バトルスピリッツ 勇者と魔女   作:バナナ 

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#07「勇者と魔王」

 

 

 

懲りずにセミが鳴き続ける、夏の夜。

 

見渡す限り、電灯と電柱、ビルの背中しか見えない、界放市ジークフリード区の裏路地にて、2人のカードバトラーが対峙していた。

 

青く長い髪の少女、水乃ツバサ。

 

オレンジのテンパの青年、蛇澤マツリ。

 

互いにBパッドを展開し、目線の先で火花を散らし合う中、間もなく復讐のバトルスピリッツが幕を開けようとしていた。

 

 

「遂にお師匠の仇を討てる日が来た。行きますよライジング、私達でアイツに勝ちましょう」

「ゲゲゲ。何1人でくっちゃべってんだ。いいからさっさと始めようぜ、強くなったんだろ?…このオレのために」

「あぁ、そして私は今日、オマエを倒す!!」

 

 

……ゲートオープン、界放!!

 

 

静寂極めるジークフリード区の裏側にて、謎の青年、蛇澤マツリと、彼に毎分毎秒怨恨を募らせていく水乃ツバサによるバトルスピリッツが幕を開ける。

 

先攻は蛇澤だ。ライジングと共に成長を遂げたであろうツバサのバトルスピリッツを楽しみにしていた彼であるが………

 

 

[ターン01]蛇澤マツリ

 

 

「メインステップ。何もしない、ターンエンドだ」

手札:5

バースト:【無】

 

 

「え」

 

 

蛇澤が取った行動は、まさかのドローゴー戦術。何もせずにターンを終えたのだ。

 

 

「何故何もしない」

「やる必要がないんだよ。オレは実力が拮抗したと思った奴としか、メインステップを行わない」

「はぁ!?」

「そんなに驚くことじゃねぇだろ。ゲーム実況の縛りプレイみたいなもんだ。ほら、オマエのターンだぜ、さっさと始めな」

 

 

蛇澤の謎の縛りプレイに対して戸惑いつつも、ツバサは敵討ちのためにターンを進めて行く。

 

 

[ターン02]水乃ツバサ

 

 

「メインステップ。翔け上がれ、自由の名を持つ勇者よ、ライジングフリーダムガンダム、LV1で召喚!!」

 

 

ー【ライジングフリーダムガンダム】LV1(1)BP3000

 

 

ツバサは、夜光で輝く青い機翼を持つ、契約モビルスピリット、ライジングフリーダムガンダムを呼び出す。

 

 

「ゲゲゲ。これが勇者ライジングの真の姿か」

 

 

半年前、己の手中に収まることのなかったライジングの姿を視認し、蛇澤はまたしても不気味な笑みを浮かべる。

 

 

「オマエ、まさかお師匠にもこんな舐めプをしたのか」

 

 

嗤う蛇澤に、ツバサが訊いた。蛇澤はそれに対し、間髪入れずに返答する。

 

 

「あぁもちろん。アイツは理想論ばかり語る愚図だったがな」

「!!」

「オマエはそうなってくれるなよ、水乃ツバサ」

「お師匠を、お師匠を愚図呼ばわりするな!!……ライジング!!」

 

 

激情に振り回されるがまま、ツバサはライジングでアタック。

 

前のターンに何も召喚していない蛇澤は、これをライフで受ける他ない。

 

 

「ライフをくれてやる」

 

 

〈ライフ5➡︎4〉蛇澤マツリ

 

 

シールドの側面にビームの刃を展開し、それをブーメランの要領で投擲するライジング。

 

その攻撃は、蛇澤のライフバリアへと直撃、1つ粉砕した後に、再びライジングの手へと収まる。

 

 

「ターンエンド!!」

手札:4

場:【ライジングフリーダムガンダム】LV1

バースト:【無】

 

 

優勢となったツバサ。力強くそのターンをエンド。

 

次は「メインステップを行わない」と言うキツい縛りを己に課している蛇澤のターンだが………

 

 

[ターン03]蛇澤マツリ

 

 

「メインステップ。また何もしない、ターンエンドだ」

手札:6

バースト:【無】

 

 

「コイツ、性懲りもなく」

 

 

蛇澤は、増えた手札とコアを使うことなく、再び即ターンエンドの宣言。これではただのサンドバッグと同然である。

 

 

[ターン04]水乃ツバサ

 

 

「メインステップ。ゲルググをLV2で召喚」

 

 

ー【ゲルググメナース[一般機]】LV2(2)BP3000

 

 

ライジングの横に並び立つのは、一つ目で、群青色の装甲を持つ、コンパスのモビルスピリット、ゲルググメナース。

 

 

「一気に行きます。アタックステップ、ライジング!!」

 

 

ツバサの二度目のアタックステップ。再びライジングが攻撃を仕掛ける。

 

 

「ライフで受ける」

 

 

〈ライフ5➡︎4〉蛇澤マツリ

 

 

ライジングのビームライフルによるビーム攻撃が、蛇澤のライフバリアをさらに砕く。

 

 

「よし。次はゲルググで……」

 

 

このターン、ライジングとゲルググのコンボにより、蛇澤のライフを大きく削ろうと考えていたツバサ。

 

Bパッド上のゲルググのカードへと手を掛けるが、そのアタック宣言がなされる直前、蛇澤が声を上げて………

 

 

「おいおい、せっかちが過ぎるぜ勇者様よぉ。オレのライフが減少したこの瞬間、手札からウルトラマンの効果を発揮。自身をノーコスト召喚する」

「!!」

 

 

ー【ウルトラマン[シン・ウルトラマン]】LV3(4)BP12000

 

 

右腕を天に上げ、左腕を屈折させた状態で、突如蛇澤側のフィールドへ出現したのは、赤と銀のボディを持つ光の戦士、ウルトラマン。

 

そのスピリット、引いてはそれの着地時にめり込んだコンクリートの地面を見るなり、ツバサはあることに気がつく。

 

 

「な、なんだこのスピリット、まるで本当にいるみたいな」

「あぁいるぜ。このスピリットは実体化してるからな」

「!?」

「召喚アタック時効果。コスト7以下のスピリット1体を破壊。これによりゲルググを爆殺」

 

 

ウルトラマンは登場するなり、ゲルググに向けて掌から光輪を射出。その切れ味は鋭く、瞬く間にゲルググを切断、爆散へ追い込む。

 

光輪の勢いはそれでも収まらず、そのままコンクリートの地面をも切り裂いた。

 

 

「くっ……実体化!?……まさか、そんなことが」

「それがあるんだよ。オレが拾った、このBパッドにはな」

「……ターンエンド」

手札:4

場:【ライジングフリーダムガンダム】LV2

バースト:【無】

カウント:【4】

 

 

攻撃によって抉れたコンクリートの地面、摩擦によって噴き出た煙の臭いによって、ツバサは、今更ながら敵の異常さに気がつく。

 

次は、何故かスピリットを実体化できる異常者、蛇澤のターンだ。

 

 

[ターン05]蛇澤マツリ

 

 

「メインステップはすっ飛ばして、アタックステップだ。ウルトラマンでアタック、その効果で勇者ライジングを破壊だ」

 

 

メインステップを行わない蛇澤は、ウルトラマンを従えたままアタックステップへ。

 

ウルトラマンは、手を十字にクロスし、その接触部から高濃度なエネルギー光線を放射。ライジングは直撃を受けてしまい、爆散。半透明の魂状態となって、ツバサのフィールドに残る。

 

 

「オラ、実体化したスピリットのアタックをくらいな」

「ッ……」

 

 

確実に強打が飛んで来ることを瞬時に確信したツバサは、それを回避すべく、反射的に1枚のカードをBパッドへと叩きつける。

 

 

「聖域より飛び立て、空舞える勇者よ!!……ストライクフリーダムガンダム、LV2で契約煌臨!!」

 

 

ー【ストライクフリーダムガンダム弍式】LV2(3)BP18000

 

 

魂状態のライジングが、強き光を放ち、その中で姿を大きく変化。黒き機翼と、二丁のビームライフルを両手に携えた、白きモビルスピリット、ストライクフリーダムガンダムとして復活を果たす。

 

フリーダムの名を冠する、ライジングの正統進化形態である。

 

 

「へぇ、同じ契約煌臨でも、エアリアルとはちょっとばっかし違うみてぇだな」

「え、エアリアル!?…オマエ、ライのことを知ってるのか」

 

 

蛇澤の口から出た「エアリアル」の単語に、ツバサが驚く。

 

この世に「エアリアル」と言う契約カードを所持しているのは、春神ライだけだからだ。

 

 

「あぁ、テメェなんかよりも、よぉく知ってるぜ。アイツはオレの闘争心を掻き立たせてくれる、最高のライバルだ」

「ライバル?……オマエなんか、ライの足元にも及ばない!!……ストライクフリーダムの煌臨アタック時効果、ウルトラマンをデッキ下へ!!」

 

 

ストライクフリーダムの機翼から放たれた無数のビットが、ウルトラマンへ向けてレーザー光線を照射。焼き尽くし、消滅させる。

 

 

「あぁそうだ。オレはアイツの足元にも及ばねぇ。だから旅に出た。全国各地に眠る、名の知れたカード達を集め、史上最強のデッキを完成させるためにな。ターンエンド」

手札:5

バースト:【無】

 

 

ストライクフリーダムの効果により、戦えるスピリットを失った蛇澤。余裕綽々な態度は崩さぬまま、そのターンをエンドとする。

 

 

[ターン06]水乃ツバサ

 

 

「メインステップ。2体のゲルググを召喚」

 

 

ー【ゲルググ・メナース[一般機]】LV1(1)BP2000

 

ー【ゲルググ・メナース[一般機]】LV1(1)BP2000

 

 

ツバサのターン。フィールド、ストライクフリーダムの両脇に、2体のゲルググが呼び出される。

 

 

「史上最強のデッキ……まさか、そんなことのためだけに、お師匠を、寺を燃やしたのか!!」

「あぁそうだ」

「!!」

「テメェのライジングはオレには使えなかったがな。まぁ、だから要するに、あの坊主が死んだのは、春神ライのせいでもあるってことになるな」

「……ッ!!」

 

 

デッキを強くしたい。ただそれだけの理由で寺を燃やし、お師匠を死に追いやったばかりか、挙げ句の果てには、それをライのせいだと豪語して来る蛇澤に、ツバサはまた強い憎しみを燃やしていく。

 

 

「ライのせいにするな。全部オマエが悪いんだろォォォ!!!……ストライクフリーダムでアタック!!」

 

 

激しき怒号と共に、ストライクフリーダムにアタックの宣言を行うツバサ。

 

彼女の憎しみを乗せた攻撃に対し、蛇澤はやや退屈そうな表情を浮かべて………

 

 

「にしてもよぉ。さっきからなんだ、テメェのその単調な攻撃は。もっとちゃんと戦ってくんねぇとよ、楽しくねぇだろうが」

「!」

「フラッシュ、霧竜ミストヴルムの効果発揮。手札2枚を破棄することで、手札かトラッシュにあるコイツをノーコスト召喚」

 

 

ー【霧竜ミストヴルム】LV1(1)BP1000

 

 

手札2枚と言う大きな対価を支払ったのちに、蛇澤のフィールドへ出現したのは、全身が霧でできた竜。

 

触れれば吹き飛んでしまいそうな程に貧弱そうに見える。

 

 

「そいつのアタックは、ミストヴルムでブロック」

「またフラッシュタイミングでスピリットを出した!?…でも、BPはストライクフリーダムの方が上だ!!」

 

 

ストライクフリーダムが、手に持つビームライフルを、ミストヴルムへ向けて照射。直撃し、霧の身体は全て消し飛んで消滅した。

 

 

「よし」

「喜ぶにゃあまだ早いぜ。コスト3以下の紫スピリットが破壊された時、手札にあるベルゼブモンの効果を発揮」

「ッ……また手札からスピリット効果!?」

「コイツを1コストで召喚する」

 

 

ミストヴルムの破壊が、蛇澤の手札に眠っていたエースカードを呼び覚ます。彼はその1枚を、己のBパッドへと叩きつけた。

 

 

「孤高なる魔王よ、正義と悪をも超越し、この世に調和を齎せ!!……紫の究極体デジタルスピリット、ベルゼブモンをLV2で召喚!!」

 

 

ー【ベルゼブモン】LV2(3)BP11000

 

 

禍々しいオーラと共にフィールドへ降り立ったのは、黒いレザージャケットに、二丁の拳銃を装備した、どこか退廃的な魔物。

 

その名はベルゼブモン。孤高の魔王の名を持つ、究極体のデジタルスピリットだ。

 

 

「紫の、大型デジタルスピリット……」

「ベルゼブモンの召喚アタック時効果。相手スピリット1体のコア2個をリザーブに置く」

「ですが、ストライクフリーダムは【VPS装甲:コスト7以下】により、コスト7のその効果は受けません」

「馬鹿が。はなから狙うのはそいつじゃねぇ。消え失せな、ゲルググ」

「!」

 

 

ベルゼブモンがその銃口を向けた先は、ツバサのフィールド内で最も強いストライクフリーダムではなく、小型のゲルググだった。

 

撃ち込まれた弾丸は、瞬く間にゲルググ1体を撃ち抜き、消滅に追い込む。

 

 

「消滅成功時、1枚ドロー」

「くっ……だけど、私にはもう1体のゲルググがいる。アタックです!!」

 

 

残ったゲルググの追撃。BPでそれに勝るベルゼブモンが存在するが、その攻撃の意味は、疲労状態となったストライクフリーダムにあり………

 

 

「ストライクフリーダムの契約煌臨元のライジングの効果。他のコンパスが疲労した時、ターンに一度だけ回復する!!」

「へぇ。ずっとコレを狙ってやがったのか」

 

 

ゲルググのアタックに、ストライクフリーダムの眼光が輝く。回復状態となり、このターン、二度目のアタックが可能となる。

 

 

「ゲルググのアタックはライフで受けてやる」

「え」

 

 

意外な宣言。ストライクフリーダムが回復したとは言え、アタック中のゲルググのBPはベルゼブモンより劣る。

 

ストライクフリーダムのアタック時効果でデッキ下に戻されることを加味したら、ゲルググのアタックはベルゼブモンでブロックするのがベターである。

 

ツバサが戸惑う中、ゲルググのロングライフルの銃口は、蛇澤のライフバリアへと狙いを定めて………

 

 

〈ライフ3➡︎2〉蛇澤マツリ

 

 

撃ち抜いた。蛇澤の残りライフバリアは半数を切る。

 

しかしこの瞬間、またしても彼の手札にあるカードが光を纏って………

 

 

「オレのライフが減少したことにより、手札からアルケーガンダムとソーンプリズンLTを提示」

「!」

「今はテメェのターンだ。テメェが効果発揮の順番を決めな」

「……アルケーガンダムからだ」

「そうか、なら来い、アルケーガンダム」

 

 

ー【アルケーガンダム】LV2(3)BP12000

 

 

蛇澤は前のターンのウルトラマンと同じく、ライフ減少後の誘発カードを提示。

 

それにより、フィールドに、マゼンタカラーの装甲と身の丈程の大剣を持つモビルスピリット、アルケーガンダムが見参する。

 

 

「続いてソーンプリズンLTの効果。相手は2体のスピリットを選んで重疲労させなければならない。今いるテメェのスピリットは2体。よってそいつらは重疲労だ」

「ストライクフリーダムは【VPS装甲:コスト7以下】の効果で、コスト4のその効果を受けない」

「馬鹿が。この疲労効果は他の効果で防げない」

「なッ!?」

 

 

ツバサのフィールドを覆ったのは、巨大な蔦の檻。ゲルググはおろか、ストライクフリーダムでさえ抜け出せないそれは、スピリット達の2ターン分の行動を封じ込める。

 

その2ターンと言う時間は、今のバトルスピリッツの環境においては、果てしなく長い時間であり……

 

 

「そんな、ストライクフリーダムが、相手の効果を受けるなんて」

「呆れたぜ。その程度で狼狽えるとはな」

「……ターンエンド」

手札:2

場:【ストライクフリーダムガンダム弍式】LV2

【ゲルググメナース[一般機]】LV1

バースト:【無】

カウント:【6】

 

 

ソーンプリズンLTによって、スピリット達の身動きを封じられてしまったツバサ。

 

怒りと悔しさの混ざった表情を蛇澤へ向けつつ、そのターンをエンドの宣言。

 

彼女のその宣言直後。蛇澤はそれに対してため息を吐いて………

 

 

「はぁ……てんでダメじゃねぇかテメェ。こんなんじゃ遊び相手にもならねぇ。この半年間何してたんだ、この未熟者がよぉ」

「なに」

「見込みなしだ。テメェは消すぜ。今ここでな」

 

 

勝手に期待し、勝手に期待外れだと言う旨を言い放つ、身勝手な男蛇澤。

 

ベルゼブモンとアルケーガンダムを従えた彼は、このゲームの締めに入る。

 

 

[ターン07]蛇澤マツリ

 

 

「アタックステップ。ベルゼブモンでアタック。その効果でゲルググを消滅し、1枚ドロー」

 

 

当然メインステップは行わず、今いるスピリットのみでアタックステップへと直行する蛇澤。ベルゼブモンの弾丸が、蔦の檻の隙間を通り過ぎ、その先にいたゲルググを撃ち抜いて爆散させる。

 

 

「……ライフで受ける」

「なら食らいな。実体化したスピリットの一撃をな」

 

 

〈ライフ5➡︎4〉水乃ツバサ

 

 

「ぐ、ぐぁぁあ!?!」

 

 

銃を腰にしまったベルゼブモンによる、鋭い爪の引き裂く攻撃。その一撃は、ツバサのライフバリア1つを紙切れのように引き裂くばかりか、溝打ちでも食らったかのような、呼吸ができなくなる程の痛みを彼女に与える。

 

 

「が、はぁ……」

「恐いか?…痛いか?……恐くて、痛かろうよ。だがこれが真のバトルスピリッツ。コイツらを丸ごと飲み込む度胸がある奴こそ、誠のカードバトラーに値するんだよ。アルケーガンダムでアタック」

 

 

痛みで悶絶するツバサを他所に、蛇澤はまた理解し難い己の考えを吐露すると、今度はアルケーガンダムでアタックの宣言。

 

そのフラッシュタイミング。アルケーガンダムは真価を発揮する。

 

 

「フラッシュ。アルケーガンダムのアタック時効果。3コストを支払い、全ての効果を適用する。回復し、テメェのライフ1つ、手札1枚、デッキ6枚を破壊!!」

 

 

〈ライフ4➡︎3➡︎2〉水乃ツバサ

 

 

「ぐぁぁあ!?!」

 

 

大剣を振い、それによって巻き起こる竜巻が、瞬く間にツバサのカードやライフバリアを破壊して行く。

 

その威力は凄まじく、竜巻はライフバリアを貫通し、ツバサの身体を切り刻んで、無数の切り傷を作り出す。

 

 

「アルケーガンダムは、フラッシュタイミング2コスト支払い続けることで何度でもアタックが可能。終わりだな」

「ぐっ……まだ。まだ負けてない」

「ゲゲゲ。そうだな。まだ負けてねぇ。今から負けるんだ」

「私は、オマエに復讐するまで、負けない!!」

 

 

激痛に苛まれながらも、未だ鋭い剣幕で蛇澤を威嚇するツバサ。

 

しかし、その程度の強がり、蛇澤にとってはなんの恐怖にもならない。後はカードを捻るだけで勝つ簡単な作業を行うのみだった。

 

 

「あばよ、未熟者」

「クソ……」

 

 

アルケーガンダムが、まるで今から殺すと言わんばかりに、大剣の先をツバサに向ける。

 

その刹那、ツバサの脳裏に思い浮かんだのは、優しいお師匠の顔。

 

 

「クソォォォォォォオ!!」

 

 

憎しみと絶望が、彼女を叫ばせ、表情を歪ませる。そんなことお構いなしで、アルケーガンダムは大剣を上に構え、振り下ろす。

 

 

「!?」

「……え」

 

 

アルケーガンダムの大剣が、ツバサのライフバリアを斬り裂こうとした直後、それを防いだのは、水晶らしき素材でできた、青色のバリア。

 

蛇澤は咄嗟にツバサが何かカードを使って防いだのかと考えたが、彼女の驚く表情を見て、その考えを即切り捨てる。

 

そして、ある1つの答えに辿り着くと………

 

 

「ゲゲゲ。なるほど、そんなに仲間が大事だったか。まぁテメェはそう言う奴だよなぁ、春神ライ」

「ッ……ライ!?」

 

 

ニタニタと笑みを浮かべる蛇澤。その視線の先には、Bパッドを展開し、カードを使ったライの姿があった。

 

 

「大事じゃない仲間なんているわけねぇだろボケナス」

「ゲゲゲ。久しぶりだな」

 

 

現れたライは、蛇澤の言葉を無視し、真っ先にツバサの方へと駆け寄る。

 

 

「大丈夫かツバサ?」

「ライ……」

「よかった。傷はたくさんあるけど、無事みたいだね」

 

 

倒れているツバサの肩を抱え、安否を確認するライ。ひとまず命に別状はないことを確信し、安堵の表情を浮かべた。

 

 

「ラ、ライ…!」

「ん?」

「助けてくれて、ありがとうございます」

「お、どういたし」

「ですが、アイツは私の仇です。手出しは無用」

「え、あぁちょちょ」

 

 

ライの制止も聞かず、声と気力を振り絞り、ツバサは再び立ち上がる。

 

その後すぐに、震える手足を奮い立たせ、また鋭い剣幕で蛇澤を睨みつけて………

 

 

「さっきのは私の負けでいい。もう一度勝負だ蛇澤、次は負けない!!」

「もうテメェに用はねぇ。とっと失せろや愚図」

「なに!!」

「本来、バトルで負けたカードバトラーは全てを失うもんだ。命とカードが残っただけ、ありがたく思うんだな」

 

 

蛇澤は完全にツバサへの興味を失っていた。己が狙いを定めていた、春神ライが突如現れたのもあるのだろう。

 

 

「ふ、ふざけ……ッ」

「ツバサ!!」

 

 

とうとう体力を使い果たしたか、疲弊し切ったツバサは、足元から崩れ落ち、それをライが支える。

 

 

「無理すんな」

「アイツは、お師匠を……あの夜、寺を焼き払った張本人なんだ……私が倒さないと、私が!!」

「ツバサ……」

 

 

悔し涙を見せるツバサに、ライの心が震える。

 

泣き崩れるツバサを、無言で優しく地面に下ろすと、懐にある己のデッキを、装着していたBパッドへ装填する。

 

 

「ら、ライ?」

「ごめんツバサ。望んでないのはわかってるけど、今は戦わせて」

 

 

ツバサに一度頭を下げると、ライは蛇澤の方へと振り向く。その表情に、いつもの明るさは微塵もない。

 

ただ、仲間を傷つけられたことに対する怒りがあるのみだ。

 

 

「おい美柑頭。私とも戦えよ。ツバサを傷つけた分を、百億倍にして返してやる」

「ゲゲゲ……まぁ久しぶりの再会だしな。オレと戦いたくなるのもわかる。だが残念ながら、絶賛テメェとやり合うための最高の舞台を準備中だ。その時になったら呼んでや」

「ぐだぐだしてないで、早く構えろ。私が『戦え』って言ってんだよ」

「!!」

「あんなに怒っているライを見るのは、初めてだ」

 

 

普段とのギャップもあってか、ライの見せる怒りは凄まじい迫力であった。

 

ただ、それを目の当たりにしても尚、蛇澤は気圧されることなく、ニタニタと余裕のある笑みを浮かべる。

 

 

「ゲゲゲ。ゲーッゲッゲッゲ!!……その気迫。強者だけが持つ眼力。そうさ、それでこそ、オレが戦いたかったテメェだ」

「……」

「だが、やはりまだ早い。最高のテメェとやり合うためには、最高の舞台と最高のオレが必要だからな。今日はテメェがヤバいってことを再認識できただけでも大きな収穫だった」

「おい、なにさり気なく帰ろうとしてんだ。戦えって言ってんだろ」

「ゲゲゲ………ベルゼブモン」

「!!」

 

 

突如、蛇澤が従える、実体化したベルゼブモンが、銃弾をコンクリートの地面へ向け、発砲すると、そこから白い煙が発生。

 

目眩しだ。晴れる頃には、蛇澤はベルゼブモンごと姿を消していた。

 

 

「蛇澤マツリ。相変わらず、意味のわからない奴」

 

 

行き場のなくなった怒りを抑え込むように、ライは静かに己のBパッドを外し、装填されていたデッキを服の裏側に納める。

 

彼女の口から、名乗っていなかった「蛇澤マツリ」の名前がフルネームで出てきていることから、本当に顔見知りだったことが伺える。

 

 

「……手も足も出なかった。私は、なんでこんなに弱いんだ。ライのようには、なれないのか」

 

 

一方、ツバサは、自身と蛇澤の実力差に絶望。身体だけでなく、心と、その奥底にあるプライドまで傷つけられていて………

 

 





次回………

#08「ゼロからイチへ」


******


次回はサブタイトルから察せられる通り、ゼロワン回なんですけれども、3月の新弾で、ゼロワンがまさかの契約カード化すると言うことで、大変困惑しております笑
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