腹減り少女はSEED世界で爆発少女にレベルアップする 作:サボテンダーイオウ
砂漠の虎との戦闘に勝利したアークエンジェルは、
煌々と照りつける太陽の下、砂漠を抜け——海を目前に進んでいた。
「海へ出ます」
ノイマンの声がブリッジに響く。
岩壁を抜け、艦はついに海岸端へと出た。
その瞬間、ブリッジには歓声が上がる。
「航海です!」
「うわぁ……!」
海面には、アークエンジェルに寄り添うようにイルカたちが跳ねていた。
その姿は、まるで祝福のよう。
マリューは粋な計らいを告げる。
「少しの時間なら、航海中デッキに出ることを許可します。艦内にもそう伝えて」
その言葉に、ミリアリアたちも嬉しそうに笑顔を見せる。
束の間の自由——それは、戦いの中で最も貴重な贈り物だった。
一方、ナタルは気を引き締めていた。
格納庫にいるマードックへ通信を入れる。
「マードック曹長、ソナーの準備はどうなっている?」
通信の先では、マードックがパソコンとにらめっこするキラの隣で、頭を抱えていた。
「今やってまさぁ。坊主が最後の調整に入ってます。もう少し待ってください」
『急げよ。それと、自分より上の階級の者に対して“坊主”というのはどうかと思うぞ。規律が乱れるもとだ。注意しろ』
ナタルの冷静なツッコミに、皆が苦笑い。
マードックは笑ってごまかす。
「急げってさ」
「そう言われても……これ、ザフトのなんですよね。そう簡単にはつながりません」
どうやら、海面下の敵位置を探知できる装置らしい。
砂漠の虎経由で手に入れたものだろう。
いかにキラでも、調整には時間がかかる。
その頃、アマキは自室のベッドの上で——
勤務中にもかかわらず、買い物袋に頭を突っ込んで中を漁っていた。
「やっぱりないなぁー」
隣では、フレイがルルと遊びながら、何気なく尋ねる。
ちなみにこちらも勤務中。
アマキがこっそり抜け出したのに、くっ付いてきたのだ。
「さっきから一体、何がないの?」
「んー?あ、カップラーメン。数が減ってるというか、まったくないんだけど」
「ええ?あれだけあったのに!」
「そうなんだよね。この間買い物行ったときに、ごっそり買ってきたはずなんだけど……
代わりにさ、こんなの入ってた」
アマキが袋から取り出したのは——なぜか、ザフト印のレーション。
フレイはそれを手に取り、顔をしかめる。
「なんでザフト!?アマキさん、どこから手に入れたの」
「私が聞きたいよ。まぁいいや。小腹空いたし、食べよう」
「私にもちょうだい」
「いいけど」
二人で仲良く半分こ。
味は意外にもフルーツ入りで、そこそこ美味しかった。
「ほかにも種類あるな。キラにもあげるか」
「今、マードックさんに引っ張られてたものね」
そろそろ戻らないと、いないことに気づかれてしまう。
二人はこっそりと部屋を後にする。
キラ用に数種類のレーションを持ち出し、ポケットはパンパン。
ルルは寂しがって、アマキの後をぴょこぴょこついてくる。
何度か部屋に戻そうとしたが、失敗。
仕方なく、フレイに抱えてもらうことにした。
その時——艦内放送が流れる。
『少しの間、航海中デッキに出ることを許可します』
二人は顔を見合わせて、声を揃える。
「「海が見れるー!」」
意気揚々と、デッキへと走っていった。
外に出ると、どうやら一番乗りだったらしい。
フレイはさっそく隊服を脱ぎ、ラフな格好に着替えて——
ルルと一緒に大はしゃぎで海へと駆けていく。
「はぁ〜!解放感、たまらないわ〜!」
「……少し暑いな」
アマキもフレイの隣で、襟元をパタパタと仰ぐ。
ルルはご機嫌で、ぴょんぴょん跳ね回っている。
「でしょ!アマキさんも、上脱いじゃえ!」
「え?いいよ、そこまでじゃ……」
「いいからいいから♪」
「え、ちょっ、引っ張らないで——うわっ!?」
フレイに無理やり脱がされそうになったアマキは、体勢を崩して——
そのままフレイごと、デッキの上に倒れ込んでしまう。
「いたた……」
「わぁ、ドアップアマキさん……」
何とかフレイの顔の横に手をついて、潰さずに済んだ。
だが状況的には——アマキがフレイを押し倒しているようにしか見えない。
そして最悪なことに——ガチャ。ドアが開き、二人はそちらに視線を向ける。
「「「あ」」」
見事に声が揃った。
そこには、休憩に来たキラが立っていた。
その瞬間を、しっかりと目撃してしまったのだ。
キラの顔が、凍りつく。
アマキは状況を理解しておらず、のんきに挨拶する。
「よ!」
フレイは、わざとらしく体をしならせて——
「もう〜、アマキさんったら。こんなところで、大胆〜!」
キラはわなわなと震え——
「浮気ものーーーっ!!」
と、叫んだ。
その声は、外に出ていたクルーたちにも響き渡り——
のちにマリューにこってり絞られるアマキだった。
「なんで私だけ!?」
◇◇◇
壁にもたれて雑談していたアマキ、キラ、フレイの三人。
そこへ、カガリがやってきた。
「「「「あ」」」」
またも見事に声が揃う。
気まずそうなのは、アマキとカガリだけ。
キラとフレイは、快くカガリを招き入れる。
「おいでよ、カガリ。面白いものもらったから一緒に食べよう」
「ザフトのレーションよ。意外に美味しいの」
フレイの手には、なぜかバニラ味。カガリは一瞬迷ったが、キラの隣にちょこんと座る。
アマキはキラの隣、その隣にフレイ。
「ほら、アマキさんにもらったんだ。カガリも好きなの取りなよ」
「なんでまたザフトの持ってるんだ」
「食べれば?まだあるから」
アマキに促され、カガリは無難なチョコレート味を選ぶ。
アマキは、カガリが半ば強引に艦に乗り込んだことを知っている。
だが、上が許可した以上、反対するつもりはない。
本人も覚悟があると見て、それなりに面倒を見るつもりだ。
カガリは、そんなアマキの反応を探るようにチラチラと視線を送る。
「お前、気にしてないのか」
「気にしても仕方ないでしょ。カガリが乗るって決めたんだから。受け入れるだけよ」
その言葉に、カガリは目を丸くして——
「変なやつ」
キラとフレイは、二人のやり取りに首をかしげる。
「?なんの話?」
アマキは口元に指を当てて、いたずらっぽくウインク。
「秘密〜」
「教えてよ!」
「やだ〜」
アマキが立ち上がって逃げる。
フレイが追いかける。
キラはため息をついて見守り、カガリはレーションをもぐもぐ。
「……意外にうまい」
そして、カガリはついに——重大発表をした。
「実は、わたしは……カガリ・ユラ・アスハなんだ!」
決死の告白。だが三人は、いたって平然と——
「「「へー」」」
「なんだその“へー”は!?もっと驚けよ!距離置けよ!なんで平然としてるんだ!」
三人はそれぞれ、淡々と理由を述べる。
「アマキさんで耐性ついちゃったからね」
「今のところ、アマキさん関連なら驚く自信あるわ」
「偉そうな態度してたし、驚かない」
カガリ、敗北感。
「くっ……なんか腹立つ……」
キラが疑問をぶつける。
「大体なんでオーブのお姫様が破天荒なことばっかりしてるんだ」
「そ、それは……いろいろ事情があるんだよ!」
アマキが茶々を入れる。
「どうせ、“見分を広めるため”とかじゃないの?」
「うるさいっ!」
図星らしい。すると、フレイが対抗心を燃やす。
「オーブが何よ!私はフレイ・アルスター!父はジョージ・アルスター外務次官よ!」
胸を張って優雅に自己紹介。だがカガリは、どうでもよさそうに一言。
「へー」
「何よ!もっと驚きなさいよ!」
「さっきと似たようなもんだろっ!」
わいわいと騒ぐ二人に、アマキとキラはほっこり。
「……そういえば、まだ告白の返事もらってないんだけど」
「………敵が来た!」
アマキ、戦線離脱。キラ、追撃開始。その時——
『総員第二戦闘配備!総員第二戦闘配備!』
艦内放送が響く。どうやら、ソナーに敵影が出たらしい。
アマキとキラは、急ぎデッキを出る。去り際、アマキはフレイに叫ぶ。
「フレイ!ルルを頼むっ!」
「うん!気をつけて!」
「おう!」
ルルを素早くキャッチしたフレイは、不安そうに見送る。
ミリアリアからの情報が届く。
『どうやら、敵はディンとグーンらしいわ』
アマキはふと、思い出す。
「そういえば……エリスに使ってなかったパワーパックがあったな。埃かぶらせておくのも悪いし、使ってみるか」
すぐにマードック軍曹へ通信を入れる。
それに便乗して、キラも追加の要望を出す。
「確か、第八艦隊からの補給にバズーカーがあったはず。それを持って、僕が水中に潜るよ」
「わかった。ディンは私とフラガ少佐で落とす。水中戦は初めてだろうけど、気をつけて」
「うん。アマキさんも気をつけて」
「了解」
こつん。拳を軽く突き合わせ、二人はそれぞれの愛機へと向かう。
先にスカイグラスパーが発進。
続いて、エリス。そしてストライク。
「アマキ・カンザキ、エリス行くぞ」
『キラ・ヤマト、ストライク行きます!』
空と海——それぞれの戦場へ。
エリスは新たに装備した刀で、見事な立ち回りを見せる。
スカイグラスパーも、エリスの援護を受けて難なく敵機を撃墜。
一方、キラは慣れない水中戦に四苦八苦。
だが、持ち前の集中力と判断力で——
一体目、二体目と、確実に撃破していく。
◇◇◇
プラント——アプリリウス市。
ニコル・アマルフィは、両親に見送られながら戦艦へと向かっていた。
「では」
「うむ」
「今度も無事で」
「はい。行ってまいります」
敬礼を交わし、カバンを手に乗艦するニコル。両親は心配そうに、ただ一人の息子の背を見送った。通路で、アスランと合流する。
「ニコル」
「ああ、アスラン。この間はありがとうございました」
ニコルは小さなコンサートを開き、アスランを招待していた。
「いいコンサートだったね」
「寝てませんでした?」
茶目っ気たっぷりに尋ねると、アスランは少し声を上ずらせる。
「……そんなことはないよ」
「本当はもっとちゃんとしたのをやりたかったんですけどね」
「今はな。オペレーション・スピットブレイクが終われば、情勢も変わるだろうから」
「ですね。でも今回は、ゆっくりでしたね」
その時、アスランがふと呟いた。
「ああ……少し、不可解な謎に出会ったがな」
「はい?」
「ああ、いや!なんでもない」
慌てて誤魔化すアスラン。だが、あの“事件”はまだ彼の中に残っていた。——四次元買い物袋事件。頭を突っ込んだ日以来、アスランは魘され、幻覚を見、寝不足が続いていた。
なんとか精神状態は保っているが、アマキ・カンザキは“宇宙人説”がいまだ濃厚である。
「僕、降下作戦は初めてなんです」
「俺だってそうだよ」
「ああ、そうか」
和気あいあいとした二人。
だが——この降下作戦で、アスランが“あの張本人”と再会することになるとは、
この時、まだ知らなかった。
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