エログロダンジョンゲーにTS転生者が潜るのは(頭が)おかしいですか? 作:ターカ
この世界にやってきて、一週間が経った。
現在のレベルは【7】、一日に1レベル上がっている計算である。
というか、一日に1レベル上がるのを目安にスライムを狩っていた。
このまま行けば、レベル【10】までは一日1レベルペースで行けるだろう。
とりあえずそこまで行けば、第一層で困ることはない。
お金も溜まって装備も更新できるから、最初の目標はレベル10である。
そんなわけで、今日も今日とてレベル上げだ。
今日の目標はスライム八十体。
昨日の七十体が結構日が沈むギリギリの時間までかかってしまったから、更に効率を上げていかなくてはならない。
まぁ、正直別に必ずしも一日1レベルである必要はないんだけど。
ゲーマーとしてのプライドがね、一度決めたことはやり遂げたいのだ。
なお自分がやりたいと思うことに限る。
「見つけた、一体目」
出会って数分で、スライムは見つかる。
ここから一気にスライムを狩り続けるのだ。
すぅ、と一息。
「――【麻痺の歌】」
スキル名を口にすると、自然と声がノドからあふれる。
淡い、どこかダウンテンポなアカペラの曲が周囲に響き渡るのだ。
すると途端に、スライムが動かなくなる。
麻痺状態に入ったのだ。
スキル【麻痺の歌】には相手に麻痺のバステを与える能力がある。
麻痺のバステは、第一層では
これのお陰で、ボクはそうそう相手に負けることはない。
「La――――♪」
自前のBGMが響き渡るなか、ボクは得物である槍を構えるとそれを一突き。
初期ビルドでATKに大分振ってあるのもあって、スライムはレベル1の頃から一撃だ。
動けない相手を突き殺すだけの、簡単なお仕事です。
スライムが倒れると、倒れた場所に素材がドロップする。
スライムのドロップは確定ドロップスライムゼリーとレアドロップのスライムコア。
それらが浮き上がったかと思うと、腰のあたりに吸い込まれて消えた。
正確には、冒険者カードに内蔵されたアイテムボックスが自動で回収したのである。
これ、ゲームでは設定しか語られてなかったけど、現実になるとめちゃくちゃ便利だ。
なにせ、そのままボクはその場を駆け抜けて、次なるスライム目指してダンジョンをノンストップで進めるのだから。
これがなかったら、もっと効率は落ちていただろうなぁ。
と考えつつ、ボクはスライムだけを殺す機械になった。
……つもりでダンジョンを駆け抜けていた。
♪
さて、ここで初期ビルドの話をしよう。
前にも離したけど『ヘルダン』はキャラクリゲーだ。
最初に容姿とビルドを決める。
容姿に関してはデータに影響しないので、渾身の黒髪ロリ巨乳を作りました。
これで中身がボクじゃなかったら、神秘的な美少女が完成してたんだろうけどなぁ。
で、ビルドの話。
『ヘルダン』で最初に決めるビルドは主に4つ。
性別。
種族。
ステータス割り振り。
スキル。
この4つだ。
性別に関しては言うまでもないだろう。
種族も、まぁ文字通り。
この世界には様々な種族がいて、人間だけでなくエルフやドワーフもいる。
そして種族は、このゲームにおけるビルドを決める指針となる。
ディーヴァの特徴は、まず何よりも歌だ。
歌のうまいディーヴァは、専用の歌スキルを復数所有している。
加えて水の中を自由に泳ぐことができ、得意武器は槍。
銛で狩りをするイメージからだろうか。
サポートも得意だが、歌いながら前衛で戦うこともできる結構器用な種族だ。
ステータス割り振りは、ソロで潜ることを前提に前衛アタッカー向けに振っている。
ATKとSPDを中心に振った、ディーヴァは魔術もそこそこ適正があるが得意種族ほどではない。
なのでかなり脳筋寄りのステ振りをしている。
歌のバフがステータスに依存しないのがわるいんよー。
で、最後にスキル。
これに関して、ボクはある特殊なスキルを取得している。
それは【呪いの歌声】というパッシブスキルだ。
ディーヴァは歌系のスキルを使用するうえで、【祝福の歌声】と【呪いの歌声】のどちらかを選択して取得する。
前者は主にステータスバフの効果にプラスが入る。
主にサポート向けのスキルだ。
対する【呪いの歌声】はバステ付与とデバフ系歌スキルを取得できるようになるスキル。
そもそもディーヴァはバステ付与とデバフ系の歌スキルを【呪いの歌声】がないと取得できない。
代償として通常のバフスキルに他者に対するバフ効果がなくなる上、強力な【祝福の歌声】の恩恵を得られなくなるものの。
自分に対してのバフは有効だし、デバフとバステ付与はそれを補って余りある強さだ。
そして自分に対してのバフが有効というところからわかるように、これは意図した作りになっている。
パーティを組む場合は【祝福の歌声】を、ソロでやる場合は【呪いの歌声】を取得するのがセオリーだ。
話をまとめると、ボクは歌を歌いながら前衛として戦うソロビルドということになる。
これが中々、手堅くまとまっていて強いビルドなのだ。
まぁ、これはあくまで序盤の話なのだけど。
中盤以降、終盤以降はまたビルドの趣が変わってくる。
というかむしろ、本番はその中盤以降のビルドだ。
今はあくまで手堅くまとまっている普通のビルドだが、それが最終的にどうなるか。
それはまた今度のお話、ということで。
♪
「やあ!」
麻痺したモンスター郡の中から、スライムだけを的確に突き殺していく。
今回はスライム以外にも、コボルトやワーバット等の通常モンスターも同時に湧いていたのだ。
それらを殺さずに麻痺だけ付与して放置。
自分はスライムだけを的確に殺す。
スライムスレイヤーだ、いやーっ!(本家ではないので照れが混じって敢えてずらしているオタク特有のアレ)。
「次! 【俊足の歌】!」
ボクは歌をバステ付与の【麻痺の歌】からSPDアップの【俊足の歌】に切り替える。
このとき、歌が終わっても麻痺は解けない。
付与時間は初日に検証したけど十分ってところだ。
ゲームだと耐性が全くないモンスターは戦闘中にバステが付与されると、戦闘中は永続する。
リアルにした時の戦闘時間を加味すると、まぁ十分な効果時間だね。
なお、耐性にはランクがあり、多少でも耐性があると効果の継続時間はグッと短くなる。
最終的には完全耐性だ。
ともあれ、足を早くしたボクはそのままダンジョンを駆け抜ける。
基本はこの用に、【麻痺の歌】と【俊足の歌】を切り替えつつ戦う感じだ。
第一層のモンスター相手に、それ以上の小細工は必要ない。
大事なのはスライムだけを倒すこと。
そうすることで、”連続撃破ボーナス”を得られるからだ。
連続撃破ボーナスとは読んで字のごとく。
同じモンスターだけを倒し続けると得られる経験値にボーナスが入るというもの。
なので一番経験値効率がいいスライムだけを連続で狩るのがベストなのだ。
ちなみに検証したところ、この連続撃破ボーナスは一日経つとリセットされるらしい。
残念。
ともかく。
これが他人よりボクのレベルアップ速度が大きいからくりだ。
どうも、ゲーム内の仕様はきちんと現実になっても残ってるみたいだけど、それに気付けるかはまた別らしい。
ゲームだとチュートリアルさんが教えてくれたのにな。
「昼の時点で三十か、ペース悪いなぁ」
息継ぎの合間に、一人でそんな事をつぶやきつつ。
ボクはダンジョンを駆けて行く。
一人でいる時に陰キャは流石に発動しない。
でも考えていることが口から出てくるのは、多分気分が高まっているからだ。
異世界に、陰キャのオタクが一人でやってきて。
最初の不安は、果たして本当にダンジョンで戦えるのかということ。
そもそも、ゲームの『ヘルダン』はRPGだ。
アクションゲームではない。
だから、ゲームのモーションを知ってるからモンスターとの戦闘で有利みたいなことは全然ないし。
どころか、思うように戦えるかすら、最初は不安だったのである。
しかし、蓋を開けてみればどうだろう。
ボクはこのように、縦横無尽にダンジョンを駆けて、思うがままに戦えている。
理由はとても単純で、身体能力が前世と比べて劇的に向上しているからだ。
そりゃゲームの住人なんだ、岩くらい素手で砕けるし、鋼だって剣で切れる。
そんな身体能力を手に入れたら、まぁ戦うことくらいなんてことはない。
加えて言うと、ボクは戦闘の天才なのかもしれない。
なにせ、身体を動かすと、自分が思い描いたとおりに体が動いてくれるのだ。
前世で絵を描く時なんか特にそうだけど、身体ってのは頭が思ったとおりに動いてくれるものじゃない。
なのにこの世界では、手足がまるでコントローラーで操作されているかのように動く。
アクションゲームにジャンルが変わったのかな? って感じ。
おかげで、戦闘は何一つ苦も無くこなせていた。
というか、普通にめっっっっっっっちゃくちゃ楽しかった。
前世から、ボクは好きなことに対する集中力だけは自信があった。
ゲームであれば、それはもうがっつり隅々までやり尽くすし、レベル上げだって根気強く続けられる。
『ヘルダン』なんか、叡智な部分以外も非常によくできたゲームで、ボクはかなりハマっていたほどだ。
少なくとも、男主人公と女主人公でそれぞれ二回ずつゲームをクリアしている。
好きなゲームに転生したことも、モチベーションにつながっているのだろう。
「けど、やっぱりこの爽快感には変えられない」
数匹まとめて見つけたスライムを一掃しつつ、笑みを浮かべながらボクは零す。
たまらない。
この圧倒的な爽快感の前では、異世界に転生してしまったという事実はどうでもいいといい切れるレベルだ。
思うがままに動く身体にまかせて、モンスターを薙ぎ払っていく。
なんと心地よい感覚だろう。
笑みもこぼれるというものだ。
転生した直後は不安もあった。
前世にだって未練もある。
オタクコンテンツを摂取できなくなったのは惜しい。
今でも、ソシャゲの続きが気になって仕方なくなる時がある。
ガチャは……この世界でも代用できるから、今はいいや。
ともかく。
ボクはこの世界をそれなり以上に楽しんでいた。
好きなゲームの世界で、思うがままに暴れまわって。
何より自分が美少女ってのもいい。
鏡を見ていて惚れ惚れするくらい可愛いし、何より女の子って……いいよね!
そりゃあ叡智なゲームだから、叡智な目に合う可能性はあるけれど。
ダンジョン内での叡智シーンに関しては、対策が可能だ。
対人の叡智シーンも、人見知りするせいでそもそも人に近づけないから問題ない。
というわけで、今日もボクは楽しくダンジョンを飛び回っていたのだけど。
「イヤァ――――ッ!!」
少女の悲鳴がダンジョンに響き渡る。
な、何事ぉ!?
TS要素は薄めですがないわけではないですくらいの塩梅でいきたい(癖)。