腹減り少女はSEED世界で爆発少女にレベルアップする 作:サボテンダーイオウ
アークエンジェルの修繕は着々と進みつつあった。
ブリッジにてキサカがこれからの動きについて軽く説明した。
「目下の情勢の最大の不安材料はパナマだ。ザフトに大規模作戦有りという噂のおかげでカーペンタリアの動きはかなり慌ただしい」
ナタルからの問いにキサカははっきりとは答えなかった。
「どの程度まで分かっているのですか?」
「さぁな、オーブも難しい立場にある。情報は欲しいが薮蛇はごめんでね。だがアラスカに向かおうという君等にはかえって好都合だろう」
地図を見ながらノイマンが説明を付け加える。
「万一追撃があったとしても北回帰線を超えればすぐにアラスカの防空圏ですからね。奴等もそこまでは深追いしてこないでしょう」
マリューは例の隊について尋ねる。
「ここまで追ってきた例の部隊の動向は?」
「一昨日からオーブ近海に艦影はない」
「引き揚げた、と?」
「また外交筋ではかなりのやり取りがあったようだからな。そう思いたいところだが」
あの執念ならば諦めることはない、そうマリューは判断した。ならばいつ出てきても可笑しくないと判断しておいた方がいいようだ。ここでナタルがきわどい質問をキサカにぶつける。
「アスハ前代表は当時この艦とモビルスーツのことはご存知なかったという噂は、…本当ですか?」
「バジルール中尉」
咎めようとするマリューを手で制したのはキサカだった。
「確かに前代表の知らなかったことさ。一部の閣僚が大西洋連邦の圧力に屈して独断で行ったことだ。モルゲンレーテとの癒着も発覚した。オーブの陣営を明らかにするべき、と言う者達の言い分も分かるのだがな。そうして巻き込まれれば火の粉を被るのは国民だ。ヘリオポリスの様にな」
確かにヘリオポリスにいた人々は巻き込まれた人たちだった。もしもモルゲンレーテがアークエンジェルとMSを造らなければ今もそこに平和があったかもしれない。
だからナタルが気まずそうに視線をそらした。今のオーブがまさにその状況だ。そうならないようにウズミは無茶を承知で動いている。
「それだけはしたくないとウズミ様は無茶を承知で今も踏ん張っておられるのさ。君等の目には甘く見えるかもしれんがな。」
耳が痛くなる思いでマリューは「いえ…」というしかなかった。
キサカは気まずくなる雰囲気を払拭するように話題を変える。
「修理の状況は?」
「明日中にはと連絡を受けております」
そうマリューが答えるとキサカはねぎらいの言葉を贈った。
「あと少しだな。頑張れよ」
三人は彼に敬礼で感謝を述べた。キサカもそれに敬礼でこたえ彼女らに背を向けて出て行こうとした。その背中にマリューが呼び止めをする。
「キサカ一佐!」
「ん?」
「本当にいろいろとありがとうございました」
個人的な気持ちであろうマリューは丁寧に頭を下げた。
「いやこちらも助けてもらった。既に家族はないが私はタッシルの生まれでね」
「……」
意外な事情にマリュー達は息をのんだ。
「一時の勝利に意味はない。とは分かってはいても見てしまえば見過ごすことも出来なくてな。暴れん坊の家出娘をようやく連れ帰ることも出来た。こちらこそ、礼を言うよ」
軽く頭を下げてキサカは今度こそブリッジを出て行った。
◇◇◇
その頃、アスランはカーペンタリアからの補給艦で補給を受けながら、潮風を浴びて襟元を崩しながらたぼうっとしていた。半ば無理やりこの場にとどまることを仲間たちに宣言すると案の定反対の嵐だった。それを言い含めるまでも大変だったが、敵を逃すことはできない。
イザークたちには理解できなくともキラがあの場にいたことで確証に至ったのだ。
次こそ、仕留めなければと頭で考えるが出てくるのは切なげに顔をゆがませるキラばかり。隣の宇宙人アマキは一切視界にも入っていなかった。ニコルには当然のごとくばれた。
「アレが幼馴染の少年ですねっ」て。
「ああそうだよ。俺の幼馴染は頼りない弟みたいな奴で放っておけないほど心配なんだよ!」
とニコルにこっそり打ち明けた。ニコルは
「そうですか。それはとても辛いですね」
と慰めてくれてアスランは歓喜の涙を流した。
「ところで隣にいた少女は例のアマキ・カンザキですか?わかりました。では次に戦うときがくれば僕が彼女の相手になります。アスランは幼馴染の少年をお願いできますか?」
と残酷なことを笑顔で言ってきたからさらに別の意味で泣けた。
容赦ないニコルだが絶好のチャンスを逃すことはできないと意気込んだ。次の場ですべてを決める。
国は大事だが家族はもっと大事だ。
家族を守るため、自分が生き残るため。ニコルはアマキ・カンザキとの接触を望んだ。
◇◇◇
カガリは自室にて例のヤンチャ服に身を包みアークエンジェルと共に行こうと考えていた。そこへウズミが音もなくやってくる。父には娘の考えることなどまるっとお見通しなのだ。
「カガリ」
「あ…」
「あの船と共に行くつもりか?」
そう静かに尋ねられるとカガリは迷わず答えた。
「はい」
「では地球軍の兵としてプラントと戦うのか?お前はそれほどまでに戦いたいか」
「違います!戦いたいわけではない!」
「では、なんだ」
そう静かに問うとカガリは必死に訴えた。自分の理想を。
「彼らを助けたいのです!そして、早く終わらせたい!こんな戦争は!」
誰だってそうだとカガリは言いたいのだろう。
だからウズミは再度問う。
「お前が戦えば終わるのか?」
「え!?」
「それは…」
そうとは言えなかった。実際自分が戦闘に加わったところで簡単に落とされてしまう。スカイグラスパーがいい例だ。ウズミの追及は止まらない。
「お前が誰かの夫を討てばその妻はお前を恨むだろう。お前が誰かの息子を討てばその母はお前を憎むだろう。そしてお前が誰かに討たれれば私はそいつを憎むだろう。こんな簡単な連鎖が何故解らん!」
そう一喝され一瞬居竦むがそれでも自分の意見をぶつけた。
「解っています!しかし…この国で自分だけのうのうと…」
「そんな安っぽい、独り善がりな正義感で何が出来るか!!」
「っ…」
正論にカガリは何も言い返せなくなる。
ウズミはカガリの両肩に手を置いてじっくりと言い聞かせた。
「銃を執るばかりが戦いではない。戦争の根を学べ、カガリ」
「お父様…」
以前アマキにも言われたことを思い出す。
人には適材適所というものがある。
アマキは戦場、カガリは政治だと。今それをウズミに言われているのだ。
「討ち合っていては、何も終わらん」
「……」
カガリは、アークエンジェルと共に行くという選択肢をやめた。
◇◇◇
アークエンジェルブリッジでは出港直前の最終段階に入っていた。
「オーブ軍より通達。周辺に艦影なし。発進は定刻通り」
「了解したと伝えて」
マリューがそう伝えるとサイがトノムラに尋ねた。
「護衛艦が出てくれるんですか?」
「隠れ蓑になってくれようってんだろ?艦数が多い方が特定しにくいし、データなら後でいくらでも誤魔化しが効くからな」
マリューからの伝言を伝えたパルからまた通信が入る。それは意外なものだった。
「ドック内にアスハ前代表がお見えです。ヤマト少尉とカンザキ少尉を上部デッキへ出して欲しいと言われてますが」
「え?」
マリューは戸惑いながらも二人に指示を出すようミリアリアに頼んだ。
上部デッキに向かった二人はそこでキラとアマキは鏡張りのところでウズミとその隣に並ぶヤマト夫妻の姿を見つける。
二人はキラ達が自分たちに気づくと全力でぶんぶんと手を振って笑顔で見送ってくれている。二人はほどほどに手を振り返した。ウズミ様すいません。
「キラー!アマキー!」
「カガリ!どうして?ここに」
「お前ら勝手に行くなよ!挨拶ぐらいしてけって!」
「え!?してなかったっけ」
「してなかったね」
キラがアマキに問うとアマキもそういえばと頷き返す。その間にカガリは上部デッキへかはしご階段で上がってきた。よくその恰好で上がってきたもんだとアマキは関心した。
「カガリ、まずは体力付けた方がいいよ」
「こんな時に余計なアドバイスいらないって……はぁ…」
カガリは息を整えるとキラとアマキを強引に引っ張って抱き込んだ。
「キラ!アマキ!」
「うわ…!カガリも元気で。その…いろいろありがと」
「カガリ、肩ひじ張らないで周りの人に助けてもらいなよ?」
キラからは礼を言われアマキからは一言アドバイスを受け、カガリは涙を浮かべた。もうお別れなのだと感じた。だからこそ、これだけは伝えたかった。
「お前ら…死ぬなよ?」
「うん」「善処する」
「なんだ善処って!ったくアマキはいつもそれだなっ」
「なんせそれが私、アマキ・カンザキですから」
ふんと胸を張るアマキに二人は笑顔になれた。最後の別れではないと勇気づけられたのだ。
◇◇◇
アークエンジェルは護衛艦に囲まれ演習に紛れて北上することにした。領海ギリギリのところまでくればアスラン達が奇襲をかけてくるのは予想できていたので、キラとアマキはパイロットスーツを着込んで準備をしていた。マードック軍曹から
「何だお前ら、どうした?まだ何も命令出てねぇぞ」
と不思議そうに言われるがキラは
「領海を出ればザフトの攻撃始まりますよ」
と冷静に返す。アマキもそれに続けて
「フラガ少佐にも急ぎ伝えてください。ザラ隊はしつこく追いかけてくるからねって。じゃ、私達待機するんで!」
と教えるとアマキの言葉には毎回驚かされているのでこれには慌てて準備に入った。そして案の定、ブリッジでは
「レーダーに反応!数3、いや4!」
「え!?」
「機種特定、イージス、バスター、ブリッツ、デュエル!」
「潜んでいた?網を張られたのか!?」
ナタルは驚きを隠せない様子だがマリューは狼狽えることはなかった。予想の範囲内である。
「やはりね…。対船、対モビルスーツ戦闘用意!逃げ切れればいい!厳しいとは思うが、各員健闘を!」
マリューの素早い判断にナタルもハッとしいつもの自分を取り戻す。
「ECM最大強度!スモークディスチャージャー投射!両舷、煙幕放出!」
ナタルの指示によりアークエンジェルも迎撃態勢に入る。
前回の戦闘でグゥルを奪取しているので空中戦とならばこちらも負けてはいない。
「コンジット接続。補助パワーオンライン。スタンバイ完了!」
ストライクもデッキの上から迎撃態勢に入る。まずはアークエンジェルの護衛だ。エリスはもちろんグゥルに乗って出撃開始である。アークエンジェルから出される煙幕によって彼らの姿は白い煙の中に消える。そこへフラガ機とエリスが突っ込んでいく。
『煙幕!?』
『チェッ!姑息な真似を!2機?』
「やっほー!」
と挨拶をしながらの挨拶ビームライフルを撃ちまくって歓迎した。
『エリス!?この前のグゥル使いこなしてやがるっ!』
『ようやくお出ましか、俺が相手だぁぁああ!!』
バスター、デュエルともにエリスを標的としエリスに襲い掛かる。だがアマキはそれを逆に利用しキラにデータを送る。
「キラ!敵の座標と、射撃データを送るからよろしく!」
『了解!』
そこへストライクは送られた座標からアグニをぶち込む。
実はその座標はエリス自身のものなのだが、自分に向かって撃てば必ず敵はこちらによって来る。そのチャンスを狙ってあえて危ない選択を取った。案の定後ろから高エネルギーが迫ってくるが前方からは鬼気迫るデュエルとバスター。エリスはすぐ真下に逃げ込み、アグニこう砲撃をすれすれで避け逆にデュエルにエネルギー砲がヒット!
『ぐわぁぁあ!!』
『イザーク!』
「がら空きだぜ!」
デュエルが墜とされ動揺したバスターへすかさずフラガ機が一撃を入れる。
『ぐっ!?』
「もーらいっ!」
そしてついでにグゥルを破壊する。バスターは煙を上げて海面へ落ちていく。
『嬢ちゃん!ひやひやしたぜー』
「ほほほ。使えるものはなんでも使うのでーす」
開き直ると下から地を這うような声がする気がした。
『アマキさ~~ん~?』
「げっ」
いつの間にかエールストライカーに換装したストライクがグゥルに乗ってエリスへと向かってくるではないか。相手が違うとエリスはイージスの方へ逃げる。
「こっちこないでよ、アスランのとこ行ってー!」
『なんで危ないことするかな~~?』
「いーやー」
エリスはストライクから逃れるためジグザグに飛び逃げ惑う。その過程でイージスとすれ違いブリッツとぶつかりそうになる。
『ぬわっ!?』
「ぎゃ!」
『うわっ!ってエリスっ!?ちょ、ちょっと待ってくださいっ!』
ニコルは好機到来とすかさず通信を繋げた。イージスはストライクと応戦していてブリッツを気にする余裕はない。
「え、通信?ブリッツから……?」
『アマキ・カンザキさんですよね?あの、なんていうか』
エリスとブリッツは空中でそれなりの距離で動きを止める。
だが警戒は緩めない。
「えー?アスラン経由かな。何か用か?あ、この前のブリッツの足斬ったの根に持ってるの?今度返すよ足」
嫌々そう返すとブリッツからはキレ気味に言い返される。
『いりませんっ!そうじゃなくて貴方はこの戦争をどう思いますか?もし戦争を平和に終わらせたいとか考えて』
「考えてるよ。それで?私とおしゃべりしたくて来たの?」
そうじゃないなら撃ちあうよというつもりが彼の反応はアマキにとって予想外だった。やや遠慮がちにだがはっきりと彼は言った。
『違います。貴方なら……道を示してくれるのかと』
あれだけ戦ってきたのに、今このタイミングで言うか?
「……君はザフトを抜けたいの?」
『僕は…』
「ラクスなら君のほしい答えを持っているかもしれない。私も彼女の宴に参加するつもりだ。君も来るかい」
彼女は寛大な心の持ち主だとニコルは思った。
アスランが宇宙人と言っていたのも理解できるというもの。
『ラクス様?……それはいったい…いいえ!何か手があるのなら僕にも乗らせてくださいっ!僕は死にたくないんです』
皆その気持ちを抱いて戦場に身を投じているはず。
「誰だって死にたくないね。いいけど、じゃあ死なないとダメだな。一緒に自爆しよう」
『はい!……え?』
聞き間違いではなかった。死にたくないといニコルに対してじゃあ死のうという。宇宙人アマキ伊達じゃない。
「とりあえず、それらしい戦闘しよう。怪しまれるから」
『は、はい』
エリスはブリッツと激しく戦うように見せかけて怪しまれないようにした。だがエリスは遠慮なくブリッツにビームソードを叩きこむ。文字通り叩きこむ。
『あの手加減をしてください!』
「戦場で生ぬるいこと言わない。私はスパルタなのだ」
『そんな!』
ブゥン!!バチィーン!
高速で動かされるビームソードを交わし、打ち合い、攻め込めばいなされまるで赤子のように扱われニコルは泣きそうになった。
『あの僕死にそうです!』
「よし。そろそろ頃合いか」
『へ』
エリスはニコルからわざとらしく距離を取りビームソードからビームライフルに変更し至近距離で放ちグゥルを遠慮なしにぶっ壊す。
どがぁーーん!!
ブリッツが乗っていたグゥルが火を噴き黒い煙を周囲にまき散らす。それと同時にぐらりと横に傾いていきそのまま海へ落ちていく。
「また今度自爆しようねー」
『ひどいです~~~~!』
エリスはブリッツに向かって手を振り落ちていくのを見送った。イージスとストライクは激しい鍔迫り合いをしていて一機になった状態でイージスは仕方なく撤退していった。
『覚えてろよ!』
「捨て台詞悪役っぽい」
相当頭に来てるなとアマキは思った。だが呑気にそんなことを考えている場合ではなかった。
アークエンジェルにて先に帰還していたキラによって恐ろしいお仕置きが待っていることをアマキは知らなかった。
キラ「アマキさ~ん~?」
アマキ「げっ」
キラ「さっきの僕納得してないからね。反省会しようか」
アマキ「あのお腹空いてきて集中力が」
キラ「ほら。ザフトのレーションいっぱいあるから。青汁味」
アマキ「そんな!?もっと甘い味が」
キラ「選択権ないよね?出してあげてるだけ感謝してほしいよ」
アマキ「しょ、しょんな……」
フレイ「アマキさん~。この間のケーキのお礼に私も料理作ってみたの~食べてみて~タバスコクッキー!」
アマキ「!?」
キラ「いいね。最初の一口はさっそくアマキさんに」
アマキ「………」
「「食べてくれるよね~?」」
アマキ「……女は度胸……うう、んぐっ!……ひ、ひは~~~!?」
ボォォーーー!
アマキは口から火を噴いた。
キラ達の騒動を見守っていたムウ以下周りのクルーたちから歓声が沸いた。その後、たらこ唇になったというアマの噂を聞きつけて激写しようと意気込んだミリアリアが沸いた。
「レア写真と共にミリアリ参上!」
「もうやだー!」
アマキはパパラッチミリアリアか逃げるために逃走した。でもたらこ唇なのでどこでも見つかってしまい果てにはマジ泣きした。
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