腹減り少女はSEED世界で爆発少女にレベルアップする 作:サボテンダーイオウ
既に戦闘は始まっていた。
トールたちはブリッジへ向かい、除隊許可証を破り捨てたことを報告。
クルーたちからは歓迎の嵐が沸き起こる。
一方でアマキは、既に展開を読んでいたように、パイロットスーツ姿でエリスに向かう準備を終えていた。
そこへ、軍服に身を包んだフレイが、勢いよく飛び込んでくる。
「アマキさん!」
「フレイ!? その軍服……まさか!」
フレイは迷いなく、アマキの胸元へ飛び込む。
「私も、軍に志願したの。みんなの役に立ちたくて!」
「……だからって、地球に降りられるチャンスだったのに!しかも戦闘は続いてるんだぞ!?」
思わず声を強めながら、アマキはフレイの肩を掴む。
フレイは、落ち着いた瞳でアマキを見つめ返す。
「わかってる。……でも、アマキさんは一人でも戦うんでしょう?」
「……ああ。それが、今の私にできることだから」
アマキはふっと視線を逸らす。
だがフレイは、そっと彼女の頬に手を添えて、その顔を自分の方に向かせた。
「だったら、アマキさんを守るのは誰?誰が、アマキさんを守ってくれるの?」
「私は守られなくていい。……そういう女なんだ」
吐き出すように言ったその声は、少しだけ震えていた。
フレイは首を横に振る。
「そんなのって、ない。……私が、アマキさんを守るわ!」
「フレイ……急に何を言って──」
「そうすれば、アマキさんは私のもとに帰るために戦えるでしょう?」
そんな話をしている場合じゃない。
アマキは手を外そうとした。
「ごめん、今はそれどころじゃ──」
その瞬間、フレイはアマキの頬を両手でバシッと挟み込んだ。
「聞いて!」
「んにょ……!」
アイドルとは思えない顔にされながらも、アマキは逃げられない。
フレイは唾を飛ばす勢いで、渾身の想いを叫ぶ。
「アマキさんは一人じゃない! 私がいるの!あなたは死なない。私の想いが、きっとあなたを守ってくれる……だから――ちゃんと、帰ってきて!」
フレイの瞳には、涙ではなく意志が宿っていた。
その言葉は、アマキの胸に真っ直ぐ届く。
一瞬だけ沈黙。
そして、静かに微笑んで――
「……君は、ずるい女だな……わかった。それじゃ――勝利は、君に捧げるとしよう」
アマキは、フレイの赤髪を一房そっと摘み、
ほんの少しだけ唇を寄せて、キスを落とした。
あまりに気障で、あまりにらしくて――
フレイは真っ赤になった頬を隠そうとしたが、隠しきれるものではなかった。
「……気を付けて」
少しだけ震えた声で、でも真っ直ぐに見送る。
アマキは静かに頷いた。
「フレイは、安全なところへ避難して。約束だ」
「……わかったわ」
彼女は一歩だけ下がり、アマキの進む先を見つめる。
そして――アマキは、フレイの前を通り過ぎて、エリスのもとへ向かう。
その背中は、もう振り返らなかった。
でも、フレイは信じていた。
あの背に込められた約束の重さを――
誰よりも、信じていた。
◇◇◇
マードックたちが目を見開く。
エリスに搭乗するアマキの姿は、あまりにも予想外だった。
彼女は軽く手を挙げただけで挨拶を済ませると、即座にブリッジへ通信を接続。
「こちらエリス。準備ができ次第、出撃する」
『――アマキ・カンザキ!?なぜエリスに!?君も降りたのではなかったのか!』
ナタルの驚愕が電波越しに響く。
だがアマキは、そんな感情を拾う余裕はない。
「状況は一刻を争う。カタパルトを出せ」
『出撃許可はまだ――』
「ふざけるな、今の状況でそんなこと言ってる場合か!!」
通信の向こうでナタルが舌打ちを噛み殺す。
だがアマキの怒気と必死さが、それ以上の説得力を持っていた。
「このままじゃ、キラたちの乗る船も巻き添えだ。今すぐ出さないなら――外の艦ごと心中するぞ」
『艦長!』
数秒の沈黙。
『……わかりました。提督には私から伝えます。アマキさん、可能ならアークエンジェルから離れすぎないように。この艦だけで地球降下もあり得るかもしれません』
「了解。それでも護衛ができれば構わない」
『――カタパルト、開け』
金属音が響き、エリスが始動。
まるで怒りを飲み込んだ獣のように、静かに暴れ出す。
見慣れた顔ぶれが現れる。
『アマキさん!気を付けて。エリスどうぞ!』
「ミリィ!?ということはトール達も降りなかったか。くそ!アマキ・カンザキ、エリス出る!」
宇宙に飛び出した途端、そこはもう地獄だった。
飛び交うミサイル、沈んでいく艦。MAたちは懸命に応戦するが――能力の差は残酷なほど顕著だった。
それでも、アマキの心は一点だけに焦点を絞っていた。
メネラオス、アークエンジェルは、絶対に沈めさせない。
「お前たちの相手は――私だろう!」
エリスの出撃を察したガンダム4機が獲物を変更。
その視線は、アークエンジェル、エリス、そしてストライクへと集まる。
最初に襲いかかってきたのは、執着深いデュエル。
『やっと出てきたか、エリス!』
「うるさい……黙ってかかってこい、ガキ共!」
怒りがエリスを駆る。
デュエルのビームソードを読み切り、回避。
そのまま自らの剣を振るって応戦――
バチィィン!!
『くっ……馬鹿力がッ!』
「お前こそ……さっさと消えろ!」
その隙を狙うバスターからの砲撃――
『死ねぇぇ!!』
「うざいんだよ……!」
回避と攻撃を繰り返す中、突如、背後からミラージュコロイドを展開したブリッツが迫る。
『やぁああ!!』
「甘い」
アマキは直感で動く。
振り向きざまに片手でビームライフルを構え、連射。
ズガァァん!!
まともに食らったブリッツが弾けた。
『ぐっ……気づいていたのか!?』
「戦士を……舐めるなよ」
『ニコルーッ!』
避難艇がパージされる。
視線を逸らされぬよう、アマキは挑発のポーズで誘う。
「デュエル、お前からだ」
「このッ……貴様ァァァ!!」
冷静さを欠いたデュエルが猛攻を仕掛ける。
それを読み切り、装甲を削るアマキ――だが、目を奪われる存在が現れる。
ストライクとメビウスゼロ。
あれに乗れるのは、ただ一人。
『アマキさん!』
「……キラ!?」
『嬢ちゃん!バスターは俺が引きつける!』
キラが戦場に戻ってきたことは戦力的には嬉しい。
でも――アマキの胸中は複雑だった。
『アマキさん、アークエンジェルが降下します。重力に備えてください!』
ミリィからの連絡。
カウントが始まり、機体にかかる負荷は倍増。
短期戦を強いられる。迷いは許されない。
戦い続けるアマキの元へ――キラの声。
『アマキさん、下がって!僕がデュエルを!』
「そんな余裕はない!」
(今の状況じゃ……キラだって守れない!)
『でも、僕にだってできる!』
キラはアマキの“否定”を誤解したのか、強引に割って入る。
その隙に避難艇は無事に離脱したが――
「キラ、それ以上はダメだ!戻れ!」
『あ……!』
間に合わなかった。距離が離れすぎた。
「くそっ……!」
『これで終わりだぁぁぁ!!』
デュエルがトドメの一撃を放つ――
狙いはストライク。
その瞬間――
ばガァーン!!
「っうぁああ!!」
『アマキさんっ!?』
エリスが、ストライクを庇った。
凄まじい衝撃で、彼女は吹き飛ばされる。
キラが急いで追う。
『アマキさん!!』
エリスの内部が高温に晒され、アマキは意識を失う。
キラはストライクで降下しながら、必死に手を伸ばす。
『間に合え……ッ!!』
手が届いた。
ストライクはエリスを抱きしめるように、守るように――共に大気圏へ突入した。
そしてその後、アークエンジェルの機転により、甲板に着艦。
二機は、命を繋ぎ止めたまま、地球へと落ちていった。
◇◇◇
場所は変わり、地球。
砂と陽炎が支配する荒野に、静かな夜が訪れる。
バルコニーで双眼鏡を覗く男の瞳に、一筋の光が走った。
「……星が降ってくるよ、アイシャ」
「そう、吉兆かしら?」
「いや――そうでもないかもしれないな」
声の主は、アンドリュー・バルトフェルト。
“砂漠の虎”と呼ばれ、この地を統べる男。
後ろの部屋から、アイシャが歩み寄る。
軽く彼の腕に寄り添えば、バルトフェルトも自然と彼女の肩へ腕を回す。
「……変革の星かもしれない。終わりのない戦争に、一つの爪痕を残す。そんな輝きだ」
この砂漠を統べて久しい。
だが、見慣れた風景にも、そろそろ飽きが来ている。
そして、その星は告げている。
宇宙での争いは、地上へ舞い降りようとしている。
「……くだらない戦いなら、そろそろ終わらせてもいい頃さ」
その声に、砂が静かに流れた。
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