腹減り少女はSEED世界で爆発少女にレベルアップする   作:サボテンダーイオウ

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PHASE-11フレイの選択

遂に――第8艦隊との合流の時が訪れた。

モニターに映る艦隊の群れに、皆が息を呑む。どこか、夢のようだった。

避難民たちは旗艦・メネラオスへ移され、そこから地球へ降りる予定だ。

それは、ようやく手に入る日常の始まりだった。

 

「俺たち……どうなるんだろ?」

 

カズイが浮き足立った声でつぶやく。

 

「降りられるに決まってるでしょ。だって私たち、民間人だもの」

 

「そ、そうだよね……」

 

乗員たちは口々に安堵を漏らし、艦内にははしゃぎ声が絶えなかった。

だがその輪に、フレイの姿だけがなかった。

彼女は窓の外を静かに眺め、心に何かを抱えたまま黙っていた。

そんなフレイの横に、アマキが歩み寄る。

 

「どうした? 地球に降りられるんだよ。パパとも居られるしさ」

 

「あ、え……そうね。嬉しいわ……アマキさんも一緒だものね」

 

咄嗟に笑顔をつくり、アマキの腕に甘えるようにしがみつく。

だがアマキは、目を泳がせながら明後日の方を向いた。

 

「あー……そうだな」

 

「……なにかあるの?」

 

フレイはすぐに察する。アマキが、何かを隠している。

その表情の奥に、小さな揺れを見つけたからだ。

 

「いや、なんでもないよ」

 

「ふーん……?」

 

追及するような視線に耐えきれず、アマキは逃げるように手を離した。

 

「あー……フラガ大尉の手伝いでも行ってこよー」

 

そう言って、そそくさと格納庫の方へ向かっていく。

背中を見送るフレイの目は、少しだけ複雑な光を宿していた。

 

キラはメビウスゼロの復旧作業に勤しんでいた。

フラガ大尉は――機体が壊れたままでは落ち着かないと文句ばかり。

 

「そういえば、ストライクはそのままでいいんですか?」

 

「わかっちゃいるけどな。スペック落とす気にはなれねぇ」

 

そこへ、意外な人物が声を添える。

 

「できれば……あのままで、って思っちゃいますよね」

 

マリューだった。

キラもフラガも、思わず目を丸くする。

 

「艦長!?」

 

「ありゃりゃ、こんなとこで」

 

「ごめんなさいね。少しだけ、キラくんと話したくて」

 

不意の言葉にキラは動揺しつつも、マリューとともにストライクの方へ向かう。

ほどなくして、入れ替わるようにアマキが現れた。

 

「フラガ大尉〜、手伝うことあります?」

 

「おー、嬢ちゃんか。……キラがほとんどやってくれてるからな。だいたい嬢ちゃんが触ると変になるから、逆に手ぇ出さないでくれ」

 

「その言い方失礼でしょ。……で、キラは?」

 

「坊主なら艦長とあっちにいるぜ」

 

フラガが指さす先、ストライクの前に並ぶキラとマリュー。

その珍しい組み合わせに、アマキは目を細めて静かに見つめる。

 

「なんか……込み入った話ですかね」

 

「さあな。……嬢ちゃんも、坊主たちと一緒に地球へ降りるんだろ?」

 

アマキは、少しだけ沈黙する。

 

「……」

 

だがフラガはお構いなしに続けた。

 

「エリスは地球軍預かりになるだろうが──あれを動かせる奴なんて、もう現れない。鉄屑も同然だ」

 

その言葉に、アマキが初めて真正面からフラガを見る。

 

「……ですね。あれは、私専用ですから」

 

「専用、ねぇ……」

 

その“専用”の意味は重い。

オーブ? ザフト? それとも……?

アマキ・カンザキという存在の正体は、未だ曖昧なままだ。

 

「降りなかったら、エリスは私のものなんですか?」

 

「……まぁ、そうなるな」

 

それが、“選択”の時なのだ。

アマキは小さく笑みを漏らす。

 

「……酷い男だな。私に人殺しを薦めるなんて」

 

そこからの空気の変化は、まるで静電気のようだった。

さっきまで破天荒な少女だったはずのアマキが、妖艶な“顔”を見せる。

そろりとフラガに近づき、彼の顔を両手で包む。

息が触れそうな距離。

紫紺の瞳が深まり、赤い唇がほんのり艶めく。

 

「……嬢ちゃん」

 

「その呼び方、やめてくれません? そういう年齢じゃないんで」

 

「俺より年上か?」

 

「フフ……どうでしょう? 当ててみてくださいな。女に年を聞くなんて──野暮ですよ?」

 

唇が、あと数センチ。

……その直前。

アマキは突然フラガの頬を思いっきり引っ張った。

 

「ダッ!?いっ……!」

 

「ちょろすぎ」

 

くすくすと意地悪く笑い、手を放すと──さらりと背を向けながら言い放つ。

 

「年下は守備範囲じゃないんで。ご心配なく」

 

その謎めいた言葉とともに、とんずらするアマキ。

フラガは恨めしそうにその背中を眺める。

 

「……俺が年下なのか?」

 

その答えは、彼女だけが知っている。

◇◇◇

 

アークエンジェルのクルー全員が甲板に並び、迎える準備を整える。

学生らの中、アマキも目立たぬ位置でひっそりと待機していた。

ハッチが開き、艦から降りてきたのは――ハルバートン提督。

見事な髭が特徴の、威厳と品を兼ね備えた紳士だった。

 

「いや、ヘリオポリス崩壊の報せを聞いたときは、もうだめかと思ったぞ。こうして君たちと再会できるとは」

 

「ありがとうございます。……お久しぶりです、閣下」

 

マリューの顔がほんのりと緩む。

 

「戦闘中の報告もあって気を揉んだ。……大丈夫か?」

 

後半の言葉は、クルー全員に向けたもの。

そのねぎらいに、空気が少しほどける。

続いてナタル、そしてムウ・ラ・フラガが前へ出て敬礼をする。

 

「ナタル・バジルールであります」

 

「第七機動艦隊、ムウ・ラ・フラガであります」

 

「おお、君がいてくれて本当に幸いだった」

 

「いえ、さしてお役に立てたかは……」

 

「それで、彼らが?」

 

「はい。彼らが支えてくれました。ヘリオポリスの学生たちです」

 

その場の視線が、学生たちへと向く。

アマキは本能的にその目線を嫌い、キラたちの列からスッと離れようとする。

だが──

 

「どこに行く気?」

 

キラが、柔らかく笑って腕を掴んだ。

逃げられなかった。

 

ハルバートン提督が歩み寄る。

 

「君たちのご家族の消息も、確認しておいた。皆さんご無事だ」

 

その言葉に、トールたちが歓喜をあげた。

安堵と喜びが広がる。

アマキも、キラの腕を握りながら顔を綻ばせた。

 

「キラ!……よかったね」

 

「うん!」

 

「とんでもない状況だったが、よく頑張ってくれた。私からも礼を言う」

 

その人柄に、アマキは内心「へぇ」と関心する。

威厳にあぐらをかかず、部下を気遣える人だ。

“上に立つ人間”として、まるで別格に感じられた。

その時、後ろの士官が耳打ち。

提督は頷くと、「また後で話そう」と言い残して、部下とともに別室へ向かっていく。

アマキはその背中を、じっと見送る。

そしてひとり、ぽつりと呟いた。

 

「さて……おじさまは、どう出るかな」

 

アマキの推察は的中していた。

艦長室では、ストライクとエリスに関する議論が静かに、しかし激しく展開されていた。

ホフマン大佐が皮肉を込めて口を開く。

 

「しかしまあ、たかが艦一隻とG一機のために、ヘリオポリスを崩壊させ、アルテミスを壊滅させるとはな」

 

提督は背後の嫌味をさっと受け流しつつも、前を向いて言った。

 

「だが、彼女たちがストライクを守ったのは事実だ。いずれ、必ず地球軍の利となろう」

 

「アラスカはそうは思っていないようですが?」

 

「フン。奴らに宇宙での戦い方の何が分かる。ラミアス大尉は、私の意図を理解してくれていたはずだ」

 

マリューの方に目を向け、そう言葉を添える提督。

 

「もう一機のGに関しては……どうなさるおつもりで?」

 

「“エリス”だったな。確かGは五機のはず。オーブが密かにもう一機隠していたか──それとも別の力が……。とはいえ、今ここにある以上、利用する他ない」

 

ホフマン大佐は、さらに追及の手を強めてくる。

二枚の書類を提督に差し出す。

 

「このコーディネーターの少年、それにナチュラルの少女。……この二名も、黙認するおつもりか?」

 

ここで、マリューが一歩前へ出る。

 

「キラ・ヤマト。そして、アマキ・カンザキ。彼らは友を守りたい一心でストライクに乗ってくれました。彼らなしでは、我々はここまで来ることはできなかった。それは確かな事実です。ですが、彼らはその中で……己の同胞と戦うことに苦しんでもいました。誠実で、優しい子たちです。私は、信頼で応えたいと思っています」

 

隣でナタルが眉をひそめるが、マリューは言葉を遮らせない。

 

「しかし、彼らをそのまま解放するのは……」

 

「僭越ながら、私もホフマン大佐と同じ考えです」

 

意外にも、ナタルも慎重派だった。

 

「彼らの能力は驚くべきものがあります。Gの機密に触れた者を、野放しにするのは危険かと」

 

「ザフトには、既にその機密とやらも漏れているぞ」

 

提督の言葉は冷静だ。

 

「では、彼のご両親は地球にいると見て、軍の保護を──」

 

その瞬間。

ダンッ!!

提督の拳が机を叩いた。

 

「ふざけたことを抜かすな! そんな兵が、何の役に立つ!?」

 

ナタルはすぐに頭を下げた。

 

「も、申し訳ありません……!」

 

提督は、静かに語気を落とす。

 

「過去のことなどどうでもいい。問題は、これからだ」

 

「この後、アークエンジェルは人員編成ののち、アラスカ本部へ向かってもらう。補給は十分。ヘリオポリスは崩壊した今、アークエンジェルとGには、戦闘データを届けてもらう必要がある」

 

マリューは、不安げに声を落とす。

 

「ですが、我々は──」

 

「“アレ”の開発を、軌道に乗せねばならん。ザフトは、次々に新型を投入してくるのだ」

 

その言葉に、室内の空気が引き締まる。

誰もが、次なる戦いの匂いを感じ取った。

 

「……わかりました。閣下の思い、しかとアラスカへ届けます」

 

「アーマー乗りとしては、断れませんな」

 

マリューとフラガが、敬礼する。

 

「頼む」

 

提督が目を伏せてそう言った。

その声に託された重みは、沈黙の中で色濃く残っていた。

 

◇◇◇

 

ナタルから除隊許可証が配られる中――

そこには、キラとアマキの姿はなかった。

代わりに、思いがけない声が上がる。

 

「私、軍に志願したいんです!」

 

「ええっ!?」「まさか……」

 

驚きの声が広がる。

サイは目を丸くして、戸惑いながらその名前を口にする。

 

「……フレイ……?」

 

だが、フレイは聞こえていないふりをした。

今だけは、気持ちに曇りを差し込みたくなかった。

手をぎゅっと握りしめ、まっすぐ前を見て言葉を紡ぐ。

 

「フレイ・アルスターです。父は地球連合の事務次官です」

 

「アルスター事務次官の……お嬢さんか。なぜ、軍に?」

 

「父は――キラさんと、アマキさんのおかげで助かりました。だけど……こんな戦闘が、ずっと続くのが嫌なんです。怖い思いをする人が、ひとりでも減るように……何か、私にできることがあるなら……父も、賛成してくれています」

 

思いがけない言葉に、軍高官も困惑の色を隠せない。

ナタルも眉をひそめる。

 

「しかし君は……」

 

「お願いします!」

 

フレイは生半可な気持ちで言っているわけではなかった。

地球に戻ったところで、戦争と完全に縁が切れるわけじゃない。

それなら、ただ見送るだけじゃなくて――何か、役に立ちたかった。

そして、フレイの勘が告げていた。

あのアマキが、地球へ降りるはずがない、と。

キラやトールたちのため、自分ひとりで艦に残るつもりだ。

あの挙動の怪しさは、ただの気まぐれじゃない。

 

「お願いしますっ! 私も戦いたいんです!」

 

誰かの“戦う決意”に応えたい。

それが、自分の中に初めて芽生えた本当の意思だった。

フレイは、初めて誰かに頭を下げた。

涙も怒りもない、ただ真っ直ぐな願いだった。

 

彼女がここまで来られたのは――アマキに出会えたから。

 

キラやラクスと心を通わせられたから。

 

ナチュラルとコーディネーターという違いに意味はなかった。

同じ人間同士、差別と憎しみの愚かさを、身をもって知ったから。

その想いは、軍人たちの心に届いた。

トールは黙って立ち上がり、除隊許可証を見つめた。

そして、静かにそれを握りつぶす。

続いて、カズイ、サイも――

一枚、また一枚、除隊許可証が破り捨てられる音が、艦内に響く。

誰もが、フレイの声に動かされた。

それぞれの理由があった。

けれど今は、ひとつだけ信じるものがあった。

その名は、仲間。

 

キラは慌てて格納庫へ向かう。アマキの姿が見当たらなかった。

格納庫では、エリスの前に立つ一人の少女。

静かに、その巨体を見上げる。

 

「アマキさん……」

 

その声に、アマキは振り返る。

紫紺の瞳が、穏やかに揺れた。

 

「キラか」

 

なぜかまだ隊服姿のままのアマキに、キラは不思議そうに尋ねる。

 

「アマキさん……着替えてないの? もうすぐ出発なのに」

 

「あぁ、これ。なんか……もったいなくて。記念にもらっちゃった」

 

そう言って肩をすくめるアマキに、キラは呆れ半分の笑みをこぼす。

 

「また強引なことして、あとで怒られても知らないよ」

 

「アハハ」

 

そう言いながらも、アマキの視線はエリスに戻っていた。

キラはその横顔を見つめながら、胸の奥で何かが決壊しそうになる。

──今、言おう。

 

「ねぇ、アマキさん」

 

「んー?」

 

キラはそっと、彼女の手を取った。

アマキも、何も言わずに握り返す。

その手から伝わるぬくもりが、キラの決意を強くする。

 

「僕、さ……アマキさんと出会えて、よかった」(大好きだ)

 

「私も……キラに拾われてよかったよ」

 

互いを見つめ合う。

先に動いたのはアマキだった。

キラの手を引いて、自分の胸元へ。

柔らかく、少し甘い匂いのするその胸の中で、キラは一瞬すべてを忘れた。

 

「アマキ、さ──」

 

「しぃー……今だけ、こうさせて」

 

耳元で囁かれた声。

キラの鼓動は、爆音のように打ち始める。

アマキはキラを、強く、強く抱きしめた。

──『元気で』

その声は、キラには届かない。

優しく、彼の肩を押して、そっと距離を取る。

キラの頬が真っ赤に染まっていることには気づかず、アマキはキラの背を回して押し出すように言った。

 

「じゃあ、私は着替えるから。先に地球に降りる船に乗ってて」

 

「……う、うん!」

 

キラは言われるまま、わたわたと船の方へと走り去った。

背を追うことなく、アマキは格納庫の反対側へと歩いていく。

キラは船の中で、避難民の少女から折り紙の花を受け取った。

トールたちから除隊許可証を受け取り、胸ポケットに入れる。

──だけど、いくら待っても、アマキの姿は来なかった。

警報が鳴り響いた時、キラはようやく気づく。

 

アマキ・カンザキは、船に乗らない道を選んだのだ、と。




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