エログロダンジョンゲーにTS転生者が潜るのは(頭が)おかしいですか? 作:ターカ
キャラクリありのエログロダンジョンRPG、『カースヘル・ダンジョン』に自キャラで転生してしまったのが、今から少し前のこと。
困ったことにその自キャラが女性キャラだったものだから、実質TS転生してしまったのも同じく少し前のこと。
そんなこんなで、『カースヘル・ダンジョン』のプレイヤーキャラとなったボクは、現在冒険者になっていた。
一言で言えば、ボクは端から見れば頭おかしいのかも知れない。
このゲーム、何と言っても女性キャラがダンジョンに一人で入ると
なので、一般的に女性が一人でダンジョンに入るのはあたおか案件である。
ゲームの仕様がそのまま反映されているのか、ダンジョンに女性復数のパーティで入ると叡智な目にあわないのがそれを加速させる。
でもね、しょうがないんだ。
ボクはコミュ力に乏しいんだ。
話しかけられたら「あっ」と「はい」と「お願いします」しかしゃべれず。
仮に同好の士がいるカードショップ何かに足を運んでも、自分からフリー対戦を申し込めないのである。
あー誰かこえかけてぇ、と思いながら一人回しするしかないのだ。
そんな人間が、パーティなんて作れるわけもなく。
結果、一人でダンジョンに潜ることとなった。
まぁ、事情があってパーティが組めず、一人でダンジョンに潜る女性は少数ながらいるらしいのでボクは悪目立ちはしていないはずだ。
事あるごとに心配されるけど。
ただまぁ、一人でダンジョンに潜ることは決してメリットがないわけではない。
このゲーム『ヘルダン』はそもそもソロか最大PT人数である六人パーティで潜ることを想定したゲームだからだ。
というのも、ソロだとモンスターを倒した時の経験値が増えるのだ。
いわゆるドラ◯エ3みたいに、総経験値をパーティ人数で分割する仕様なんだね。
なので、ソロだとモリモリレベルが上がる。
加えてこのゲームには強力な装備が多いのだが、パーティだとそれを分割しないといけない。
それを一人に集中できるわけだから、要するにソロでレベルを上げて強い装備とレベルでゴリ押しするのはこのゲームの基本的な仕様だ。
逆に六人PTだと、パーティ人数の多さを生かしたテクニカルな戦いが楽しめる。
結構奥深いゲーム性が、このゲームの魅力だ。
ちなみに、なんでそんな仕様になっているかというとソロは女性主人公向け、六人PTは男性主人公向けだからだ。
女性冒険者を主人公にしてキャラクリすると、モンスターや周囲の冒険者に叡智な目に合わされるスタンダードな同人RRPGみたいになり。
男性冒険者を主人公にしてキャラクリすると、ネームドの仲間を集めて好感度を上げハーレムを作ったり、仲間の女性メンバーがモンスターに連れ去られて叡智な目にあうのだ。
どちらも非常に作り込まれていて、一粒で二度美味しい素敵なゲームに仕上がっている。
六人PTを作ることが不可能なボクにとって、選択肢はソロしかなかった。
そもそも今のキャラ――『カノン・プレフォニア』はボクがソロ用にチューンナップしたキャラだ。
細部まで拘って、最強のソロプレイヤーキャラを作るためにキャラクリしていざ始めるぞというタイミングで転移してしまったものだから。
種族も、各種ステータスの割り振りも、初期スキルも。
何もかもがソロ向けに設定されている。
ゲーマーとしても、せっかくソロキャラとしてTS転生してしまったなら、ソロとして最強を目指すしかないね。
と、いうわけで今日もダンジョンにやってきたのであった。
ダンジョン。
この世界における資源の源、夢の収束地。
まぁ、ようするに異世界モノによくあるダンジョンである。
無限湧き、宝箱取り放題。
そりゃそんなもの実際にあったら、資源もダンジョンに依存しますわな、みたいな。
ただし、叡智ゲーなので女性はモンスターに襲われる危険がある。
逆に言えば男性はそのまま容赦なく殺されるところを、モンスターに叡智されている間に救出されるワンチャンが生まれるってことなんだけど。
実際に襲われたらそんなこと言ってらんないけどね。
なにはともあれ、今日も元気にダンジョンアタック。
ゲーム開始直後に転生したものだから、ボクのレベルは低い。
ゲーム知識全開で最大効率の狩りを続けているものの、未だレベルは【5】にとどまっていた。
第一層のボスを倒すには、せめてレベルを【15】まで上げたいところである。
装備だって、まだまだ初期装備のありあわせ。
というか、序盤のお供である装備が結構高いので、今は装備の更新を我慢して貯蓄しないといけないのだ。
幸いなことに、初期ビルドはかなりガチガチに作ってある。
ステータスの割り振りも、種族も、スキルも完璧だ。
第一層で負ける心配は、
というわけで、今日も元気にモンスターを狩っていきましょう。
狙うのは――第一層の
このダンジョンには、叡智シーンの存在するエロモンスターと、そうでない通常モンスターがいる。
そのうち叡智シーンのあるエロモンスターは、敗北すると叡智な目にあう危険性があるからか経験値効率が通常モンスターよりいい。
なので、狩るならエロモン一択なのである。
他にも経験値獲得の仕様なんかもあって、狩るなら常に一種類のモンスターを連続的に、だ。
まぁ、そこら辺は追々語ろう。
他にも、
かくして、今日も元気にボクはレベリングに勤しむのだった。
♪
――カノン・プレフォニア。
そう名乗る【ディーヴァ】の少女が冒険者になったのは、数日ほど前のことだった。
突如として、新人冒険者が身につけるような軽装でやってきた彼女は、言葉拙いながらもギルド組員に冒険者になりたいと伝えてきた。
その明らかに
何より、彼女は非常に整った容姿をしている。
流れるような黒の髪、”深淵の歌姫”と呼ばれる海洋種族であるディーヴァ特有の美しい耳。
背丈は百五十あるかないかの小柄さでありながらも、発育は良い。
決してすごく大きいというわけではないが、存在感のある胸の大きさだ。
触れれば折れそうな細身も相まって、トランジスタグラマーというべきだろう。
――中の人の癖が詰まった、これまたこだわり抜かれたキャラクリの産物である。
そんな明らかに、ぐへへ今から叡智されますぜ、まな板の上のディーヴァですぜ。
みたいな有り様の、というかなんならすでに叡智された後かもしれない、みたいな少女がソロでダンジョンに潜るというのである。
当然、最初は止めた。
だが、彼女は頑なに冒険者になりたがった。
元々中の人が、せっかくゲーム世界にTS転生したのだから、と思っていたのもあるが。
何より、そうしないと生きる糧を得られないからだ。
ギルド職員はギルドで働けばいいと思っていたが、極度の陰の民に接客なんてもっての外である。
ギルドも、本人が望むなら登録は拒否できない。
かくして、カノン・プレフォニアは冒険者になった。
同時にギルド職員は、彼女のことを気にかけようと決めた。
知り合いの女性冒険者にも声をかけて、彼女ができるだけ安全に冒険者ができるように……と。
が、まぁそんな心配は杞憂に終わったが。
カノンの頭がおかしかったからだ。
初日、カノンはダンジョンに入ると、凄まじい勢いで
その速度たるや、一日に十や二十では足りない。
凄まじい時には五十近い数のスライムを狩り尽くすのである。
一般的に、レベルが一つ上がるにはかなりの時間がかかるはずだ。
だというのに、数日ですでにカノンのレベルは【5】。
とてつもない異常事態、前代未聞のことだ。
かくしてカノンは、数日にしてすでにギルドの話題の人物となり。
”狂失の歌姫”と呼ばれるようになっていた。
そんなカノンが、今日も狩りを終えて帰ってきた。
「あ、えと……」
「あ……はい、いらっしゃいませ」
「買い取り……」
「買い取りですね、素材をお出しください」
視線を伏せているせいで、長い前髪から瞳が覗けない。
何を考えているのかわからない少女は、どこか不気味さすらある。
その圧倒的な美貌がなければ、周囲はここまでカノンに注目を集めなかっただろうというくらいには。
――まぁ、実際には陰を発揮しているだけなのだが。
「あ、スライムゼリーとスライムコア……ゼリーが
「ろ、ろくじゅ!?」
「あ、はい」
「か、かしこまりました……」
ついのここに来て、スライムの最高討伐数更新である。
六十て。
普通の冒険者なら、魔物を十倒せば一日の討伐数としては多いくらいなのに。
ちなみにスライムコアはレアドロップである。
ドロップ率はゲーム時代で4%、地味にカノンの中身は前世の頃から泥運がよかった。
「それじゃあ……素材の買い取りを行ってる間に、冒険者カードの更新を行いますね」
「あ、お願いします」
冒険者カード、冒険者のステータスやら何やらを記録する、身分証のようなものだ。
これがないと冒険者は冒険者を名乗れない。
それを、ギルド職員が更新する。
結果――
「――レベル、上がってますね」
「あ、はい」
レベルが【6】になっていた。
そりゃあスライムを大量に倒しているのだから、レベルの上がる速度が早いのは当然だが。
それにしたって、早すぎないか?
確かにダンジョン内でモンスターを倒すと、パーティ人数が低いほうがレベルが上がりやすいというのは常識だが。
だとしてもこれはおかしい。
ただ、相手はカノンだ。
このどこか陰のある少女に、事情を問うのははばかられた。
ギルド職員のできることは一つだけ。
「えっと……困ってることはありますか? もしもあったら、遠慮なく言ってくださいね。ギルドは冒険者の味方ですから」
「あっはい。
「……っ」
カノンを心配することだけだ。
だが、それに対して意思を示すためか、少しだけはっきりした声音でカノンが返答する。
すると、普段のぼそぼそとした話し方では感じない、カノンの声の違和感に気付くのだ。
その度に、ギルド職員は胸が締め付けられるようである。
「……ごめんなさい。本当に、何かあったらいってくださいね」
「……? あ、はい」
そうして冒険者カードと素材を売却して得たお金を持って、カノンはその場を後にした。
――ハッキリ言えば、カノンはある程度自分が勘違いされていることを理解している。
レベルアップ速度も、スライムだけを狩り続けていることも。
ゲームなら当然のことだが、現実に置き換えるとあたおか案件なのは考えるまでもないのだ。
とはいえ、周囲の態度は自分に対して同情的である。
多少おかしいことをしても、そうやって受け入れてくれるならまぁいいか。
なんて、適当に考えていたのだが。
真にカノンが勘違いされる理由を、カノン自身は気付いていなかった。
その原因は、カノンがゲーム時代にあまり気にしてなかった部分に由来している。
フレーバーだ。
ディーヴァという種族のフレーバーと設定は非常に重いものがあり。
更にカノンはとあるスキルの影響で、ディーヴァとしては声がおかしくなっている。
無論、ディーヴァでなければそれは普通の範疇だ。
前世のオタクで言う”変な声”みたいな感じ。
喋ってると声に濁点がつくアレだ、特徴的ではあるが癖になる声。
むしろカノン的にはチャームポイントである。
種族がディーヴァでさえなかったら、周囲の人々もそう考えていただろう。
だが、そうはならなかった。
かくしてカノンは、周囲から勘違いを受けつつあたおかなダンジョン攻略を進めるTS転生者になったわけだが。
その行き着く先は、まだ誰にもわからない――。
叡智なゲームに陰キャTS転生者が潜るお話。
世界観はハードで本人はコメディなよくあるやつです。
よろしくお願いします。