腹減り少女はSEED世界で爆発少女にレベルアップする   作:サボテンダーイオウ

13 / 75
PHASE-12宇宙(そら)に降る星

既に戦闘は始まっていた。

トールたちはブリッジへ向かい、除隊許可証を破り捨てたことを報告。

クルーたちからは歓迎の嵐が沸き起こる。

一方でアマキは、既に展開を読んでいたように、パイロットスーツ姿でエリスに向かう準備を終えていた。

そこへ、軍服に身を包んだフレイが、勢いよく飛び込んでくる。

 

「アマキさん!」

 

「フレイ!? その軍服……まさか!」

 

フレイは迷いなく、アマキの胸元へ飛び込む。

 

「私も、軍に志願したの。みんなの役に立ちたくて!」

 

「……だからって、地球に降りられるチャンスだったのに!しかも戦闘は続いてるんだぞ!?」

 

思わず声を強めながら、アマキはフレイの肩を掴む。

フレイは、落ち着いた瞳でアマキを見つめ返す。

 

「わかってる。……でも、アマキさんは一人でも戦うんでしょう?」

 

「……ああ。それが、今の私にできることだから」

 

アマキはふっと視線を逸らす。

だがフレイは、そっと彼女の頬に手を添えて、その顔を自分の方に向かせた。

 

「だったら、アマキさんを守るのは誰?誰が、アマキさんを守ってくれるの?」

 

「私は守られなくていい。……そういう女なんだ」

 

吐き出すように言ったその声は、少しだけ震えていた。

フレイは首を横に振る。

 

「そんなのって、ない。……私が、アマキさんを守るわ!」

 

「フレイ……急に何を言って──」

 

「そうすれば、アマキさんは私のもとに帰るために戦えるでしょう?」

 

そんな話をしている場合じゃない。

アマキは手を外そうとした。

 

「ごめん、今はそれどころじゃ──」

 

その瞬間、フレイはアマキの頬を両手でバシッと挟み込んだ。

 

「聞いて!」

 

「んにょ……!」

 

アイドルとは思えない顔にされながらも、アマキは逃げられない。

フレイは唾を飛ばす勢いで、渾身の想いを叫ぶ。

 

「アマキさんは一人じゃない! 私がいるの!あなたは死なない。私の想いが、きっとあなたを守ってくれる……だから――ちゃんと、帰ってきて!」

 

フレイの瞳には、涙ではなく意志が宿っていた。

その言葉は、アマキの胸に真っ直ぐ届く。

一瞬だけ沈黙。

そして、静かに微笑んで――

 

「……君は、ずるい女だな……わかった。それじゃ――勝利は、君に捧げるとしよう」

 

アマキは、フレイの赤髪を一房そっと摘み、

ほんの少しだけ唇を寄せて、キスを落とした。

あまりに気障で、あまりにらしくて――

フレイは真っ赤になった頬を隠そうとしたが、隠しきれるものではなかった。

 

「……気を付けて」

 

少しだけ震えた声で、でも真っ直ぐに見送る。

アマキは静かに頷いた。

 

「フレイは、安全なところへ避難して。約束だ」

 

「……わかったわ」

 

彼女は一歩だけ下がり、アマキの進む先を見つめる。

そして――アマキは、フレイの前を通り過ぎて、エリスのもとへ向かう。

その背中は、もう振り返らなかった。

でも、フレイは信じていた。

あの背に込められた約束の重さを――

誰よりも、信じていた。

 

◇◇◇

 

マードックたちが目を見開く。

エリスに搭乗するアマキの姿は、あまりにも予想外だった。

彼女は軽く手を挙げただけで挨拶を済ませると、即座にブリッジへ通信を接続。

 

「こちらエリス。準備ができ次第、出撃する」

 

『――アマキ・カンザキ!?なぜエリスに!?君も降りたのではなかったのか!』

 

ナタルの驚愕が電波越しに響く。

だがアマキは、そんな感情を拾う余裕はない。

 

「状況は一刻を争う。カタパルトを出せ」

 

『出撃許可はまだ――』

 

「ふざけるな、今の状況でそんなこと言ってる場合か!!」

 

通信の向こうでナタルが舌打ちを噛み殺す。

だがアマキの怒気と必死さが、それ以上の説得力を持っていた。

 

「このままじゃ、キラたちの乗る船も巻き添えだ。今すぐ出さないなら――外の艦ごと心中するぞ」

 

『艦長!』

 

数秒の沈黙。

 

『……わかりました。提督には私から伝えます。アマキさん、可能ならアークエンジェルから離れすぎないように。この艦だけで地球降下もあり得るかもしれません』

 

「了解。それでも護衛ができれば構わない」

 

『――カタパルト、開け』

 

金属音が響き、エリスが始動。

まるで怒りを飲み込んだ獣のように、静かに暴れ出す。

見慣れた顔ぶれが現れる。

 

『アマキさん!気を付けて。エリスどうぞ!』

 

「ミリィ!?ということはトール達も降りなかったか。くそ!アマキ・カンザキ、エリス出る!」

 

宇宙に飛び出した途端、そこはもう地獄だった。

飛び交うミサイル、沈んでいく艦。MAたちは懸命に応戦するが――能力の差は残酷なほど顕著だった。

それでも、アマキの心は一点だけに焦点を絞っていた。

 

メネラオス、アークエンジェルは、絶対に沈めさせない。

 

「お前たちの相手は――私だろう!」

 

エリスの出撃を察したガンダム4機が獲物を変更。

その視線は、アークエンジェル、エリス、そしてストライクへと集まる。

最初に襲いかかってきたのは、執着深いデュエル。

 

『やっと出てきたか、エリス!』

 

「うるさい……黙ってかかってこい、ガキ共!」

 

怒りがエリスを駆る。

デュエルのビームソードを読み切り、回避。

そのまま自らの剣を振るって応戦――

バチィィン!!

 

『くっ……馬鹿力がッ!』

 

「お前こそ……さっさと消えろ!」

 

その隙を狙うバスターからの砲撃――

 

『死ねぇぇ!!』

 

「うざいんだよ……!」

 

回避と攻撃を繰り返す中、突如、背後からミラージュコロイドを展開したブリッツが迫る。

 

『やぁああ!!』

 

「甘い」

 

アマキは直感で動く。

振り向きざまに片手でビームライフルを構え、連射。

ズガァァん!!

まともに食らったブリッツが弾けた。

 

『ぐっ……気づいていたのか!?』

 

「戦士を……舐めるなよ」

 

『ニコルーッ!』

 

避難艇がパージされる。

視線を逸らされぬよう、アマキは挑発のポーズで誘う。

 

「デュエル、お前からだ」

 

「このッ……貴様ァァァ!!」

 

冷静さを欠いたデュエルが猛攻を仕掛ける。

それを読み切り、装甲を削るアマキ――だが、目を奪われる存在が現れる。

ストライクとメビウスゼロ。

あれに乗れるのは、ただ一人。

 

『アマキさん!』

 

「……キラ!?」

 

『嬢ちゃん!バスターは俺が引きつける!』

 

キラが戦場に戻ってきたことは戦力的には嬉しい。

でも――アマキの胸中は複雑だった。

 

『アマキさん、アークエンジェルが降下します。重力に備えてください!』

 

ミリィからの連絡。

カウントが始まり、機体にかかる負荷は倍増。

短期戦を強いられる。迷いは許されない。

戦い続けるアマキの元へ――キラの声。

 

『アマキさん、下がって!僕がデュエルを!』

 

「そんな余裕はない!」

 

(今の状況じゃ……キラだって守れない!)

 

『でも、僕にだってできる!』

 

キラはアマキの“否定”を誤解したのか、強引に割って入る。

その隙に避難艇は無事に離脱したが――

 

「キラ、それ以上はダメだ!戻れ!」

 

『あ……!』

 

間に合わなかった。距離が離れすぎた。

 

「くそっ……!」

 

『これで終わりだぁぁぁ!!』

 

デュエルがトドメの一撃を放つ――

狙いはストライク。

その瞬間――

ばガァーン!!

 

「っうぁああ!!」

 

『アマキさんっ!?』

 

エリスが、ストライクを庇った。

凄まじい衝撃で、彼女は吹き飛ばされる。

キラが急いで追う。

 

『アマキさん!!』

 

エリスの内部が高温に晒され、アマキは意識を失う。

キラはストライクで降下しながら、必死に手を伸ばす。

 

『間に合え……ッ!!』

 

手が届いた。

ストライクはエリスを抱きしめるように、守るように――共に大気圏へ突入した。

そしてその後、アークエンジェルの機転により、甲板に着艦。

二機は、命を繋ぎ止めたまま、地球へと落ちていった。

 

◇◇◇

 

場所は変わり、地球。

砂と陽炎が支配する荒野に、静かな夜が訪れる。

バルコニーで双眼鏡を覗く男の瞳に、一筋の光が走った。

 

「……星が降ってくるよ、アイシャ」

 

「そう、吉兆かしら?」

 

「いや――そうでもないかもしれないな」

 

声の主は、アンドリュー・バルトフェルト。

“砂漠の虎”と呼ばれ、この地を統べる男。

後ろの部屋から、アイシャが歩み寄る。

軽く彼の腕に寄り添えば、バルトフェルトも自然と彼女の肩へ腕を回す。

 

「……変革の星かもしれない。終わりのない戦争に、一つの爪痕を残す。そんな輝きだ」

 

この砂漠を統べて久しい。

だが、見慣れた風景にも、そろそろ飽きが来ている。

そして、その星は告げている。

宇宙での争いは、地上へ舞い降りようとしている。

 

「……くだらない戦いなら、そろそろ終わらせてもいい頃さ」

 

その声に、砂が静かに流れた。




お気に入り、評価等よろしくお願いします。励みになります!

ガンダムSEEDDESTINYも読んでみたいか?

  • 続きを読んでみたい。
  • 別に興味ない。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。