腹減り少女はSEED世界で爆発少女にレベルアップする   作:サボテンダーイオウ

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PHASE-15カガリ再び

アークエンジェルの危機は、思わぬレジスタンスの支援によって脱した。

偵察を終えたスカイグラスパーが帰投し、エリスとストライクは砂の上で待機中。

キラは静かにモニターを操作し、拡大映像で少女を追う。

その視線は、金髪の少女から――明確に、こちらを睨んでいた。

 

『……ん?』

 

「ねえキラ。あの女の子、思いっきりこっち睨んでない?」

 

『うん……そうかも。でも、なんでだろ?』

 

首をかしげるキラに、アマキはモニター越しの観察を続ける。

 

「結構可愛い子だよね。荒々しくて、野性的で……ちょっと好きかも」

 

『あ、でも……アマキさんの方が綺麗だよ!』

 

思わず口にした言葉に、自分でも少し照れる。

だがアマキは、さらりと返す。

 

「え、褒めなくてもチョコくらいはあげるけど?」

 

『いやそういう問題じゃなくて……』

 

どうして戦場では冷静で的確なのに、恋愛になるとこれほど鈍いのか――

キラは少しだけ不思議に思う。いや、だいぶ不思議だ。

そんな掛け合いをしている間にも、アークエンジェルの周囲にはレジスタンスの車両が次々と集まってくる。

戦闘後の静寂が、別のざわめきへと変わろうとしていた。

アマキは、ふと静かに呟く。

 

「……きな臭くなりませんように」

 

◇◇◇

ブリッジでは、緊張した沈黙が流れる。モニターを見つめるナタルが口を開く。

 

「味方と……判断するべきでしょうか?」

 

「銃口は向けられてないわね。ともかく、話してみましょう。意思はあるみたいだし……うまく転べば、こちらにも利があるわ。後をお願い」

 

マリューはナタルにブリッジを任せ、エレベーターへと乗り込む。

その直前に漏れた深い溜息は、彼女の心の奥にある不安を物語っていた。

ハッチ前には武装した士官数名が待機。

そこに、同じく腰に銃を装備したムウが合流する。

 

「……やれやれ、今度のお客さんも一癖ありそうだ。交渉ごとは得意じゃないんだけどねぇ」

 

「ふふっ……」

 

マリューは一瞬だけ微笑む。

けれど次の瞬間には、艦長としての冷静な表情へと戻る。

 

扉が開き、マリューとムウが先頭に立ってレジスタンス側へと歩み寄る。

背後では、士官たちが緊張を纏って控える。

 

「助けていただいた以上、お礼を述べるのが礼儀でしょうね。地球軍第8艦隊——マリュー・ラミアスです」

 

名乗りを受けて、相手の男は少し笑って口を開く。

その顔立ちは、荒野に焼かれた風と砂と、頑固な意志に満ちていた。

 

「俺たちは『明けの砂漠』だ。名はサイーブ・アシュマン。礼なんざいらねぇ……助けたつもりはねぇからな。そっちの敵が、こっちの敵でもあっただけだ」

 

ムウが一歩前に出る。

 

「砂漠の虎を相手に、ずっとこんな戦いを?」

 

「……アンタ、どっかで見たことがあるな」

 

「ムウ・ラ・フラガ。顔が知られてるとは思わなかったが……」

 

その返答に、サイーブの口元が皮肉に緩む。

 

「エンデュミオンの鷹に、まさか会えるとはな」

 

その瞬間、空気が変わった。

互いに、ただの通りすがりではないと悟る。

マリューとムウは、わずかに表情を引き締める。

対話は、もう一段深い段階へと進む準備ができた——。

 

「私たちのこともご存じのようですね」

 

マリューが冷静に声を返すと、返答を継いだのは——後ろにいた金髪の少女。

 

「地球軍新造艦アークエンジェル。そしてMS、X105。ストライクと呼ばれるプロトタイプ機。もう一機は……知らないがな」

 

その言葉には、エリスへの露骨な嫌悪が滲む。

 

「自己紹介は済んだな。こっちは、こんな厄介な災いが空から降ってきて困ってる。そっちの意図を確認させてくれ。これからどう動くつもりなんだ?」

 

「もし力を貸していただけるなら、ありがたいのですが」

 

「まず、協力を求めるなら銃を下げろ。MSのパイロットも降ろしな」

 

マリューは静かに頷き、通信で指示を送る。

 

「ヤマト少尉、カンザキ少尉。降りてきてちょうだい」

 

ストライクは素直にハッチを開く。

 

一方、エリスのコクピットから現れたアマキは、露骨に不満顔。

 

「……やなかんじー」

 

のろのろとハッチを開きながらも、キラよりワンテンポ遅れて姿を現す。

キラが慎重にワイヤーで降下する横で、アマキは突然——

ジャンプ。

 

「アマキさん!?」「危ないって!」「おいおいおい!?」

 

空中で一回転して華麗に着地。

 

「とう!」

 

一同、凍りつく。

キラが途中でワイヤーを捨てて飛び降り、アマキにタックル。

 

「無茶しすぎだよ!もう!」

 

「ぐえぇ……」

 

マリューは冷や汗を浮かべ、ムウは苦笑しながら一言。

 

「うちのパイロット、ちょっと特殊でして……」

 

アマキは抱きしめるキラの腕から逃れるようにヘルメットを外す。

 

「キラ~、苦しいんだけど~」

 

「自分で無茶しておいて!」

 

その瞬間、周囲にざわめきが起こる。

黒髪の少女が現れたことで、レジスタンスの面々に動揺が走る。

キラがヘルメットを取ると——金髪の少女がわなわなと震え、歩み寄ってくる。

 

「……お前……なんであんなものに乗ってるのよ!?」

 

「え……?」

 

キラが振り向こうとしたその一瞬、

金髪少女が拳を振り上げる。

だが——

アマキは咄嗟にヘルメットを投げ、キラの首へ腕を回して引き寄せた。

拳を回避、少女の態勢は崩れた。

アマキは即座に腕を取って背へと流し込み、体重をかけて砂地へたたきつける。

 

数秒の出来事だった。

 

「ぐっ!」

 

「カガリ!?」

 

「突然殴りかかるって……教育がなってないねぇ」

 

腕を締め上げるアマキ。

痛みに呻く金髪少女を見て、レジスタンスは銃口を構える。

アークエンジェル側も応戦体勢に——

しかしアマキはすぐに手を離し、キラを庇うように立ち後退。

 

「申し訳ない。反射で動いてしまっただけです」

 

「貴様ぁっ……!」

 

「やめろ。……私が悪かった」

 

よろよろと起き上がった少女が、怒鳴りを遮る。

ようやくキラが顔を見つめて、思い出す。

 

「……あ、君——あの時の!」

 

「……今ごろ思い出すなよ…」

 

カガリは脱力し、怒りは風に消えていった。

 

◇◇◇

 

ザフト軍・ジブラルタル基地。

宇宙から届いた通信を、イザークとディアッカは無言で見つめていた。

画面に映るのは、クルーゼ隊長の冷静な顔。

内容は要約すれば——ねぎらいと、地上での“足つき”およびストライクの撃破命令。

通信が途切れ、画面が黒くなる。

ディアッカは皮肉混じりに呟いた。

 

「……上には戻ってくるなってか」

 

背後に立つイザークの表情は、明らかに不満げだった。

その顔には、斜めに包帯が巻かれている。

 

「俺たちに駐留軍と一緒に、足つき探し?地べた這いずり回れってか……」

 

ディアッカがぼやくと、イザークは黙って包帯に手をかけた。

ゆっくりと、それを外していく。

 

「おい……」

 

ディアッカが立ち上がる。

露わになった傷跡は、斜めに走る深いもの。

整った顔立ちに、痛々しく刻まれたその痕は、消すこともできたはずだった。

だが——イザークは、残した。

言葉が出ないディアッカ。

その沈黙の中、イザークは低く、しかし確かに叫んだ。

 

「機会があれば、だと……!?今度こそ——必ず、この俺がなぁ……!」

 

その怒りは、エリスのパイロットへ向けられていた。

あの戦場で受けた屈辱。

あの一撃で刻まれた傷。

それは、彼の誇りに触れたものだった。

 

◇◇◇

 

岩肌がむき出しの谷間を抜け、アークエンジェルはサイーブの先導で砂漠のレジスタンスキャンプへと到着した。

突然の大きな来訪に、アジトのメンバーたちは戸惑いを隠せない。

その間、ストライクとエリスが手際よくカモフラージュを施し、艦を少しでも隠す工夫がなされた。

マリューたちはサイーブに導かれ、キャンプの作戦指令室へと足を踏み入れる。

 

「こんなところに暮らしてるのか?」

 

マリューの問いに、サイーブはコーヒーを淹れながら答える。

 

「ここは前線基地だ。家は町にある。……まだ焼かれていなければな」

 

「町?」

 

「タッシブ、ムーラ。ほかにもいろいろだ。みんな町の有志から来てる。……コーヒーは?」

 

「ありがとう」

 

てっきり淹れてくれるものだと思っていたマリューは、サイーブの「好きに飲みな」に一瞬あっけにとられる。

その間に、ムウたちは中央に置かれた大きな地図へと歩み寄っていた。

 

「船のことも助かりました」

 

「おう」

 

「彼女は?」

 

ムウが、後方で指示を出している少女に目を向ける。

 

「俺たちの勝利の女神だ」

 

「へぇ、名前は?」

 

当たり障りのない口調で尋ねるムウ。

だが、サイーブは一瞬だけ沈黙する。

 

「………」

 

「ん?女神様なら、知らなきゃ悪いだろ」

 

「カガリ・ユラだ」

 

短くそう告げると、サイーブは地図を指しながら話を始めた。

 

◇◇◇

 

作業を終えたキラとアマキは、崖の上に腰を下ろしていた。

 

「終わったー」

 

「疲れた……」

 

背後からサイが現れ、「ご苦労さん、二人とも」と労いの言葉を残して先へと歩いていく。

入れ違いで、例の少女——カガリがやってきた。

 

「さっきは……悪かったな。殴るつもりはなかった。弾みというか……許せ」

 

横を向いたまま、ばつが悪そうに謝るカガリ。

その言い方は、どこか“上の立場”にいる人間の謝罪の仕方に似ていた。

アマキは、彼女がただのレジスタンスではないことを察したが——ここでは何も知らないふりをした。

 

「ぷっ」

 

カガリは続ける。

 

「あの後、気になっていた。お前はどうしているかと」

 

——買い物袋ぶら下げて、キラを探してた時のことか。

アマキは呑気に思い出しながら、キラの隣に座る。

ポケットからチョコを取り出し、ルンルンと包みを開ける。

 

「なのに、こんなものに乗ってくるとはな。しかも!お前!」

 

「え!?急に私にふる?」

 

「人が話してるときにチョコ食うなよ!」

 

キラに話してると思いきや、突然アマキに指をさしてくるカガリ。

驚きつつも、アマキはチョコを口に放り込む。

ついでにキラにもチョコを差し出す。

 

「こんなものに乗って、おまけに地球軍だと」

 

「んぐん。いろいろあったんだよ。いろいろとね」

 

キラはそれ以上語らず、静かに言葉を締める。

その一言には、語りきれないほどの経験が詰まっていた。

アマキも、同意するように言葉を添える。

 

「そうそう。人生いろいろだよ」

 

「茶化すな!」

 

「チョコ食べる?」

 

「いる!」

 

——いちいち反応が面白い子だな。

アマキはそう思いながら、もう一粒チョコを差し出した。

 

夜が訪れると、いくつもの焚き火が灯り、キャンプには食事を囲む風景が広がっていた。

マリューたち大人組は静かに杯を交わし、物思いにふけるマリューの横顔に、ムウは目を留める。

一方、若者たちはそれぞれの不安と感情に揺れていた。

 

「やっぱり志願するんじゃなかった……」

 

カズイがぼやき、ミリアリアは少しセンチメンタルになってトールに寄り添う。

 

「アマキさん、フレイに気があるわけじゃないわよね?」

 

「妄想ストップだ、ミリィ」

 

トールは恋人を優しくなだめる。

その頃、カガリはキラの姿を探してキャンプ内を歩き回っていた。

 

「いないなぁ……」

 

キラはストライクの中で調整作業に没頭していた。

アマキは「勉強になるかも」と言って、キラの手元を覗き込むように身を乗り込ませていた。

 

「へぇー、早いな」

 

「………」(上目遣い眼福)

 

キラは絶好調でキーボードを叩く。

作業がひと段落すると、二人は外の空気を吸いに出る。

そこで、フレイとばったり出くわす。

 

「アマキさん!どこ行ってたの?探したのよ」

 

「あー、勉強してた」

 

「えー、アマキさん勉強熱心~」

 

「フレイ、差がありすぎてアマキさんに嫌われちゃえ」

 

キラがぼそっと嫌味を言うと、フレイは「ああん?」とキラをにらみつける。

バチバチと火花が散る中、アマキのお腹がぐーっと鳴る。

そこへサイが現れる。

 

「フレイ、探したよ」

「あら、サイどうしたの」

 

「いや……ずっと話せなかったけど、僕たちの婚約の話——」

 

「ああ、今こんな状態じゃあね。パパも忙しいだろうし。私はアマキさんに付き添うので忙しいから延期一択で」

 

フレイは我が物顔でアマキの腕にしがみついている。

キラも対抗してアマキの手を握ろうとするが、あと一歩が踏み出せない。

その葛藤の中——

 

「は、はっきり言うな。そういえば昨日はどこにいたんだ」

 

フレイはケロっと答える。

 

「アマキさんの部屋よ」

 

「「え!?」」

 

キラはショックで固まり、サイは驚き、盗み聞きしていたカガリは頬をピンクに染める。

 

「お腹減った。カップラーメン食べようかな」

 

アマキは買い物袋を取りに、来た道を戻っていった。

——その背中を、三人+一人がそれぞれの想いで見送っていた。

その時ピー!とどこかで笛の音が響く。最初に気づいたのはカガリだった。

 

「は!?」

 

「なんだ?」

 

あわただしくなるキャンプの中。

砂漠の虎が武力行使に出たのだ。

夜空に黒煙が舞い上がり炎が明々と燃え上がり、報復の連鎖は消えない。

 

「ごはん食べてないよ!?」

 




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