腹減り少女はSEED世界で爆発少女にレベルアップする   作:サボテンダーイオウ

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彼女の死?、キラの嘆き、咆哮。


PHASE-27閃光の刻

アークエンジェルは、今のところ一人欠けることなく無事に戦闘を切り抜き、アラスカへ向けて着々と進んでいた。

すべて順調——

ただし、アマキがキラとフレイの“復讐”により、たらこ唇になっていることを除けば。

口から火を噴いた瞬間、キラの中では「漫画って現実になるんだ」と衝撃が走った。

だが、これで懲りるアマキではないことも、ちゃんと知っている。

だからこそ——

「やられたらやり返す」精神で、アマキに尽くしていこうとキラは決めていた。

そんなキラは、食堂で仲間たちと語り合っていた。

トールが、オーバーリアクションで事件を再現。

 

「いやー、最初はビビったよ。まさかアマキさんの口から火が出てくるなんてさ!

芸人もびっくりだろ。俺なんか咄嗟にサイの後ろに隠れちゃったし。アイドルっていうより、体当たり芸人が似合ってる感じじゃない?」

 

「「「あははは!」」」

 

一同、大爆笑。

 

サイも口を滑らせる。

 

「いやぁ、でも凄かったよ。いつの間にあんなことできるようになったんだか。アイドルも体を張る時代なんだな」

 

「しっかり激写できたから、三割増しで売りつけるわよ!」

 

ミリアリアがウインクして親指を立てる。キラは釘を刺しつつ、催促は忘れない。

 

「ミリアリアは少し自重してね。あとでよろしく」

 

「あはは。でも、あれってフレイが作ったクッキー食べたせいでそうなったんだっけ?

フレイ、料理できたんだ」

 

カズイの一言が余計だった。

 

「何よその言い方!私だって作ろうと思えば作れるわよ!」

 

「僕は食べたくなイタタ!」

 

フレイはキラの耳をひっつかむ。

サイがさりげなく嗜める。

 

「フレイ、キラ痛がってるからやめてあげて。激辛料理は勘弁かな、俺は。ミリアリアは得意そうだな」

 

「そうねぇ、作ってもらうのもいいけど、一緒に作れたら素敵ね。ねぇ、トール?」

 

「えぇ?」

 

「今時の彼氏は料理ぐらいできなきゃ。今度一緒に作りましょ?ちゃんと食べられるものを」

 

「大丈夫だって。俺でもそんな激辛料理は挑戦しないから。ミリィは心配だなぁ……」

 

恋人トークが炸裂する中、フレイはジト目でトールを睨んでいた。

 

食堂では若者たちの笑い声が響いていた。だがその喧騒から離れ、アマキは一人、部屋に閉じこもっていた。——別に、たらこ唇を見られるのが嫌だったわけじゃない。

彼女は、フレイに宛てた手紙を書いていた。可愛らしいレターセットを一通取り出し、ペンを走らせる。その筆跡は、どこか優しく、どこか切ない。

手紙には、これから自分が行うことの詳細。ルルの扱い。そして——

 

「できれば、艦に居続けてほしい」

 

そうすれば、いずれ迎えに行ける。その約束を、しっかりと明記した。

自分はラクスと共に、平和への一歩を踏み出す。

その道に賛同するかどうかは、フレイ自身の選択に委ねる。

伝えたいことは、すべて書いた。アマキは手紙を二つ折りにして封筒に入れ、ぺたりとシールを貼って「フレイへ」と記した。

 

「よし」

 

その封筒を、買い物袋の奥へと滑り込ませる。

暗闇の中へ、未来への約束が消えていった。

ルルにはアマキがいなくなった後に手紙を届けるよう指示済み。

なんと有能なハロだろうか。アマキは手招きして呼ぶ。

 

「ルルー」

「なーにー」

 

ぴょんぴょん跳ねて、ルルはアマキの手のひらに収まった。

 

「フレイのこと、よろしくね。これからしばらく離れ離れになるけど、心配しないで。必ず迎えにくるから」

 

「アマキ、バイバイ?」

 

その言葉に、胸が少し痛む。機械に“寂しさ”なんてあるはずない。

でも、ルルの耳が少しだけ垂れて見えた。アマキはベッドに腰掛け、丸い体を優しく撫でる。

 

「しばらくの間だけだよ。ね」

 

「テヤンデー、ダイジョウブダー」

 

「そうだな。ルルなら大丈夫だ。フレイもいるし、寂しくはないだろう?」

 

「フレイといっしょー」

 

そう励ませば、ルルは嬉しそうに耳をパタパタさせて、ぴょーんと跳ねて部屋を出て行った。

——フレイのところに行ったのかもしれない。何気に、フレイ好きだよな。と思う。

 

「さて、部屋の片付けでもしておくか」

 

フレイの仕事が増えないように、荷物の整理を始める。

机には、食べきれていないレーションが山のようにある。それを箱に詰めて、あとで皆に配るつもりだ。服は支給された隊服をそのまま残し、元々着ていた服は買い物袋へ。

やるべきことは、すべてやる。次のステージへ向かうために。

ニコルというザフトの少年も連れて行く。

失敗は許されない。

 

——キラは、きっと怒るだろう。信頼も、なくなるかもしれない。

もう私のことなど、どうでもいいと思うかも。

それでも、やるしかない。このまま軍に居続けても、使い捨てられるだけ。

どこかで抜け出さなければ。キラのためにも。皆のためにも。

 

◇◇◇

ザラ隊が乗る艦ではアークエンジェルに追いつきつつあった。

 

「センサーに艦影、足つきです!」

 

艦長が静かに問う。

 

「間違いないか?」

 

「ありません!」

 

オペレーターの言葉にひとつ頷くと艦長は

 

「小島だらけの海域だな。日の出も近い。仕掛けるには有利か」

 

と小さく零す。イザークたちは再起を誓い奮戦する構えだ。

 

「今日で片だ!エリスめ!」

 

「お前の傷の礼も俺が纏めて取ってやるぜ!」

 

イザーク、ディアッカが決意に震える中、ニコルは複雑そうな顔をした。

 

「………」(次こそは……)

 

「出撃する!」

 

アスランの言葉で行動が開始された。

 

◇◇◇

ブリッジに緊張が走った。

 

「ん?センサーに感!ボズゴロフ級潜水空母です!」

 

「ッチ!」

 

ザフト艦の接近に、艦内アラートが鳴り響く。

 

『総員、第一戦闘配備!総員、第一戦闘配備!』

 

キラたちが慌ただしく出撃準備を進める中——

アマキは一人、パイロットスーツに身を包み、静かにエリスの前に立っていた。

 

「さて、最後の仕事だ。派手にやるかな」

 

エリスを見上げ、操縦席に乗り込もうとしたその瞬間——

 

「アマキさん!」

 

背後から、フレイの声が飛んできた。

 

「フレイ?どうして——」

 

振り返ると、フレイは不安げな顔でアマキに飛び込んできた。その抱擁を、アマキはしっかりと受け止める。フレイはアマキにしがみついたまま、顔を上げる。

 

「……アマキさんが帰ってこない気がして……ごめんなさい。そんなことないのに……」

 

——部屋を見たのか。だが、今は時間がない。

 

アマキはフレイの瞳をまっすぐ見つめ、静かに言い聞かせる。

 

「フレイ、私はちゃんとフレイを迎えに来るから。それまで待っててくれる?」

 

「…迎えに?……アマキさんは嘘つかないもの。ちゃんと待ってるわ。私は」

 

「そうだね。じゃあ行ってくるよ。ルルを頼むね」

 

ぽん、と優しくフレイの頭を撫でる。そして、操縦席に乗り込み、ハッチが閉じる。

フレイは一歩下がり、エリスが出撃していく姿を見つめていた。

 

「ちゃんと…帰ってきてね」

 

胸の不安を抱えながら——

それでも、きっと帰ってくると自分に言い聞かせて。

 

◇◇◇

 

日の出を背に、四機のMSがグゥルに乗って並び立つ。

先行はバスター。

 

『行くぜ!』

 

94mm高エネルギー収束火線ライフルが、アークエンジェルを狙う。

 

「敵影3、5時方向、距離3000!」

 

「同方向より熱源接近!」

 

「回避!取り舵!」

 

マリューの指示で、アークエンジェルが大きく傾く。

ナタルが即座に指示を飛ばす。

 

「艦尾ミサイル発射管、ウォンバット装填!バリアント、イーゲルシュテルン起動!」

 

「フラガ少佐、ヤマト少尉にカンザキ少尉は?」

 

「1号機フラガ少佐、出ます。ストライクは後部デッキへ!エリス機はすでにスタンバイしてます」

 

「わかった、先にエリスを出せ!」

 

ナタルの指示で、エリスが先陣を切る。

 

「エリス機、アマキ・カンザキ、行くぞ!」

 

颯爽とグゥルに乗り、海上へ飛び出す。

待ち受けるは——イージス、ブリッツ、デュエル。

 

『今日こそ撃ち落とすぞ!』

 

『アマキさん!気を付けて!』

 

「キラもな」

 

遅れてフラガ機、ストライクが出撃。

フラガはバスターへ、キラはイージスとの因縁へ。

 

「バリアント、てぇ!」

 

アークエンジェルを囲む激しいビーム戦が始まる。

エリスは、デュエルとブリッツの二機を相手に一人で立ち向かう。

 

『貴様はここで落としてくれる!』

 

「ここで落ちるのは決まってるけど、お前じゃないんだよな!!」

 

デュエルがライフルからビームソードに持ち替え、斬り込む。

エリスも応戦。火花が散る。

 

「ニコル!聞こえるか」

 

『こんな時に通信繋げないでくださいっ!?器用すぎますっ』

 

「いいから聞け!それとなく後ろからデュエルのグゥルを撃ち抜け!タイミングは君に任すぞ」

 

『そんな非道なこと!?』

 

「君はこれからもっと非道なことするだろ?今更怖気づいたか?それなら君はそのままザフトにいろ。私は一人で行く」

 

『やりますよやりますから!』

 

通信しながら戦うアマキ。だが、気がそぞろになってしまう。

 

『何よそ見してやがるっ』

 

「うるせー!邪魔すんじゃねぇよっ!」

 

怒鳴り散らし、ビームソードを投げ捨て、足の固定を外す。そして——ドストレートパンチ。

 

『何ぃぃい!』

 

殴られた勢いでデュエルがぐらつく。だが、アマキの猛攻は止まらない。グゥルから飛び、デュエルに抱きつくように乗り込む。

 

『貴様!?血迷ったかっ』

 

「ウロチョロウロチョロと人のケツばっか追いかけやがって!うざったいったらないわコノヤロー!」

 

首元に腕を回し、動きを封じる。そのままグゥルから引きずり下ろし、小島へ叩きつけるように落とす。

——ずぅぅぅんんん!!

 

衝撃でクレーターが生まれる。

 

『ぐっ!!』

 

「がはっ」

 

ダメージはエリスも同様。それでも根性で立ち上がり、倒れたデュエルの足首を掴む。

 

「オラオラオラオラァアアアア!!」

 

ぐるんぐるんと回し始める。遠心力で中身は大混乱。イザーク、気絶。エリスは足首を固定し、踏ん張って——

 

「どりゃぁぁああああーーー!!」

 

デュエルをぶん投げる。バウンドしながらデュエルは浅瀬に沈む。

 

「フー、フー、フー」

 

荒い息を吐きながら、アマキは次なる標的を探す。

その瞳は、完全に獣。ギン!と光る瞳が、ブリッツを見定める。

 

『ひっ!』

 

「降りてこ~い~。ニ~コ~ル~」

 

『ひぃぃいいいいい!!』

 

地を這うような声が通信に響き渡る。

ニコルは完全に戦慄し、情けない悲鳴を上げた。

 

◇◇◇

 

その頃、アークエンジェルはバスターの攻撃により被弾していた。

 

「イーゲルシュテルン、4番5番、被弾!」

 

「ヘルダート発射管、隔壁閉鎖!」

 

「アラスカは?」

 

「駄目です!応答ありません!」

 

ナタルが叫ぶ。

 

「ゴットフリート照準、当てろよ!てぇ!!」

 

ゴットフリートが放たれる。バスターは回避を試みるが——

その前に、フラガ機がバスターのグゥルにビームを放つ。空中で——爆破。

 

『ッチ!』

 

バスターは反撃しようとするが、立て続けにフラガ機から放たれたアグニが、右腕を吹き飛ばす。機体は無人島の地面にたたきつけられ、地面をえぐるように滑り込む。

 

『くっ!ハイドロ消失!駆動パルス低下!くっそー!』

 

バスターは完全に動かなくなった。ディアッカは焦る。

だが、アークエンジェルの砲門が自分に向いていることに気づいた瞬間——

彼は、生き残る手段を選んだ。

ハッチを開け、両手を上げて——投降の意思を示す。

冷たい雨が降り始める。その姿に、ブリッジの空気が一瞬止まる。

 

「え?」

 

「投降する気か?」

 

誰もが予想していなかった展開。敵が、命を差し出してきた。

ディアッカは、雨に濡れながら身を固くして立ち尽くす。

その瞳は、アークエンジェルを睨んでいた。——誇りを捨てたわけじゃない。

 

ただ、生きるために選んだだけだ。その瞳は、そう語っていた。

 

◇◇◇

 

雨の中、キラとアスランは激しく打ち合っていた。

ビーム同士が火花を散らし、イージスとストライクがぶつかり合う。

 

『キラぁぁあああ!!』

 

『うわぁぁぁああ!!』

 

距離を取り、またぶつかる。

その繰り返しの中——

後方から、爆風とともに巨大な爆炎が上がる。

 

『なんだ!?』

 

『なんで!』

 

一瞬、動きが止まる。画面に映っていたエリスの反応が——消えている。

まさか、あの爆発は——。嫌な予感がキラの脳裏をよぎる。急いで通信を繋げるが、応答はない。

 

『アマキさん冗談やめてよ、アマキさん、アマキさんってば!!』

 

ザァー……と、無音が響く。

 

『嘘、だ』

 

エリスがロストした。

 

さっきまで反応があったはずなのに。まさか——相打ち。

アスランも、ブリッツの反応が消えたことに気づく。

 

アマキとニコルが、相打ちした。

 

キラとアスランは、目に見えて激しく動揺する。

 

『あ、あああ嫌だぁぁあ、嫌だぁああああ!!』

 

『ニコルぅぅうううぅーーー!!』

 

『アマキさん、アマキさん、アマキさん!!』

 

一緒に帰ろうと約束した。あのアマキが死ぬはずがない。

でも、エリスはロストした。

 

——ころされた。大切な人を。

これからも生きたい人を。

 

ころされた。

ころされた。

ころす。

 

目の前の敵を——ころす。

 

キラは怒りをアスランに向け、涙を流す。

アスランも、ニコルとの約束を思い出す。

 

ピアノの発表会。

年下なのに、ザフトに入って役に立とうとした少年。

そんなニコルを——ころされた。

だったら、もうキラを——ころすしかない。

 

雷鳴が轟く。

キラは、自身の可能性の“種”を割る。

意識が研ぎ澄まされ、全てを倒すために全力を注ぎ込む。

 

『アスラァアアンンーー!!』

 

『ぬぅぅ!!』

 

ストライクがイージスのビームソードを盾で受け止め、

強く押し出し、右手のビームソードでイージスの左肩を斬る。

ブースターを吹かし、足でイージスの顔を蹴り飛ばす。

 

『ぐぅぅっ!』

 

イージスはバランスよく着地し、勢いのまま宙へ。

残り時間は——もう、まもなく終わる。

 

『俺が!お前を討つ!!』

 

アスランも“種割れ”を起こす。

憎き宿敵。

互いに互いを殺すために、今、戦う。

 

イージスは両腕・両足のビームサーベルでストライクの左腕を切り落とす。

ストライクも負けじと、イージスの頭部を吹き飛ばす。

やられたら、やり返す。その繰り返し。

イージスの一撃が、ストライクのコクピットをかすめる。

そしてキラの姿が——丸見えになる。

 

『ア゛ア゛ズラア゛ーーア゛ン!!』

 

『キラァァァァ!!』

 

『うぅ!?』

 

イージスはMA形態になり、ストライクに食らいつく。スキュラを放とうとするが、パワー不足で終わる。そしてフェイズシフトがダウし、。キラは必死に持ち直そうとする。

アスランは舌打ちし、最後の手段に出た。何としても打ち倒そうとする必死さがあった。

 

『ちぃ!』

 

素早く、自爆スイッチをセット。脱出装置に手をかけ、即座に離脱。

 

『へえ!?』

 

キラは——閃光に包まれ、大爆発に包まれる。

そして意識が——途切れる。その爆音は、アークエンジェルまで届いた。

エリス、ストライク——共にロスト。

 

戦場にはしきりにやまない雨が降り続ける。




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