腹減り少女はSEED世界で爆発少女にレベルアップする   作:サボテンダーイオウ

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ニコル君もやしっ子。


PHASE-30闇の胎動

アークエンジェルではついにあの事実が一部のクルーの知られてしまった!果たして皆の反応やいかに。

 

「アマキさん、生きてるのよっ!」

 

突然のフレイの告白により三人は固まってしまう。ディアッカは何のことかさっぱりわからず戸惑うばかりだ。

 

「……え」

 

「アマキさんが、生きてる?」

 

「……生きてる…なんで知ってるんだ。フレイが」

 

「あ、言っちゃった」

 

騒ぎになるとわかっていたのに、フレイは衝動に負けて叫んでしまった。フレイは後の祭りと口に手をやって逃げ腰になるが、そう三人は逃がさなかった。というかミリアリアの瞳に光が宿る。

逃がしてたまるかと男子たちもびっくりするくらいの速さでフレイをとっつ構える。

 

「っどういうこと!?アマキさんが生きてるって」

 

「ヒッ!?」

 

悲鳴を上げるフレイにむらむらと群がる男子たち。

 

「なぁ、どういうことだよそれ」

 

「おいおい。同じアマキファンクラブ会員同士じゃねぇかよ、なーフレイさんよ」

 

会員同士と言われてしまえばフレイも素直に教えねばならない。ファンクラブの掟その一、アマキに関する話は包み隠さずファン同士で共有すべし。フレイはぼそぼそと小さい声で話し始めた。三人はフレイの周りで輪を作ってしゃがみ込む。異様な光景にディアッカはやばい集会を開き始めたと悟った。

 

「……アマキさんから私宛に手紙があったの。そこには事情があってアークエンジェルから降りるって。でも私達を見捨てたわけじゃない。戦争の根絶を目指すって。ラクスと一緒に。ちゃんと生きて戻ってきて私のことを迎えにきてくれるって」

 

「……じゃああの爆発は……」

 

「……うん。自作自演…らしいわ」

 

フレイの気まずそうな説明に皆憤りを隠せなかった。

それはそうだ。心配もさせて悲しませての生きてます発言だ。

 

「……なんだよそれっ!」

 

「……自分勝手すぎるよ…あの人…」

 

「じゃ、じゃあキラは?キラは一緒なのっ!?」

 

「それはわからないけど、アマキさんなら何とかしてると私は信じてるわ」

 

フレイは迷いのない瞳ではっきりと皆に言い切った。それに励まされミリアリアたちの気持ちも軽くなる。

 

「……そうだね。今までもアマキさんは危機的状況でも翻してきたんだ。きっとキラのことだって助けてくれてるはずだ」

 

「「そうだそうだ!」」

 

「…とりあえず、踊っとく?」

 

「そうね」「そうだな」

 

「「「いえーい!ヒャッホー!ウェーイ!」」

 

こそこそ話し込んでいたと思ったら今度は嬉しそうにそれぞれ踊り始めて始めた。しかもまったく調和がない踊りにディアッカは、ナチュラルのヤバすぎる光景に戦慄した。

どんどこどんどこ踊ってやかましい四人組の元へ騒ぎを聞きつけたパルが怒鳴り込んでやってきた。

 

「おいなんだ!この騒ぎは!」

 

「助けてくれっ!こいつら怖いっ」

 

ついディアッカはまともなやつがきたと歓喜の涙を流した。

四人は医務室で踊るなと叱られ、しょぼんとしたが──すぐに復活。

スキップしながら艦内を歩いていると、異変に気づいたムウが現れた。

 

「ミリアリアの嬢ちゃん、顔色よくなったじゃねぇか。なんか気分でも変わったか?」

 

「フラガ少佐! 聞いてくださいっ、アマキさんが──もごっ!」

 

「ミリィー!」

 

「ストップストップ!」

 

トールとフレイが慌ててミリアリアの口を塞ぐが、ムウの目は鷹になる。

 

彼は“エンデュミオンの鷹”。敵に背中を見せられたら、それを追うのが彼の性。

ムウは顎を撫でながら、見事な推理を披露する。

 

「今、アマキの名前が出たよな?ミリアリアが元気になったってことは……まさか! アマキは生きてるのか?!」

 

「さすがフラガ少佐!」

 

「あーあ、言っちゃった」

 

「どうすんだよ、これ。絶対広まるぞ」

 

「まー、いんじゃない? 艦の皆も最近話題がないって愚痴ってたし」

 

嬉しそうなミリアリアの横で、三人はこそこそ囁き合い、結果オールオッケーとみなした。

 

「そうか! アマキは生きてるのか! よかった……ん? キラは?!」

 

「その点も、きっと大丈夫です。アマキさんのことなら、キラの安全も保障されてる……はずです」

 

「まぁ、アマキなら大丈夫か」

 

ムウはあっけらかんとした様子で、「それじゃ艦長たちにも知らせてやるか」と足早に立ち去った。

まるで風のような速さだった。

 

◇◇◇

 

先ほどの騒動を、ナタルが見逃すはずがなかった。

通路を並んで歩きながら、彼女はマリューを責め立てる。

 

「彼女をいつまでも医務室に置いておいたのが、そもそもの間違いでした」

 

「……」

 

「ましてや、そこを一時でも無人にするとは……」

 

「ええ……」

 

マリューは疲れた顔で、なんとか相槌を打つ。

ナタルの厳しい言葉は今に始まったことではないが、今の状況ではストレスの逃げ場もなく、余計に堪える。

 

「しかし、捕虜を前にして彼らが万歳三唱をしているなどと……奇人変人と疑われても仕方ありません。幸い、それを目撃したのが数人で済んだのは不幸中の幸いでした」

 

「……そうね。それも報告書に付けておいて」

 

もうなんでも“おまけ”しておけと言いたくなるほど、マリューの頭は痛かった。

 

「艦長!」

 

ナタルの声が、いつになく真剣だった。

振り向いたマリューに、彼女は一枚の紙を差し出す。

 

「これは……?」

 

「フレイ・アルスター宛に、アマキ・カンザキが残した直筆の手紙です。彼女が生きている証拠として、これ以上確かなものはありません」

 

マリューはそれを受け取り、目を皿のようにして読み込む。

筆跡は確かに、アマキのものだった。

 

「……この独特の筆跡……間違いない。内容にも、彼女らしい愛が溢れてる……。生きていてくれて、よかった……」

 

手紙を胸元にそっと押し当てるマリュー。

その表情は、安堵と喜びに満ちていた。

 

「……お仕置きのしがいもあるというものだわ」

 

「……」(そこまで読み取れるとは……私もまだまだだな。アマキ・カンザキ、気の毒に)

 

マリューは手紙を隊服の中にしまい、ナタルに小声で告げる。

 

「ナタル、これは軍部には内密にね」

 

「艦長! 私は……!」

(まさか、報告するとでも思われていたのか?! そんな裏切り行為、私がするはずがない)

 

ナタルの心は言葉以上に熱く、マリューにはそれがしっかりと伝わっていた。

 

「大丈夫よ、分かってる。ナタル。いろいろあったけど、貴女には本当に感謝してる。同士として、こんなにも身近に話せる相手がいることを誇りに思う。貴女なら、きっとこの先、いい団長になるわ。私が保証する」

 

マリューの力強い言葉に、ナタルは胸が熱くなる。

それは、アマキがいた頃のマリューを思い出させるような、頼もしい表情だった。

 

「艦長……!」(アマキ応援団長の座を、私に譲るというのか)

 

「でも、まだ譲るつもりはないわ。彼女が現役である限りね」

 

マリューはお茶目にウインクをして、鼻歌を歌いながらスキップで歩き出す。

 

「……はぁ……上げて落とす。さすがマリュー・ラミアスだな」

 

ナタルは小さくため息をつきながら、その背中を追った。

 

というわけでアマキ・カンザキの生存は着々とアークエンジェルのクルーたちに密かに知られていった。

お仕置きメニューも喜々としてマリューが組むことになり以前よりも明るく振舞う姿にクルーたちも気持ちが明るくなった。

 

そして、待ちに待ったサザーランド大佐の出頭命令によりマリュー、ナタル、フラガはアークエンジェルより出発することになる。

要は難癖つけて問題を押し付けようとする一方的な話だ。マリューの中で軍部に対する見切りは付けている。

あとはどうでるか、だ。

 

だがそこで予想通りの追及と使える人材だけの転属命令が下されるとはマリューとて考えていなかった。

 

◇◇◇

 

陰謀渦巻く地球よりも遥か上空──

宇宙の静かな一角、ラクス邸では。キラは湖を眺めながら、過去を思い返していた。

歩けるまでには回復したが、心の傷はまだ深い。

 

すべては、アマキを拾ったことから始まった。

もしかしたら、彼女は自分を責めているのかもしれない。

自分たちがこうなってしまったのも──なんて、想像でしかないが。

手すりに腕を組み、遠くを見つめる。

 

ここは地球から遠く離れた、仮初の平和。トールたちは今どうしているだろう。

自分とアマキがいたから守れていたものも、今は──。

 

「何を見てらっしゃいますの?」

 

涼やかな声が背後から響く。

 

「テヤンデイ!」

 

ハロを連れたラクスだった。黄昏れるキラに、彼女はそっと寄り添う。

 

「キラの夢は、いつも悲しそうですわね」

 

優しく頭を撫でるラクス。キラは黙ってそれを受け入れた。

 

「そうだね……悲しいよ。でも、アマキさんがいたから、ここまで来られた。逆に言えば、僕は彼女に業を背負わせてばかりだ。彼女はそれが当たり前だって言うけど……」

 

殺した数も、彼女の方が多いはず。

それでも黙って戦い続けた彼女は、自分よりもずっと強い。

そんな彼女に、ふさわしい存在になりたい──

そう願っても、現実は遠い。

 

ラクスは、胸の奥に小さな嫉妬の棘を感じていた。

彼女がキラにだけ見せる顔、それが羨ましくて、悔しくて。

自分がいくら誘っても動かなかったアマキが、キラのためとなると即座に賛同した。

それほどまでに愛されている存在だというのに、このマイナス思考──腹立たしい。

だが、表には出さない。

ラクス・クラインが、たった一人に固執するなんて──そんな姿、誰にも見せられない。

 

「貴方は戦い、アマキ様はその宿命を受け入れて戦ったのですわ」

 

それは、ほんの少しの優しさから出た言葉。

 

「それで守れたものも、きっと沢山あるのでしょう」

 

キラは押し黙った。

ラクスはふと微笑み、手を叩いてキラの背中を軽く押す。

 

「今はお食事にしましょう。アマキ様たちも、もうすぐ来られますわ。今日は鍋焼きうどんにしてみましたの。キラでも美味しく食べていただけます」

 

「……そうだね。ありがとう」

 

テラスには、すでに湯気の立つうどんが並んでいた。

その中でも、ひときわ大きな器──明らかにアマキ専用だ。

 

「これは……アマキさん用?」

 

「そうそう。トレーニングしてると、お腹すくしね」

 

アマキはキラが眠っている間もトレーニングを欠かさず、ニコルを相手に選んだ。

ザフトレッドのニコルでも、彼女の相手は至難の業。

野生児のような動きに、体は擦り傷と打撲だらけ。

 

「それに付き合わされてる僕も、大変ですけどね」

 

お茶を用意して席に着くニコルは、以前よりも図太くなっていた。

 

「ニコルったら、もやしっ子なんだよ。鍛えがいがあるね」

 

「僕は繊細な少年なんです! 筋肉は求めてませんっ!」

 

「何言ってんの。ずる賢いくせに」

 

「計画的と言ってください」

 

二人の即興コントに、キラはつい笑いがこぼれた。だが傷口に触れてしまい、痛みが走る。

 

「あはは、いたたっ」

「もう。キラったら。ふふ」

 

ラクスはキラを労りながら椅子に座らせる。

 

「ごめんね、しばらく僕が治るまでアマキさんの面倒頼むよ」

 

「早く良くなってくださいね、キラさん。僕が筋骨隆々になる前に」

 

そんなやり取りも、今ではかけがえのない日常。

 

「私は筋肉ある方が好みだなー」

 

「!? 僕も治ったらアマキさんのトレーニング相手になるからっ!」

 

「うん、治ったらね。楽しみにしてるよ」

 

きっとアマキの相手にもなれないかもしれない。

でも、やってみなければ分からない。

これは早く治さなければ──そんな思いが、食欲を呼び起こす。

 

皆でワイワイと食卓を囲むのは、アークエンジェル以来久しぶり。つい嬉しさから、口元が緩む。

 

こうやって小さな約束が積み重なっていく。

でもそれは、平和であればこそ成り立つ約束。

一歩戦場に戻れば、もう平和とは程遠い世界へ舞い戻るのだ。




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