腹減り少女はSEED世界で爆発少女にレベルアップする   作:サボテンダーイオウ

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ナチュラルでもない、コーディネーターでもない。
じゃあ、貴方は一体誰なの?


PHASE-24果てなき輪舞(ロンド)

オーブ連合首長国、オノゴロ島。

夜の静けさの中、四人のザフト兵が林を抜け、崖を登る。

彼らは整備兵の制服に身を包み、手渡された即席のIDパスを握りしめていた。

 

「そのIDで、工場の第一エリアまでは入れる。だがその先は完全な個人情報管理システムでな。急にはどうしようもない。……無茶だけはしてくれるなよ。騒ぎはごめんだ。“獅子”は眠らせておきたいってことさ」

 

そう言った工作員の声が、森の湿った空気に沈んだ。

静かに潜入を進めていた彼らが、崖の上に立ち止まる。

モルゲンレーテの灯りが遠くに滲んでいた。

その瞬間――アスランの脳裏に、鮮やかに浮かぶのはカガリの姿だった。

通信で名乗りを上げたのがまさかの“姫”。

あれが、自分が散々言い合った彼女の“正体”だったとは。

まさか……と、未だ心が追いつかない。

そして、もう一人。

宇宙人――アマキ・カンザキ。

思い返すだけで、あの奇妙な重力感に引っ張られそうになる。

会うたびに、何かが狂う。感情も、予定も、軸すらも。

 

「……絶対、調子が狂う……」

 

小さく呟いたアスランの背に、夜風が静かに吹き抜ける。

思わず震える肩に、仲間がちらと視線を送るが、何も言わない。

任務は始まった。

けれど、感情の予兆はもうとっくに、嵐だった。

 

◇◇◇

 

ドックでは、既にアークエンジェルの修繕作業が始まっていた。

差し出すものを差し出した――その結果を受けて、着々と動き始めるオーブ側の支援。

ガラス越しに外の様子を眺めるノイマンとナタル。

 

「驚きました。もう作業に入ってくれるとは」

 

「ああ……それは、本当にありがたいことだが」

 

そのやりとりの最中、マリューが艦橋に現れる。

顔には少し疲れが滲んでいたが、以前の張り詰めた表情ではない。

静かな空気が流れ、そして敬意が交わされた。

 

「おはよう」

 

「「おはようございます」」

 

二人は自然に敬礼し、マリューを迎える。

 

「御苦労様です」

 

マリューも軽く敬礼を返し、指揮席へと着く。

 

「モルゲンレーテからの技師たち、もう到着してる。修理に入ってもらってるわ」

 

「そう。ヤマト少尉とカンザキ少尉は?」

 

「先ほど、迎えと共にストライクとエリスで工場へ向かいました」

 

「……ありがと」

 

ふとナタルが、じっとマリューの顔を見つめる。

何か言いたそうに、しかし言葉を選んでいるような瞳。

 

「……」

 

「ん? なにかしら」

 

マリューが視線に気づき、やさしく問いかける。

ナタルは一瞬ためらい、そして短く答える。

 

「いえ……。この機に、艦内の内部システム点検と修理を徹底して行おうと思いまして」

 

「……お願いね」

 

「はい」

 

そのやりとりには、わずかな沈黙があった。

けれど、それは決して気まずいものではない。

信頼と理解があるからこそ、言葉は少なくて済む。

二人の間には、同士だからこその静かな連帯感が満ちていた。

 

◇◇◇

 

モルゲンレーテの地下施設にて――

大きなゲートの前、主任エリカ・シモンズと部下たちが待機していた。

キラとアマキが到着すると、エリカは笑顔で手招きしながら声をかける。

 

「さ、こちらよ。ここならストライクもエリスも、完璧に修理できるわ。言ってしまえば、モビルスーツたちの“実家”みたいなものね」

 

「へぇー」

 

アマキは興味津々に周囲を眺めながら、思わず感嘆の声。

一行が奥へ進むと、扉が開き――そこには、色違いのMSが何機もズラリと並んでいた。

 

「わっ……これ……!」

 

「量産型……だね」

 

「驚くほどのことでもないでしょ?ヘリオポリスで君たち、実物を見てるんだから」

 

圧倒されて立ち尽くすキラとアマキの前に、通路の奥から姿を現したのは――カガリ。

 

「これが、“中立国オーブ”の、本当の姿だ」

 

「カガリ!」

 

その頬が赤く染まっていることに、アマキは気づいた。

けれど、その空気を読んで、ただ静かに見守った。

エリカは気にも留めず、説明を続ける。

 

「これが、M1アストレイ。モルゲンレーテ社製のオーブ軍専用機よ」

 

キラが一歩前に出て尋ねる。

 

「この機体……オーブはどう使うつもりなんですか?」

 

「どうって?」

 

エリカが戸惑う中、カガリが補足する。

 

「これは、“オーブの守り”だ。他国を侵略しない。他国の侵略は許さない。他国の争いに介入しない。その意志を貫くための、“力”だ」

 

「……」

 

「うーん、難しい話だねぇ」

 

アマキの口調に笑みが漏れかけたが、空気が変わる。

 

「オーブは、そういう国だ。……いや、そういう“はず”だった。父上が裏切るまでは」

 

「え……?」

 

その言葉に、キラが戸惑う。

そこから始まる――エリカとカガリの“プチ言い合い”。

 

「もう、まだそんなことを仰ってるんですか?何度も説明したはずです。ヘリオポリスの件、ウズミ様は……」

 

「黙れ!最高責任者が“知らなかった”などという言い訳が、通るとでも思ってるのか!」

 

「責任は取られましたわ。職も譲られたし……」

 

「結局、何も変わってないじゃないか!」

 

「それでも――ウズミ様は今のオーブには必要な方です」

 

カガリの正論ラッシュに、エリカはあえて甘さを混ぜて切り返す。

 

「そんなに“卑怯者”だと思ってるなら……昨日の騒ぎ、頬っぺたの一つくらい叩かれて当然ですわよ」

 

「……っ!」

 

エリカの軽口に、キラがぽつり。

 

「だから、頬……赤かったのか」

 

「ふん!なんとでも言え!」

 

大股でそっぽを向くカガリ。エリカはくるっと背を向けて言い放つ。

 

「さーて、おバカさんは放っておいて、次いくわよ!」

 

キラはなんとなくエリカについていき、アマキはカガリに手招きしてからその後を追う。

少し遅れて――カガリも、ぶすっとしながら大股で追いかけていった。

連れてこられたのはモルゲンレーテのオペレーション室。

ガラスの向こうでは、三機のアストレイがスタンバイしていた。

周囲には関係者がずらりと並び、モニター越しに指示と確認が飛び交っている。

エリカがイヤホンに口を近づけて呼びかけた。

 

「アサギ、ジュリ、マユラ!」

 

「「「はーい!」」」

 

若い声が揃って返る。

その響きに、キラとアマキは目を見合わせた。

 

「あっ、女の子だ」

 

「私の周り、男ばっかだから新鮮〜」

 

無線越しにも彼女たちの声が弾む。

 

『カガリ様?』

 

『ほんとだ〜』

 

『なぁに、帰ってきたの?』

 

「悪かったなぁ……」

 

カガリの小さな照れが微妙に漏れ出し、アマキはにやり。

うんうん、と満足げに頷く。キラは横で不信顔。

 

「なんか喜んでる」

 

「嬉しいじゃん。友達いた〜ってわかるのって、尊い」

 

エリカが声をかける。

 

「始めて!」

 

「「「はい!」」」

 

三機のアストレイがゆっくり歩き出す。

それぞれ攻撃ポーズを取るが、動きはややぎこちなく、のろい。

 

「相変わらずだな」

 

「でも倍近く速くなったんです」

 

キラは驚きの声を漏らし、アマキも「OH〜!」と目を丸くした。

しかしカガリは、あまりに素直すぎた。

 

「こんなんじゃ、すぐやられるぞ。的にしかならん」

 

その言葉に、アストレイのパイロットたちから即座にブーイング。

 

「あ〜! ひっど〜い!」

 

「ほんとのことだろうが!」

 

「人の苦労も知らずにっ!」

 

「乗れもしないくせにっ!」

 

「言ったな!? じゃあ替われよ!」

 

空気が戦闘モードになりかけた瞬間、エリカが仲裁に入る。

 

「はいはいはい、止め止め止め!カガリ様の指摘も事実よ。私たちはあれを、もっと強くしたいの。貴方のストライクのようにね。……エリスは別よ。アレは私たちの手には負えない」

 

「え?」

 

エリカの視線がアマキに向く。

 

「技術協力をお願いしたいのは、ストライクのサポートOS開発よ。ナチュラルでも使えるようにするための改良を」

 

「なるほど」

 

「キラならできそう。私は……うん、勘で動いてるから説明は無理」

 

「でしょうね」

 

エリカは頷いてから、こう続ける。

 

「貴方には、エリスの専用データを取らせてもらうわ」

 

「つまり、あそこで踊れってこと?」

 

アマキはげぇっと顔をしかめる。

 

「……やなかんじー」

 

エリカはクスッと笑う。

 

「でもよくあの機体、使いこなせるわね。あれは“いわく付き”よ。制作に関わった主要スタッフは、次々と謎の死を遂げているわ」

 

「へぇ。運が悪かったんじゃないですか?」

 

「いいえ。エリスは、パイロットを選ぶの。ストライクたちとは違う。まるで意思を持ってるみたい。夢があっていいじゃない」

 

確かに――アマキには“しっくりきて”いた。

乗った瞬間から、違和感がなかった。

機体が“こちらを見ている”ような気さえした。

そして、その流れから――エリカがふとこぼす。

 

「それにしても、貴方。……ナチュラル、なの?」

 

「なんですか。コーディネイターに見えるとでも」

 

声を少し低くしたアマキ。

その問いに、何度も否定するうちに、疲れてしまったのだ。

エリカが首をかしげながら評価を述べる。

 

「容姿、身体能力、戦闘力、知識、判断力……どれも、怖いほど完璧すぎる」

 

アマキは黙り込む。

それは“恵まれているから”ではない。

それは――一生抜けられない輪の中に、もう入ってしまっているからだ。

そして、吐き出すように言い放った。

 

「ナチュラルだろうが、コーディネイターだろうが――人間であることに変わりはありませんよ。私にとっては、どれも些細な違いです」

 

エリカの目がわずかに揺れる。

 

「なんですって……?」

 

アマキは笑みを浮かべた。

妖しく、そして残酷に美しい微笑。

 

「“生”の前では、あがく者すべてが一瞬。――私にとっては、ね」

 

その言葉の真意を、エリカは理解しきれなかった。

だが、背筋に走る冷たい感覚に――少しだけ畏怖を覚えた。




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