腹減り少女はSEED世界で爆発少女にレベルアップする   作:サボテンダーイオウ

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にゃんにゃんぬまー。


PHASE-23平和の国へ

カガリ遭難事件から一転、ザフト赤服ザラ隊による猛攻がアークエンジェルを襲う。

中立国・オーブ近海にて、艦はまるでハチの巣のように集中砲火を浴びていた。

バスターから対艦ライフルが放たれ、マリューが即座に指示を飛ばす。

 

「回避ー!」

 

「バリアント、ウォンバットてぇー!!」

 

続いてナタルが応戦体制を整えるが、敵は完全に潰すつもりで来ている。

アマキも無人島でのやり取りは覚えているが――それはそれ、これはこれ。

ストライクは上部で護衛兼サポートに回り、エリスは隙あらばグゥルを奪えないかと画策していた。

 

「ほいほいほーい」

 

エリスは手を振りながら、おしりぺんぺんの挑発動作。

すると、デュエルが火がついたように反応し、グゥルに乗ってビームを撃ちまくりながら突進してきた。

 

『きさま~~~!!許さん!!』

 

毎度エリスを目の敵にしているのは理解できるが、どうも直接攻撃したい年頃らしい。

アマキも銃撃戦よりは肉弾戦の方が好みだ。

アークエンジェルは被弾しながらも耐えている。

そして、エリスの挑発に乗ったデュエルがいい距離まで近づいてきた。

 

「こっちこっち!」

 

『待て!!』

 

誘い出されたことにも気づかず、デュエルはエリスを追いかける。

アスランが制止するも――

 

『イザーク!一人で出過ぎるな!』

 

『五月蠅い!』

 

ピンチはチャンス。

逃げるふりをしながら後方へビームを撃ち、動揺した隙に方向転換――そして、思い切りタックル!

 

「もらったー!」

 

『ぐっ!?』

 

『アマキさん!?』

 

二機乗りのグゥルはバランスを崩し、海へと落ちそうになる。

デュエルはエリスを叩き落そうとするが、肉弾戦ではエリスの方が一枚上手。

 

「よっこいーせのぅ!!」

 

『な、なんだとーー!?』

 

エリスは相撲取りのようにデュエルを持ち上げ、豪快に海へ投げ飛ばした。

どごぉぉんん!!

大きな水柱が上がり、デュエルは海へ沈む。

アスランはショックで叫ぶ。

 

『イザークぅぅぅ!!』

 

エリスはグゥルを奪い、次なる獲物――ブリッツを狙う。

ストライク用にゲットしようという魂胆だ。

 

「キラにあげたいからちょーだい?」

 

可愛くおねだりしながら、アスランに通信をつなげる。

 

「アスラーン。助けに行かないとデュエル沈んじゃぞ☆」

 

『お前は鬼か!?』

 

「へへへ、褒められると余計に暴れたくなるよね☆じゃ、暴れるーー」

 

『お前~~~~!!』

 

エリスは器用にグゥルを操り、ブリッツを煽る。

ザラ隊はバランスを崩し、バスターはデュエル救出に向かうが、フラガ機に突かれ海へ落ちる。

アスランはブリッツの援護に回り、エリスへの攻撃に集中する。

 

『アマキさん!』

 

「キラ!待っててね。ブリッツのアレもらってくるから」

 

『いらないような気がする!あ、でもいるか』

 

キラの応援にアマキは張り切り、空中で暴れまくる。

ブリッツはなぜエリスがグゥルに乗って追いかけてくるのか理解できず、混乱状態。

 

『うわぁぁあああああ!!』

 

闇雲な攻撃は当たらず、エリスは容赦なく襲いかかる。

 

「ちょーだーーーーいーー!」

 

『ぎゃぁぁあああああ』

 

背中の刀を抜き、勢いよく斬り込む!

膝下からスパンと斬られたブリッツは、重心を崩し海へ背中から落下。

 

『ニコルぅぅぅぅーーー!!』

 

イージスは戦闘を忘れ、ブリッツ救出に向かう。

寸前で受け止められたブリッツは戦意喪失。

ザラ隊は乱れに乱れ、戦線離脱。

 

『覚えてろ!!』

 

捨て台詞を残し、アスランたちは撤退していった。

エリスはブリッツの足とグゥルをゲットして満足気。

 

「キラ!あげるよ」

 

『ちょっと嫌だな。足は……』

 

「あとで返せば?」

 

『さすがに返せないでしょ』

 

「そっか。どうせまた来ると思うけど」

 

アークエンジェルは被弾しながらも海を進み、ついにオーブ領海へ。

先行した無人探査機が状況を把握し、オーブ軍も動き始めていた――。

このままでは、アークエンジェルが領土侵犯の名目で沈められてしまう。

そうなれば、カガリの出番――。

 

「このまま突っ込め!」

 

「え?」

 

ブリッジに乱入したカガリは、キサカに許可を求める。

一応の了承を得た彼女は、切羽詰まった表情でマリューに詰め寄った。

 

「話は私がする。このままオーブへ!」

 

「でも……」

 

その時、オーブ艦隊から通信が入る。

 

「接近中の地球軍艦艇、およびザフト軍に告ぐ。貴官らはオーブ連合首長国に接近中である。速やかに進路を変更されたし。我が国は武装した船舶、および航空機・MS等の事前協議なき接近を一切認めない。速やかに転進せよ。繰り返す、速やかに転進せよ!」

 

ブリッジに緊張が走る。

さらに続けて、最後通達が告げられる。

 

「この警告は最後通達である。本艦隊は転進が認められない場合、貴官らに発砲する権限を与えられている」

 

カズイは頭を抱えた。

 

「攻撃って……俺たちも!?」 「何が中立だよ。この艦、オーブ製だってのに」 「構わん!このまま領海へ迎え!」

 

カガリは乱暴にカズイのイヤモニを奪い、自ら装着。

オーブ軍との通信に割り込む。

 

「この状況を見ていて、よくそんなことが言えるな!アークエンジェルは今からオーブの領海に入る!だが攻撃はするなっ!」

 

『な、なんだお前は!?』

 

「お前こそなんだ!?お前たちだけで判断できないなら、行政府へつなげ!父を――ウズミ・ナラ・アスハを呼べ!」

 

『っ!?』

 

「私は……私はカガリ・ユラ・アスハだ!」

 

その言葉は、通信を聞いていたアマキたちにも衝撃を与えた。

ついに、カガリが自ら公の場で正体を明かしてしまった。

それが吉と出るか凶と出るか――今は見守るしかない。

 

『姫様がそんな艦に乗っているはずなかろう!』

 

「なんだと!?」

 

『仮に真実であったとしても、なんの確証もなしに従えるものではない!』

 

「貴様……!」

 

通信は一方的に切られた。

キサカはマリューに向き直り、静かに言う。

 

「このまま領海へ入れ。心配はいらん。第二護衛艦軍は優秀だ。うまくやるさ」

 

その言葉にマリューは頷き、艦を前進させる。

だが――

 

「警告に従わない貴官らに、我が軍は自衛権を行使するものとする」

 

オーブ軍からの宣告とともに、一方的な攻撃が始まった。

複数の砲撃がアークエンジェルを襲い、艦はなすすべもなく被弾を重ねるようにみえたのだった。

 

◇◇◇

 

キサカの思惑通り、第二護衛艦軍はアークエンジェルに直接攻撃することなく、

むしろその周囲を守るように動いていた。

その護衛のもと、アークエンジェルは無事にオーブ領・オノゴロ島へと入島する。

ザフトの猛攻でボロボロになった甲板に、アマキとキラはヘルメットを脱ぎ、並んで立っていた。

潮風が、焦げた金属の匂いを少しずつ洗い流していく。

 

「……どうなるんだろう……」

 

「とりあえず、受け入れてくれたんだろうさ」

 

「……うん……」

 

キラの返事は、どこか心ここにあらず。

アマキは汗で濡れた髪を風に任せながら、遠くまで来たなと、しみじみ思った。

 

「………」

 

ふと、胸の奥にぽっかりと穴が空いたような寂しさが込み上げてくる。

アマキはそっとキラの手を握った。

すると、キラは何も言わずに、強く握り返してくれた。

その温もりが、アマキの寂しさを少しだけ和らげてくれる。

 

「大丈夫。僕がいるから」

 

「……うん……」

 

遠くを見つめながら言うキラの横顔は、どこか大人びて見えた。

いつの間にか、少年だと思っていた彼が、少しだけ遠くに感じられた――

それは、アマキだけの内緒の気持ちだった。

 

◇◇◇

 

その頃ブリッジではキサカから説明を受けていた。

 

「オノゴロは軍とモルゲンレーテの島だ。衛星からもここを伺うことはできない」

 

「そろそろあなたの正体を明かしていただけるのかしら?」

 

そうマリューから問われるとキサカは敬礼と共に返す。

 

「オーブ陸軍第二次道特殊空挺部隊エドニル・キサカ一佐だ。これで護衛でね」

 

「我々はこの措置をどう受け取ったらよろしいのでしょうか?」

 

「それはこれから会われる人物と直接話されるのがよろしかろう。オーブの獅子。ウズミ・ナラ・アスハ様にな」

 

この後、そのオーブの獅子と対面することになる。

 

◇◇◇

 

一方、ザフト艦ではイザークがオーブの発表に激高していた。

 

「こんな発表!素直に信じろって言うのか!」

 

彼が叩きつけた紙には、オーブ政府の見解――

“アークエンジェルは領内に存在しない”との声明が記されていた。

それを見て、ディアッカが皮肉を込めて口を開く。

 

「足つきは既にオーブから離脱しました、だってさ。これで済むって、本気で言ってんの?バカにされてんのかねぇ。やっぱ隊長が若いからかな」

 

「ディアッカ…」

 

ニコルが咎めるように名前を呼ぶ。

だが、二人の怒りも嫌味も、冷静なアスランには届かない。

 

「そんなことはどうでもいい。だが、これがオーブの正式回答だと言う以上、俺達がいくら嘘だと騒いでも、どうにもならないのは確かだ」

 

イザークも理解はしている。

だが、戦場でコケにされたという屈辱は、簡単には収まらない。

 

「なにを!」

 

「押し切って通れば、本国も巻き込む外交問題だ」

 

「………。ふ~ん、流石に冷静な判断だな、アスラン。いや、ザラ隊長」

 

「だから?はいそうですかって帰るわけぇ?」

 

ディアッカの言葉に、アスランは内心でため息をつく。

嫌味しか言えないのか――そう思いながらも、次の一手を告げる。

 

「カーペンタリアから圧力を掛けてもらう。だが、すぐに解決しないようなら――潜入する」

「「!」」

 

ディアッカとニコルは、その大胆な作戦に驚いた。

 

「それでいいか?」

 

「ふん」

 

「足つきの動向を探るんですね?」

 

イザークは何でも気に入らないらしいが、アスランの説明には仕方なく納得する。

 

「どうあれ、相手は仮にも一国家だ。確証もないまま、俺達の独断で不用意なことは出来ない」

 

その冷静な切り返しに、またもディアッカが吠える。

 

「突破して行きゃ足つきが居るさ!それでいいじゃない!」

 

「ヘリオポリスとは違うぞ。軍の規模もな。オーブの軍事技術の高さは言うまでもない。表向きは中立だが、裏はどうなっているか計り知れない、厄介な国だ」

 

説明されてようやく納得したイザークは、鼻を鳴らす。

 

「ふん!オーケー、従おう。俺なら突っ込んでますけどねぇ。流石、ザラ委員長閣下の御子息だ。ま、潜入ってのも面白そうだし――案外、あのエリスのパイロットの顔を拝めるかもしれないぜ?」

 

「!!」

 

(宇宙人アマキに!?もしや、あいつに惚れてるのか?ここまで執着する理由が、なんとなくわかるような……)

 

ニコルは険悪な空気に言葉を失っていた。

だが、彼自身も気になっていた。

殺すこともできたのに、エリスはわざわざグゥルを狙って斬ってきた。

それは、ただの戦術ではない。

――何か、意図がある。

エリスのパイロット。

きっと、自分よりもずっと実力が上なのだろう。

そうでなければ、もっと前に殺されていたはずだ。

でも、生きている。

殺される感覚が、まだ身体に残っている。

ブリッツも修理が必要だ。

幸い、時間はある――少し、自分の頭を整理する必要があるようだ。

 

◇◇◇

 

ドックに収容されたアークエンジェル。

修理のために一時停止した艦内では、食堂にトールたちが集まり、談笑の時間が流れていた。

カズイは、オーブに来ることができたことで、ほんの少し希望を持ち始めたようで――

隣のサイに、ぽつりと難しい話題を振った。

 

「こんな風にオーブに来るなんてなぁ」

 

「ね、さ。こういう場合どうなんの?……やっぱ、降りたりって出来ないのかな?」

 

「降りるって……」

 

「いや、作戦行動中は除隊できないってのは知ってるよ。でもさぁ、休暇とか……」

 

その疑問には、ノイマンが答えた。

 

「可能性ゼロ、とは言わないがね。どのみち、船を修理する時間も必要だし」

 

「ですよねぇ……」

 

「でもまぁ、ここは難しい国でね。こうして入国させてくれただけでも、けっこう驚きものだ。オーブ側次第ってところさ。……それは、艦長たちが戻ってこないと分からんよ」

 

ちょうどその時、キラが食堂に顔を出した。

ミリアリアがぽつりと呟いた。

 

「父さんや母さん……いるんだもんね」

 

「会いたいか?」

 

「………」

 

その問いに、誰も簡単には答えられなかった。

この難しい情勢を、誰よりも理解しているからこそ。

 

「……会えるといいな」

 

励ましの言葉ですら、どこか希薄に聞こえた。

キラとて、両親が無事ならもちろん会いたい。

でも、自分たちは軍人で、作戦行動中――そんなことはわかっている。

食堂を後にしたキラは、お盆に三人分の水筒を乗せて、アマキたちの部屋へ向かった。

あの戦闘で、部屋の中は少し散らかってしまっていたが、三人で整理して、ようやく落ち着きを取り戻していた。

フレイの船酔いもすっかり治り、いつもの高飛車な“フレイ節”が戻ってきている。

アマキはキラに礼を言い、ベッドから立ち上がった。

 

「キラ、ありがとう」

 

「もう外の景色、同じでつまんないわ」

 

フレイはベッドの上でモニターの映像を切り替えては、ぼやいている。

 

「フレイ、外の景色、見たいの?」

 

「別に〜」

 

「ほら、フレイ」

 

「うん……ありがと」

 

どこか元気のなさそうなフレイは、ベッドに腰かけたアマキに、肩を預けるように寄りかかって、ストローを咥えた。

 

「もしかしたら艦、降りられるかもだって。フレイは家、こっちにあるんだよね?」

 

「へー、そうなんだ」

 

「……降りられても誰もいないわ。パパは忙しいし」

 

と、突然、フレイは笑顔で言った。

 

「あ、そうだ! アマキさん! 私と一緒に暮らせばいいわ。そうしたらアマキさんも嬉しいでしょ!?」

 

いきなりの提案に、アマキは目を丸くして驚いた。

 

「へ? なぜに」

 

「そんなの駄目! 絶対反対だから!」

 

キラが全力で遮る。

勢いそのままに、アマキの肩に手を回して、自分のほうへ引き寄せる。

アマキは、されるがまま。

だが、フレイがすぐさまカウンターを仕掛ける。

 

「独占力の強い男は、嫌われるわよ。キラ?」

 

「え……」

 

キラは固まり、救いを求めてアマキを見た。

すると、アマキはやや遠慮がちに答える。

 

「そうだね。私、支配するのは好きだけど……支配されるのは、ちょっと」

 

その言葉に、キラはずがーんとショックを受けて、固まった。

 

「そんな……」

 

「フッ、まだまだ青いわね」

 

「フレイ、あんまりキラを苛めないの」

 

「はーい」

 

三人のやりとりは、嵐の後の静かな部屋の中で、どこか穏やかに流れていた。

 

◇◇◇

 

オーブの中心部――重厚な扉をくぐった先にある会議室。

マリューたちは、国家元首ウズミ・ナラ・アスハの前に立っていた。

その空気は張り詰めていた。

ウズミが纏う、“上に立つ者”特有の威厳。その静かなる圧に、誰もが僅かに身を強張らせた。

 

「御承知の通り、我がオーブは中立だ」

 

「はい」

 

「公式には、貴艦は我が軍に追われ、領海から離脱した――そういう扱いとなっている」

 

「はい」

 

ウズミの口調は淡々としている。だが、その中には鋭い問いかけが含まれていた。

 

「助けた理由は……まさか、“お嬢様”が乗っていたから、ではあるまいな?」

 

ムウはその問いに息を詰めつつ応じた。

 

「失礼致しました」

 

一拍の静寂。

ウズミは目を細め、間を置かず言い放った。

 

「国の命運と、甘ったれたバカ娘一人の命。秤に掛けると、そう思うか?」

 

誰が聞いても厳しい言葉。

だが、そこに込められた覚悟と――親としての複雑な感情を、マリューは見逃さなかった。

 

「そうであったなら、いっそ分かりやすくて良い」

 

その口調が一瞬だけ和らぐ。

 

「ヘリオポリスの件。巻き込まれて志願兵となった、我が国の子供たち。

Xナンバーの戦場での活躍も……聞いている。人命だけ救っておいて、艦とモビルスーツを沈めるべきかどうか、随分と迷った。今も、これで良かったのか、分からん」

 

その言葉には、国家元首の苦悩が滲む。

マリューは、気持ちを込めて頭を下げる。

 

「申し訳ありません。ヘリオポリスや子供たちの件は、私などが申し上げる資格のある話ではありません。ですが……一個人として、深く、申し訳なく思っております」

 

「よい。あれはこちらにも非がある。国の内側の問題でもある」

 

ウズミはゆっくりと、言葉を続けた。

 

「我々が中立を保つ理由は――ナチュラルも、コーディネイターも、敵としたくないからだ。

だが、力なき中立には重みがない。力を持てば、今度はその中立が標的になる。……軍人である君たちには、要らぬ話かもしれんな」

 

「ですが、我々は……」

 

マリューはハルバートンの言葉を思い出していた。

“オーブを信じろ”――果たしてその言葉は、今でも成り立つのだろうか。

すると、ウズミは顔を上げ、静かに告げた。

 

「ともあれ。貴艦を沈めなかった最大の理由を、伝えねばならん」

 

緊張が一段と高まる。

 

「ストライク、エリス。その戦闘データ。そしてパイロット――コーディネイターである、キラ・ヤマトとアマキ・カンザキ。二人のモルゲンレーテへの技術協力を、我が国は望んでいる」

 

予想していたこととはいえ、直接口にされると――その重みは、堪える。

 

「ぁぁ……」

 

「叶えば、我々もかなりの便宜を、貴艦に図ることができよう」

 

「ウズミ様、それは……!」

 

その言葉に込められた意味。

それは、“代償”であり、“交渉”であり――もはや“選択の余地”ではなかった。

拒否権は、ない。

 

◇◇◇

 

オーブからの提案は、確かに理が通っている。

だがナタルは、どうしても納得がいかず、憤然と言い放った。

 

「私は反対です。この国は危険だ!」

 

その剣幕に、ムウは肩をすくめながら軽口を返した。

 

「そう言われたってな~。じゃ、どうする? ここで船降りて、みんなでアラスカまで泳ぐ~?」

 

当然、ナタルが噛みつく。

 

「そういうことではありません! 修理に関しては代価を取れば済む話です」

 

「分かりますけどねぇ」

 

マリューは静かに机へ肘をつき、重い言葉を吐く。

 

「それで済むものかしら。……ザフトからの圧力、もう当然あるはずよ。それでも庇ってくれてる理由、分かるでしょう?」

 

的確すぎる指摘に、ナタルはますます苛立つ。

感情というより、正義感の裏返しだった。

 

「ヤマト少尉なら理解できます。ですが……カンザキ少尉に関してはナチュラルで、彼のような高度なカスタム能力はありません。ましてや、彼女は問題児です。技術提供などさせれば何をしでかすか……エリスだけ渡して、彼女は……!」

 

語気を強めるナタル。

それでも、その言葉の端々には、アマキを守りたい気持ちが滲んでいた。――我らのアイドルだから。

マリューは目を細め、優しく問いかける。

 

「ナタル。……沼にハマる者を増やすのを、拒むの?」

 

「うっ……」

 

――そう、同士は多い方がいい。

 

「これもいい機会よ。彼女の魅力はこの艦だけに閉じ込めておけるようなものじゃない。世界へ広めるべき素敵なもの。独占はいけないわ」

 

「ですが!」

 

「分かってるわ。私だって、胸の奥にそっと忍ばせておきたいくらい。だけどね、彼女は“自由”であるべきなのよ。……それが、彼女の魅力なんだから」

 

その言葉がナタルの核心に触れた。

しばしの沈黙ののち――視界が晴れる。

 

「ハッ……! か、艦長……。艦長がそう仰るなら、私には反対する権限はありません。ですが、この件については……アラスカに着きましたら、正式に問題にさせていただきます!」

 

カッと敬礼をして、ナタルは部屋を後にした。

ムウはその背を見送ると、ぽつり。

 

「いや、それは問題にするなよ……」

 

マリューは、どこか満足げに微笑む。

 

「大丈夫。あれで分かってくれていますよ、ナタルは。なんせ同士ですし」

 

「ははは……。ボウズと嬢ちゃんには申し訳ないけどな」

 

「ええ。……はぁ、もう……」

 

机に突っ伏すマリュー。

ムウが慰めるように背中を叩くと、すぐさま冷たい声が降ってくる。

 

「止めてください少佐。……セクハラです」

 

「あっ、そ、そう!?」

 

ムウの手はピタッと止まり、部屋には微妙な沈黙が流れた。

 

◇◇◇

 

通路に現れたカガリは、いつもとは違うドレス姿。

お付きのマーナに手を添えられ、歩く姿はまさに“姫君”。

その一瞬で、クルーたちは釘付けになった。――キラたちですら、言葉を失う。

 

「ええい!自分で歩ける!」

 

「駄目でございます、姫様!」

 

そんなやりとりの最中、アマキは遠慮なしに手をぶんぶん振った。

 

「カガリ~!可愛いよ~~」

 

「お前~~っ! 他人事だと思って!」

 

カガリの怒号に、すかさずマーナの声が飛ぶ。

 

「姫様!」

 

「うっ……あ、後で覚えてろ!」

 

「バイバイ~」

 

アマキの軽さに、カガリは今にも撃ちそうな殺気をまといながら、その場を後にする――そして、キラから諫めの声。

 

「アマキさん、カガリをからかっちゃダメだよ」

 

「そうそう、せっかく可愛かったのに」

 

「えー!挨拶しただけなのに~!」

 

珍しくダブル説教を受けたアマキは、拗ねて買い物袋の中に頭を突っ込み、ふて寝態勢。

そこに、四次元ポケットからルルがひょっこり。

 

「アマキ~、おかえり~」

 

「ルル!ただいま~!」

 

「ラクスから~」

 

ルルが差し出したのは、ラクスからの定期便――手作りの野菜ケーキと、お手紙。

見た目はヘルシー。でも、あざとく高カロリー。

 

「今日は絶対食べてやるもんね!」

 

と、アマキは袋から頭を抜き、ルルを抱きしめつつケーキを独占。

口いっぱいに頬張る姿が、ばっちり目撃された。

 

「ずるい!」

 

「太るよアマキさん!」

 

「なんだよぉ!? 私宛に来たやつなんだからいいじゃんかーっ!」

 

結局半分だけ食べて、残りは二人に奪われる。

ルルはお使い中でスリープ状態。

悔しさを抱いたアマキは――ラクスへの返事にこう書いた。

 

『今度、激辛クッキー希望!』

 

その言葉を忠実に受け取ったラクスは、数日後――

鬼のような激辛クッキーを差し入れてくれた。

ニヤリと微笑むアマキ。

 

「さぁさぁどうぞ、遠慮なく~♪」

 

その後、キラともう一人が悲鳴を上げ、悶絶しながら床を転げまわる。

アマキの笑い声が艦内に響く。

阿鼻叫喚は、しっかり笑い話になった。

 

静かな海面を割るように、アスランたちの姿が浮かび上がる。

ダイビングスーツに身を包み、無言のまま島の岸へと上陸する彼ら。

すでに先行して接触を済ませていた工作員たちが、木陰から姿を現す。

 

「クルーゼ隊、アスラン・ザラだ」

 

乾いた声が響く。工作員は一礼し、応じた。

 

「ようこそ、平和の国へ」

 

その一言に込められた皮肉のような響きが、アスランの胸奥に沈んだ。

陽は沈みかけ、潮の香りだけがこの場に吹き込んでくる。

ついに、役者はそろった――

それぞれが異なる“正義”を抱えながら。




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