腹減り少女はSEED世界で爆発少女にレベルアップする   作:サボテンダーイオウ

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PHASE-34神のいかずち

オーブからの飛空艇の誘導の元、アークエンジェルは再びオーブへ戻ってきた。

例のドックへ収容され、ボロボロの状態で戻ってきたアークエンジェルを上から見ていたカガリ達は、その惨状に胸を痛めていた。

カガリはいてもたっても居られず、部屋を飛び出しアークエンジェルの中へ駆け込む。

エレベーターのボタンを連打しながら、「早く来い」と祈るように睨みつける。

扉が開くと、ストレッチャーで運ばれてくる負傷兵とすれ違う。

その怪我の酷さに顔をゆがませながら、するりと中へ入り、エレベーターで上階へ。

キラ、アマキ——!

心の中で何度も二人の名前を呼びながら、すれ違うクルー達の中を目を皿のようにして探す。

そして——

キラっぽい後ろ姿と、アマキっぽそうな黒髪を見つけた瞬間、カガリは叫ぶ。

 

「キラ!アマキ!」

 

ちょうど一休みが終わったところで、キラはまだ疲れが抜けきらず、あくびをしていた。

 

「ふえ?」

 

「……ん?」

 

何事かと振り返ったキラに、カガリが猛スピードで突っ込んできて——

そのまま二人は床に倒れ込む。

アマキは巻き込まれないように、華麗に横へステップして回避。セーフ。

 

「カガリっ…?」

 

「うぅ…このバカァ!」

 

どごん!

 

カガリの拳がキラの胸に炸裂。キラは痛そうに呻く。

 

「ぐっ!」

 

「お前…お前…ぅぅ…死んだと思ってたぞ!このやろう!ぅぅ…」

 

大粒の涙が頬を伝い、キラの服を濡らしていく。

 

「ごめん」

 

「ほんとに…生きてるんだな?」

 

「生きてるよ。戻ってきたんだ」

 

「……よかった……」

 

そう呟いて、今度は起き上がり、標的をアマキへと向ける。

さっきまでの涙はどこへやら、カガリの顔は般若のように変貌していた。

 

「ア~マ~キ~!!」

 

「げっ」

 

逃げなきゃやられる!

と本能的に悟ったアマキは後退しようとするが、俊足のカガリによって襟首を捕まれ、逃げ道を絶たれる。

 

「お前!自爆する奴があるかっ!こんなに心配かけまくって!何様のつもりだ、アア!?」

 

「うぅ!」

 

唾が飛んでくるわ、大声で耳がキーンってなるわ、がくがく揺さぶられるわのスリーコンボ。

意識が遠のく〜。

 

「聞いてるのか!?アマキっ!」

 

「脳みそがシェイクされる〜」

 

「カガリ!その辺にしておいて!カガリが怒る気持ちもすごくわかるけど、アマキさんが目を回してるよ」

 

「ああ!?これくらいでへばる奴じゃないっ」

 

「でも目が渦巻きになってるよ」

 

「あ、ほんとだ!?」

 

流石に漫画みたく意識を失ったアマキに、これ以上手荒な真似はできず——

慌てたキラと一緒に医務室へ運んだカガリだった。

 

◇◇◇

 

ブリッジでは、訪問してきたウズミにマリューが深々と頭を下げていた。

 

「私どもの身勝手なお願い、受け入れて下さってありがとうございます」

 

ウズミは静かに頷き、穏やかな声で応える。

 

「ことがこと故、クルーの方々にはまたしばらく不自由を強いるが、それはご了解いただきたい。ともあれ、ゆっくりと休むことは出来よう」

 

「ありがとうございます」

 

その温かい言葉に、マリューの肩の荷が少しだけ下りる気がした。

戦いの連続で張り詰めていた心が、ようやく緩む。

ウズミは窓の外に広がるオーブの空を見つめながら、静かに言葉を続ける。

 

「地球軍本部壊滅の報から、再び世界は大きく動こうとしている。一休みされたら、その辺りのこともお話しよう。見て、聞き、それからゆっくりと考えられるがよかろう。貴殿等の着ているその軍服の意味もな」

 

その言葉に、マリューは即座に返した。

 

「その点は大丈夫です。私達の気持ちは固まっておりますので」

 

きっぱりとした口調。

その瞳には迷いがなかった。

ウズミは少し目を細め、感心したように頷く。

 

「……ほぉ、迷いのない目をしている。どういった心境の変化かな」

 

マリューは少しだけ微笑み、静かに答えた。

 

「……キラ君とアマキさんのお陰です。彼らが目指す道を、私達も共に追いかけたいと思ったからです」

 

「……二人に何か、我々にはない大きな力を感じますな」

 

「はい。私達は彼らに助けられてばかりでした。今度は、彼らの力になりたいと思っております」

 

それは、マリューの本心だった。

今まで返せなかった恩を、今度こそ返したい。

彼らが目指す未来を、自分たちも共に築きたい。

世界のために。

自分たちが受けた痛みを、他の誰かが背負わなくて済むように。

それは、自己満足かもしれない。

だが——

やらないで後悔するよりも、やって後悔したい。

その想いが、マリューの胸に静かに燃えていた。

 

◇◇◇

医務室で目が覚めたアマキは、誰もいないことに首を傾げた。

そういえば——さっき振り回されたんだっけ、私。

カガリに。全力で。

……なんか、寂しい。

フレイからは“放置プレイ”中。曰く「お仕置き」らしい。

まだ続行中なり。ふーん、いいもんね。

一人で散歩してくるもんね。

……べ、別に気になるわけじゃないんだからね!

言い訳してみたところで、結局二人を探しに医務室を出る。

そこらへんを歩いていたクルーに「キラとカガリ見なかった?」と尋ねまくる。

その顔は滅茶苦茶必死だったと、後にミリアリアの取材で暴露されることになる。

散々探しまくって、ようやく二人を発見。

フリーダムの前で語り合っていた。

ふぅ……こっそり息をついて、影から盗み見。

耳ダンボモード、発動。

キラとカガリはどうやらアスランの話をしているようだ。

 

「そっか。アスランに会ったんだ」

 

「お前を探しに行って見つけたの、あいつだったんだ。滅茶苦茶落ち込んでたぞ、あいつ。お前を殺したって、泣いてた」

 

……自爆のくだりで肩がぴくんと反応。

気づかれてる?いやいや、気配は完璧に殺してる。

さっきのは嫌味だな。うん、そうに違いない。

 

「アスランは昔から凄くしっかりしててさ、僕はいつも助けてもらってた」

 

「なんで…そんな奴と戦ってまで、地球軍の味方をしようとなんて思ったんだ?」

 

言いにくいことを素直に聞くカガリ、さすが。

 

「アマキさんがいたからかな。あとトール達、守らなきゃって。アマキさんに無理させたくなくて、守りたくて…」

 

「お前、ほんとアイツのこと好きだな」

 

「好きだよ」

 

——さらっと言った。さらっと爆弾投下したぞこの人。

 

『ぐはっ』

 

思わず胸をぎゅっと握りしめてうめいた。

心臓がどきどき、ばくばく。

さらっと何か言った気がするが、気のせいだ。気のせいだよキラ君。

 

「大好きだよ」

 

『オ、ふ…』

 

グレードアップした。

心臓どっきんどっきんやん。どないする?

口から心臓飛び出しそうだよおねーさんは。

ほら、カガリだって照れてるじゃない。

ストレートすぎて赤面してるよ。

 

「いや私に言うなって、本人に言えよ」

 

「だってアマキさん逃げるし隠れるし…なんか作戦とかない?」

 

「私に聞くか?それ」

 

「うん」

 

作戦立てるなよキラ。私は獲物か?

 

「……うーん……囲い込むか。網持ってさ」

 

「魚みたいだね」

 

「アイツは野生動物の方があってる。檻の方がいいかもな」

 

「確かに」

 

告白の返事してない。……ちゃんと返したほうがいいよな。

でもなんて?「私結構経験豊富だから相手にしないほうがいいよ?」とか?

帰って燃えそう。怖いわ。

じゃあ「男に興味ないんだ」とか?それもそれでカガリに引かれそう。

あー、どうやって答える。

そもそも私はキラのことをどう思っているのか。

弟?親戚の子?居候先のお子さん?

違う、そうじゃない。

守らなきゃいけない子だった。

でも今は——私が守らなくても強い。

じゃあ、仲間?友達?

……それよりも、もっと深い。

 

「うーん」

 

頭を抱えてしゃがみこんで悩んでいると、足元に影が差す。

 

「こんなところでしゃがみこんで何してるんだ?お前」

 

「アマキさん、もう起きて大丈夫なの?」

 

キラとカガリが心配して声を掛けてくれた。

 

「おわっ!」

 

吃驚して反射的に後ろに飛ぶ。

 

「わっ!」

 

「……いつも思うけど体軽いよね」

 

「ととと特に!何もしてないもんね!ちちちちょっと考え事してただけだもんね!」

 

ついどもってしまうが、怪しまれてない。ないない。

 

「怪しいな」

 

「またろくでもないこと考えてたんでしょ。駄目だよ、またフレイに言いつけるから」

 

「それはご勘弁をっ!」

 

おやつ減らされる!

告白の返事云々は、頭から弾き飛ばされたアマキだった。

 

◇◇◇

 

キラ達は、アラスカで起こった事件をウズミに打ち明けた。

腰かけるマリューの後ろで、手を後ろに回して立つカガリとキラ。

その表情は真剣だった。

 

「サイクロプス?しかし、いくら敵の情報漏洩があったとて、その様な策——常軌を逸しているとしか思えん」

 

ウズミの言葉は重く、静かに響く。

だがキサカがまとめた報告書を提出し、それを見せながら説明する。

 

「ですが、アラスカは確かにそれでザフト攻撃軍の8割の戦力を奪いました。立案者に都合がいい犠牲の上に。机の上の…冷たい計算です」

 

「それでこれか…」

 

ウズミはテレビのスイッチに手を伸ばす。

画面に映し出されたのは、地球軍側の会見だった。

 

『守備隊は最後の一兵まで勇敢に戦った!我々はこのジョシュア崩壊の日を、大いなる悲しみと共に歴史に刻まねばならない。が、我等は決して屈しない——』

 

都合の良いプロパガンダ。

民衆の怒りを煽り、士気を高め、コーディネーター排除の動きを加速させる。

 

「解っちゃいるけど堪らんね」

 

ウズミはテレビを消す。

その目は、静かに怒りを湛えていた。

 

「大西洋連邦は中立の立場を採る国々へも一層強い圧力を掛けてきている。連合軍として参戦せぬ場合は敵対国と見なすとまでな。無論、我がオーブも例外ではない」

 

「奴等はオーブの力が欲しいのさ」

 

ガンダム。

オーブが開発したMSは、地球軍にとって喉から手が出るほど欲しい戦力だった。

 

「御存知のことと思うが、我が国はコーディネイターを拒否しない。オーブの理念と法を守る者ならば誰でも入国、居住を許可する数少ない国だ。遺伝子操作の是非の問題ではない。ただコーディネイターだから、ナチュラルだからとお互いを見る。そんな思想こそが一層の軋轢を生む」

 

「そうですね」

 

「なのにコーディネイター全てを悪として、敵として攻撃させようとするような大西洋連邦のやり方に、私は同調することは出来ん。一体、誰と誰が、何の為に戦っているのだ」

 

ムウが口を開く。

 

「仰ることは解りますが…失礼ですが、それは理想論に過ぎないのではありませんか?コーディネイターはナチュラルを見下すし、ナチュラルはコーディネイターを妬む。それが現実です」

 

ブルーコスモス。

彼らはコーディネイターを異物と決めつけ、嫉妬と恐怖から排除しようとする。

 

「解っておる。無論我が国とて全てが上手くいっているわけではない。が、だからと諦めては——やがて我等は本当にお互いを滅ぼし合うしかなくなるぞ」

 

ウズミの声が強くなる。

「それとも!それが世界と言うのならば、黙って従うか?どの道を選ぶも君達の自由だ。その軍服を裏切れぬと言うなら手も尽くそう。君等は若く、力もある。見極められよ。真に望む未来をな。まだ時間はあろう」

 

キラが静かに問いかける。

 

「ウズミ様はどう思ってらっしゃるんですか?」

 

ウズミは首相として、はっきりと答えた。

 

「ただ剣を飾っておける状況ではなくなった。そう思っておる」

 

それは、戦闘も辞さない構え。

守るためには、代償がいる。

その時——

 

「……長く生きてる身からしてみれば、人種の差なんて対して気にしないことなんだけどな」

 

小さく零した言葉が、キラの耳に届いた。

 

「アマキさん?」

 

アマキは軽く顔を振って誤魔化し、目を細めて微笑んだ。

 

「いや、なんでもないよ。……人が手を取り合って対等に渡り合える世界ってのは大変だよなって。でも大変だからこそ、やりがいがあるってもんだな」

 

「……そうだね…」

 

腑に落ちない顔をするキラだったが、今は詮索しないことにした。

ウズミは、アマキを見つめる。

この少女——アマキ・カンザキ。

身元は不明。カリダに頼まれてIDを作成したが、それ以前の経歴がない。

まるで、突然この世界に迷い込んだかのように。

 

「アマキ君と言ったね。……君は、キラ君に拾われた、そうだね」

 

「……そうですね。彼に拾われていなければ、自暴自棄になっていたかもしれません」

 

苦笑いを浮かべるアマキ。

だがウズミは、核心に触れる。

 

「……君は一体何者かね…。コーディネイターをも凌駕しそうなその能力と頭脳、卓越した身体能力を持ちながら、ナチュラルでもないというのは信じられないが」

 

その言葉に、アマキの表情が変わる。

声音が低くなり、視線が鋭くなる。

 

「………私は私です。アマキ・カンザキ以外の何者でもない…。私にとってナチュラルもコーディネイターも同じ人間です。それ以上でもそれ以下でもない。キラ達が平和を願うのなら、それに協力するまで。私個人は関係ないはずです。無用な詮索はしないでいただきたい」

 

ウズミは言葉を失う。

堂々と自分に言い返す者がいようとは思わなかった。

しかも、自分よりもずっと若い少女に。

キラが戸惑い、彼女の名を不安そうに呼ぶ。

 

「アマキさん…?」

「……失礼。場を乱しました。私はこれにて退出させていただきます」

 

アマキは軽く頭を下げ、キラを見ることもなく席を立ち、部屋を出て行った。

キラは後を追おうとしたが、カガリに止められた。

 

その後会議は終わりキラは息を切らしてアマキの部屋に向かった。

ノックもせずに扉を開ける。

 

「アマキさんいる?」

 

部屋の中は暗く、まだ戻っていないらしい。

ルルの目が暗闇の中で光り、キラにまっしぐらに跳びついてくる。

 

「キラ〜」

 

「ルル。お前のご主人様はどこにいるか知らない?」

 

「ワカランワカラン♪」

 

「そうか。じゃあ一緒に探しに行こうか」

 

ルルを手に乗せて部屋を後にする。

その途中、サイとフレイに遭遇する。

 

「あらキラじゃない。話は終わったの?」

 

「フレイ、サイ」

 

「お昼は食べ終わった?まだなら一緒に行こうぜ」

 

キラは首を振る。

 

「ごめん。アマキさん探してるんだ。また後で」

 

背を向けようとした時、サイが思い出したように言う。

 

「アマキさんなら捕虜のところ行ったぜ」

 

「捕虜?って誰のこと?」

 

「バスターのパイロットのところだよ」

 

キラの顔が強張る。

 

「!?バスター?それってザフトのパイロットじゃ!なんで」

 

「キラ達がいなくなったときに投降してきたんだよ。それでそのままの流れで乗ってるんだ」

 

「独房にいるんだね?わかった、ありがと!」

 

ルルをフレイに預け、キラは全力で走り出す。

 

「愛の力ね」

 

「愛だな」

 

二人はうんうんと頷き合った。

 

その頃、アマキは独房にてディアッカと初対面していた。

彼専用の食事と自分用のトレイを持って独房の前で挨拶をする。檻の中の彼は怪訝そうにアマキを見ていた。見目麗しい容姿に人懐っこそうな笑みを浮かべて。

 

「……なんだよ、お前」

「君がディアッカだね。初めまして。エリスのパイロットと言ったらわかるかな?アマキ・カンザキだ」

「!お前が?嘘だろそれ」

 

にわかには信じがたいらしい。確かに見た目は普通の可愛い少女。自分よりも年上に見えるがまさかあの散々煮え湯を飲まされ続けた相手がこの少女とは思えない。あの凶暴さが全く想像できないのだ。

 

「いや嘘じゃないんだけどな。コレ食事持ってきたんだ。お腹空いたでしょ。どうぞ。んでもって一緒に食べようと思って。寂しいでしょ」

 

アマキは苦笑しながら下の隙間からトレイを差し出した。だがディアッカは鼻先で笑い飛ばす。自分の状況をそこまで悲観してないからだ。

 

「誰が寂しいかよ」

「いや私がね」

「お前がか!」

 

つい突っ込みをしてしまいアマキはしてやったりと笑っては独房に背を向けて座り込んだ。

 

「いやー、君も大変だったねー。私も大変だったけどさ」

「そこに座るのかよ」

「椅子ないじゃないここ。床に座るしかないし」

「女子が胡坐かくなって。パンツ見えんぞ」

「見えないって。誰も来ないだろうし」

 

アマキの押しの強さにディアッカは何も言えなくなる。

仕方ないので彼女に付き合うことにした。トレイを取りベッドに座って食事を食べることに。アマキはすぐそばにいるので彼女を人質にとることも出来るが今はそんなことしたところで無駄だろう。エリスのパイロットであるというのなら自分たちよりもその能力は上のはず。下手に手を出せば自分の方が危なくなると判断したまで。というか、そういう卑怯なことをする気はまったくない。実はナチュラルの友達もできたのだ。トールという少年だがどうしてかディアッカと馬が合うのだ。食事を持ってきたり体を拭く温かいタオルなども差し入れしてくれたりと気を使ってくれている。その誠実な彼の態度にも多少救われているのだ。ナチュラルとコーディネーターの偏見の壁も多少緩和していると思う。

 

と新しい友人のことを考えているとアマキはディアッカの様子など気にせずにいろいろ尋ねてきた。

 

「それでさー、ニコルから聞いたんだけどさ。君って日本舞踊が趣味だって?」

 

ニコルという単語に彼は口の中のものを吹き飛ばした。

聞き捨てならぬ名前だ。

 

「ぶっ!に、ニコル!?どうしてお前が知って」

 

いると続けようとしたセリフは予想外の言葉によって搔き消される。

 

「だってニコル生きてるもん」

「はぁ!?嘘つくなっ!アイツは」

 

お前が殺したはず、そう思っていたがこの少女はとんでもないことをさらっと言うじゃないか。

 

「今頃ラクスの護衛の中に混じってるんじゃないかな。プラントで顔われてるからね」

「ニコルはお前が殺して」

「ないよ。だから生きてるって。自爆すると見せかけて一緒に脱出したもん」

 

ケロっとした顔でアマキは答える。ディアッカは握っていたフォークを床に落とした。手が震えてしょうがない。歓喜の震えってやつだ。

 

「………じゃあ、ニコルは」

「生きてるよ。………イザークだっけ。彼も元気にデュエル乗ってたし。アスランはどうかな、わかんないけどそのうち地球にくるんじゃない?」

 

クルーゼ隊再結成か!?とはいかないものだがニコルが生きている。その言葉はディアッカの涙腺を壊しそうだった。

つい顔を背けて小さくつぶやいた。

 

「……頭パンクしそうだわ。俺」

「だよねー。ま、とりあえず教えておきたかったんだ。じゃ、いただきます!」

 

パン!と手を合わせて食べようとするアマキ。

 

「………」

 

この状況で飯食えるってすごくないと彼は思い只者じゃないなと悟った。そこへ息を切らしてキラが駆け寄ってくる。

 

「アマキさん!!」

「……ふご?」

 

丁度口に入れている最中でアマキはどうした?という顔で出迎える。

 

「なんでこんなところで食事取ってるの?」

「んぐんぐ、あー、ニコルの知り合いがいたから話してたの」

 

親指でくいくいと後ろの独房を指さすとキラは視線をそちらにやりながらアマキの胡坐スタイルに顔をしかめた。アマキの隣に膝を着き彼女を独房から離そうと肩に手を回す。独占力の塊。

 

「ニコルさんの…あ、バスターの」

「なんだよ、今度は。もしかしたらストライクのパイロットだったりして」

 

次から次へと新顔が挨拶にくるので茶化してみたディアッカ。するとアマキはにへらと笑った。

 

「あたり~」

 

これにはディアッカも脱帽した。あの状況で生きているのが不思議なくらいだというのにしっかりと生きているのだ。

 

「……マジお前ら何なの?不死身もしかして?」

「アハハ。すごいでしょ」

「褒めてねーって」

 

なんだか自分がいない間にすっかりと仲良くなっていることがキラは気に入らなかった。アマキの腕を取り立たせようとする。

 

「……アマキさん、お尻痛くなっちゃうよ。食堂で食べよう」

「でもディアッカが寂しいだろ?私はいいからキラは食べてきなよ」

 

そうアマキに断られるとキラはぶすっと不機嫌な顔になった。

 

「………」

 

明らかに彼の機嫌が悪くなっていることにアマキは気づいていない。キラの声のトーンが低くなる。

 

「そんなに彼と一緒にいたいの?……僕がいるのに」

「へ?別にそういうことじゃ」

「おいおい。俺は静かに食べたいんだよ。お前ら喧嘩するなら他所でやってくれ」

 

ディアッカは気づいていた。この状況を目の前にやられるのは勘弁だと。塩吐きそうになる。

アマキは仕方ないとトレイを持ったまま立ち上がった。

 

「そう。それじゃあまた遊びにくるよ」

 

「くんな!」

 

手でしっしと追い払うディアッカはようやく静かに食べられると安堵した。そしてニコルが生きていることに改めて嬉しさをかみしめるのであった。

 

キラに引っ張られて、半ば歩かされているアマキは、彼の手の強さに不快感を覚えていた。

その握りは、まるで怒りを込めたように固く、痛みすら感じるほどだった。アマキは戸惑いながら食堂に寄ってトレイごと返す。とても美味しく食べれる雰囲気ではないからだ。その際サイとフレイに会ったが、キラのただならぬ雰囲気に声をかけることを躊躇ったくらいだった。アマキは手だけを振り挨拶だけしてキラに引っ張られていく。どこへいくというのか。キラは無言のまま歩くだけだ。

キラは不機嫌そのものでこのままではとアマキはキラに頼んだ。

 

「キラ、腕引っ張らないで」

 

訴えても、キラの歩みは止まらない。

声をかけても、返事はない。

ただ、ずんずんと進む。

 

「……キラ、離してくれ」

 

「………」

 

「キラ」

 

「………」

 

「………どうして」

 

アマキの声は、次第に弱くなる。

キラの沈黙が、彼女の胸に重くのしかかる。

憤りがキラを支配していた。

アマキが自分以外の男と楽しそうに話しているだけで、胸がざわつく。

自分を見てくれない。

その気持ちが、嫉妬となって彼を突き動かす。

好きなのに。

大切にしたいはずなのに。

なのに、憎らしい。

 

「?」

 

キラは突然立ち止まり、アマキに向き直った。

顔はこわばり、張り付いたような笑みを浮かべている。

だが、うまくいかない。

出てくるのは、責め立てる言葉だけだった。

 

「どうしてアマキさんは目を離すと、どこかに行っちゃうの」

 

「……どうしてって、そりゃ行きたいところに行って何が悪いんだ」

 

アマキは素直に答えた。

だがその言葉が、キラの心に火をつける。

 

「僕の!僕の気持ちなんてどうでもいいんだろっ!?」

 

「!」

 

アマキの瞳が大きく見開かれる。

その表情が、固まる。

 

「いつもそうだ!アマキさんは僕を振り回して、自分だけどっか行く!置いて行かれる方の身にもならないで、自分勝手で……!」

 

その自由さに憧れた。

でも、それが時に嫌になる。

彼女の自由を、奪いたくなる。

そんな黒い感情が、キラを支配する。

アマキは、静かに言い返した。

 

「……そうだ。私は自分勝手だ。そういう女だよ…。だったら私のこと放っておけばいいじゃないか。好きだなんて気持ちも、きっと気の迷いだ」

 

「!」

 

その言葉に、キラは腕を離す。

その手が、震えていた。

アマキは、キラを気遣うように言葉を続ける。

だが、その言葉には、未来への覚悟も込められていた。

 

「キラはまだ若い。私よりももっと素敵な女の子に出会うさ。……私も、きっとずっと皆とは一緒にはいられないから……それで、ちょうどいい」

 

目を伏せ、顔を横に逸らす。

まるで、自分に言い聞かせるように。

 

「一緒に、いられない…?」

 

「私は……君たちとは相いれない異世界から来たんだ。だから、ずっとはいられないよ」

 

その告白は、キラの思考を停止させるほどに強烈だった。

 

「異世界…?ずっと一緒にいられない……?」

 

言葉の意味を理解しようとするが、感情が先に立ち、思考が追いつかない。

アマキもまた、キラの立ち尽くす姿を見ていられなくて、顔を背ける。

だが、言いすぎてしまったとすぐに後悔し、キラに向き直る。

 

「…キラ……あの…」

 

アマキは一歩近づき、キラの手をそっと握った。

その手は、震えていた。

だが——

キラはその手を、振り払った。

 

「ごめん、今は…」

 

その声は、かすれていた。

アマキは、その場に立ち尽くし、キラの背中を見送るしかなかった。

彼の背中は、遠く感じた。

手を伸ばしても、届かないほどに。

──そして、静寂だけが、二人の間に残った。

 

◇◇◇

 

その後、パナマにザフトからの攻撃が始まったとの一報がキサカから伝えられることになる。皆その内容にまだまだ戦火の炎が勢いを増すばかりで死人もたくさん増えることを悲しみどうしようもない怒りを抱いた。

 

キラとアマキの関係もまた皆が心配するほどこじれてしまい、二人が一緒にいる時間もなくなってしまった。お互いが避けているのは分かり切って見えていたか。それぞれがアドバイスを送ったりもするが妙に頑固なところはそっくりで余計に意固地になってしまう。

そんな中、キラはエリカ・シモンズに呼ばれムウや呼びに来たカガリと共にドックへ向かった。

 

その頃、アマキは目に見えて沈んでいた。

食事も普段よりずっと少なく、フレイは思わず慌ててしまう。

 

「アマキさん、これ……好きなケーキだよ? ほら、チョコとベリーのやつ」

 

差し出しても、アマキは首を振るだけだった。

 

「……いらない。ごめんね」

 

その様子にフレイは危機感を覚え、すぐさま“アマキファンクラブ”のメンバーを招集。

緊急会議が開かれることとなった。

集まったのは、フレイ、ミリアリア、マリュー、ナタル。

女子ばかりの精鋭部隊である。

 

「それではこれより、緊急会議を開始します!」

 

マリューが立ち上がり、真剣な表情で宣言する。

 

「議題は、アマキさんの食事量減少について。ナタル、報告を」

 

「ハッ!」

 

ナタルは立ち上がり、資料を手にして答える。

 

「関係者への聞き込みの結果、原因はキラ・ヤマトとの関係悪化による精神的ショックと推定されます!」

 

「やっぱり……」

 

フレイが眉をひそめる。

 

「それで、食事の提供はどうだった? お菓子は試した?」

 

「はい。アマキさんの好物であるケーキ類を複数用意し、提供しました。以前は完食していたものが、現在は四分の一しか食べられていません」

 

「それはまずいわね。戦闘が近いのに、体力が持たないわ」

 

マリューが腕を組む。

 

「ミリアリア女史、意見は?」

 

「はい!」

 

ミリアリアが元気よく手を挙げる。

 

「無理にキラと接触させるより、まずはアマキさん自身に“恋とは何か”を理解してもらうべきかと。すれ違いの原因は、キラがディアッカと談笑しているアマキさんを目撃したことによる嫉妬心です。ここは年長者であるマリューさんとナタルさんに、恋愛指南をお願いしたいです!」

 

「わ、私が!?」

 

ナタルが目を丸くする。

 

「ふふ、ナタルはともかく、私なら適任かもしれないわね」

 

マリューが微笑む。

 

「わかったわ。まずは私が、彼女に恋愛の極意を伝授する。フレイ、アマキさんをうまく誘い出してくれる?」

 

「……私だけじゃ心許ないかも。ミリィ、手伝ってくれる?」

 

「もちろん! 同じ会員同士じゃない」

 

「ありがとう!」

 

フレイとミリアリアが手を取り合い、作戦は着々と進行していく。

 

「では、これにて緊急会議を終了します。報告会は後日。漆黒の姫に、我らの忠誠を!」

 

「「「了解!漆黒の姫に我らの忠誠を!」」」

 

決め台詞で会議は締めくくられ、

それぞれがアマキのために、静かに動き始める——。




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