腹減り少女はSEED世界で爆発少女にレベルアップする 作:サボテンダーイオウ
アマキ・カンザキは、フラグを踏まずにはいられない女である。
それは天性の才能か、はたまた呪いじみた宿命か──真相は不明。だが、彼女は間違いなく“そういう星”のもとに生まれた。
だから初めて見る巨大ロボットに驚いたり、建物が吹き飛ぶ光景に動揺したり、人々が逃げ惑う中を「キラはどこだ!」と叫びながら駆け抜ける――そんな状況でも彼女は割と平気だ。
むしろ、脳内の優先事項はただひとつ。
「キラを見つける」
その一点のみである。
銃撃の飛び交う混乱の中、スーパーで買った袋を手に提げたまま、アマキは格納庫へと突っ走る。
「なんだあの女!? 一般人か!?」「構うな!目標はMSの奪取だ!」
炸裂音が響き、悲鳴が上がり、炎が格納庫を染める。
そして――誰も気づかないうちに、アマキは爆煙の中に消えていた。
のちに語り草となるザフト少年兵たちの会話。
「作戦中にさ、変なナチュラルの女が買い物袋持って駆け抜けてさ。爆風の中に消えた」
「ありえねえ…」「イザーク、見たよな?あの動き」
「チッ、ナチュラルめ」
「女性への敬意を忘れずに」「ニコル、それは今関係ない…」
「アスランはどう思う?」
「……本当にナチュラルだったのか? なんていうか…まともじゃなかった」
そして数日後、彼らは思いもよらない形で再会することになる──
爆発を避けるようにアマキは、偶然開いていたガンダム・エリスのコクピットへと“さささ”と滑り込んだ。
操作系には見慣れぬスイッチが並ぶが、問題ない。そもそも、この機体は彼女にしか反応しないよう“誰かさん”が仕込んだ構造なのだ。
座席にベルトを固定しながら、次々と起動するシステム画面に目を走らせる。
「……キラは見つからないし、牛乳は買い忘れたし、最悪だ」
そんなぼやきと共に、エリスガンダムは格納庫を飛び出した。
敵機「ジン」が味方機を一方的に追い詰める。圧倒的な能力差。
戦況の理解など曖昧でも、アマキは目の前の“妨げ”を排除するしかない。
「……買い物邪魔すんなら、容赦しないからね」
怒りの熱がエリスの中枢を刺激する。
「やったらぁああーーー!!」
アマキの叫びと共に、エリスガンダムの瞳が光る。
ビィィンッ!
フェイズシフト装甲が展開され、灰色の機体は白と紫に鮮烈に染まり、戦場へと飛び込んだ――
爆発音、焦げた金属の匂い、煙のカーテン。
あちこちで建物が崩れ、戦闘が始まってしまった。
けれど、アマキの頭の中は別のことでいっぱい。
「……牛乳は忘れたけど、卵とセロリと唐揚げ用に鶏肉は買った!それで充分!」
エリスガンダムのコクピットに飛び乗るや否や、シートに滑り込みながら買い物袋を助手席代わりにそっと置く。
操作パネルが勝手に起動し、フェイズシフト装甲展開。灰色のボディが白紫に輝き始める。
「…って、来たな」
敵機ジンが轟音とともに接近。地面を滑るように疾走し、ビームライフルを構えたまま照準を合わせる。
アマキはすぐさま操縦桿を横にひねる。エリスガンダムが爆風の隙間を縫うように左へ跳び避け、そのまま反転しながら突っ込む。
「スーパーの袋、潰すつもりなら……命、張ってもらうからね!」
両脚部からアーマシュナイダーが跳ねるように展開。
真横からジンの懐に潜り込み、左脚で薙ぐように一閃!装甲の腹部に切り込みが入り、火花が散る。
「卵、割れたら三倍で弁償しなさいよ!!」
敵機がすぐさま反撃してくるが、アマキの反応は速い。
エリスは小さく跳び上がり、空中で一度回転――その勢いのまま、右脚で頭部を狙って振り抜く。
ジンが後退しながら回避。その脚部が爆破に巻き込まれ、姿勢を崩す。
「そこっ!!!」
着地と同時に地面を蹴り、低い軌道で飛び込む。
アーマシュナイダーの切っ先が頭部装甲を狙い――その瞬間、ジンが自爆態勢に入る。
「ちょ、セロリ焦げるじゃん!!」
即座に両レバーを引き、後方スラスターを最大出力。爆風が背中を舐めるように追ってくるが、ギリギリで離脱。
コクピットに煙が入り込み、買い物袋がややくしゃっと潰れた音がする。
「……唐揚げは……無事……」
アマキはゆっくりと息をつき、画面に映る敵機の残骸を見て小さく笑う。
「よし、買い物、続行……ってわけにもいかないか。次はキラ探し…ね」
戦闘が終わり、エリスのコクピットに静けさが戻る。アマキは買い物袋の中身をざっと確認しながら、通信パネルの呼び出しに親指を伸ばす。
『あの……味方……でいいんですよね?ありがとうございます!助けてくださって』
若い少年の声が通信越しに微かに震えている。聞きなれた声に思わず呼び掛けた。
「……キラ?」
『アマキさん!? なんでその機体に乗ってるの!?』
「キラだったの。プロかと思ったわ。動きめっちゃ良かった」
『僕よりアマキさん!怪我は!?無事なの!?』
アマキは笑いながら答える。
「うんうん大丈夫。買い物の途中にキラ探してたら、なんか成り行きで乗ってた」
『……成り行きって……さすが…………でも本当に会えてよかった』
「キラにまた会えたことが一番の収穫だったわ。買い物も戦闘も、全部そのためって感じ」
その一言に、キラの表情が少しだけ柔らかくなった。
その後、キラの友達らと無事に再会する場面に邪魔かと気を利かせて気配を遮断したつもりだったがキラに手を掴まれて連行された。
アマキの話は話題のタネ上がっていたらしく、この人が噂のー、へー、綺麗な人なのに中身がアレだって、とか珍獣扱いされた。
美人士官の手当も無事終了したが、気づいた彼女は手当の礼もそこそこに軍の機密を知られたからにはキラ達を拘束すると険しい顔つきて宣言する。
キラ達は納得いかないといった表情になるがアマキの
「郷に入っては郷に従えというじゃない」
の一言で黙り、マリュー・ラミアス大尉の指示でキラが乗っていたストライクの装備を集める作業へ。そこにはエリスガンダムに換装できる装備コンテナもいくつかあった。
戦いが有利に進むためにはある程度の装備が必要不可欠。
搭乗ハッチの前、エリスガンダムが静かに待っている。
その直前、マリューの声が背後から届いた。
「カンザキさんと言ったわね」
「はい、そうですけど」
振り返らずに返す声はやや冷たく、どこか一線を引いているようだ。
マリューは警戒心を抱かせないように小さく笑みを見せる。
「さっきは助かったわ」
「いいえ、こういう時に揉めても時間の無駄ですから」
アマキはちらりと視線を投げると、すぐに乗り込み体勢に移ろうとする。だが、マリューの視線は彼女の手元ではなく、機体の全体に注がれていた。
「…あとでそのガンダムのことも教えてもらえるかしら」
エリスガンダム、その未知の六機目を前にして、マリューの表情からは緊張と興味の両方が読み取れる。
だがアマキは、足をステップにかけながら、あえて背中越しに答えた。
「作った側に教えることなんてあるんですかね」
皮肉をひとつ落とし、相手が言葉を失うのを感じる。
それすらも気にせず、アマキは搭乗席に滑り込む。
「…」
レバーに手を添えたその瞬間、彼女の表情は切り替わっていた。
「作業に入りますから、失礼します」
光がフロントパネルを照らす。静かな機体の中で、その言葉だけが微かに残された。
キラが不安そうに声をかける。
『アマキさん、どうかしたんですか?』
アマキはモニターの照り返しを手で遮りながら、キラの顔を見ようと顔を向ける。
笑顔は普段と同じだったが、どこか押し込めるような軽さがあった。
「ううん、別に大丈夫だよ」
そう言って、ペタペタとタッチパネルを操作しながら着座姿勢を整える。
キラは、眉をわずかに下げて、けれど何も言わなかった。
画面越しのその気配に、アマキは背中を向けたまま心の中でふっと息を吐く。
その後ろ姿を、キラは黙って追った。
シグーとの交差。狙うは胴ではなく、一撃で沈黙させる首級。
アマキはエリスの可動域ギリギリを攻め、相手の踏み込みに逆らうように刃を滑り込ませた。
ビームソードが軌道を描く瞬間、戦場に風が走ったような感覚がした。
クルーゼは仮面越しにその殺気を捉えていた。
『まったく、これほどとは…』
皮肉と驚嘆が混ざる独り言。だが、狙いは明確――エリスガンダムの破壊と、その搭乗者の排除。
ストライクが装備を整えている背後。アマキはその余裕を見越した上での“単独行”。
それもただの強さではなく「作戦の流れ」として最適化された動きだった。
そして、そこへ。
――岩壁を割る轟音。
重厚な装甲が灰を跳ね飛ばしながら、切り立った崖の陰から現れる艦影。
その名は、アークエンジェル。
「なんだあれは!?」
キラの叫びにも、アマキは背を向けたままソードを構え直す。
敵も味方も、目を奪われる艦の登場。
だがその瞬間、真の火蓋は、静かに切って落とされた。
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