腹減り少女はSEED世界で爆発少女にレベルアップする   作:サボテンダーイオウ

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SEED編
PHASE-00序章


ちょっくら落とすわと誰かさんに宣言されて見知らぬ世界に叩き落とされる30分前。

 

アマキはキッチンに立ち、妹のための手作り唐揚げに腕を振るっていた。

にんにくと生姜をきかせたタレに下味をつけておいた鶏肉を、卵と小麦粉、片栗粉を混ぜた衣にくぐらせ、ジュッと油に落とす。

ジューッと揚がる音が台所を包み、香ばしい匂いが部屋いっぱいに広がる。

菜箸でひとつひとつ返して、きつね色の衣がカリッと仕上がるように火加減を調整。

油を切りながら一口サイズの唐揚げを丁寧に盛り付けて、隣には千切りキャベツと水洗いしたミニトマト。

 

「ふふ…完璧」

 

デザートの冷凍ワッフルも準備済み。妹の喜ぶ顔が目に浮かぶ。

腹も鳴るわけだ。自転車全力で漕いで買い物したし、手間ひまかけたし。

ほんのちょっとだけ…味見しても罰は当たらないだろうと、湯気を立てる唐揚げにそっと手を伸ばす。

 

「ちょこっとだけ」

 

…と、その手をガシッと掴まれる。

 

「なっ…何すんのよ」

 

掴んできたのは同居中の親戚。

 

「つまみ食いは禁止、だろ」

 

アマキは掴まれた手を引き離そうと、反対の手で相手の腕を掴む。

 

「私が作ったんだから少しくらい…!」

 

「行儀悪いなあ」

 

「年季が違うのよ」

 

「それ、何年だ?」

 

「知らんけど、どけなさいよ」

 

「そんな悪い子は……お仕置きだ」

 

「は?」

 

相手が床をダンと踏み鳴らす。すると足元に黒く深い穴がぽっかりと口を開いた。

 

「悪い子は、この穴に落ちる設定だ」

 

「ちょ、まさか!? また!?」

 

まだ夕飯も食べてないのに!?

 

「正解〜! いってらっしゃーい」

 

ニヤリとした顔とともにアマキの手がポイっと離される。

 

「テメェ、覚えとけよーー!!」

 

叫ぶ間もなく、アマキの身体は穴とともにしゅっぽんと消え去った。

 

◇◇◇

 

授業が終わり、トールたちと別れて一人帰る道すがら。

本当は遊びに行きたい気持ちもあったけれど、溜まったレポートが背中を押してくる。ため息をひとつ吐いて、足取り重く家を目指す。

ふと、傘越しの視界に誰かが入った。

 

「……あの人、雨に濡れてる?」

 

設定された天気の中、傘もささずにずぶ濡れのまま立ち尽くす少女。

このヘリオポリスでは、天候はあらかじめプログラムで決められている。つまり、濡れることは“選択”だ。奇妙なほどに目立つ彼女の姿は、不審者のそれに近い。

 

(関わるのはやめておこう)

 

そう思い、道をそれようとしたけれど、この道が最短ルート。できるだけ端を歩いて、素通りするつもりだった。

 

「……」

 

だけど。

何も言わず雨の中に立ち尽くすその後ろ姿が、どうにも心に引っかかった。

キラは立ち止まり、静かに傘を差し出しながら声をかける。

 

「あ、あの……大丈夫ですか?」

 

少女がゆっくり振り返る。目が合った瞬間、キラは息を飲んだ。

自分と同じ紫の瞳。深く吸い込まれそうな、不思議な色。

美しい容姿に見とれたわけではない。ただ、その瞳が――まるで、自分を知っているようだった。

少女は震える唇で何かを囁いた。

 

「え……?」

 

言葉にはならない。寒さのせいか、何度も同じ口の動きが繰り返される。

キラは不安げに、そっと顔を近づけた。

 

「落ち着いて。ゆっくり喋れますか?」

 

「……っ、は、が」

 

少女は腹を押さえ、苦しげに顔を歪める。

 

「痛いの……?」

 

「はら、が……」

 

「おなか……が? 痛いの?」

 

「……はらが、へった」

 

「……えっ」

 

予想外すぎて、キラは言葉を失った。

少女はそのままキラにもたれかかり――お腹がぐぅ、と鳴った。

 

「……あの、家来ます?」

 

「天使が舞い降りた……」

 

それ、どう考えても君の方だよ……と思いながら、キラはそれを口にはしなかった。

 

 

それから1ヶ月。

アマキはすっかりヤマト家の居候となった。

最初、キラが雨の中拾ったときは、ずぶ濡れの髪と服、どこか無表情で不気味ですらあった。

けれど、シャワーを浴びて髪を乾かし、清潔な服に着替えれば――そこにいたのは、見目麗しい少女。

キラの母・カリダは、そんな彼女にひと目惚れだった。

 

「娘がいたら、こんな感じかしら!」

 

すっかり気に入ってしまい、一緒に買い物をしたり、料理をしたり、にぎやかに過ごしている。

キラの父・ハルマは朗らかに笑った。

 

「家の中が、なんだか明るくなったな」

 

とはいえ、アマキが元・不審者だったことは事実。

所持品買い物袋のみ、身分証もなし。まっとうに考えれば、通報案件だ。

カリダは「つてがあるから」と言って、1週間も経たぬうちに彼女の身分証を用意してしまった。

キラはその手際の良さに驚きつつ、「母さん、何者……?」とこっそり口にするほどだった。

居候を続けるのは気が引ける、と働き口を探そうとしたアマキだったが、年齢的には未成年扱いだと知り、口ごもる。

「実はウン歳なんです」なんて言えるはずもなく、洗濯物を干しながら、自嘲気味に笑う。

 

「……キラに拾われたのは、運が良かったな」

 

「拾ったって、犬みたいな言い方しないでよ」

 

「実際そうでしょ。食べものもらって、雨から守ってくれたし」

 

「僕以外の人だったら、即通報されてたよ」

 

「キラ様々〜〜」

 

アマキは冗談っぽく手を合わせて拝む仕草をしてみせる。キラは嫌そうな顔で「やめてよ」と彼女の手を軽く叩いた。

 

「……それにしても母さんの“つて”って、なに?」

 

「簡単にIDカード作れるなんて、やっぱり変じゃない?」

 

「ふふ、手が止まってるわよ〜」

 

「「あっ、はい!」」

 

慌てて洗濯物に集中し直す二人を、カリダは台所から優しく見守っていた。

普段は家事なんて手伝わないキラが、アマキのそばにちょこちょこ立っている。

なんだかんだ文句を言いつつも、結局は世話を焼いている彼の姿を、カリダは知っていた。

突然増えた同居人。けれど、彼女が来てから家の空気がどこか柔らかくなった気がする。

このままずっとキラが幸せに過ごせるなら――そう願わずにはいられなかった。

しかし、世界は静かに激しさを増していた。

平和を求めてヘリオポリスへと移り住んだヤマト家。

その後を追うように、戦火の影が忍び寄る。

――そして、ある日。

運命が、静かに扉を叩くのだった。




主人公説明

アマキ・カンザキ

突然誰かの気まぐれで種の世界に落とされた永遠な女子。
見た目はヨシ!中身はニッコリ。

紫の瞳に黒髪で長髪。運動神経は抜群だが他人からの好意には疎い鈍い。戦闘狂でもある。


戦闘機体

エリスガンダム
アマキ専用機


誰かさん

アマキを種の世界に飛ばした男。アフターケアは多分バッチリなはず。

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