腹減り少女はSEED世界で爆発少女にレベルアップする   作:サボテンダーイオウ

33 / 75
間に合うか!


PHASE-32舞い降りる剣

戦況は地球軍にとって思わしくなかった。パトリック・ザラが発案したスピットブレイクによる猛攻撃で地球軍は絶望的においつめられていた。その報復と言わんばかりに地球軍の上層部は本部の地下にサイクロプスを設置し敵味方一気に一網打尽に追い込もうという卑劣な行動を起こそうとしていたのだ。

殺しては殺され殺されては殺しての繰り返す戦場では無情に命が散っていく。

 

海上では本部を守ろうと艦隊たちが奮闘するが、それも捨て駒であると知らずに命を散らしていく。その中に当然アークエンジェルもいた。その任務不服としながらも命令には逆らえない立場故、できるだけのことをしようと応戦していたのだ。実は異動命令を無視してしまった案の定艦を降りることができなくなったのでとりあえずブリッジに戻ってきていたのである。あれだけ別れの挨拶をした手前戻りにくかったが、艦の危機とあらば駆けつける!というわけでしれっとCIC指令統括の席に戻っている。ナタルのいつもの指示に皆安堵感はあるが、状況が状況なので喜んでいられない。

 

「ウォンバット、てぇ!」

 

「ミサイル、来ます!」

 

「回避!」

 

マリューの指示の後すぐアークエンジェルへミサイルが突っ込んでくる。そのうちの一部が右舷にぶつかり穴が空いてしまう。

 

「「うわぁ!」」

 

「右舷フライトデッキ、被弾!」

 

「オレーグ、轟沈!」

 

仲間の艦がまた沈んだ。このままでは陣形が崩れてしまうとマリューは判断し、次なる指示を出す。

 

「うっ!取り舵!オレーグの抜けた穴を埋める!」

 

「ゴットフリート、てぇ!」

 

ナタルが的確に指示を出しジン三機を一気に沈める。だが敵の猛攻撃は止まらない。

 

「尚もディン接近!数6!」

 

「この陣容じゃ対抗し切れませんよ!」

 

「くっ!」

 

倒しても倒してもきりがない。まるで囮にされている気がした。

 

「くっそー!やられたもんだぜ司令部も!」

 

「主力部隊は全部パナマなんですか!?」

 

「ああ、そう言うことだね!」

 

「戻ってきて、くれるんですよね!?」

 

「こっちが全滅する前に、来てくれりゃぁいいけどな!」

 

「喋ってないで手を動かせ!」

 

ナタルの叱責が飛ぶがそんなの関係ねー。

 

「ミサイル接近!」

 

またもやアークエンジェルを襲うミサイルの雨。どこまで持つかもう時間との勝負だった。

 

「ううっ!」

 

「バリアント、1番2番沈黙!」

 

「艦の損害率、30%を超えます!」

 

続けて言われる言葉がアークエンジェルの限界がきていることを告げる。

 

「え!」

 

「イエルマーク、ヤノスラフ、轟沈!」

 

友軍艦が次々と沈められていく中、選択の余地はない。それでも司令部とのコンタクトを取ろうとする。もはやそこはもぬけの殻だというのに。わずかな望みを賭けて尋ねる。

 

「司令部とのコンタクトは?」

 

「取れません!どのチャンネルもずっと同じ電文が返って来るだけですよ!各自防衛線を維持しつつ、臨機応変に応戦せよ、って…」

 

カズイに弱気な声にクルーの不安は増すばかりだ。

 

「……」

 

「既に指揮系統が分断されています!艦長…これでは…」

 

ノイマンからの報告が途中で終わり、アークエンジェルに大きな振動と光が走る。

 

「「うわぁぁ!」」

 

「パナマからの救援隊は?」

 

「全然何にも見えねぇよ!」

 

「ミサイル来ます!」

 

「ぅ…」

 

「くそっ」

 

そこへ一機の機体が頭上を通過する。それはフラガの機体だった。だが途中でミサイルを食らい被弾する。

 

『よっしゃぁ!まだ粘ってたな!こちらフラガ、アークエンジェル応答せよ!アークエンジェル応答せよ!くっそー!』

 

「友軍機接近!被弾している模様!」

 

「え!?着艦しようとしているの!?」

 

「正気でないぞっ!?」

 

「そんな無茶な…」

 

皆が驚愕する中、マリューは整備員たちに緊急避難を呼びかける。

 

「整備班!どっかのバカが一機突っ込んで来ようとしているわ!退避!」

 

「どいててくれよ!皆さん!うおらぁ!」

 

「うわぁぁ!うわ!」

 

何とか奥まで突っ込むことなく停まることができた。

 

「フ、フラガ少佐!」

 

ムウは驚く整備員たちをお構いなしにブリッジへ走っていく。そして大きな声で怒鳴って入ってきた。

 

「艦長!」

 

「…少佐!あ、貴方一体何を!?転属は…?」

 

驚くマリューのところへ近寄ってくると怒鳴りすぐに撤退しろと告げる。

 

「そんなことはどうだっていい!それよりすぐに撤退だ!」

 

「え?」

 

「こいつはとんだ作戦だぜ!守備軍は一体どういう命令受けてんだ!」

 

「え?」

 

マリューとムウが話している間もアークエンジェルへの攻撃は止まらない。

 

「いいか!よく聞けよ!本部の地下にサイクロプスが仕掛けられている!作動したら基地から半径10kmは溶鉱炉になるってサイズの代物が!」

 

「ええ!?」

 

「この戦力では防衛は不可能だ!パナマからの救援は間に合わない!」

 

「ええ…!」

 

「やがて守備軍は全滅しゲートは突破され本部は施設の破棄を兼ねてサイクロプスを作動させる!それでザフトの戦力の大半を奪う気なんだよ!それがお偉いさんの書いたこの戦闘のシナリオだ!」

 

クルーたちに動揺が走る。

 

「……やはり!私達は捨て駒…」

 

「司令本部はもう蛻けの殻だ。残って戦ってるのはユーラシアの部隊とアークエンジェルのようにあっちの都合で切り捨てられた奴等ばかりさ!」

 

「艦長……」

 

ナタルがショックを受けたようで縋るような視線を向ける。クルーたちも同じだ。裏切られたのだ。軍部に。そのショックは計り知れない。だがマリューの心はもう決まっている。

迷いのないきっぱりとした声で宣言した。

 

「ではもうこの茶番に付き合うわけにはいかないわ。ザフト軍を誘い込むのがこの戦闘の目的だと言うのなら本艦は既にその任を果たしたものと判断致します!尚これはアークエンジェル艦長マリュー・ラミアスの独断であり乗員には一切この判断に責任はありません!」

 

「いい決断だ。…そう気張るなって」

 

「……」

 

マリューの毅然とした態度でクルーたちの不安も吹き飛ぶ。

 

「本艦はこれより現戦闘海域を放棄、離脱します!僚艦に打電!我ニ続ケ。機関全速、取り舵、湾部の左翼を突破します!」

 

「脱出もかなり厳しいが諦めるな。俺も出る!」

 

「少佐…」

 

「心配しなさんな、忘れた?俺は不可能を可能にする男だってこと」

 

「艦長、貴方だけに背負わせはしません」

 

「ナタル……ありがとう…」

 

皆の心が一機団結してこの危機を乗り越えようと決めたのだ。

 

アークエンジェルは前方をザフトの艦に囲まれており逃げ道を作るのは困難だった。頭上ではムウがスカイグラスパーで応戦してくれているが、それも敵の数が尋常ではない。

 

『もうゲートはくれてやったんだ!こっちは見逃してくれたっていいだろうが!』

 

「回避!」

 

マリューの指示により艦は大きく左に逸れる。ミサイルは友軍艦を爆破させた。

 

「後方より、デュエル!」

 

クソ忙しい時に限って強敵は現れるもの。執拗に狙い続けるザフトのイザークはアークエンジェルの後方から容赦なくビームやミサイルを飛ばす。

 

『足つきぃ!今日こそ終わりだな!!』

 

『くっそー!こんな時に!!』

 

ムウもデュエルに攻撃を仕掛けるが、

 

『舐めるな!バスターとは違うんだよ!!』

 

『チィッ!』

 

装備を丸ごと撃ち抜かれてしまう。それに巻き込まれないように直前で外すことで爆発から免れた。だがこれでは丸腰になってしまう。

艦内は、最悪の展開に向かっていた。

クルーたちは迫りくる死と、必死に戦っていた。

 

「艦長!」

 

「取り舵20!回り込んで!」

 

「10時の方向にモビルスーツ群!」

 

「クーリク、自走不能!」

 

「ドロ、轟沈!」

 

「64から72ブロック閉鎖!艦稼働率、43%に低下!」

 

「ううわぁぁもう駄目だぁぁ!!」

 

「落ち着け!バカやろう!」

 

「まだやれるっ!ウォンバット!てぇ!」

 

「機関最大!振り切れぇ!!」

 

まだ死ねない。

皆を、安全な場所へ――その一念が、マリューを突き動かしていた。

だが、ついにアークエンジェルが傾く。

 

「推力低下…艦の姿勢、維持できません!」

 

ブリッジの目前に、ジンがドゥルに乗って現れる。

ビームライフルが、ブリッジに向けられる。

 

「はあっ!」

 

その瞬間、時間がゆっくりと流れたように感じられた。

もはや、これまでか――。

だが、空から一陣の光が降り注ぎ、ジンのライフルを爆破する。

 

『なに!?』

 

高速で降下してきたのは、見たこともない機体。

ブリッジを背に、ジンを一刀両断するその姿に、誰もが息を呑んだ。

 

『ああ!』

 

その機体に、ムウもイザークも、クルーたちも視線を奪われる。

 

『なんだ!』

 

『あのモビルスーツは!?』

 

そして、遅れて現れたもう一機。

白い翼を広げ、全身が輝くような白――まるで天使が舞い降りたかのようだった。

だが、そこから発せられた声は、いつもの呑気な声だった。

 

「キラー!早いよ。でも何とか間に合った!皆、やっほー」

 

アマキの声に、マリューたちは空耳かと疑った。

あまりにも機体のイメージとかけ離れていたからだ。

だが、確かにアマキだった。

白き翼を広げ、アークエンジェルを守ろうとしている。

 

「え?アマキさん?」

 

『アマキさん挨拶は後!こちらキラ・ヤマト!援護します。今のうちに退艦を!』

 

キラの声も届き、皆はようやく現実だと理解する。

 

「キラ…それにアマキさん!」

 

「キラ君…アマキさん…!」

 

フリーダムは圧倒的な性能を見せつけ、スノーホワイトも優雅に敵を沈黙させていく。

どちらも、パイロットには傷を負わせず、確実に戦力を奪っていた。

 

「うわぁ!」

 

『くっそ、なんだよあれは!?』

 

『マリューさん!早く退艦を!』

 

「ここはハチの巣にされちゃうから早く逃げよう!」

 

マリューは口早に説明する。

 

「本部の地下にサイクロプスがあるの。私たちは…囮にされたのよ。ここでは退艦できない!もっと基地から離れないと!」

 

キラは即座に理解し、アマキに援護を頼む。

 

『分かりました!アマキさんはそのまま援護を!』

 

「了解!」

 

そして、キラは通信をオープンにし、両軍に向けて声を発した。

 

『ザフト、連合、両軍に伝えます。アラスカ基地は間もなくサイクロプスを作動させ、自爆します!』

 

その宣言に、戦場が静まり返る。

 

『両軍とも直ちに戦闘を停止し撤退して下さい!繰り返します!アラスカ基地は間もなくサイクロプスを作動させ自爆します!』

 

驚く敵も、味方も、キラの声に耳を傾けた。

アマキはその姿を見て、静かに呟いた。

 

「そうだね、キラ。まずはここから始めよう」

 

だが、素直に受け止めない者もいた。

デュエルが激高し、ビームサーベルで斬りかかってくる。

 

『下手な脅しを!!』

 

「キラの邪魔をするなんて、いけない子だねぇ!」

 

アマキはひらりと避け、脚だけを斬る。

 

『ぐわぁぁ!』

 

『早く脱出しろ!もう止めるんだ!』

 

フリーダムが背後から蹴りを入れ、海面へと落ちそうなデュエルをディンが救い出す。

イザークは、殺さなかったことに疑問を抱いた。

 

『あいつら…なぜ…』

 

そして、サイクロプスの起動。

 

「サイクロプス起動!」

 

「機関全速!退避!!」

 

アークエンジェルは、後方から迫る破壊の波を必死に逃れる。

 

『うわぁ!』

 

『掴まれ!』

 

「私が支えるから急いで!」

 

『うん!』

 

爆破寸前のジンを、フリーダムとスノーホワイトが協力して救い出す。

安全圏にたどり着いた頃には、皆が放心状態だった。

キラとアマキは、ジンのパイロットを介助する。

コクピットから降ろし、岩場に横たえる。

ヘルメットを外すと、若い青年だった。

 

「ぅ…」

 

「しっかりしてください!大丈夫ですか?」

 

キラの呼びかけに、青年はかすかに目を開ける。

 

「君が…あのモビルスーツの…」

 

「はい」

 

「なぜ…助けた…?」

 

「そうしたかったからです」

 

「殺した方が…早かっただろう…に…」

 

青年は、苦笑しながら息を引き取った。

 

「あ……くそっ!」

 

「……どうか、安らかに」

 

アマキは、青年の両手を胸元で組み、静かに見送った。

 

◇◇◇

 

一方、プラント――。

軍部では、サイクロプスの発動による影響が急速に広がっていた。

 

「全滅!?全滅とはどういうことだ!?そんな馬鹿な話があるか!」

 

「カーペンタリアからの報告を待て!とにかく正確な情報を…!」

 

会議室は怒号と混乱に包まれていた。

スピットブレイク作戦は、完全な失敗に終わったらしい。

その衝撃は、軍部の中枢を揺るがしていた。

その頃、宇宙港に到着したアスランは、騒然とした空気にすぐ異変を察した。

人々のざわめき、慌ただしく走る兵士たち――ただ事ではない。

そこへ、顔見知りの軍人が駆け寄ってくる。

 

「ユウキ隊長!」

 

「アスラン・ザラ!?どうした、こんなところで」

 

「いえ、それより…この騒ぎは?」

 

ユウキは一瞬言葉を選び、低く答えた。

 

「……スピットブレイクが失敗したらしい」

 

「ええ!?失敗…って、どういうことですか?」

 

「詳しいことはまだ不明だが、全滅との報告もある」

 

「……そんな……!」

 

アスランは言葉を失った。

あの作戦に、どれだけの兵が動員されていたか――想像するだけで胸が苦しくなる。

ユウキは周囲を気にしながら、さらに声を潜めて続けた。

 

「君には、もう一つ悪いニュースがある」

 

「……?」

 

「極秘開発されていた最新鋭のモビルスーツが、二機――何者かに奪取された」

 

「……!」

 

「そして……その手引きをしたのが、ラクス・クラインだということで、今、国防委員会が大騒ぎなんだ」

 

「え……!?そんな……まさか……ラクスが……!?」

 

アスランの顔から血の気が引いた。

信じられない。

あのラクスが、軍の機体を奪うなど――そんなこと、あるはずがない。

手にしていたケースが、力なく床に落ちる。

硬い音が、彼の動揺を際立たせた。

 

「……ラクスが……そんな……」

 

ユウキは言葉をかけられず、ただ静かに見守る。

アスランの胸には、信頼と現実の狭間で揺れる痛みが突き刺さっていた。

真実は、時に残酷な刃となって、最も信じていたものを切り裂く。

そして今、その刃が、アスラン・ザラの心を容赦なく貫いていた。




間に合った!

ガンダムSEEDDESTINYも読んでみたいか?

  • 続きを読んでみたい。
  • 別に興味ない。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。