腹減り少女はSEED世界で爆発少女にレベルアップする 作:サボテンダーイオウ
ジブラルタルからの輸送機がレセップスに到着。
ザウートの増援が続々と降ろされる中、バクゥは回せないと断られた。
その中には、デュエルとバスターの姿も。
機体からは「一矢報いん」という気迫が滲んでいた。
執務室では、バルドフェルドが報告書をデスクに投げつけ、不機嫌な様子。
「その埋め合わせのつもりですかね。あの二人は」
ダコスタがそう言うと、バルトフェルドは呆れたように肩をすくめる。
「かえって邪魔な気がするけどなぁ。宇宙戦しか経験ないんじゃ」
「エリート隊ですからね」
「大体クルーゼ隊ってのが気に入らん。僕はあいつが嫌いでね」
そう言いながら、噂のパイロットたちを迎えるため執務室を出る。
外では、イザークとディアッカが砂漠の洗礼を受けていた。
「うわっ、なんだよこれ!ひでぇとこだな……」
ヘルメットを脇に抱え、砂嵐に目を細める。
そこへ、バルドフェルドとダコスタが姿を現す。
「砂漠は、その身で知ってこそだ。ようこそ、レセップスへ。指揮官のアンドリュー・バルトフェルドだ」
二人は敬礼を交わす。
「クルーゼ隊、イザーク・ジュールです」
「同じく、ディアッカ・エルスマンです」
バルトフェルドも敬礼で返し、心にもない言葉をさらりと口にする。
「宇宙(そら)から大変だったな。歓迎するよ」
イザークは礼を述べるが、虎の視線は彼の顔に注がれていた。
「戦士が消せる傷を消さないのは、その傷に誓ったものがあるからだろうな」
「……クッ」
「顔をそむけるのは、屈辱の印とでもいうところかな」
図星を刺され、イザークは話を切り上げるように話題を変える。
「そんなことより、“足つき”の動きは?」
「あの船なら、ここから南東へ180キロの地点。レジスタンスのところにいるよ。無人偵察機を飛ばしてある。映像を見るかね?」
そう言いながら、虎は二人のMSを見上げる。
「なるほど、同系統の機体だね」
ディアッカが静かに問いかける。
「バルトフェルド隊長は、すでに連合のMSと対戦されたと伺いましたが」
バルトフェルドの脳裏に、あの二人の姿がよぎる。
嘘をついているとは思えなかった少女。
そして、彼女を守ろうとする少年。
どこにでもいる、青春を謳歌する若者たち。
だが、才能豊かな若者は——失くすには惜しい。
バルトフェルドは、静かに答える。
「ああ。そうだな。……僕も、クルーゼ隊を笑えんよ」
その言葉には、皮肉と後悔と、わずかな希望が混じっていた。
レジスタンス基地では、出立の準備が慌ただしく進められていた。
その中で、カガリはアフメドの母親から、あるものを託される。
ジープの中。
カガリの手の中には、緑色の石が握られていた。
キサカがちらりと目を向け、静かに尋ねる。
「それは?」
「アフメドが……いずれ加工して、私にくれようとしていたものだ。さっき、おふくろさんから渡された」
その声には、少しだけ震えが混じっていた。
命に別状はないとはいえ、重傷を負ったアフメドの姿が脳裏に焼きついて離れない。
キサカは石を見つめて言う。
「マラカイトの原石か。……大きいな」
カガリはぎゅっと握りしめる。
その手に込められた力は、怒りと悔しさと、誓いのすべて。
アンドリュー・バルトフェルドの言葉が、胸の奥で燃え上がる。
『君も死んだ方がましな口かね。いい目だねぇ。まっすぐで、実にいい目だ』
その“ふざけた言葉”が、カガリの怒りに火をつけた。
「……あのふざけたやつにっ!!」
怒りは、戦場へと向けられる。
マラカイトの石は、未完の贈り物ではなく、今や“誓いの証”となった。
キサカは何も言わず、ただ隣でハンドルを握る。
その沈黙が、カガリの覚悟を支えていた。
◇◇◇
レセップス作戦指令室。
アークエンジェルが動き始めたという報告に、バルトフェルドたちが急ぎ入室する。
「動き出しちゃったって?」
「はっ!北北西に向かい進行中です!」
管制官がモニターに映し出された映像を指しながら説明する。
その画面には、砂漠を進む“足つき”——アークエンジェルの姿が映っていた。
イザークは、宿敵ともいえる戦艦を目の前にして、叫ぶように言う。
「足つきだ!」
その声には、怒りと執念が混じっていた。
画面を食い入るように見つめるイザークの隣で、バルトフェルドは静かに言葉を紡ぐ。
「……タルパティア工場跡区に向かっているのか。まあ、ここを突破しようとするなら、僕が指揮官でもそう動くだろうな」
「隊長!」
イザークは今にも飛び出しそうな勢い。
その血気盛んな姿に、虎も少しだけ苦笑する。
「うーん……もうちょっと待ってほしかったが、しょうがない」
「出撃ですか?」
イザークの目が輝く。
その熱に押されるように、バルトフェルドは決断する。
「レセップス、出撃だ」
その言葉が、作戦室に響く。
静かだった空気が、一気に戦場の熱を帯びる。
◇◇◇
アークエンジェルの食堂。
出撃前の静かな時間。
キラは暗い表情で黙々と食べ、アマキはいつも通り笑顔でケバブを頬張り、ムウは現地調達のケバブを追加で持ってきた。
「ほら、食えよ」
「あ、あの……」
もう三個目。だがアマキは「ちょうだい」と手を伸ばし、ムウから受け取る。
「おいしいー」
「やっぱ現地調達の飯はうまいねぇ~」
「少佐、まだ食べるんですか?」
呆れたキラは、自分の皿をそっとアマキの方へ寄せる。
「俺たちはこれから出撃するんだぜ。いっぱい食べとかないと持たないでしょ。特に嬢ちゃんな。たらふく食っとけ」
「ぼふぉい」(はーい)
アマキは口いっぱいにケバブを詰め込み、頬がぷくっと膨らむ。
「おいおい、嬢ちゃん口にためすぎだって。リスかよ」
「アマキさん、ちゃんと噛んでね。ほら、これで口元拭いて」
「ぼい」(はい)
キラとムウに指摘され、アマキはもぐもぐとしっかり噛み、ナプキンで口元を拭う。
ムウはヨーグルトソース派らしい。
「ソースはヨーグルトの方がうまいぞ」
「私は両方」
「虎もそう言ってたんだ。ヨーグルトがうまいって」
その言葉に、キラは少しだけ表情を曇らせる。
敵として見ていたはずの男が、ああやって普通に食事をしていた。
部下から慕われ、指示も的確だった。
どこか、憎めない男だった。
だがムウは、キラの言葉に冷ややかだった。
「ふーん、味のわかる男だな。けど敵のことなんか知らない方がいいんだ。そんなの忘れちまえ。これから命のやり取りをする相手のことなんて、知ってたってどうしようもないだろ」
「………」
その言葉が、キラの胸に突き刺さる。
敵味方に分かれてしまえば、もう殺し合いしか残されていないのだろうか。
だが、アマキはムウの考えに否定的だった。
指についたソースをぺろりと舐めながら、軽く言う。
「別にいいじゃん。ケバブにヨーグルトソースかける敵がいたって」
ムウは肩をすくめて笑う。
「嬢ちゃんは俺に辛辣だなー」
「意外に弱点つけるかもしれないでしょ。キラ、気にしない気にしない。少佐もキラを悩ませない。わかりましたか?」
「へいへい」
「……ありがとう。アマキさん」
「うん。今は目の前のことを、少しずつクリアしていこう」
ぽん、とアマキがキラの頭に手を置く。
その軽やかな仕草に、キラは口元を緩める。
——こういう気遣いが、好きなのだ。
キラは改めてそう思った。
そして、戦闘が始まっても冷静でいようと決めた。
守りたいもののために。
艦内に響く爆発音。
食堂にいたクルーたちは驚愕するが、ブリッジではすぐに状況を把握していた。
アークエンジェルが攻撃されたわけではない。
レジスタンスが仕掛けた地雷が、何者かによって爆破されたのだ。
レセップスが動き出した今、アマキたちも急ぎ機体で待機するため、準備に走る。
パイロットルームでは、それぞれが着替えを終え、ムウがブリッジに通信を入れる。
「そうだよ!1号機にランチャー、2号機にソードだ。なんでって?換装するより俺が乗り換えた方が速いからさっ!」
そう言い終えると、通信をバチンと切る。
「連中には悪いが、レジスタンスの戦力なんぞあてにはならん。嬢ちゃんとキラも踏ん張れよ」
「ういっす」
「はい。アマキさんは突っ込みしすぎないでね」
「善処するっす」
「絶対突っ込むね」
「……善処します」
キラはムウの前でも遠慮せず、アマキに詰め寄る。
顔を近づけ、小声で、瞳を覗き込むようにして言った。
「まだ、僕……あの返事、聞いてないんだから」
「どっ!!」
アマキは謎の奇声をあげ、ばっと後ろに退く。
顔は瞬間湯沸かし器のように真っ赤。
「へぇ~」
ムウはニヤニヤしながら二人のやり取りを見ていた。
その視線に気づいたアマキは、バッと部屋を走って飛び出していく。
そのタイミングで、ミリアリアの放送が艦内に響く。
『フラガ少佐、ヤマト少尉、カンザキ少尉は搭乗機へ』
「青いね~」
「いいんです。彼女が逃げるだけ、その分僕が追いかけますから」
「こりゃ嬢ちゃんもたいへんだなぁ~」
ムウとキラは、逃げていったアマキの後を追って、搭乗へ向かう。
戦場はすぐそこ。
だが、心の戦いはもう始まっていた。
※
ブリッジでは緊張が走っていた。カズイが焦りながら言葉にしようとするが、途中でつまってしまう。
「れ、レーダーに!」
「レーダーに敵機とおもしき影。攪乱発起。数捕捉不能!1時半の方向です。その後方に大型の熱量二!」
腹は決まっている。マリューは眼前を見据え指示を飛ばした。
「対空、対艦、対MS戦闘迎撃開始!」
「ストライク、エリス、スカイグラスパー発進!」
ナタルの呼び掛けにスカイグラスパーがまず飛び立ち、
「キラ・ヤマト、ストライク行きます!」
エールストライカーでストライクが飛び立ち、続いてエリス。
「アマキ・カンザキ、エリス行くぞ!」
やる気に満ちた声で出撃する。
砂漠に響く爆発音。
アークエンジェルは軍用ヘリの集団から攻撃を受けるが、ストライクとエリスの敵ではない。
次々と撃ち落とし、砂地に墜とす。
「陽動か!?」
アマキはすぐさまモニターで別方向から接近するバクゥ5機と、後方に控える別機を確認。
陣形の整った動きに、虎——アンドリュー・バルドフェルドの本気を感じ取り、武者震いが走る。
「マジもんの殺し合いか。あのおっさん、殺る気だわ」
『アマキさん!』
「キラ!バクゥは全部私が倒す。軍用機とアークエンジェルの護衛は任せた!少佐は空から援護、戦艦のMS撃破よろしく!」
『おうよ!』
アマキは単機でバクゥに突撃。
恐れなどない。
俊敏さ、豪胆さ、予測不能な動きで敵を翻弄し、次々と砂地に伏せさせる。
「ゴッドフリートてぇーーー!!」
アークエンジェルからも意気込みの砲撃。
キラは冷静に護衛とヘリ撃墜に回り、ムウは空からザウートを潰していく。
レジスタンスも勢いづく。
だが、戦場に新たな影が差す。
レセップスから新型機が出現。
岩陰からはもう一隻の戦艦が姿を現し、アークエンジェルに砲弾を浴びせる。
「六時の方向に艦影!敵艦です!」
「なんですって!?」
「もう一隻!?伏せていたのかっ!」
増援部隊の攻撃は激化。
ストライクも防衛に回るのが精一杯。
そして、アマキの前に現れる新型機——ラゴゥ。
オレンジ色の機体が、挨拶代わりのビームを放つ。
『君の相手は私だよ。エリスのパイロット君』
「……アンドリュー・バルトフェルドか。派手な機体ー」
交差する機体。
ビームソードの鍔迫り合いが火花を散らす。
「性格にじみ出てるじゃん」
『君も癖が強いねぇ』
バッと後退し、ビームライフルで牽制しながらの近距離戦。
一瞬の油断が命取り。
アマキは思う。
争いがなくなるなら、それに越したことはない。
だが、それは自分がいてもいなくても変わらない。
争いは続く。
ならば、自分がいるうちに何かを変える。
生かすチャンスを作る。
その覚悟が、ラゴゥの前足を切り落とす。
「おっさん、死にたいの?」
『まだ負けてはおらんよ』
「生きて汚名を食らうよりは、死んで尊ばれたいって?ラクスがいるじゃん。平和の歌を彼女は歌ってる。アンタもそれに付き合えばいいだけなのに」
『大人には、そう簡単に引けない時があるんだっ!』
「くっだらない」
心底くだらない。
大人とか子供とか、ただの枠でしかない。
「死ぬのは簡単なんだよ。でもな、残されたものはまた誰かの命に繋がってる。だから、生きなきゃならないんだよ。自分だけ楽して死ぬな!死ぬんだったら、世界を平和にしてから死ねっ!」
その叫びが、ラゴゥの動きを一瞬鈍らせる。
『アンディ!』
『ぬあぁっ!!』
アマキはその隙を逃さず、前足を切り飛ばし、ラゴゥの背を回転しながら飛び、真後ろからビームソードを突き刺す。
だが、コクピットはわざと逸らしていた。
後部を切り離し、コクピット部分を足で蹴り飛ばす。
爆発の前に、虎は無事に逃げる。
砂地に飛ばされた衝撃は半減され、命は守られた。
アマキはそれ以上の追撃をせず、ラゴゥから離れ、ストライクの方へ戻る。
殺さずに勝つ。
「次に会うときは、宇宙(そら)かな」
それは、最も難しく、最も尊い勝利だった。
壊れたラゴゥから、何とか抜け出した二人。
負傷はしていたが、命に別状はない。
遠ざかるエリスの機体を見つめながら、アイシャがぽつりと呟く。
殺すこともできただろうに——
アマキはそれをしなかった。
いや、最初から“する必要はない”と判断していたのだろう。
なんということか。
すでに実力は、最初から勝敗を決めていた。
「負けたわね、アンディ」
「ああ」
だが、バルトフェルドの顔には、どこかすっきりとした表情が浮かんでいた。
「……もう、次にすることは決まってるのね」
「そうだな。俺たちも、宇宙(そら)に上がるとするか。歌姫に会うために」
ラクス・クライン——平和の歌を歌う少女。
その歌に、今度こそ耳を傾けるために。
二人は、次なる舞台を目指すことを決めた。
そこへ、ジープを運転してこちらに向かってくるダコスタの姿が見える。
泣きそうな顔でハンドルを握る彼に向かって、バルトフェルドとアイシャは晴れ晴れとした笑顔で手を振った。
敗北は終わりではない。それは、選び直すための始まりなのだ。
◇◇◇
『アマキさん!無事でよかった……バルトフェルドさんは?』
「とどめはさしてないよ」
『そっか……。帰ろう』
ストライクと合流したエリスは、アークエンジェルへと帰還する。
レセップスは撤退、もう一隻は沈没。デュエルとバスターも砂漠のどこかで彷徨っているだろう。
艦内に戻ると、カガリがマードックに怒鳴られていた。
スカイグラスパーで無断出撃したらしく、護衛のキサカも一緒に叱られている。
カガリはしょんぼりと肩を落としていた。
そこへアマキが降りてきて、間に入る。
「まぁまぁ、ケガがなくてよかったじゃない。カガリのおかげで助かった部分もあるんでしょ?」
マードックはまだ納得していない様子で言い返す。
「嬢ちゃんなー、そういうことじゃ……」
アマキは手のひらをマードックの顔の前に出して遮る。
「とにかく勝ったんだから。言いたいことはもう言った。終わり。カガリもちゃんと謝った?」
「……すまなかった……」
「はい、謝った。じゃあ終わり」
「……フン…」
マードックは腕を組んで不満げな顔をするが、アマキはカガリの腕を引いてその場を離れる。
キサカも無言で後ろに続いた。
ある程度離れたところで、アマキはカガリに向き直る。
「ほら、いつまでくよくよしてる」
「してないさ……」
「やるべきことをやったんでしょ?だったら落ち込まない」
「……お前は強いからいいさ。簡単に倒せる。でもできない人間もいるんだ」
カガリの言葉には、悔しさと葛藤が滲んでいた。
だがアマキには、戦場に立つ者としての“覚悟”が足りないように見えた。
「カガリは外に出て戦いたいの?それぞれの立場で、それぞれの場所で戦う役目がある。自分の役割を理解して、その場所で戦ってるなら、それでいい。私は戦うために訓練を受けて、知識も戦術も学んだ。だからMSに乗って戦える。……カガリは、この戦場で何がしたいの?」
「っ!?」
アマキの率直な問いに、カガリは言葉を詰まらせる。
だがすぐに怒鳴り返す。
「……お前に、お前に何がわかるっ!」
「わからないよ。素性も明かさない人のことなんか」
その冷たい返答に、カガリとキサカは一瞬動揺する。
「お前っ!?」「!」
「キサカさんが護衛っぽいのはすぐわかった。わかりやすかったから。でもカガリが誰なのかは興味ない。自分の役割に気づいてない人には、もっと興味ない。……戦場をかき回すのが好きなら、もう降りた方がいい。ここからは“ごっこ遊び”には付き合えないから」
そう言って、アマキは二人に背を向けた。
それ以上、話す価値はないと判断したのだ。
カガリは悔しそうにアマキの背中を睨みつけるが、何も言えず、ただ顔を伏せた。
次なる舞台は、紅い海。
アークエンジェルは、静かに航海を始める——。
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