腹減り少女はSEED世界で爆発少女にレベルアップする 作:サボテンダーイオウ
アークエンジェルから放たれる砲弾をシグーが難なく避け、アマキを執拗に狙う。
『アマキさんに手を出すなぁぁああ』
「キラ!」
「駄目よその武器は!!」
マリューの静止も虚しくランチャーストライカーを装備したキラはアマキを助けるためと勢いのままにトリガーを引いた。
だが間に合わなかった。
その威力は想像以上でコロニーの空に大穴が開いてしまう。そこからシグーは戦闘を離脱。遅れてモビルアーマーもやってくる。
アークエンジェルの甲板に彼らが降り立つと、周囲は再び騒然となった。
マリューはクルーらと再会を果たす。
「ラミアス大尉!」
「バジルール少尉」
「ご無事で何よりです」
「あなた達こそ、よくアークエンジェルを運んでくれました。助かったわ」
ストライクから降りてきたキラを見て、兵士たちは驚く。
少年の姿、あれほどの操縦をしていたとは思えない。
その視線が次に向けられたのは、もう一機のエリスガンダム。
そして遅れて現れたのは――買い物袋を下げた少女、アマキ・カンザキ。
ざわめきは一気に広がる。
「あれ…操縦中、袋持ってた?」
「いやでも機動すごかったぞ…え、まじで?」
アマキはその視線の嵐を軽く流すように肩の袋を揺らす。
「なんか、ギャラリーの視線が痛いような…」
「アマキさん、ある意味注目浴びてるね」
「ん?」
キラの苦笑に、アマキは首をかしげた。
その空気を割るように現れたのは、朗らかに見えて鋭さを隠さない男――
「こいつは驚いた。地球軍第七機動艦隊所属、ムウ・ラ・フラガ大尉だ。よろしく」
マリューが応じる。
「第八艦隊所属、マリュー・ラミアス大尉です」
「同じく、バジルール少尉であります」
ムウが周囲を見渡す。
「乗艦許可をもらいたいが、この艦の艦長は?」
「艦長以下、主だった士官は戦死されました。よってマリュー大尉が指揮を執っています」
「え、えぇ…? あ、はい…乗艦許可します」
ムウは頷き、エリスを指す。
「それで、あれは?」
「見ての通り、民間人の少年と少女です」
「キラ・ヤマト、それに、アマキ・カンザキといいます」
「ふーん…」
マリューが続けた。
「彼らのおかげでジン一機を撃破し、ストライクを守ることができました」
「じゃああれは…?」
「あれは、その…こちらでは把握しておらず」
「謎の機体に、謎の少女ってか」
ムウの目が細くなる。
「君たち、コーディネーターだろ?」
一瞬、時間が止まったようだった。
キラは息を呑み、アマキはぽかんとした顔でムウを見る。
兵士たちの数人が反応し、銃口が向けられる。トールとミリアリアがスッと前にでて二人を庇った。
「やめろ! キラとアマキさんは敵じゃねぇ!」
「そうよ!」
「銃を降ろしなさい!ここはヘリオポリスです!」
マリューが鋭く指示を飛ばす。
「確かに僕は一世代ですが、中立を選びました」
「今は関係ありません。キラのおかげで危機を脱したんです。それに私はコーディネーターじゃない」
アマキの言葉は冷静だが、フラガは簡単には納得しない。
「君がナチュラルだって?到底信じられないな」
周囲の空気が再びざわつく中、アマキはフラガの視線を真っ直ぐ受け止めてから――ふいと目を逸らし、ほんの少し顔を傾けてぼそりと。
「ウザ」
聞こえるか聞こえないかの絶妙な音量。キラが隣で吹き出した。
「ぶっ」
場の空気が割れるように緩む。士官たちは面食らった顔のまま、誰からともなく銃口を下げ始めた。
「さっさと次にやることに移らないと、敵がまた攻めてきますよ。時間は待っちゃくれないですし」
アマキはもう振り返らず、歩を進めていた。キラが慌てて後を追う。フラガは苦笑して首を振る。
「確かに嬢ちゃんの言う通りだ。オレたちも行くぞ」
その背に、マリューは小さく、そして確かにうなずいた。
アークエンジェル周辺や内部では慌ただしさがあった。これから交戦が予測される中、必要な物資の搬入やストライクやエリスの装備に余念がない。
束の間の休息。居住区の二段ベッドにキラが仮眠をとっていた。その寝顔は、戦場で見せた姿からは程遠く、ただの少年だった。
「この状況で寝られちゃうってすごいよね」
アマキがチラと目線を向けてつぶやく。
「疲れてるんだよ、キラ。本当に大変だったんだから」
サイが少しだけ声を低くする。
「大変だったか…確かにそうなんだけどさ」
カズイの言葉に、空気がわずかに軋む。
「何が言いたいんだ、カズイ」
サイの声が鋭くなった瞬間——
「私も大変だったぞ?買い物袋持ってキラ探してたんだから」
アマキが軽く遮るように言いながら、持っていた袋からチョコレートの大袋を取り出す。
「はい、甘い物どーぞ」
カズイの手に、文字入りのチョコが3個ポンと乗せられる。
「…あ、どうも?」
「皆も、よく頑張ったね。お疲れ様。これ食べて元気出して!」
そう言って次々とチョコを配るアマキに、皆が少し遅れて反応する。
最初に笑いが漏れたのはトールだった。
「アマキさんって…ほんと、イイ性格してるよ」
「ホント私好きー!」
「なに急に」
ミリアリアがアマキの腕に抱きつき、サイも口元を押さえて笑っている。
優しさと突飛さのバランス。それがアマキという存在だった。
キラだけじゃない。
みんな、それぞれのやり方で頑張った。
カズイも。怖かったはずだ。それは誰よりわかっている。だけど、思わず出てしまう自分の醜さを、誰にも指摘されずに済んだ。それが、ありがたかった。
「君達はよく頑張ったよ」
アマキの一言が、全体にじんわりと染み込む。
包みを開いて、カズイがそっとチョコを口に運ぶ。
甘い。
その甘さが、張りつめていた心の中に、静かに溶けていった。
まるで、自分の中の苦味まで、帳消しにしてくれるようだった。
束の間の休息は、唐突に終わりを告げた。
フラガ大尉の声が再び現実を引き戻す。キラの表情が険しくなる。
「また…あれに乗れってことですか!?」
マリューのOS修正ですら不安定だった機体。キラだけが適応できた異物。
理屈では割り切れても、感情がついてこない。恐怖は──戦うことそのものだった。
「そんな……」
うつむいたキラの肩に、そっと手が添えられる。アマキが前に出る。
「私が乗りますよ」
「アマキさん!?」
キラが顔を上げる。マリューが一瞬、動きを止めた。
「乗らなきゃ殺られる。なら、乗ります」
アマキの声は静かで、揺るぎがなかった。
「キラは皆とここにいていい。私が戦うから。皆を守るから」
歩き出そうとした瞬間──キラの手が伸びる。
「アマキさんが行くなんて…!」
その手を、アマキは両手で包み込む。
温かく、落ち着きのある手。震える指先をじっと見つめて。
「無理しなくていい。震えてるじゃないか。無理する必要なんてないんだよ。ね、キラ」
「でも…」
彼は思わず小さく息を呑み、手を握られる感触に目を伏せた。
それでも震える指先は、ほんの僅かにアマキの手の中で力を込めようとする。
アマキはそんなキラの様子に気づき、額をゆっくりと寄せて、
その瞳を真っ直ぐに捉える。
「いい子は、待ってなさい」
吐息が触れる距離。言葉よりも、その眼差しがキラの胸を突く。
彼は言葉にならない思いを喉で飲み込んだ。
「アマキさん…」
アマキは背中を向ける。
「フラガ大尉、頑張ってください。素人に乗らせるんだから」
「はいはい」
振り向かずに残した言葉と、ひらりと翻る髪。
「行ってきます」とだけ残して、アマキは格納庫へと向かった。
残されたキラは、拳を握りしめ、しばらくその背を見つめていたが――
「僕も、乗ります!」
マリューが目を見開く。
「キラ君…」
「僕も、守りたいものがあるから」
仲間の顔を順番に見渡し、最後にアマキの背中へと視線を向ける。
ミリアリアがふと口元を押さえた。
「これって……恋だわ」
「ミリィ、顔がニヤけてるぞ」
「はっ、いけない!」
「私たちも、何かできることありますか!」
「俺たちも…!?」
気持ちは同じだった。アマキとキラを支えたい。その一心で。
場がほんのり温まったとき、マリューが静かに頭を下げた。
「ありがとう、皆。それと…ごめんなさい。こんなことに巻き込んでしまって」
「マリューさん…」
あの日、戦いに巻き込まれたのは偶然だった。だが、今ここにいるのは、選んだ仲間たちだ。
マリューは決意を込めて、ブリッジへと歩を進める。その背中にもまた、責任と想いが宿っていた。
格納庫の中央。モニター画面と整備マニュアルを前に、アマキは眉間にしわを寄せていた。
マードックが説明を続けるが、専門用語が次々と飛び出してくる。
「だから、このジャイロ制御の出力バランスを……」
アマキは耳を傾けていたものの、急に手元のタッチパネルから手を離して伸びをする。
そして軽く顔を横に振った。
「……も、いーや。勝つから」
頭が一杯になったらしい。マードックは目を丸くする。
「嬢ちゃん、ホントに大丈夫か?」
「大丈夫ですよ!ここの人たちってホント疑り深いですね。ったく」
マードックが心底ツッコミたそうな顔をしている。
格納庫の入り口。キラの姿がゆるやかに浮かびながら近づいてきた。
壁面の手すりに片手を添え、反発を利用して浮遊軌道をとる。進路を制御するように、何度か細かく姿勢を調整しながらアマキの元へ滑り込んだ。
「アマキさん!」
声とともに、その足先がそっと床面に触れる。慣れない動作に揺らぎながらも、キラは真っ直ぐ立つ。
「僕も戦うよ」
アマキは目を瞬かせ、数秒沈黙した後、声を落とした。
「……私、信用ない?」
肩の力が抜けたように、背をほんの少し丸めてしまう。
手に持っていたモニター端末が膝の上にストンと落ちる。キラは慌てて一歩踏み出す。
「そうじゃない!僕がアマキさんを一人にさせるのが嫌なんだ!」
彼の声に、整備士たちまで手を止める。格納庫の空気がわずかに変化する。
しばし続く沈黙。アマキは静かに視線を戻す。
「キラ。わかった。でも、キラは後方支援だぞ。前は私がやる」
キラは瞬きして頷いた。
「うん!」
マードックと整備班は、小さく拍手したくなるような気持ちを押し殺しつつ、作業を再開する。準備が整い、出撃直前。モニターにミリアリアの顔が映る。
準備が整い次第二人は出撃することになる。
ブリッジからのモニターにインカムをつけたミリアリアが映った。
アマキはてっきり避難しているものかとびっくりした顔になる。
「みんなそっち手伝うことにしたの?」
『はい!私がストライクとエリスの担当します。よろしくね!』
『よろしくお願いしますだろ』
『とにかく!アマキさん頑張って!エリス発進どうぞ』
「アマキ・カンザキ行くぞ」
エリスが先に出て続いてストライクへ。
「キラ!私!陰ながら応援するから!。ストライク発進どうぞ!』
『??ありがとうミリィ。キラ・ヤマト行きます!』
二機のガンダムが対峙するは手練れ二機とイージスだった。
イージスはストライクを追いかけまわし、エリスは特別仕様のジン。もう一機はメビウスゼロが相手をする。
ジンのビームが宙を引き裂く。エリスはその間隙を縫って滑るように加速。
無重力下、細かな姿勢制御が必要な中で、アマキの操作は大胆すぎた。機体が反転しながらジンの側面に潜り込む。
「お前の相手なんてしてらんないっての!」
エリスの腕部がしなり、内蔵されたビームソードが閃く。
だが、真正面からの真っ二つではなく、彼女は狙いを外していた。
コクピットを避け――下半身を突き刺す。
機体がきしむ音すら、モニター越しに伝わる。
そのまま力任せに横へぶった斬り、スラスター噴射とともに旋回。
エリスの右脚が機体の上部へ鋭く跳ね上がり、回し蹴りで叩き出した。
ジンの残骸が弧を描いて飛び、軌道外へ回収されていく。
『ミゲルーー!』
イージスが急加速。コロニー内の壁面に引っ掻くような摩擦音が走る。
アークエンジェルの砲撃がその背を掠めた。
命中した破片がもう一機のジンを直撃するが、残り弾がコロニーの外殻に衝突。
「やばっ…」
重力のない空間に静かな衝撃波。
壁面がひしゃげ、大気が抜けるように空間に穴が開く。
その圧力差に、ストライクがあらがえず浮き上がる。
バランスを取るために脚部スラスターを噴かすも、間に合わない。
「キラ!!」
『うわぁぁぁぁあああ』
エリスの腕が反応的に伸びる。
手を掴むかに見えたが、距離が足りない。
機体の指先が、ストライクのアームパーツを擦る。
そのまま、両者ともコロニー外へ――吸い込まれた。
静寂と真空の中、星の粒が広がる宇宙に、二機の影が滑るように飛び出していった。
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