腹減り少女はSEED世界で爆発少女にレベルアップする 作:サボテンダーイオウ
アラスカから遠く離れ、ザフト圏内へと降り立ったアークエンジェル。
敵地での不時着ながらも、エリスとストライクの着艦は成功した。
だがその代償は大きく、コクピット内は異常な高温となり——キラは救出されるも高熱に魘され続けている。
「キラ! 大丈夫?」
ベッドから滑り落ちそうな彼の身体を、フレイとミリアリアが慌てて支えた。
その肌はびっしょりと汗に濡れ、眉間には苦痛の皺。息は浅く、声にならない呻きが漏れる。
「汗が……すごい」
「熱が下がらないね……先生、どこ行ったんだろ……」
「ア……アマキさんは……?」
荒く息を吐きながら尋ねたキラに、フレイは一瞬だけ目を伏せてから微笑み、タオルケットをそっと掛け直す。
「大丈夫。アマキさんなら隣のベッドに寝てるわ」
その言葉に、キラは安堵の吐息を漏らす。
「……よかっ、た……」
けれどその“隣のベッド”は、静寂に閉ざされたままだ。
ミリアリアはカーテン越しに、一瞬だけ視線を投げる。
そこにいるはずのアマキ——その姿は昏睡のまま、回復の兆しは見えない。
この艦では、これ以上の手立てはなかった。
フレイもミリアリアも、キラに真実を告げることはできなかった。
彼が再び立ち上がれる日まで、その重さを背負う覚悟だけが、少女たちの心に静かに灯っている。
◇◇◇
どうしようもなく傷ついた。
どうにもならない日々が続いた。
怒りが喉元に溜まって、吐き出せば全てが壊れそうだった。
でも、それでも私は耐えてきた。
誰にも見えなくても、誰にも知られなくても——
孤独の中で、ただこの命を燃やしてきた。
私は異端。
この世界の流れに逆らう“裂け目”のような存在。
誰かを愛せば、失う。
誰かに守られれば、その人が壊れる。
だから、もう誰もいらない。
思い出だけでいい。
でも、それでも——
私の存在が、ほんの一瞬でも誰かの心に残るなら。
消えゆく定めにあっても、この身に宿った優しさが
いつか誰かを救ったなら——
それでいい。
私はそう、生きてきた。
◇◇◇
キラは眠らなかった。
アマキが目を覚ますまで、一秒も傍を離れなかった。
何もせずにはいられなかった。
自分を庇って傷つき、目を開けないままの彼女に向けて、祈り続けた。
そして——その祈りは届いた。
「……あ」
微かな声に反応して、キラが顔を寄せる。
アマキの瞳がゆっくりと開いた。
弱々しくも、確かにキラを見ていた。
「アマキさん! 目が覚めたんだ……よかった……!」
涙が頬を伝うのを止められなかった。
キラは声を上げて、彼女に飛びついた。
「……うーん。よく寝た気がする」
微笑を浮かべながら、アマキは起き上がろうとする。
キラが慌てて止めた。
「ダメだよ、寝てなきゃ。先生呼んでくるから」
しかしアマキは自分の腕に繋がる点滴に気づくと、眉をひそめた。
「……点滴? 私は平気だってば、こんなの……」
「あ!外しちゃダメ——!」
キラの叫びも間に合わず、アマキは管を引き抜いた。
血が腕を伝って滴り落ちる。
それでも、彼女は笑った。
「私は……大丈夫だから」
その笑みは、キラを安心させるためのものだった。
痛みを隠すための強がりだった。
キラはそれが、どうしようもなく、許せなかった。
「なんで……なんで、そんなに自分のこと大事にしないの!?笑ってるけど、本当は辛いんでしょ!?僕のせいで怪我したんだ!死ぬところだったのに!」
「死んでないよ。生きてる」
「でも……血だって流れた」
「これくらい、平気。私は強いから」
「……っ」
その言葉の奥には、孤独があった。
ナチュラルでも、コーディネーターでもない、自分自身を“異端”と定義する者の静かな諦めがあった。
荒れた心、疲弊した身体。
アマキの精神は限界に近かった。
キラの怒りも、愛も、届かない場所に彼女はいた。
アマキの拒絶に、キラはもう考える余力もなく、涙をぽろりとこぼした。
「僕は……アマキさんを守りたい。どうして、守られてくれないの?」
そのまま崩れるようにベッドの横に膝をつき、彼女の膝に額を預ける。
アマキは、静かに彼の髪を撫でながら囁くように言った。
「私は、守られるのが……好きじゃないの。だからキラは、私を守ろうとしてくれなくていい」
「アマキさんがそうやって一人でいようとするから、僕は余計に守りたくなるんだ」
割り切るようなアマキ、割り切れないキラ。
視線は交わっても、心はすれ違う。
「キラ、人は誰でも、いつか一人で死ぬ。遅いか早いかの違いだけだよ」
「そんなの……寂しすぎるよ」
それでもアマキは優しく笑って、まるで母親のように慰める。
「君って、こんなに泣き虫だったんだね。知らなかった」
キラは言葉を選ぶことなく、率直にぶつけた。
「僕が、アマキさんを好きだって言ったら……信じてくれる?」
「好き? ああ、私も好きだよ。弟みたいに」
「違うよ。異性として、好きなんだ!」
「……異性……?」
言葉を飲み込んだアマキの頭の中が真っ白になる。
次の瞬間——
「ふぁ!?」「ふぁ?」
アマキは反射的にタオルケットを頭からかぶって逃げた。
逃げる直前の顔は、トマトのように真っ赤だった。
「アマキさん」
タオルの山をゆらゆら揺らすキラ。
脇に手を突っ込んで、こちょこちょ。
「にゃが!? やめぃ〜〜!」
瞬時にギブアップ。タオルケット没収、逃げ道喪失。
再びベッドの隅で“頭隠して尻隠さず戦法”をとるアマキ。
だが策士・キラにより、こちょこちょ再開、耳にふっと吹きかける。
「びゃぁっ!」
見事にノックアウト。
「なんでいじめるの!?」
「だって逃げるから」
「逃げるに決まってるだろ!?私、好かれる要素ないし、化粧もしないし、戦闘ばっかの女だし!誰だって……えっ?」
「……いてっ!」
ごつん。
キラが彼女の否定を遮るためにとった行動は——キスだった。
不意打ち、しかも初キス。
歯が当たってしまう、痛いけど、柔らかくて。
「……ご、ごめんなさい」
「……」
耳まで赤く染まったキラに覆いかぶされる形で、動けないアマキ。
誰もいない医務室。ベッドの上、二人きり。
「……あの」
「………」
この状況、やばい。
本能的に危機察知したアマキは、撤退(気絶寸前)寸前の混乱状態。
なのに——
「もう一回、やり直してもいい?」
キラは熱を宿した瞳で、唇を近づける。
もはや冷静にいられず、アマキはつい口にしてしまった。
「キラ攻め……」
「何それ」
キラは照れたように笑って、躊躇いなく再び距離を詰める——。
二回目のキスは、未遂に終わった。
理由は単純——医務室のドアが開いたから。
「おーい、目ぇ覚ましたか……って、少年、それは時と場合によるぞ。患者には優しく接するもんだ。なぁ、っておい!点滴外すなっ!!」
「「すみませーん!!」」
二人同時に怒られる。反省モード。
復活の報告を聞きつけたフレイとミリアリアは文字通りドアをぶち破る勢いで駆け込んできた。
強気だったキラはすっかりしょぼん。
「よかった……!」
「アマキさん!心配してたんだからー!」
ハグされるアマキ。
その光景を少し羨ましく見つめるキラ。
「……うん、目が覚めたよ。いろんな意味で」
「いろんな意味って?」
フレイの目が光る。
その視線が、キラとアマキを交互に射抜く。
キラはさっと目を逸らし、アマキは誤魔化し笑いを浮かべる。
フレイ、完全に覚醒。
ミリアリアも記者魂に火がつく。
「何か隠してるでしょ。キラ、答えなさい!」
「アマキさん、アイドルに闇はつきものよ!白状してっ!」
詰問コンビに追い詰められたアマキは、現実逃避で見事に気絶した。
その瞬間——
「だから患者に負担かけるなって言ってるだろーーー!!」
医師の咆哮が響く。
怒りの腕力で女子二人とキラは廊下に強制排出された。
「キラのせいよ!」
「そうよ!」
キラは反論もできず、半泣きで逃げる。
その背中を追う女子二人。
トールらにかばわれてもなお、フレイ&ミリアリアの追撃は止まらない。
「なんで僕なのーーーー!」
そしてその頃——
医務室では、安堵のため息と布団に包まるアマキの赤面がこっそり続いていた。
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