エログロダンジョンゲーにTS転生者が潜るのは(頭が)おかしいですか?   作:ターカ

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4 TS転生者は叡智被害を抑えたい

 先日のソロ冒険者少女の件で思ったのだが、やはり女性が叡智な目に遭うのはよろしくない。

 ボク自身が女性になったことで、もしも自分がああいう目にあったらというのを本気で考えるようになってしまったのだ。

 あと気持ちいいだけならともかく、この世界の人間って頑丈だから結構平気でグロいことされるんだよね、ゲームだと。

 なので、やはり対策は必須だと思うわけだ。

 

 ただ、ボク個人はソロでも叡智な目に合わないよう対策を打っている。

 強くなることで敗北しないようにするとか、安全マージンを取って行動するとか。

 そういう話じゃなくてね?

 

 ここで少し、ゲームの仕様に関する話をしよう。

 仕様だけに。

 こほん。

 

 まず『カースヘルダンジョン』、通称『ヘルダン』はR指定の入った立派な叡智ゲーだ。

 それ故に、多種多様な叡智シーンが存在するわけだけど。

 問題は、その発生条件だ。

 『ヘルダン』の叡智シーンはダンジョン内部のものと外部のものが存在する。

 外部のものに関しては、ぶっちゃけ対人の叡智シーンしかないので別にいいだろう。

 人相手に叡智な目に遭うのは、何もこの世界だけの話じゃないんだから。

 そこは、個人で対策なりなんなりしてもらうしかない。

 ボクも気をつけないとね。

 

 ダンジョン内部で発生する叡智シーンに関しては、これまた二つの種類が存在するのだ。

 一つは『ボスに敗北した場合』。

 これに関しては言うに及ばず、ボスに負けると叡智な目にあう、それだけだ。

 発生条件がシンプルなのもあって、打てる対策は負けないことしかない。

 まぁこれに関しては、()()()()()対策しやすくなっているんだけど。

 それに触れると話が逸れるから、今はおいておこう。

 大事なのはもう一つの方。

 『ダンジョン内でエロモンスターに敗北した場合』だ。

 これに関しては、前にも話したと思うけどダンジョンには女性に叡智なことをしてくるエロモンスターとそうでないモンスターがいる。

 そのうち、エロモンスターに敗北した時、特定条件を満たすと叡智なことをされるのだ。

 

 条件は二つ。

 女性が一人で敗北すること。

 これは今更話すこともないだろう。

 ちなみに、一人で敗北するという条件に関してはこの世界の人々も把握しているようで。

 ボクは時折、仲間を組むよう勧められることがある。

 ボクに人並みのコミュ力があれば、それも十分選択肢なんですけどね……ハイ(遠い目)。

 そしてもう一つ。

 ()()()()()()()()()()()()というパーティで敗北すること。

 

 これが何かというと、前にも話したと思うけどこのゲームは女性主人公のソロプレイか、男性主人公のパーティプレイを前提としている。

 後者の場合は、いわゆるハーレムモノみたいなプレイ感覚になるのだ。

 そしてそのエッセンスとして、特定の仲間を加えた状態で特定のエロモンに敗北すると叡智シーンが発生……なんてことになるわけ。

 男性主人公の場合、仲間にする女性キャラはネームドオンリーだからね、必ずしもすべてのエロモンにすべての仲間の叡智シーンがあるわけじゃない。

 

 と、ここまで語ったけど、ぶっちゃけ後者の条件に関しては()()()()()()()()()()()()んじゃないだろうか。

 だって特定の人物が男性一人とパーティを組んで特定のモンスターに敗北しないと発生しないんだもの。

 一応、この世界はゲーム時代の仕様が現実の法則として生きてるみたいだから、もし仮にそういう状況が発生すれば叡智な目に遭うんだろうけど。

 外れ値扱いされてたりしそう。

 

 というわけで、色々話をしたけど私ができる対策は一つ。

 ソロで潜る女性冒険者がエロモンに負けても叡智なことをされないようにする方法だ。

 これに関しては、ゲーム内のある仕様を利用する。

 このゲームでは、()()()()()()()()N()P()C()を時折連れ回すことがある。

 そういったNPCをつれたままダンジョンに潜ることも可能なんだけど。

 そうした場合、ソロ女性冒険者が敗北した時に発生する叡智シーンが発生しないのだ。

 

 これを利用して、ボクはこっちの世界に来てすぐ、あるものを購入していた。

 そしてそれが、色々あって壊れてしまったので――基本アイテムボックスに入れておくと意味がないから、ポケットに入れてるんだけど激しい戦闘の最中にくだけてしまったみたいだ――買いに来た。

 場所はギルドだ。

 

()()()()()が欲しい……ですか? 確か、以前にもご購入されてましたけど」

「あ、はい。同じものでいいので……」

 

 クソみたいなコミュ力を駆使して、何とか用件を伝え。

 ボクは目的のものを購入する。

 それは『木人』と呼ばれるマジックアイテムだ。

 何に使うかと言えば、ギルドで木人相手にテスト戦闘を行う時に使う。

 ゲーム時代から存在していたが、現実になってもギルドに設置してあるらしい。

 ただゲームだと廃人のダメージコンテストの玩具だったそれが、現実だと新人の練習台として使われているらしい。

 後者が正しい使い方だと思う。

 

 この木人、ゲーム時代はギルドで購入して連れ歩くことができた。

 ダンジョンにも連れていける、言ってしまえばちょっとしたお遊びアイテムだったんだけど。

 その木人を、非戦闘NPCに設定したのがよくなかったんだろう。

 木人を連れていると、敗北叡智シーンが発生しなくなるのだ。

 この仕様を利用すれば、おそらく現実世界でも敗北叡智を回避することができるはずだ。

 まぁ、ボクは負けたことがないから、まだ試せていないんだけど。

 

 ただ、流石に木人をそのまま持ち歩くわけには行かない。

 そこで考えたのが、壊れた木人から、”木人がNPCとして扱われている部分”だけを抜き取ることだった。

 これはこの世界のアイテムで”マジックコア”と呼ばれるもので、木人のような自律するマジックアイテムを動かすためのアイテムだ。

 新品を買ってもいいのだけど、壊れた木人から抜き取ったほうが明らかやすかったから……。

 というわけで、ボクは使われなくなった木人から、まだコアが無事な木人を選んで買い取り。

 それをお守りとして身につけることにしていた。

 

 ――で、ここから本番。

 

 なんとかこれを、他の人にも教えることはできないだろうか。

 だって、もしこれで本当にソロ冒険者の敗北叡智が防げるなら、きっとダンジョン内部の叡智被害は格段に減るはずだ。

 ボス敗北に関しては、そもそもボスはボス部屋にしかいないから挑まなければ被害は出ない。

 なので、この事実を周囲に伝えることができればなー、とボクは常々考えていた。

 

 いやだって、ボクだって別に自分だけがよければそれでいい、みたいな人間ではない。

 むしろ皆が得して、誰にも迷惑のかからない事実は広めるべきだと思うのだ。

 それが皆のため、なによりボクの罪悪感を薄めることにもつながる。

 まぁ、そういう意味ではやっぱり自分が良ければいい、っていう偽善が根底にあるかもしれないけど。

 別にそこは議論する必要はないので、置いておこう。

 

 大事なのは、ボクがそれを周囲に伝えることができるのか、という話だ。

 

「――ところで、この壊れた木人。何に使うんですか?」

「あ、えっと」

 

 

 ――――無理です!

 

 

 壊れた木人を買い取る際に、ギルド職員の人から質問が飛んで来た。

 当然ボクは言葉に詰まる。

 だって、言えるか? 言って信じてもらえると思うか?

 

 マジックコアを持ってダンジョンに潜ると、叡智な目に合わなくて済むかも知れない。

 なんて言えるか?

 言えないでしょ!

 だってそもそも確信がないもの。

 ゲームの仕様がそのまま適用されていれば、多分大丈夫というだけで。

 

 加えてボクは、自他ともに認めるコミュ障。

 陰の中の陰、見た目のおかげでギルド職員さんから気にかけてもらえるだけのイモムシ。

 そんな存在が、果たしてこの胡散臭い事実を誰かに話せるものだろうか。

 無理です、無理無理。

 かくしてボクは――

 

「えっと、その」

「ふふ……ごめんなさい、冗談です。人には何事も秘密ってありますからね」

 

 と、ギルド職員さんが言ってくれてホッとしつつ。

 話せなかったことに、少し自己嫌悪を感じるのだ。

 

 とにかく、何か方法はないだろうか。

 別に必ずしも信じてもらう必要はない。

 なんかこう、ボクが何か伝えたと思えればそれでいい。

 とか思いながら、考えて――考えた結果。

 

 そうだ、メモを残そう。

 冒険者が考え事を書き残したメモを忘れた……みたいに装って。

 この情報をギルドにおいていくのだ。

 それが実際に、誰かに信じて貰える必要はない。

 もしかしたらせっかくだし試してみよう、という人が出るかも知れない。

 それでいいのだ。

 ところで文字は書けるのかって?

 なんか、普通にかけましたよ、転生特典ってやつかもしれないね。

 

 

 ♪

 

 

『ダンジョン内部で女性がモンスターに襲われる条件は、一人で襲われること。

 二人以上であれば襲われない。

 この二人というのは、人間が二人である必要はないのでは?

 マジックコアのような、自律して動くものを身に着けていればダンジョンのモンスターが”二人”と判断するかもしれない。

 アイテムボックスに入れていると、効果はないと思う。

 保証はないです、ごめんなさい』

 

 そんなメモが、ギルドに置かれていたのはカノンがメモを残すことを思いついた次の日のこと。

 本か何かを使って、筆跡がわからないように書かれたそのメモは、胡散臭さから一時ギルド職員の間で話題となり――そして忘れられた。

 

 ただ、話題となったことでそれがとある女性冒険者の耳に入り――それから数年後。

 どうしてもソロでダンジョンに潜る必要が生まれたその冒険者は、メモの内容を偶然思い出した。

 その冒険者にとって、マジックコアは仕事に使う道具だったこともあり。

 せっかくだからアイテムボックスから出して身につけてみようと、気まぐれに思ったのだ。

 

 

 結果、それが大成功。

 

 

 うっかりエロモンスターに敗北した冒険者は、しかし。

 エロモンスターに叡智なことをされず開放された。

 その事を知り合いに話したところ、じゃあ検証してみようということになり。

 実際に、効果の程が実証されたのだ。

 

 そこからは早かった、ソロでどうしてもダンジョンに潜らざるを得ない女性冒険者というのは常に少数ながら存在する。

 そんな女性冒険者の救世主になったのだ、マジックコアが。

 結果として、メモがギルドに残されて十年後、ソロ女性冒険者がマジックコアを持つのは常識となった。

 

 そうなると、問題になってくるのがこの情報の出どころだ。

 

 一体誰がそんなことを?

 どうして思いついたんだ?

 様々な憶測が冒険者の間で飛び交う中。

 

 メモを残したことですっかり満足し、その事を忘却の彼方に葬り去り。

 アレ以来、一度もエロモンに敗北せずSランク冒険者となっていたカノンは、すっかりメモの事を忘れていた。

 結果、そういえばそんな仕様あったなー、とか十年後のカノンは呑気に考えているのであった。




というわけで、ゲーム内の仕様を周囲に共有したいけどコミュ障なのでできない主人公でした。
しれっと十年後の主人公が話題に出てますが、本作は主人公に関してはゆるいので普通に十年後もいい感じに無双してます。
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