腹減り少女はSEED世界で爆発少女にレベルアップする   作:サボテンダーイオウ

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PHASE-02崩壊の大地

アークエンジェルから放たれる砲弾をシグーが難なく避け、アマキを執拗に狙う。

 

『アマキさんに手を出すなぁぁああ』

 

「キラ!」

 

「駄目よその武器は!!」

 

マリューの静止も虚しくランチャーストライカーを装備したキラはアマキを助けるためと勢いのままにトリガーを引いた。

だが間に合わなかった。

その威力は想像以上でコロニーの空に大穴が開いてしまう。そこからシグーは戦闘を離脱。遅れてモビルアーマーもやってくる。

 

アークエンジェルの甲板に彼らが降り立つと、周囲は再び騒然となった。

マリューはクルーらと再会を果たす。

 

「ラミアス大尉!」

 

「バジルール少尉」

 

「ご無事で何よりです」

 

「あなた達こそ、よくアークエンジェルを運んでくれました。助かったわ」

 

ストライクから降りてきたキラを見て、兵士たちは驚く。

少年の姿、あれほどの操縦をしていたとは思えない。

その視線が次に向けられたのは、もう一機のエリスガンダム。

そして遅れて現れたのは――買い物袋を下げた少女、アマキ・カンザキ。

ざわめきは一気に広がる。

 

「あれ…操縦中、袋持ってた?」

 

「いやでも機動すごかったぞ…え、まじで?」

 

アマキはその視線の嵐を軽く流すように肩の袋を揺らす。

 

「なんか、ギャラリーの視線が痛いような…」

 

「アマキさん、ある意味注目浴びてるね」

 

「ん?」

 

キラの苦笑に、アマキは首をかしげた。

その空気を割るように現れたのは、朗らかに見えて鋭さを隠さない男――

 

「こいつは驚いた。地球軍第七機動艦隊所属、ムウ・ラ・フラガ大尉だ。よろしく」

 

マリューが応じる。

 

「第八艦隊所属、マリュー・ラミアス大尉です」

 

「同じく、バジルール少尉であります」

 

ムウが周囲を見渡す。

 

「乗艦許可をもらいたいが、この艦の艦長は?」

 

「艦長以下、主だった士官は戦死されました。よってマリュー大尉が指揮を執っています」

 

「え、えぇ…? あ、はい…乗艦許可します」

 

ムウは頷き、エリスを指す。

 

「それで、あれは?」

 

「見ての通り、民間人の少年と少女です」

 

「キラ・ヤマト、それに、アマキ・カンザキといいます」

 

「ふーん…」

 

マリューが続けた。

 

「彼らのおかげでジン一機を撃破し、ストライクを守ることができました」

 

「じゃああれは…?」

 

「あれは、その…こちらでは把握しておらず」

 

「謎の機体に、謎の少女ってか」

 

ムウの目が細くなる。

 

「君たち、コーディネーターだろ?」

 

一瞬、時間が止まったようだった。

キラは息を呑み、アマキはぽかんとした顔でムウを見る。

兵士たちの数人が反応し、銃口が向けられる。トールとミリアリアがスッと前にでて二人を庇った。

 

「やめろ! キラとアマキさんは敵じゃねぇ!」

 

「そうよ!」

 

「銃を降ろしなさい!ここはヘリオポリスです!」

 

マリューが鋭く指示を飛ばす。

 

「確かに僕は一世代ですが、中立を選びました」

 

「今は関係ありません。キラのおかげで危機を脱したんです。それに私はコーディネーターじゃない」

 

アマキの言葉は冷静だが、フラガは簡単には納得しない。

 

「君がナチュラルだって?到底信じられないな」

 

周囲の空気が再びざわつく中、アマキはフラガの視線を真っ直ぐ受け止めてから――ふいと目を逸らし、ほんの少し顔を傾けてぼそりと。

 

「ウザ」

 

聞こえるか聞こえないかの絶妙な音量。キラが隣で吹き出した。

 

「ぶっ」

 

場の空気が割れるように緩む。士官たちは面食らった顔のまま、誰からともなく銃口を下げ始めた。

 

「さっさと次にやることに移らないと、敵がまた攻めてきますよ。時間は待っちゃくれないですし」

 

アマキはもう振り返らず、歩を進めていた。キラが慌てて後を追う。フラガは苦笑して首を振る。

 

「確かに嬢ちゃんの言う通りだ。オレたちも行くぞ」

 

その背に、マリューは小さく、そして確かにうなずいた。

 

アークエンジェル周辺や内部では慌ただしさがあった。これから交戦が予測される中、必要な物資の搬入やストライクやエリスの装備に余念がない。

 

束の間の休息。居住区の二段ベッドにキラが仮眠をとっていた。その寝顔は、戦場で見せた姿からは程遠く、ただの少年だった。

 

「この状況で寝られちゃうってすごいよね」

 

アマキがチラと目線を向けてつぶやく。

 

「疲れてるんだよ、キラ。本当に大変だったんだから」

 

サイが少しだけ声を低くする。

 

「大変だったか…確かにそうなんだけどさ」

 

カズイの言葉に、空気がわずかに軋む。

 

「何が言いたいんだ、カズイ」

 

サイの声が鋭くなった瞬間——

 

「私も大変だったぞ?買い物袋持ってキラ探してたんだから」

 

アマキが軽く遮るように言いながら、持っていた袋からチョコレートの大袋を取り出す。

 

「はい、甘い物どーぞ」

 

カズイの手に、文字入りのチョコが3個ポンと乗せられる。

 

「…あ、どうも?」

 

「皆も、よく頑張ったね。お疲れ様。これ食べて元気出して!」

 

そう言って次々とチョコを配るアマキに、皆が少し遅れて反応する。

最初に笑いが漏れたのはトールだった。

 

「アマキさんって…ほんと、イイ性格してるよ」

 

「ホント私好きー!」

 

「なに急に」

 

ミリアリアがアマキの腕に抱きつき、サイも口元を押さえて笑っている。

優しさと突飛さのバランス。それがアマキという存在だった。

キラだけじゃない。

みんな、それぞれのやり方で頑張った。

カズイも。怖かったはずだ。それは誰よりわかっている。だけど、思わず出てしまう自分の醜さを、誰にも指摘されずに済んだ。それが、ありがたかった。

 

「君達はよく頑張ったよ」

 

アマキの一言が、全体にじんわりと染み込む。

包みを開いて、カズイがそっとチョコを口に運ぶ。

甘い。

その甘さが、張りつめていた心の中に、静かに溶けていった。

まるで、自分の中の苦味まで、帳消しにしてくれるようだった。

 

束の間の休息は、唐突に終わりを告げた。

フラガ大尉の声が再び現実を引き戻す。キラの表情が険しくなる。

 

「また…あれに乗れってことですか!?」

 

マリューのOS修正ですら不安定だった機体。キラだけが適応できた異物。

理屈では割り切れても、感情がついてこない。恐怖は──戦うことそのものだった。

 

「そんな……」

 

うつむいたキラの肩に、そっと手が添えられる。アマキが前に出る。

 

「私が乗りますよ」

 

「アマキさん!?」

 

キラが顔を上げる。マリューが一瞬、動きを止めた。

 

「乗らなきゃ殺られる。なら、乗ります」

 

アマキの声は静かで、揺るぎがなかった。

 

「キラは皆とここにいていい。私が戦うから。皆を守るから」

 

歩き出そうとした瞬間──キラの手が伸びる。

 

「アマキさんが行くなんて…!」

 

その手を、アマキは両手で包み込む。

温かく、落ち着きのある手。震える指先をじっと見つめて。

 

「無理しなくていい。震えてるじゃないか。無理する必要なんてないんだよ。ね、キラ」

 

「でも…」

 

彼は思わず小さく息を呑み、手を握られる感触に目を伏せた。

それでも震える指先は、ほんの僅かにアマキの手の中で力を込めようとする。

アマキはそんなキラの様子に気づき、額をゆっくりと寄せて、

その瞳を真っ直ぐに捉える。

 

「いい子は、待ってなさい」

 

吐息が触れる距離。言葉よりも、その眼差しがキラの胸を突く。

彼は言葉にならない思いを喉で飲み込んだ。

 

「アマキさん…」

 

アマキは背中を向ける。

 

「フラガ大尉、頑張ってください。素人に乗らせるんだから」

 

「はいはい」

 

振り向かずに残した言葉と、ひらりと翻る髪。

 

「行ってきます」とだけ残して、アマキは格納庫へと向かった。

 

残されたキラは、拳を握りしめ、しばらくその背を見つめていたが――

 

「僕も、乗ります!」

 

マリューが目を見開く。

 

「キラ君…」

 

「僕も、守りたいものがあるから」

 

仲間の顔を順番に見渡し、最後にアマキの背中へと視線を向ける。

ミリアリアがふと口元を押さえた。

 

「これって……恋だわ」

 

「ミリィ、顔がニヤけてるぞ」

 

「はっ、いけない!」

 

「私たちも、何かできることありますか!」

 

「俺たちも…!?」

 

気持ちは同じだった。アマキとキラを支えたい。その一心で。

場がほんのり温まったとき、マリューが静かに頭を下げた。

 

「ありがとう、皆。それと…ごめんなさい。こんなことに巻き込んでしまって」

 

「マリューさん…」

 

あの日、戦いに巻き込まれたのは偶然だった。だが、今ここにいるのは、選んだ仲間たちだ。

マリューは決意を込めて、ブリッジへと歩を進める。その背中にもまた、責任と想いが宿っていた。

格納庫の中央。モニター画面と整備マニュアルを前に、アマキは眉間にしわを寄せていた。

マードックが説明を続けるが、専門用語が次々と飛び出してくる。

 

「だから、このジャイロ制御の出力バランスを……」

 

アマキは耳を傾けていたものの、急に手元のタッチパネルから手を離して伸びをする。

そして軽く顔を横に振った。

 

「……も、いーや。勝つから」

 

頭が一杯になったらしい。マードックは目を丸くする。

 

「嬢ちゃん、ホントに大丈夫か?」

 

「大丈夫ですよ!ここの人たちってホント疑り深いですね。ったく」

 

マードックが心底ツッコミたそうな顔をしている。

 

格納庫の入り口。キラの姿がゆるやかに浮かびながら近づいてきた。

壁面の手すりに片手を添え、反発を利用して浮遊軌道をとる。進路を制御するように、何度か細かく姿勢を調整しながらアマキの元へ滑り込んだ。

 

「アマキさん!」

 

声とともに、その足先がそっと床面に触れる。慣れない動作に揺らぎながらも、キラは真っ直ぐ立つ。

 

「僕も戦うよ」

 

アマキは目を瞬かせ、数秒沈黙した後、声を落とした。

 

「……私、信用ない?」

 

肩の力が抜けたように、背をほんの少し丸めてしまう。

手に持っていたモニター端末が膝の上にストンと落ちる。キラは慌てて一歩踏み出す。

 

「そうじゃない!僕がアマキさんを一人にさせるのが嫌なんだ!」

 

彼の声に、整備士たちまで手を止める。格納庫の空気がわずかに変化する。

しばし続く沈黙。アマキは静かに視線を戻す。

 

「キラ。わかった。でも、キラは後方支援だぞ。前は私がやる」

 

キラは瞬きして頷いた。

 

「うん!」

マードックと整備班は、小さく拍手したくなるような気持ちを押し殺しつつ、作業を再開する。準備が整い、出撃直前。モニターにミリアリアの顔が映る。

 

準備が整い次第二人は出撃することになる。

ブリッジからのモニターにインカムをつけたミリアリアが映った。

アマキはてっきり避難しているものかとびっくりした顔になる。

 

「みんなそっち手伝うことにしたの?」

 

『はい!私がストライクとエリスの担当します。よろしくね!』

 

『よろしくお願いしますだろ』

 

『とにかく!アマキさん頑張って!エリス発進どうぞ』

 

「アマキ・カンザキ行くぞ」

 

エリスが先に出て続いてストライクへ。

 

「キラ!私!陰ながら応援するから!。ストライク発進どうぞ!』

 

『??ありがとうミリィ。キラ・ヤマト行きます!』

 

二機のガンダムが対峙するは手練れ二機とイージスだった。

 

イージスはストライクを追いかけまわし、エリスは特別仕様のジン。もう一機はメビウスゼロが相手をする。

 

ジンのビームが宙を引き裂く。エリスはその間隙を縫って滑るように加速。

無重力下、細かな姿勢制御が必要な中で、アマキの操作は大胆すぎた。機体が反転しながらジンの側面に潜り込む。

 

「お前の相手なんてしてらんないっての!」

 

エリスの腕部がしなり、内蔵されたビームソードが閃く。

だが、真正面からの真っ二つではなく、彼女は狙いを外していた。

コクピットを避け――下半身を突き刺す。

機体がきしむ音すら、モニター越しに伝わる。

そのまま力任せに横へぶった斬り、スラスター噴射とともに旋回。

エリスの右脚が機体の上部へ鋭く跳ね上がり、回し蹴りで叩き出した。

ジンの残骸が弧を描いて飛び、軌道外へ回収されていく。

 

『ミゲルーー!』

 

イージスが急加速。コロニー内の壁面に引っ掻くような摩擦音が走る。

アークエンジェルの砲撃がその背を掠めた。

命中した破片がもう一機のジンを直撃するが、残り弾がコロニーの外殻に衝突。

 

「やばっ…」

 

重力のない空間に静かな衝撃波。

壁面がひしゃげ、大気が抜けるように空間に穴が開く。

その圧力差に、ストライクがあらがえず浮き上がる。

バランスを取るために脚部スラスターを噴かすも、間に合わない。

 

「キラ!!」

 

『うわぁぁぁぁあああ』

 

エリスの腕が反応的に伸びる。

手を掴むかに見えたが、距離が足りない。

機体の指先が、ストライクのアームパーツを擦る。

そのまま、両者ともコロニー外へ――吸い込まれた。

静寂と真空の中、星の粒が広がる宇宙に、二機の影が滑るように飛び出していった。




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