶対ヨッカさんに叱られますよ」

「ふふふ。私は自分が怒られようが何をされようが買うよ。これでツバサが女の子として1つの大きな階段を登れるならね」

「カッコつけて言うセリフじゃないですよ」

「店員さんお会計お願いしまーす!!」

 

 

ツバサの静止を振り切り、得意気な顔でレジ前まで到着したライ。

 

全ての買い物籠を、黒いスーツを着用した青年の店員に渡す。店員は素晴らしい速さで値段をチェックして行き………

 

 

「お待たせしました。合わせて97万円です」

「え」

 

 

その合計金額を耳に入れるなり、ライは固まった。

 

足りないのだ。口座から使えるだけのお金を引き出して来ても、どうやっても、圧倒的に………

 

 

「ほら。足りるわけないじゃないですか。1着2万円を超える物だってあったのに。て言うか服って高いんですね」

「そ、そんな〜」

「落ち込んでないで、早く直して来ますよ。すみません店員さん、お手数をおかけしました」

 

 

ツバサが4つある買い物籠の内2つを持ち上げ、ライに購入しようとした物を直すよう指示するが………

 

レジ前の店員が笑みを浮かべ。

 

 

「ちょっとお待ちくださいお客様。実は本日、当デパートが開店して、ちょうど8年目の記念日なのですが、この日に限り、なんと100万円分無料の商品チケットのゲットチャンスに挑戦することができます」

「え、100万円分!?」

「マジですか!!」

 

 

店員の思わぬ発言に、ツバサは驚き、ライは目を輝かせる。

 

 

「え、じゃあ待って待って。そのチャレンジに成功すれば、コレ全部貰えるってこと!?」

「はしゃがないでください。お師匠が昔言ってました、無料より高い物はないと。この話、怪しいですよ。第一、8年目の記念日って中途半端すぎません?」

 

 

テンションが跳ね上がり、はしゃぎ出すライ。冷静なツバサは、それを怪しいと指摘する。

 

 

「大丈夫大丈夫。で、店員さん。チャレンジって何すればいいの?」

「元気ハツラツですね。内容は至ってシンプル。当デパート最強カードバトラーである、このカンクロウにバトルで勝つことでございます」

「バトルで……」

「バトルに勝つだけで100万円貰っていいの!!」

「まぁ、正確には100万円分の商品チケットで、このデパート内で買える物に限られますがね」

 

 

100万円チャレンジの内容は、なんと目の前にいるスーツの店員、カンクロウにバトルで勝つことだった。

 

バトルならば負けるわけがない、と。粋がるライだが、ツバサはよりこのチャレンジに不信感を抱く。

 

 

「ライ。やっぱり怪しいですよ。今日は大人しく帰りましょう」

「ツバサは心配性だなぁ。大丈夫だって、だって店員のお兄さん、契約スピリットに選ばれる程度には、強いんでしょう?」

「え」

 

 

契約スピリットと言うライの発言に、ツバサは驚かされる。

 

 

「おや、これは驚いた。まさか見抜かれていたとは」

 

 

そう告げながら、カンクロウは己の契約スピリットを取り出し、彼女らに見せつける。それは『デストロイア』と言う契約スピリット。

 

 

「私、そう言うのなんとなくわかっちゃうんだよね。お兄さんが強いくて負けないから、こんなに無茶な内容なんでしょ?」

「左様です。しかし、今までの発言からして、貴女様は私には負けないと思われているようですが」

「そりゃそう。私は必ずバトルに勝つからね」

「フフ……面白いお嬢さんだ」

 

 

勝ったら100万円と言う滅茶苦茶なチャレンジの内容は、カンクロウと言う強いカードバトラーがいてこそだった。

 

しかし、そんな彼が相手でも、ライは負ける気がしないらしく………

 

 

ー………

 

 

あれから少しだけ時間が経過した。ライ、ツバサ、カンクロウの3人は、デパート内に存在するバトル場へと足を運んでいた。

 

そこでバトルを行うのは、当然ライとカンクロウだ。既に互いにBパッドを装着し、バトルの準備を完了させている。

 

 

「そう言えば、まだ名乗ってなかったよね。私、春神ライ。で、こっちは相棒の水乃ツバサ。2人で探偵やってます。以後、お見知り置きを!!」

「フフ、2人とも、良いお名前ですね」

「バトルに勝つだけで100万円なんて、やっぱり怪しい。何か裏があるんじゃ」

 

 

ライがカンクロウに自己紹介する中、ツバサは未だにこのチャレンジに不信感を抱いていた。金額が金額なのもあるのだろう。

 

 

「かなりの金額ですからね。手は抜きませんよ」

「当然。さぁ、バトスピタイムの始まりだ」

 

 

……ゲートオープン、界放!!

 

 

コールと共に、100万円と言うとんでもない金額が掛けられたバトルスピリッツが幕を開ける。

 

先攻はライだ。100万円獲得を目指して、チャレンジを開始する。

 

 

[ターン01]春神ライ

 

 

「メインステップ。ミオリネ」

 

 

ー【ミオリネ・レンブラン】LV1

 

 

「ほぉ黄属性。ネクサスカードですか」

 

 

ライの初手は黄属性のネクサスカード、ミオリネ・レンブラン。

 

フィールドには何も出現しないタイプであるが、その効果はとても強力。特にライの契約スピリット、エアリアルとの相性が良い。

 

 

「良い初手で助かった。ついでにミラージュ『株式会社ガンダム』をセット」

 

 

ライは、もう1枚、ミラージュをバーストゾーンにセット。「株式会社ガンダム」のカードが、そこへと浮かび上がって来る。

 

 

「これがセットされていると、系統に学園を持ってるカードを使う時、軽減シンボルを1つ満たせる。これで実質、シンボル2つだもんね。ターンエンド」

手札:3

場:【ミオリネ・レンブラン】LV1

バースト:【無】

ミラージュ:【株式会社ガンダム】

 

 

安定の足場を配置し、幸先の良いスタートを切れたライ。ターンは実力が未知数のカンクロウへと移る。

 

 

[ターン02]カンクロウ

 

 

「メインステップ。行きますよ、先ずは第一陣、デストロイア幼体を4体、LV1で召喚」

 

 

ー【デストロイア(幼体)】LV1(1)BP1000

 

ー【デストロイア(幼体)】LV1 (1)BP1000

 

ー【デストロイア(幼体)】LV1 (1)BP1000

 

ー【デストロイア(幼体)】LV1 (1)BP1000

 

 

「な、4体!?」

 

 

カンクロウのフィールドに、クモのような6本の足と長い胴体を持つ黒く、不気味なスピリット、デストロイア幼体が一気に4体展開される。

 

その一斉召喚に驚いたのは、対戦相手のライではなく、まだバトルの経験の浅いツバサだった。

 

 

「バトスピは、同名のカードを3枚までしかデッキに入れられないはず。なのに何故4枚も!?」

「私の操るデストロイアは、バトスピ界の中でも異端児中の異端児。特に幼体は、デッキに何枚でも入れることができるルール変更効果をお持ちです」

「デッキに何枚でも!?……そんなカードもあるのか」

 

 

また1つ、バトルスピリッツのことを知ったツバサ。説明後、カンクロウは再びカードを動かして。

 

 

「デストロイア幼体の効果。場のデストロイア4体を破壊」

「え」

 

 

起動されるデストロイア幼体の効果。それにより、場の全てのデストロイア幼体が、聞くに耐えない気色悪い断末魔を上げながら自爆。

 

 

「な、なんのために自分のスピリットを4体も破壊したんだ。これじゃバトルにならない」

 

 

自分で展開したスピリットを、自分の効果で消して行く様は、まさに滑稽に見える。

 

そう考えたツバサだったが。

 

 

「何かすごい奴を呼ぶための下準備でしょ」

「え、下準備?」

 

 

ライがズバリそう答える。彼女の長年の経験故の直感だ。

 

そしてその直感は的中しており………

 

 

「御名答。流石ですね。効果の説明もなしに、私がしようとしていることを理解できるとは。そうです。この効果で破壊した時、手札からノーコストでデストロイアを召喚します。来なさい、第二陣。魔界より出し暗黒の魔竜、契約スピリット、デストロイア!!」

 

 

ー【デストロイア】LV2(3)BP15000

 

 

デストロイア幼体らによる爆発。それによって生まれた爆煙が晴れると、そこにいたのは、まるで魔界に棲まう魔竜。

 

幼体達が集合し、完全体となったデストロイアが、フィールドで咆哮を張り上げ、ライを威嚇する。

 

 

「こ、これが契約スピリット!?……契約煌臨もしていないのに、BPが桁違いだ」

「契約デストロイアは契約煌臨ができません。ただしその代わり、強力なステータスと効果を内蔵しているのです」

「おぉ、結構強そうじゃん。まぁ100万円賭けてるんだから、これくらいは出してもらわないとね」

 

 

これぞまさに背水の陣。カンクロウが手札と言う大事なリソースを全て吐き出しながら召喚した、超大型の契約スピリット、デストロイア。

 

それが持つ強力な効果が今、解禁される。

 

 

「アタックステップ。デストロイアでアタックします。その効果で、自分の場のシンボルの数だけ、カードをオープンし、その中のデストロイアのシンボルの数まで、相手のスピリットを好きなだけ破壊します」

「アタック時にオープン。随分と珍しい効果ですね」

 

 

契約デストロイアの効果に対し、そうリアクションしたのはツバサだ。

 

それと同時にこうも思っていた。「手札を全て投げ打って出す程ではない」と。

 

そうだ。オープンと破壊だけなら、わざわざ4体ものスピリットを生贄にしなかろうが、2枚程度のカードの組み合わせ次第で行える。

 

しかし、本当に恐ろしいのはここからであり………

 

 

「貴女の場のスピリットは元より0。破壊はできません。だが、オープンされたこのカード、デストロイア幼体2体は、ノーコストで召喚できます。契約デストロイアからコアを確保し、第三陣よ、現れなさい」

 

 

ー【デストロイア(幼体)】LV1(1)BP1000

 

ー【デストロイア(幼体)】LV1(1)BP1000

 

 

「スピリットをデッキの上から直接召喚した!?」

「自分のターンですので、疲労状態での召喚になってしまいますがね」

 

 

威嚇する際とは違う音の咆哮を張り上げる契約デストロイア。その咆哮は仲間を呼ぶための咆哮だったのか、地中より、自身の足元にも及ばない程のデストロイア幼体が2体出現する。

 

 

「ワオ。なんてオモロ強強効果!!…そうやって仲間を増やして、物量で攻めて行く感じのデッキなんすね」

「フフ。喜んでくれているのは光栄ですが、デストロイアのアタックは継続中ですよ。赤と紫のダブルシンボル!!」

「ライフで受けるよ」

 

 

〈ライフ5➡︎3〉春神ライ

 

 

契約デストロイアは、口内から電撃を放ち、ライのライフバリアを一気に2つ砕く。

 

 

「ターンエンドです」

手札:0

場:【デストロイア】LV1

【デストロイア(幼体)】LV1

【デストロイア(幼体)】LV1

バースト:【無】

 

 

全ての手札を投げ捨て、序盤から超豪快な展開を見せたカンクロウ。

 

次はライのターンだ。強大な契約デストロイアを前に、どう立ち向かうのか、実物である。

 

 

[ターン03]春神ライ

 

 

「メインステップ。ネクサスとミラージュで軽減を満たして、1コストで、契約スピリット、エアリアルをLV2で召喚」

 

 

ー【ガンダム・エアリアル】LV2(2)BP4000

 

 

そよ風と共に現れたのは、白い装甲に身を包んだモビルスピリット、エアリアル。ライのデッキの根幹を支えるキーカードである。

 

 

「エアリアル。貴女に似て優雅なスピリットと契約しているのですね」

「お、めっちゃ褒めてくれんじゃん。でも手は抜かないかんね。さらにパイロットブレイヴ、スレッタ・マーキュリーを召喚して、エアリアルと合体」

 

 

ー【ガンダム・エアリアル+スレッタ・マーキュリー】LV2(2)BP8000

 

 

早速パイロットブレイヴを召喚し、エアリアルに合体。攻勢に転ずる。

 

 

「ミオリネのLVを2に上げ、アタックステップ。頼むよ、エアリアル。アタック時効果でデッキ下から1枚ドロー」

 

 

エアリアルによるアタック。この際のフラッシュタイミングは、防御側のカンクロウから順番が回って来るが、今の彼の手札は0。

 

当然ながら何もできずに、攻撃側、ライのフラッシュタイミングが回って来る。

 

 

「フラッシュ【契約煌臨】を発揮。遥か未来を駆け抜ける、私の相棒、エアリアルを、エアリアル・ガンビットに!!」

 

 

ー【ガンダム・エアリアル[ガンビット]+スレッタ・マーキュリー】LV2(2)BP17000

 

 

瞬間。エアリアルのシールドが細かく分解され、ガンビットと呼ばれる無数のユニットを展開。それらは美しい球体を描きながら、エアリアルの周囲を飛び交う。

 

この形態こそ、エアリアル・ガンビット。ライのエースカードの1枚だ。

 

 

「エアリアル・ガンビットの煌臨アタック時効果。LV1と2のスピリット1体ずつをデッキ下に置き、スレッタがいれば、バトル中、黄シンボル1つを追加する。契約デストロイアを倒して、ダブルシンボルになるよ」

 

 

エアリアル・ガンビットは、無数のガンビットへ指示を送ると、それらは契約デストロイアへと向かって行き、そこへビーム攻撃を集中砲火。

 

10コストの超大型スピリットである契約デストロイアも、流石に激しい断末魔を上げながら粒子化。倒される。

 

 

「ミオリネの効果。学園スピリットが相手スピリットを倒した時、私のライフ1つ回復。ついでにスレッタ。デッキ下から1枚ドロー、ターン1同名でトラッシュのソウルコアをリザーブに」

 

 

〈ライフ3➡︎4〉春神ライ

 

 

ライフ回復にドローにコア回収。とにかくやりたい放題と評価できる程に効果を誘発させて行くライ。

 

しかし、効果が誘発するのは、彼女のカードだけではなくて………

 

 

「契約デストロイアは、魂状態でフィールドに残ります。そしてこの瞬間、契約デストロイアの更なる効果が発揮されます」

「!」

「デッキ上から3枚オープン」

 

 

色素を失い、アタックもブロックもできない魂状態としてフィールドに残る契約デストロイア。

 

その効果で3枚のカードが、カンクロウのデッキ上からオープンされる。

 

それらは、いずれも「デストロイア(幼体)」のカードであり………

 

 

「オープンされたデストロイア幼体は、ノーコストで召喚できます。コアの関係で1枚はデッキ下に置き、残り2枚を召喚。現れなさい、第四陣」

 

 

ー【デストロイア(幼体)】LV1(1)BP1000

 

ー【デストロイア(幼体)】LV1(1)BP1000

 

 

「私のデストロイアは、倒されてもただでは転びませんよ」

「へぇ。手札ぶん投げのアフターケアもバッチリってか。でも、エアリアル・ガンビットのアタックは続いてるよ」

「それはもちろん、ライフで」

 

 

〈ライフ5➡︎3〉カンクロウ

 

 

無数のガンビットより放たれるビーム攻撃が、カンクロウのライフバリアを、一気に2つ焼き切る。

 

 

「ターンエンド」

手札:4

場:【ガンダム・エアリアル[ガンビット]+スレッタ・マーキュリー】LV2

【ミオリネ・レンブラン】LV2

バースト:【無】

カウント:【1】

 

 

「あれ、ライ。エアリアル・ガンビットの効果を使って一気に畳み掛けないんですか?」

「あの効果は【OC:2】の効果だからね。まだ使えないのさ」

 

 

エアリアル・ガンビットでバトルのテンポを取り、ライはそのターンをエンド。

 

次は、倒しても倒しても湧いて出て来るデストロイアを操る、カンクロウのターンだ。

 

 

[ターン04]カンクロウ

 

 

「メインステップ。そのデッキが相手だと、長期戦は不利そうですね。なら、このターンで一気果敢に攻め込んでみましょう。マジック、バスタースピア」

「!」

「効果でネクサス、ミオリネ・レンブランを破壊して2枚ドローします」

 

 

カンクロウの放ったマジックにより、ライのBパッド上にあるミオリネのカードがトラッシュへと誘われる。

 

 

「さらに、今引いた2枚、デストロイア幼体を連続召喚。第五陣」

 

 

ー【デストロイア(幼体)】LV1(1)BP1000

 

ー【デストロイア(幼体)】LV1(1)BP1000

 

 

追加で2体のデストロイア幼体が呼び出され、カンクロウのフィールドには、6体のデストロイア幼体が揃う。

 

 

「さらにデストロイア幼体の効果。4体破壊し、魂状態の契約デストロイアをノーコストで召喚。第六陣」

 

 

ー【デストロイア】LV2(3)BP15000

 

 

爆散する4体のデストロイア幼体。しかしそれは、魂状態となっていた契約デストロイアの復活の儀式。

 

契約デストロイアは、色素を取り戻し、再びフィールドで咆哮を張り上げる。

 

 

「あの効果、魂状態のスピリットも召喚できるのか。これはちょいと計算ミスったな」

「それにしては余裕ですね。ならその余裕、このアタックで消し飛ばして見せましょう。アタックステップ、契約デストロイアでアタック」

 

 

宣言通り、カンクロウが仕掛けて来た。

 

契約デストロイアの効果も、この瞬間に発揮される。

 

 

「契約デストロイアのアタック時効果。自分フィールドのシンボルの数だけデッキ上のカードをオープン、その中のデストロイアのシンボルの数だけ、相手スピリットを破壊します」

 

 

今のカンクロウのフィールドの合計シンボルは4枚。よって4枚のカードがオープン、その内容は、またしても全て『デストロイア(幼体)』のカードであり……

 

 

「シンボルは4つ分、エアリアル・ガンビットを破壊します」

 

 

デストロイアは、頭部の一角に膨大なエネルギーを溜め込み、それを強靭な刃として、エアリアル・ガンビットに振るう。

 

エアリアル・ガンビットは、ガンビットを用いてそれを防御するも、防げたのはほんの僅かなひと時、あっという間にガンビットごと本体を切り裂かれ、爆散してしまう。

 

 

「そ、そんな。ライのエアリアル・ガンビットが」

 

 

爆散し、魂状態となるエアリアルに、唖然とした表情を見せるツバサ。

 

いつもライとバトルしている彼女にとって、エアリアル・ガンビットとは超えるべき存在の1つ。そのような表情を見せるのも当然か。

 

 

「カンクロウさんやる〜…ガンビットがやられたのは久しぶりかも」

「倒すだけではありませんよ。契約デストロイアのコアを少し拝借し、今オープンした4枚のデストロイア幼体を、効果により全て、疲労状態で召喚。第七陣」

 

 

ー【デストロイア(幼体)】LV1(1)BP1000

 

ー【デストロイア(幼体)】LV1(1)BP1000

 

ー【デストロイア(幼体)】LV1(1)BP1000

 

ー【デストロイア(幼体)】LV1(1)BP1000

 

 

これにより、デストロイアの数は、契約デストロイアも合わせ、計7体。

 

それが一堂に蠢き犇き合うその光景は、まさに百鬼夜行。さらに、今尚も、契約デストロイアのアタックは継続中であり………

 

 

「スピリットがこんなに……ライ!!」

「モーマンタイ。私のデッキはそんなヤワじゃないって。フラッシュマジック、株式会社ガンダム」

「!」

 

 

ライの身を案じるツバサの声が荒げる時、ライが使用したのは、ミラージュにセット中と同じ株式会社ガンダムのカード。

 

今度はそのフラッシュ効果が発揮される。

 

 

「効果により、このターンの間、相手のスピリットはアタックできない」

「おぉ、これは素晴らしい。ミラージュでシンボルを生み出すカードが、防御札にもなるとは」

「契約デストロイアのアタックはライフで受ける」

 

 

〈ライフ4➡︎2〉春神ライ

 

 

契約デストロイアの、口内により放たれる稲妻が、再びライのライフバリアを2つ砕く。

 

その数は残り2つなるも、直前で放ったマジックカードの効果により、残りのデストロイア幼体達は、アタックが行えなくなり………

 

 

「ふむ。ならばターンエンドにしましょう」

手札:0

場:【デストロイア】LV1

【デストロイア(幼体)】LV1

【デストロイア(幼体)】LV1

【デストロイア(幼体)】LV1

【デストロイア(幼体)】LV1

【デストロイア(幼体)】LV1

【デストロイア(幼体)】LV1

【デストロイア(幼体)】LV1

バースト:【無】

 

 

合わせて7体ものスピリットを従え、カンクロウはそのターンを終える。

 

次はライのターンとなるが………

 

 

「私のデストロイアは不死身。貴女には決して攻略できません」

「確かに、デストロイアは不死身かもね。デストロイアは」

「?」

「このバトル、完全に理解した」

 

 

さぁ、ラストターンの時間です。

 

 

ライによるラストターンが宣言。このバトルは、終極に向かって動き出して行く。

 

 

[ターン05]春神ライ

 

 

「メインステップ。ここまで頑張ったカンクロウさんに教えてあげるよ。エアリアルにはガンビットだけじゃない。もう1つ、強力な進化形態がいることを」

「ほぉ」

「魂状態のエアリアルを対象に【契約煌臨】を発揮。遥か彼方をも撃ち抜く、私の相棒、エアリアル改修型、LV2で契約煌臨」

 

 

ー【ガンダム・エアリアル(改修型)+スレッタ・マーキュリー】LV2(2)BP18000

 

 

「スレッタの効果により、煌臨した改修型に合体」

「こ、これがライの、エアリアルのもう1つの進化形態!?……なんて力強い存在感を放つスピリットなんだ」

 

 

魂状態となり、色素を失ったエアリアル。神々しい光と共に、新たな姿を獲得する。

 

その姿に、以前の優しそうな面影は殆どない。新たな装甲、新たな武器、新たなビット。新たなエアリアルは、それらを用いて敵を穿つ、真の戦士。

 

 

「煌臨アタック時効果。このターンの間、相手スピリット全てのBPをマイナス10000。0になったら破壊し、その数だけ私はデッキ下からドローする」

「BPマイナス効果。それも、フィールド全域に影響を与える効果!?」

 

 

エアリアルは進化した、新たなガンビットを展開、そこからビーム攻撃を連射し、カンクロウのフィールドに存在する全てのデストロイアを焼き尽くす。

 

その中でも、焼き尽くされた契約デストロイアのみは、魂状態になりながらも、気高き咆哮を張り上げていて………

 

 

「7体倒したから、7枚ドロー、さらにスレッタの効果で1枚ドロー」

「契約デストロイアが魂状態になった時、私のデッキ上を3枚オープン。その中にある3枚のデストロイア幼体をノーコスト召喚。第八陣」

 

 

ー【デストロイア(幼体)】LV1(1)BP0

 

ー【デストロイア(幼体)】LV1(1)BP0

 

ー【デストロイア(幼体)】LV1(1)BP0

 

 

生まれ出る新たなデストロイア幼体。しかし、エアリアル改修型の効果を受け、そのBPは0だ。

 

 

「また出て来た。これじゃキリがない」

「関係ないね。アタックステップ、エアリアル改修型でアタック。効果でカウント+1し、デッキ下から1枚ドロー、煌臨アタック時効果を再び発揮させ、新たに現れた3体のデストロイア幼体を破壊して、3枚ドロー」

 

 

今一度無数のガンビットからビーム攻撃を照射するエアリアル改修型。それに被弾した3体のデストロイア幼体は、悲鳴を上げながら爆散。

 

 

「スレッタの効果で1枚ドロー。ソウルコアをリザーブへ」

「フィールドのスピリットを一掃しつつ、手札15枚ですか。恐ろしいデッキだ。しかし、デストロイアは不死身。次のターンには必ず蘇る」

「その次のターンとやらがあればね」

「?」

「確かに、デストロイアは不死身だ。そこから展開される物量は、デッキによっては攻略できないのかもしれない。だけど、いくらカードが不死身でも、それを使うプレイヤーは、ライフがある限り、不死身にはなれない。エアリアル改修型の【OC】効果。スレッタがいる時、エアリアルのシンボルを黄の3つに固定する!!」

「な……トリプルシンボル!?」

 

 

エアリアル改修型は、己の効果により、一度に3つのライフを破壊できる、トリプルシンボルとなる。

 

無骨なビームライフルに、無数のガンビットを合体させ、膨大なエネルギーを瞬く間に充電。エアリアル改修型は、それを強大なビーム攻撃として撃ち放ち………

 

 

「……本当に素晴らしいよ。ライフで受けます」

 

 

〈ライフ3➡︎0〉カンクロウ

 

 

カンクロウの残った全てのライフバリアを掻っ攫って行く。

 

これにより、勝者は春神ライだ。次々と出現するデストロイアの軍団を跳ね除けての完璧な勝利だ。

 

 

「いよっしゃい!!……私達の勝ち!!」

 

 

喜ぶライ。エアリアル改修型は、その様子を見つめながら、ゆっくりとこの場から消滅して行く。

 

 

「流石ですライ。これで100万円分の金券をゲットですね」

「あ、そうじゃん100万円!!……すっかり忘れてたわ」

「はは。正直、途中からそんな感じはしてました」

 

 

ライに駆け寄って来たツバサの言葉で、ライはこのバトルに100万円と言うとんでもない金額が掛けられていたことを思い出す。

 

 

「お見事。素晴らしい戦いでした。これは約束の報酬です。おめでとうございます」

 

 

カンクロウは懐から約束通り、このデパートでのみ使うことができる、100万円分の金券を、ライへ手渡す。

 

 

「おぉ!!……じゃあさっきの服全部買います!!」

「待ってくださいライ。こんなにあるなら、服は程々にして、食材や日用品を購入すべきです」

「えぇやだぁ、ツバサの服買いたい〜〜」

「ダメです」

「だってツバサにめっちゃオシャレさせたいじゃん」

「100万円分の服を貰うこっちの身にもなってください。ちょっと申し訳ないでしょう」

 

 

100万円の使いどころで和気藹々と揉める2人。オシャレに無頓着なツバサであるが、やはりぶっ飛んだ思考を持つライと比べ、かなり常識人な考えを持っている様子。

 

 

「と、言うわけで、カンクロウさん、よろしくお願いします!!」

「ちょっと勝手に話を進めないでください……って、あれ」

「カンクロウさんは?」

 

 

2人が揉めていた中、カンクロウはこの場から姿を消していた。別れの言葉もなく、ただただ音も立てずに居なくなったことから、2人はまるで神隠しにでもあったような気分になって。

 

 

******

 

 

界放市ジークフリード区。

 

そこはとても暖かい、陽だまりの街。しかし、その裏側には、全く逆の性質を持つ影の街が存在する。

 

それがここ「ネクロゾーン」………

 

ツバサがここの廃工場で偽物の魔女に危うくライジングを奪われそうになったのも、比較的記憶に新しい。

 

 

「ゲゲゲ。どうだったよ、オレが探し求めていた女は………カンクロウ」

 

 

ビルとビルの間より生まれる暗闇。その中に、カンクロウはいた。彼の横には、不気味な笑い方をする、オレンジ色のテンパの青年がいた。

 

 

「オマエが惚れ込むわけだよ。とんでもなく強い相手だった。次はあの子をターゲットにするのか、マツリ?」

 

 

カンクロウが、オレンジ色のテンパの青年、蛇澤マツリに訊いた。

 

 

「あぁ。奴に眠る力を全て引き出させる、最高の舞台を用意してやらねぇとなぁ」

「まったく、そんなに命懸けのバトルスピリッツがいいかね」

「いいに決まってんだろ。さぁカンクロウ、祭りの準備だ」

「はいはい。わかったよ」

「ゲゲゲ。楽しみにしてろよ、春神ライ。オマエはオレだけの獲物だ」

 

 

やがて男2人組は、暗闇の中から姿を消す。

 

春神ライに、この2人の魔の手が迫っていることを、まだ誰も知らなくて………

 

 




次回………

#06「始まりの夜」



******



次回はツバサの過去回。乞うご期待ください!!
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