腹減り少女はSEED世界で爆発少女にレベルアップする   作:サボテンダーイオウ

18 / 75
PHASE-17宿敵の牙

賑わいを見せる街中を、キラたちを乗せたジープが走る。

二台のジープは街の中心で停まり、キラ・アマキ・カガリの三人が降り立った。

キラとアマキは、カガリの護衛兼買い出し係。

珍しくアマキはタンクトップに黒のミニスカートという軽装。

太ももが艶めかしく、胸元のボリュームも相まって、隣に座っていたキラは始終ドキドキ。

鼻血は出なかった。えらい。

 

「じゃ、四時間後だな」

 

「気をつけて」

 

「わかってる。そっちこそな。アルジャーエリーってのは気の抜けないやつなんだろ?」

 

キサカたちが向かうのは、癖の強い武器商人。

ナタルとノイマンは弾薬や食料の仕入れ担当。

 

「ヤマトしょ、……しょ、少年少女!た、頼んだぞ」

 

「はぁ」

 

“少尉”と言おうとして噛んだナタル。

ごまかし方が下手すぎて、本人も赤面。

隣のノイマンは「大丈夫か……」と不安げ。

 

「はーい。たくさん楽しんできまーす」

 

「楽しむな!」

 

アマキが笑顔で手を振ると、ナタルを乗せたジープは怒りのエンジン音を響かせて去っていった。

——からかうと楽しい。

アマキがイイ笑顔でいると、背後からカガリが背中をどついてきた。

 

「おい!遊びに来たんじゃないぞ」

 

「痛いっ、ひ、ひどい」

 

本気で痛いわけではないが、大げさに痛がってみせる。

目をウルウルさせると、カガリはうっと狼狽える。

 

「え、あ、わる——」

 

言いかけたところで、今度はキラがカガリを押しのけてアマキにズズイッと迫る。

瞳をキラキラさせ、頬を紅潮させて——

 

「アマキさん!これってデートだよね?ね?」

 

「さっきから黙ってると思えば……お前もお前だよ!」

 

「いや、デートは三人でやらないよ」

 

きっぱり否定されて、キラはずどーんと落ち込む。

カガリが呆れ顔で釘を刺す。

 

「お前ら、一応護衛なんだぞ」

 

わかってはいる。

でも、こんなに人がいる場所に来るのは久しぶり。

はしゃいでしまうのも、仕方ない。

 

「それにしても、ここはすごい賑わってるよな」

 

「本当に“虎”の本拠地なんだ。平和そうに見えるけど」

 

キラの言葉に、カガリは鼻を鳴らす。

 

「フン……来い」

 

そして、一人歩いて行ってしまう。

 

「え?」

 

「見せてくれるんじゃないの、“虎”の本拠地。ほら、行くよ」

 

アマキがキラに手を差し出す。

デートじゃないと否定されても、キラは嬉しそうにその手をぎゅっと握り返した。

——二人の世界になりかけたその瞬間。

 

「早く来い!!」

 

カガリの怒鳴り声が、街の喧騒を突き抜けた。

カガリが二人に見せたのは、街中にぽっかりと開いた巨大な穴。

ミサイル攻撃による爪痕——この町の支配者が誰なのかを、痛烈に示すものだった。

キラは言葉を失い、ただその穴を見つめる。

アマキは「ふーん」とだけ呟き、街の外れに停泊するレセップスを目を細めて見つめた。

 

「逆らう者は容赦なく殺される。ここは、ザフトの“砂漠の虎”のものなんだ」

 

カガリの声には、怒りと悔しさが滲んでいた。

支配され、窮屈な平和を得るか。

それとも、自由を求めて支配から逃れ、あがくか。

人は自由だ。

だが——その自由には、代償が求められる。

それが“対価”になる。

タダで得られる平和など、ありえない。

 

「………」

 

アマキは、どこかから注がれる視線にいち早く気づいた。

だが、何も言わず、何も問わず——

 

「さて、買い物行きますかー」

 

「おい!」

 

「あっ!」

 

素知らぬ顔で、キラとカガリの手を引いて歩き出す。

まるで、何も見なかったかのように。

まるで、何も感じなかったかのように。

——だが、彼女の背中は、何かを“選んだ者”のそれだった。

 

◇◇◇

アークエンジェルでは、マードックとフレイがストライクとエリスのコクピットを清掃中。

キラの機体は比較的綺麗だったが、エリスの中は——

 

「お菓子の袋にチョコの包み……こりゃひでぇな」

 

「ゴミ箱でも置いときましょうか」

 

「あー、甘やかすな。コクピットは常に清潔に、だぞ」

 

「でも、アマキさんってお腹空くと機嫌悪くなるんですよね。そこがまた可愛いんですけど」

 

「……お前、変わってるな」

 

若干引き気味になりながら清掃を続ける二人を、上から見下ろすマリューとムウ。

キラとアマキを護衛任務で外に出したのは、気分転換も兼ねて。

だが、艦内では“ある関係”が密かに危ぶまれていた。

 

「まさか、そんな関係だったなんて……知ってました?」

 

「さぁ。地球に降りてからじゃないか?余裕なかったし。でもキラのやつ、嬢ちゃん好きだろ。三角関係じゃないか?」

 

がっつり泥沼。

マリューは信じられない顔で、下にいるフレイを見つめる。

 

「あの子、サイ君の彼女でしょ?それがほんとにアマキさんと?」

 

「意外っていうか、前からベッタベタだったろ。まさか、そういう関係になるとはねぇ」

 

「はぁ……」

 

マリューは場所を移動し、ムウもついてくる。

 

「嬢ちゃん、避難民にも人気あったろ。ミリアリアが布教活動してたって話だ。プロマイドが密かに高額で取引されてるらしいぞ」

 

「……不憫ね……」

 

知らぬところでアイドル化されているアマキ。

だが、マリューはなんとなく理解できる。

あの愛嬌、見た目、そして誰にでも公平に接する姿勢——

それは、望ましいものだ。

実はマリューも、プロマイドを持っている。

おいしそうに頬張る一枚。

あまりにも幸せそうな顔で、つい自分も頬が緩んでしまう。

御守り代わりに胸に潜ませている。

一度、ナタルに見せてしまったことがある。

彼女は一瞬写真を見つめて、「そうですか」とだけ言った。

だが——マリューは艦長権限で知っている。

ナタルも、ミリアリアから密かに購入していることを。

アマキ沼。

それは、静かに艦内を侵食していた。

 

「可愛いは正義……」(ぼそっ)

 

「は?」

 

「い、いえ!」

 

慌てて誤魔化すマリュー。

つい口に出てしまったことを反省し、口をきゅっと結ぶ。

そして——ふと、艦長としての葛藤が顔を覗かせる。

 

「パイロットとして、あまりにも優秀すぎるものだから……頼り切ってしまっていたのね。二人には。正規の訓練も受けていない子供だというのに、私は……」

 

マリューの表情が暗くなる。

ムウが、そっと庇うように言う。

 

「君だけの責任じゃないさ。俺にもある。あの子たちは信じられない働きをしてきた。キラは特に必死だったしな。嬢ちゃんの助けになるって、さ」

 

出会ったときから、彼女一筋。

その姿を見てきたからこそ、もどかしい気持ちにもなる。

少しは進展があったのだろうか——

マリューは歩みを止め、ムウに向き直る。

 

「ストレス発散には、何がいいかしら」

 

「嬢ちゃんは、食い物だろうな」

 

「……そうね」

 

「キラは……嬢ちゃんとデートでもできりゃ、喜びそうだけど」

 

「……ストレス発散できてるといいんだけど」

 

マリューの心配は、本人たちに届くのか。

 

◇◇◇

 

艦内ではミリアリアが落ち着きなく外の様子をうかがっていた。そこへトールがやってくる。

 

「ミリィ、どうしたの」

 

「ん、ああ。アマキさん帰ってこないかなぁって」

 

「………」

 

トールはまたかという表情になる。

ミリアリアはトールの反応を気にせずにぐっと拳を握りしめて悔しそうに言った。

 

「せっかくあんな綺麗な姿に変身したんだから私も潜入してプライベート写真撮りまくりたかったなぁ」

 

「一応任務だぜ、二人」

 

「わかってるわよ」

 

ぶーたれるミリアリアの頬をつついてトールは

 

「帰ってきたらいろいろ話聞けばいいだろ」

 

と諭すとミリアリアは瞳をかがやせて

 

「そうね!独占取材だわっ!」

 

と喜んで準備をしに戻った。もしここにアマキがいたら余計なこと言うなとヘッドロックするだろう。寿命が延びたトールだった。

 

◇◇◇

 

「へっ、へっきゅっしゅん!」

 

絶賛お買い物中のアマキが、暑さの中でくしゃみを連発。

どうやら艦内で噂されまくっているらしい。

荷物を山ほど持たされているキラが、心配そうに声をかける。

 

「大丈夫?」

 

「うーん、なぜかくしゃみが……」

 

鼻をすすりながら、アマキは「平気だよ」と手を振る。

紙袋を二つ持っているのに、カガリが遠慮なくさらに商品を詰め込んでくる。

 

「ほら、次行くぞ」

 

「はーい」

 

「うん……」

 

買い物を終えた三人は、街角のテーブル席で一休みすることに。

 

「これで大体そろったな。……このフレイってやつの注文、無茶だぞ。エルザリオの化粧水だの乳液だの、こんなところにあるかっての」

 

「乙女だから欲しいんだよ」

 

そこへ、店員が料理を運んできた。

 

「お待たせネー」

 

カガリが先に注文してくれていたらしい。

 

「なに、これ」

 

「ドネルケバブさ。あー疲れたし腹も減った!さぁ、お前ら食えよ」

 

「やったー!」

 

アマキは手を叩いて喜び、キラは初めて見るケバブに興味津々。

 

「ソースはどっちでもいいの?」

 

「チリソースの方がうまいぞ」

 

「いやいや!待った!ちょっと待った!」

 

突然、男の声が乱入。

横から手が伸びて、ヨーグルトソースを奪っていく。

三人が視線を追うと、サングラスをかけた怪しい男が立っていた。

 

「ケバブにチリソースだなんて何を言ってるんだ!ヨーグルトソースが常識だろうが!」

 

「はぁ!?何言ってんだ。チリソースの方がうまい!」

 

「ヨーグルトソースだって!」

 

低レベルなソース論争が始まる。

アマキは面倒くさくなって、両方のソースを一気にケバブにかけた。

 

「「ああ!?」」

 

二人が声を上げるのをよそに、ケバブを手に取り、口いっぱいに頬張る。

 

「おいしいー!」

 

幸せそうな顔。

キラはその姿にじゅるりと喉を鳴らし、真似して両手にケバブを持ち、ソースをにゅっとかける。

 

「「ああ!!」」

 

再び悲鳴。

アマキとキラは、サングラス男とカガリを完全に無視して舌鼓を打つ。

 

「おいしいね」

 

「ねー」

 

——食べ方なんて、自由でいいじゃない。

カガリは毅然とした態度で、男を睨みつけた。

 

「私はチリソース派だ!とやかく言われる筋合いはない!」

 

絶句する男の前で、豪快にチリソースをぶばぁ!とケバブにかけて頬張る。

 

「なっ……!」

 

「うん!う・ま・い!」

 

アマキはうんうんと頷き、頬杖をついて男を見上げる。

 

「どっちでもいいんだよ。おいしければね。人間も同じ。コーディネーターだからとかナチュラルだとか、同じ穴に落ちれば同じこと。……虎の人も、そう思わない?」

 

その言葉は、まるで爆弾のように場に落ちた。

男は一瞬間を置き、とぼけて見せる。そして、ちゃっかり椅子に座る。

敵意が肌に突き刺さる。アマキの太ももには、いつでも使えるようダガーが忍ばせてある。

 

「……何のことやら」

 

「え?虎?」

 

「大体お前は何なんだ。勝手に座ってあーだこーだと」

 

カガリが問い詰めようとしたその瞬間——

ミサイルが飛来。爆音が空気を裂く。

男がテーブルを蹴り上げ、叫ぶ。

 

「伏せろ!」

 

キラはカガリを、アマキは二人を庇い、テーブルを盾にする。

その隙に、男——“虎”は銃を抜き、周囲に警戒を走らせる。

アマキはチリソースのボトルを宙に放り投げ、敵の視線を誘導。

その瞬間、マシンガンの連射が始まる。

だが、アマキは横から抜け出し、髪をなびかせながらダガーを構え、敵に突撃。

 

「ワォ!」

 

虎が驚愕する中、アマキは銃弾をものともせず、懐に飛び込み、喉元に一撃。

 

「ぐへぇ!」

「一匹」

 

鮮血が舞う。

次の敵が銃を構えるが、アマキはダガーを投げ、腕に命中させる。

 

「ぐあぁ!」

 

虎の護衛たちが援護射撃を開始。

敵は次々と倒れていく。

その中、虎を狙っていた男にキラが銃を投げつけ、飛び蹴りでノックダウン。

 

「お前、銃の使い方知ってるか?それにしてもアマキ、無茶しすぎだぞっ」

 

「私こういうの慣れてるから」

 

アマキはパタパタと手を振るが、キラは納得いかず駆け寄る。

 

「怪我はないよね?」

 

ぺたぺたとアマキの体を確認する。

本当は抱きしめたかったが、虎がいる今、隙は見せられない。

 

「キラ、大丈夫だよ。心配してくれるの?」

 

「……心臓、飛び出しそうだった」

 

キラはアマキの手を取り、ぎゅっと両手で握る。

その様子を見て、虎はサングラスを外し、機嫌よく言った。

 

「いやー、なかなかすごいね、君たちは」

 

「まさか……こいつ、アンドリュー・バルトフェルド!」

 

砂漠の虎が、目の前にいる。

カガリは緊張で固まり、アマキはそれに気づいてそっと手を引き寄せる。

そういえば、さっきの爆発でカガリの髪にソースがかかっていた。

このまま帰ればキサカに文句を言われるだろう。

 

「とりあえず、場所変えない?」

 

血の匂いが残るこの場所は、立ち話には似合わない。

何より、キラとカガリに悪影響だと判断した。

虎は少し考え、言った。

 

「ぴったりな場所がある。君たちに、見せたいものもあるしね」

その場所とはーーー。

 

 

虎が運転するジープに乗せられ、砂漠を越えてたどり着いたのは——

 

「……ザフトの基地じゃん」

 

アマキは内心、冷や汗。

まさか敵の本拠地に連れてこられるとは思っていなかった。

 

「いや、僕たちは……」とキラが口を開くが、バルトフェルドは軽く手を振って遮る。

 

「いやいや、お茶を台無しにしたうえに助けてもらったからね。それに彼女も汚れちゃったし。ね?」

 

そう言ってカガリの髪についたチリソースを指差す。

断り続ければ逆に怪しまれる。キラたちはお言葉に甘えて、お邪魔することにした。

基地の中は、当然ながらザフト兵だらけ。

案内された通路を進むと、そこに現れたのは——不思議な魅力を放つ美女。

 

「この子たちですの?アンディ」

 

「ああ。服を汚してしまったんだ。着替えさせてくれ」

 

美女はカガリに歩み寄り、顔を覗き込む。

 

「ケバブね。いらっしゃい」

 

そう言ってカガリの肩を抱き、すっと歩き出す。

 

「カガリ!」

 

キラが呼びかけるが、美女は振り返って微笑む。

 

「大丈夫、すぐ済むわ。アンディと一緒に待ってて」

 

そのまま連れて行かれてしまう。

だが美女は何かを思い出したように、ツカツカと戻ってきた。

 

「忘れてた。貴方もよ」

 

そう言って、なぜか汚れていないアマキの腕を取る。

 

「なんで私?」

 

ずるずると連れていかれるアマキ。

珍しく抵抗せず、されるがままに美女に捕まってカガリと共に姿を消す。

キラは呆然と立ち尽くす。

 

「おーい!君はこっちだ」

 

バルトフェルドが呼びかける。

仕方なく、キラはバルトフェルドと一緒に待つことに。

部屋では、バルトフェルドが自らコーヒーを淹れてくれる。

その手際は妙に優雅で、戦場の男とは思えないほど。

キラはそわそわしながら、アマキたちの帰りを待つ。

だがその間、バルトフェルドは飄々とした口調で、政治・戦略・人種問題などの小難しい話を一方的に語り続ける。

キラはうなずきながらも、心ここにあらず。

頭の中は、アマキのことばかり。

 

「アンディ」

 

こんこん、と控えめなノック。

キラは「ようやく来た」と安堵して振り返る。

だが、次の瞬間——硬直した。

開いたドアから入ってきたのは、ドレスアップしたアマキとカガリだった。

カガリは緑のドレスに髪をアップにまとめ、アイシャに背中を押されてアマキの後ろからそっと顔を出す。

照れくさそうに視線を逸らすその姿は、いつもの凛々しさとはまるで別人。

アマキは紫をベースにしたマーメイドドレス。髪は横に編み込み、流れるように肩へ。胸元にはシンプルなネックレスが一つだけ。

それだけで、彼女の印象はガラリと変わっていた。

キラは、ただ釘付けになる。そして、絞り出した言葉が——

 

「……おんな、のこ」

 

「てんめぇー!」

 

カガリが顔を真っ赤にして怒る。

だが、アマキは微笑みながら言う。

 

「まぁまぁ。せっかく綺麗になったんだから、もうちょっとおしとやかに」

 

その助言も、カガリには余計だったらしく、

 

「お前も呑気に着替えるなよ!」

 

と怒られる。アマキは肩をすくめて、キラに向かって言う。

 

「だって、こんなの着る機会ないし。ね、キラ」

 

キラは「そうだね」と頷きながら、視線を逸らせずに言った。

 

「アマキさんも……とっても綺麗だよ」

 

「そう?ありがとう」

 

アマキはにっこりと笑う。その笑顔に、キラはポッと頬を染めた。

その様子を見て、バルトフェルドが茶化すように言う。

 

「おやおや、若いねぇ。アイシャ」

 

「ふふ、私たちだって負けてないわよねぇ」

 

アイシャがバルトフェルドの腕に絡みつく。

熟練のラブラブっぷりに、若い三人は言葉を失う。

だがその空気は、どこか温かくて、

戦場の緊張を一瞬だけ忘れさせてくれるものだった。

 

その頃、アークエンジェルではキサカからキラ達が戻らないことを報告され、マリューは衝動的に椅子から立ち上がった。

 

「キラ君たちが戻らない!?」

 

『ああ。電波状態が悪くてほかの連中と連絡も取れない。数人町に派遣するよう伝えてくれ。ブルーコスモスのテロも町であったと聞く。だが何か探ろうと思っても手が足りん』

 

「パル伍長!バジルール中尉を呼び出して!」

 

「は、はい!」

 

ブリッジに緊張感に包まれた。

 

※※※

 

キラたちはソファに座り直し、バルドフェルドのコーヒーをいただいた。

アマキは、もぐもぐとお菓子を味わっている。

 

「ドレスもよく似合うねぇ。というか、そういう姿も実に板についている感じだ」

 

「勝手に言ってろ」

 

「しゃべらなきゃ完璧」

 

 

カガリは不満そうに一口飲み、辛口で問い詰める。

 

「そういうお前こそ、ほんとに“砂漠の虎”か?人にドレスを着せるなんて、これも毎度のお遊びか」

 

「ドレスはアイシャが着せたし、“お遊び”とは?」

 

「変装して町でへらへら遊んだり、住人を逃がして町だけ焼いてみたりとかさ」

 

バルドフェルドは目を細め、静かに言う。

 

「いい目だねぇ。まっすぐで、実にいい目だ」

 

その言葉に、カガリは侮辱と受け取り、バンッとテーブルを叩く。

 

「ふざけるな!」

 

「カガリ!」

 

空気が張り詰める。バルドフェルドは雰囲気を変え、キラに向き直る。

 

「君も、“死んだ方がましな口”かね。そっちの彼——君はどう思っている?どうやったらこの戦争を終わらせられると思う。MSのパイロットとしては」

 

「なぜそれを……!」

 

「はははっ!あまりまっすぐすぎるのも問題だぞ」

 

キラはアマキの腕を引っ張り、後ろに庇う。

だがバルドフェルドは、銃口をゆっくりと向ける。

 

「戦争には制限時間も特典もない。スポーツの試合のようなね。なら、どうやって勝ち負けを決める?どこで終わりにすればいい?」

 

「どこで……?」

 

「敵をすべて滅ぼして、かね」

 

その言葉と同時に、銃口がキラたちに向けられる。

アマキは、もぐもぐとお菓子を食べながら虎を見つめている。

キラは視線をさまよわせ、脱出の策を練る。

だがバルドフェルドにはお見通しだった。

 

「やめておいた方がいい。バーサーカーでも暴れて無事にここから脱出できるもんか。ここにいるのはみんな君と同じコーディネーターなんだからね。そこの彼女も、僕たちと同じ、だろ?」

 

バルドフェルドはアマキもパイロットであることを見抜く。

だがアマキは、最後の一口を食べ終え、満足げに言う。

 

「私?私、コーディネーターじゃないって」

 

キラから離れ、ソファに座り直し、コーヒーを飲む。

銃を目の前にして、まったくのマイペース。

 

「アマキさん!こっち戻って!」

 

キラが焦るが、アマキは首を振る。

 

「コーディネーターじゃない?馬鹿な。あの動きがナチュラルにできるはずがないっ!」

 

「いや、ラクスにも疑われたけど違うから」

 

手をパタパタと振って否定するアマキ。バルドフェルドは意外な名前に反応する。

 

「ラクス様に会ったのか?……君は、不思議な子だ」

 

「ありがとう。それと、弾空っぽなの知ってるから。下手な芝居、やめたほうがいい」

 

「!?」

 

「「え」」

 

バルドフェルドは降参と言わんばかりに両手を上げる。

 

「そこまでお見通しというわけか。まったく……エリスのパイロットには脱帽させられるよ。だから君は平然とお菓子を食べていたのかい」

 

「いや、美味しいから」

 

「ぶっ!ははははは!」

 

バルドフェルドは腹を抱えて笑い出す。

キラとカガリは、ぽかんと口を開けて固まっていた。

ひとしきり笑ったあと、バルドフェルドは引き出しを開けて銃をしまい、卓上のボタンを押す。ドアが開き、アイシャが現れる。

 

「帰りたまえ。最高に楽しかったよ」

 

「じゃ、帰るか。行こう。お邪魔しました」

 

アマキはキラたちの背をぐいぐい押して、ドアの方へ向かわせる。

だが、帰り際にバルドフェルドへ言葉を投げかける。

 

「さっきの質問の答えだけどさ。“敵をすべて滅ぼして”ってやつ」

 

「ほう、聞かせてもらえるか」

 

「一緒に戦えばいいんじゃないか?同じ志を持つ者同士で」

 

「!?」

 

「二つの勢力があるなら、三つ目が介入したっていい。作ったっていい。人は自由だ。その自由を勝ち取るために戦えばいい。誰かを殺すんじゃなくて、世界のために。平和のために。……貴方には力がある。可能なんじゃない?」

 

その言葉は、バルドフェルドの胸に深く突き刺さった。

だが、アマキは返事を待たずに部屋を出ていく。

答えは、自分だけが知っていればいい。

きっと、次に会うときは——戦場。

 

「また戦場でな」

 

(ああ、戦場で)




お気に入り、評価等よろしくお願いします。励みになります!

ガンダムSEEDDESTINYも読んでみたいか?

  • 続きを読んでみたい。
  • 別に興味ない。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。