腹減り少女はSEED世界で爆発少女にレベルアップする   作:サボテンダーイオウ

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PHASE-38ゆれる世界

遠ざかる地球から離れ無事宇宙へと戻ってきたキラ達は、宇宙にてドッキング作業中のアストレイら護衛の中に混じり敵からの襲撃がないか見守りつつ無事に作業を終了させる。その報告がキサカからマリューの元へ通信で伝えられた。

 

『クサナギのドッキング作業終了した』

「良かったですわ」

 

ほっとするのもつかの間、カガリの様子が気がかりでつい尋ねてしまう。

 

「カガリさんは……大丈夫ですか?」

『ああ、ウズミ様と共にに少しお話しておられる』

「……少しでも気持ちが落ち着けるといいけど」

『大丈夫だろう。カガリなら』

 

キサカとて、ウズミがオーブを捨て共に宇宙へ上がるなど期待していなかった。というかその希望すら捨てていた。真面目な人柄で知られる彼がオーブと命運を共にすることは明白だったのに、今こうして共にクサナギにいること自体が奇跡でならない。本人の前では決して言わないが、つい画面越しに吐露してしまう。

 

『……彼女には感謝の言葉しかない。あの御方をここまで引っ張り上げてくださったのだ。我らだけではどうしようもなかった』

「アマキさんね。ええ、私たちも彼女のまっすぐなところへ惹かれてここまで来れました。ねぇ、ムぅ?」

「おう、俺らにしてみればあの子こそが女神さ」

「フラガしょ、…こほん。フラガさんそれは肯定しかねます。アマキは野生動物のような面もありますので女神という表現はいささか壮大すぎるのでは?」

 

ナタルが、少佐と言いかけ咳払いしてごまかしながら別の意見を述べた。もうすでにナタル他クルーたちは地球軍とケリは付けているらしいがどうにもそのまま名前を呼ぶのは慣れないようだ。

マリューは確かにと微笑みながら

 

「では野生天使でどうかしら?」

 

と勝手にアマキの異名を名付けた。それにはムウもナタル他クルーたち、画面越しのキサカも可笑しそうに噴出した。

 

「そりゃまた、いいんじゃない」

「まぁ、あってはいますが…」

『本人の知らぬところで彼女の異名は増えていくわけだな。前に聞いたときはアイドル活動をしているとかしていないとか?』

「ええ、本艦限定のアイドルでしたが、世界デビューも視野にミリアリア女史が布教している最中ですの。もしよろしければファンクラブ会員の資料をお送りしましょうか?」

 

思いがけないマリューからの返答にキサカは困った顔をしながらも

 

『検討しておこう』

 

と前向きな回答をしていた。アマキのあずかり知らぬところで着々と会員は増えつつある。

 

キラ達はクサナギの中へ帰還し、機体から降りたのちキラとアマキは隊服にアスランはオーブの制服に着替えカガリの元へ向かった。

タッチパネルを操作してドアを開けるとウズミとカガリの姿があった。キラとアスランは少し遠慮がちであったが、アマキは全く気にするそぶりもなく勝手に中に入っていく。

 

「お疲れ様でーす」

「かるっ」

「いいじゃん。疲れたんだからー」

「お前なー」

 

カガリがアマキの方に寄って行き軽くじゃれ合い二人の姿を見てウズミは二人の仲の良さに目じりを下げて嬉しそうだった。

 

「カガリに良き友人がいることしっかりと見れて良かったよ」

 

するとカガリはげぇと苦い顔をしてすぐに訂正をした。

 

「友人?ただの腐れ縁です。お父様」

「そうそう。とっても仲の良い友人でーす」

 

アマキは調子に乗ってカガリの肩に腕を回して抱き着いた。

 

「ちょ、離れろよ」

「いいじゃん。友達じゃん」

「勝手に友達認定してんなよ」

「ケチんぼカガリ」

「誰がケチだ」

「泣き虫カガリ」

「泣いてねーよ!」

「あれー?泣いた跡があるー」

「バッ」

 

指摘されて反射的に腕で顔を覆うカガリ。そこにキラとアスランがやってきてこれまた遠慮がちに教えてきた。

 

「あのーそろそろ皆集まる頃なので、カガリは着替えた方が」

「うむ、そうだな。私は先に行くぞ」

「はい。私も着替えてから行きます」

 

ウズミは先に部屋を出るとすれ違いざまにアスランに挨拶をしてクサナギのブリッジへ向かった。

そのあと、着替えたカガリを伴ってブリッジへ向かう。その際、カガリはアマキにある相談をこそこそとしていた。女子二人の会話に聞き耳立てる無粋な真似はしないキラとアスランだったが、滅茶苦茶気になっていた。

 

「ごにょごにょ」

「え、マジで?すごいね」

「ごにょごにょ」

「へー、どっちが上かな」

「私に決まってるだろ!」

「そう?まぁ、確かにカガリの方が強いしね」

「強さかよ!」

 

びしっと突っ込みする気力はあるので元気ならよしと二人は先にブリッジへ入る。遅れてカガリとアマキも中へ。

ブリッジにはムウ、マリュー、ナタル、そしてシーゲルとウズミの姿がありキサカから今後の説明を受けていた。どうやらこれから隠れ蓑として使う場所を検討しているようだ。この辺はアマキもさっぱりなのでお口は閉じておく。

 

「L4のコロニー群へ?」

「クサナギもアークエンジェルも、当面物資に不安はないが無限ではない。特に水はすぐに問題なる。L4のコロニー群は、開戦の頃から破損し次々と放棄されて今では無人だが水庭としては使えよう」

「なんだか思い出しちゃうわね」

「大丈夫さ。ユニウス7とは違うよ」

「……」

 

あの頃は生きることに必死で悲しい事実を目にすることもあったが、今度行く場所は違うという。ナタルも以前の探査に同行しているので亡くなった人たちの無念さ、悔しさは忘れられない。アスランは思い出したようにある情報を教えてくれた。

 

「L4にはまだ稼働しているコロニーもいくつかある」

「アスラン、何か知ってるんだね」

 

キラが頼もしそうな顔をして尋ねると、アスランは一つ頷いて説明を始めた。

 

「ああ、だいぶ前だが不審な一団がここを根城にしているという情報があって、ザフトは調査したことがあるんだ。住人は既に居ないが設備の生きているコロニーもまだ数基あるはずだ」

「確かにその方が安全かもしれないな。このまま進み続けてもすぐに見つかってしまうだろう」

「では、決まりだな。まず我らは身を隠す場所を手に入れることから始めよう」

 

シーゲル、ウズミが続いて今後の進路を決定する。そこに思案顔でムウが唐突にアスランに話を振った。

 

「しかし、本当にいいのか?君は」

「ん?」

「無論君だけじゃない。もう一人の彼もだが」

 

どうやらムウはアスランとディアッカの真意を再確認したいようだ。マリューが心配そうにムウの名を呼ぶ。

 

「ムウ…」

 

だがここではっきりさせたいらしい。それは仕方のないことだ。だがキラ、カガリはそわそわと二人のやり取りを気づかわし気に見守りアマキは黙って腕を組んで傍観に徹する。しっかりと空気が読めるときは読めるのだ。アマキは。ただたんに腹が空いていたとか、何食べようかなとか考えていたわけじゃない。アマキの狼狽えることなく堂々とした姿にシーゲルとウズミはほぅと感嘆し、さすが自分たちと堂々と渡り合えるだけの度胸がある少女だと感心していた。

 

「オーブでの戦闘は俺だって見てるし、状況が状況だしな。着ている軍服に拘る気はないが…」

「…」

「だが俺達はこの先、状況次第では、ザフトと戦闘になることだってあるんだぜ。オーブの時とは違う。そこまでの覚悟はあるのか?君はパトリック・ザラの息子なんだろ?」

 

そう言われればアスランは辛そうな顔をした。咄嗟にカガリが庇いたてる。

 

「誰の子だって関係ないじゃないか!アスランは…」

「軍人が自軍を抜けるってのは、君が思ってるよりずっと大変なことなんだよ。ましてやそのトップに居るのが、自分の父親じゃぁ。自軍の大儀を信じてなきゃ、戦争なんて出来ないんだ。それがひっくり返るんだぞ?そう簡単に行くか?彼はキラと違ってザフトの正規の軍人だろ?」

「そうだけど…」

「…」

「悪いんだけどな、一緒に戦うんなら当てにしたい。いいのか?どうなんだ?」

 

ムウの試すような視線にアスランはぎこちなく自分の気持ちを打ち明けた。それは素直に彼の思いだった。

 

「オーブで、いや、プラントでも地球でも見て聞いて思ったことは沢山あります。それが間違ってるのか正しいのか、何が解ったのか解っていないのか、それすら、今の俺にはよく分かりません。ただ、自分が願っている世界は、あなた方と同じだと、今はそう感じています」

「ふ、しっかりしてるねぇ君は。キラやアマキとは大違いだ」

「昔からね」

 

先ほどまでの鋭い目をしたムウはいなくなり、おどけて言って見せる彼から試されたことを知るアスラン。場が一気に和やかになる。

ムウがウインクするついでに皆に確認を取る。

 

「俺達がオーブから託されたものは大きいぜ?」

「ええ」「確かに」

「こんなたった2隻ではっきり言ってほとんど不可能に近い」

「そうね」

「でも、いいんだな?」

 

今度こそ皆はそれに頷いて見せた。

 

「信じましょう。小さくても強い灯は消えないんでしょ?それに僕らにはアマキがいるもの」

 

そう言ってキラがアマキに視線を移すとマリューも同意した。

 

「ふふ。そうね、野生天使は最強だもの」

「野生?天使?なにそれ」

 

アマキの問いかけは無視される。

 

「まだ内緒よ、ねぇナタル」

「ハッ、まだ決定事項ではありませんので。本会議のち会員投票で決定します。他の候補もありますので」

「へ?」

「楽しみだね、僕も参加しようかな」

 

娯楽の少ないアークエンジェルにてその都度開催されていた極秘イベント。キラが参加することはなかったので興味津々である。

 

「なんの?」

「私も参加できるかな?」

 

次いでシーゲルも興味深そうにマリューに尋ねた。

 

「勿論ですわ。我がファンクラブは会員の掟すべてに賛同できる方は差別なく全ての方を受け入れますもの」

「それは素晴らしいな。アスランもどうかな?」

「は、いえ、俺ですか?いや、ちょっと遠慮」

 

シーゲルからの誘いをそれとなく断ろうとするアスランだが途中でウズミとカガリ、キサカが参戦する。

 

「うむ、私も興味がある。是非参加させてもらおう」

「でも自分も」

「私は別に構わないぞ」

「ねぇ無視しないで?」

 

当のアマキを無視して話題はここ一番の盛り上がりを見せる。自分の異名が会員投票で決まるなと夢にも思わないだろう。アスランはこのまま話題が継続されることを恐れてわざとらしく咳払いして注目させた。

 

「ゴホン!プラントにも同じように考えている人は居る」

「ああ、ラクスのこと?」

「そうだ」

 

良かったと彼は内心安堵した。話題は軌道修正されたらしい。

 

「あのピンクのお姫様か」

「アスランの婚約者だ」「私の友達」

「!?」

「彼女は今追われている。反逆者として。俺の父に…」

 

自分で話題変えといてまた気持ちがズドーンとしてきたらしい。暗い表情になるアスランとは対照的にアマキはしっかりと頷いてみせた。

 

「わかってる。ちゃんと助けに行くよ」

 

そこへシーゲルが縋るような顔でアマキを見つめた。

 

「頼む、今あの子は孤独の中に一人で奮闘しているだろう。……私が頼りないばかりにあの子には辛い役目を追わせてばかりだ」

「シーゲルさん、それは違うよ。ラクスは貴方の背中を見て育ったんだ。貴方のように世界の現状を憂いて行動できる人はそうはいない。だからそこ貴方を誇りに思っていると同時に貴方を守りたかったんだとも思う。その気持ちは私も理解できる。だからこそ、私はラクスを助けに行く。絶対に彼女一人に背負わせはしない。私達は大切な仲間なんだから」

 

アマキの気遣いに胸打たれシーゲルは顔を手で覆い声を震わせ礼を言った。

 

「ありが、とう」

「ね、キラ」

「うん。ラクスは大切な僕達の仲間だ」

 

アマキとキラだけじゃない。彼らに導かれて今ここにいる者たちはみな、同じ志を抱いている。立場関係なく、彼女たちに惹かれついてきた。

一時はどうなることかと思ったが、彼女らならどんな危機的状況でも光へと導いてくれるのではないかと、本当に思えるようになった。暗雲立ち込めるプラントでさえも彼女ならすべてを吹き飛ばしてくれる、そんな予感と共にどうか無事でいてくれと願わずにはいられなかった。

 

一方、プラントではラクスはパトリックの手のものから逃れながらの電波ジャックをして放送で市民に呼びかけては拠点移動生活を続けていた。いたちごっこではあるが、パトリックは躍起になってクライン親子の行方を捜索させていたが一向に見つからないので周りに怒鳴り散らしているらしい。

 

「ラクス様、そろそろ休憩などいかがですか」

「あら、ニコルさん。ありがとうございます」

 

ラクスも移動の際を覗いてほとんど外に出ることはない。彼女の世話はこちらもニコルが担っている。お互いに顔がわれていて外に出れない者同士、仲良くやっていた。ニコルがずっと喋り通しのラクスのために喉を潤すハーブティーを入れお茶請けに動物ビスケットが用意してラクスに休憩を促すと、ヘッドフォンを外し小さなテーブルへ向かう。ニコルはラクスが座る椅子を引いて腰かけるのを補助した。

 

「ありがとう」

「いいえ。手に入る材料も少ないのでどうしても既製品なってしまいますが。甘いものは疲れた時に良いといいますし」

 

苦笑しながら言いニコルも椅子に腰かけるとポットからカップにハーブティーを注ぎ入れる。蒸らしているのでちょうどいい時間となっているはず。こぽこぽと湯気が立ち上りカップに注がれたハーブティーからいい匂いが鼻孔をくすぐる。そしてお皿にちょこんと乗せられた動物をかたどったビスケットたち。ラクスはその可愛い姿に微笑んで一枚摘み取った。

 

「フフ、可愛いですわね」

「屋敷であれば僕も何かと作れたんですが。ないものねだりですね」

 

寂し気に言うとラクスは首を振って微笑んで見せた。

 

「いいえ、ニコルさんの気遣いが嬉しいですわ」

「……ここのところ拠点移動が多かったですからね。ここもその内移動になるかと思います」

「……仕方ありませんわ。わたくしたちは今追われる身ですから」

 

安穏を求めてはいけないわけではないが、やるべきことがあるから少しの不便くらい耐えられる。

 

「バルドフェルド隊長とはまだ合流には?」

「もう少し時間がかかると」

「アマキさんたちは大丈夫でしょうか」

 

思案顔になるニコルに対してラクスは毅然とした態度でニコルを励ました。

 

「文通も滞っておりますが、わたくしは信じておりますわ。アマキ様達なら無事にこちらへやってこられることを」

「……そうですね。一番死ななそうな人が味方ですから」

 

なんせプラント一の歌姫をこんなに魅了してやまない人たちなのだ。

そう言って少しばかりの小さなお茶会を二人だけで楽しんた。

 

さて、カガリとアマキが内緒話していた件について、ついにキラに伝えられることになった。アスランも同席することになりウズミは

 

「実はな、私達は双子だったんだ」

「え!?どういうことっ」

「これ、お父様から渡された証拠写真だ」

 

赤ちゃんが二人いて母親に抱かれている写真だった。慈愛に満ちた母の顔だったが、裏を見返すとさらりとした字で書かれている。

 

「………キラとカガリ…」

「ウズミ様、これ、は?」

 

アスランが固まって黙り込むキラの代わりに尋ねると、神妙な面持ちで重たい口を開いた。

 

「君たちはとヒビキ夫妻からとある理由でそれぞれ分かれることになった双子だ。カガリは私が引き取り、君はヤマト夫妻が引き取ることになった」

「………僕たちの本当の両親は、今は?」

 

かろうじて震える声で尋ねるとウズミは辛そうに顔を横に振った。

 

「亡くなっている。すまない、今はこれだけしか言えんのだ」

「……キラ…」

 

アマキ、アスランがそれぞれショックであろうキラの隣に寄り添った。いつでも言える機会はあったが、どうせならこの時と決めていたのだがやはり実の両親の子ではないということは彼にとって相当ショックを与えたであろう。だからウズミはしっかりとフォローは入れた。

 

「それでも君の両親は君を立派に育ててくれたヤマト夫妻であることに変わりはない」

「……はい……」

 

やりきれない感情を抱えながらなんとか声を絞り出したキラにあまりショックを受けていないカガリはとても真剣な表情で伝えた。

 

「キラ。ショックかもしれないが、決めておきたいことがある。私が姉だからな」

「え、そこ決定事項なの?」

 

ショックから目が覚めたように驚くキラにカガリは至極当たり前に言い返す。

 

「当たり前だろ?お前弟みたいだし、私が強いしな。アマキが強い方が上だって言ったんだ」

「私を引き合いに出さないで!」

 

余計なことを言ってくれたとアマキは焦り、ついキラから離れ悲鳴に近い声を出すアマキの後ろでキラの静かな怒りがズゴゴゴゴと燃え上がっていた。アマキの方を向くと

 

「アマキ、余計な事、言ったね?」

 

と珍しくドスをきかせた声で怒りをあらわにする。

 

「ヒィ!キラの目が据わってる…!?」

「あー、キラ。とりあえず良かったな。姉弟ができて」

 

アスランの慰めもキラの怒りを鎮めることはできず、しばし本格的な追いかけっこが始まった。クサナギの艦内から始まりスノーホワイトでアークエンジェルに逃亡するまで。もちろんキラもしつこく追いかけフリーダムに乗ってアークエンジェルまで飛んでいく。アスランも仕方なしにジャスティスに乗ってアークエンジェルへ向かった。そこでそろそろプラントに戻るべきだと思い、ブリッジへ逃げ込んだアマキと追いかけるキラの後に続いてマリューにシャトルを一機借りられないかと申し出ることにした。

 

「すまないが、俺はプラントに戻ろうと思う」

 

だがアスランそっちのけでアマキにドタドタに巻き込まれるマリューら大人組。

 

「キラが苛める~マリューさーん!」

「駄目ですよマリューさん。素直にこっちに渡してください」

「キラ君、落ち着いて?まずは話し合いましょう。ここまでおびえているなんて可哀そうだわ」

 

ぷるぷると小動物が怯えるがごとくマリューの腰にしがみ付くアマキ。つい母性本能が働きアマキを庇うマリューと、いいなぁと羨ましそうに見つめるナタル。キラは爽やかな笑顔でマリューに詰め寄った。

 

「僕はいたって冷静ですけど」

「ヒィ!」

「その手に持っているブツは何かしら」

 

マリューに指摘されるとキラはなんとなしにそれを掲げてみせた。

 

「これですか?アマキの四次元買い物袋です。お仕置き代わりにここに入ってもらおうかと」

「それは酷では?」

「大丈夫ですよ。何かあってもルルが助けにいくでしょうし。なんだったらラクスのところへ行ってきても構わないし」

 

容赦ないキラの物言いにアマキは涙目になる。

 

「キラが怒った~」

「ラクスさんねぇ。先にアマキさんを送り込むのも手だろうけど……。そういえば、アスラン君はプラントに戻るのね」

 

会話の途中で忘れらてるんだろうなぁと半分拗ねていたアスランに話題が降られて、はっと我に返るアスラン。

 

「だったらここに入る?ラクスのところまでひとっとびだよ」

「いや、俺は遠慮しておく。正規ルートで行きたいんだ」

 

速攻断るアスランだがキラの思いつきの言葉に

 

「でもラクスのところにニコルさんいると思うよ」

「!…確かに……。くそ、入りたくないけど入らざるおえないということか」

 

自分の気持ちを優先するか、任務を優先するか、アスランの中で二つの選択肢が心の天秤に乗せられる。結局15分ぐらい悩んだ挙句選んだのは、最短ルートでの友との再会だった。父に会いたい気持ちもあったがいったら捕まるのは想像しないでもわかりうる展開だった。頭の固い父のことだ。アスランの言葉なんて聞いちゃくれないだろう。肉親の父よりも友を取る。

 

「というわけで俺はラクスのところへ行く。準備次第出発するのでルルの準備を」

「わかった。その辺はアマキの仕事だね」

 

キラからバトンタッチされるとアマキはマリューから離れアスランの方へ向き直り、彼の男気ある行動をほめたたえた。

 

「……アスラン。お前のこと栄養が足りてないとか言ったけど撤廃するよ。お前は骨のある男だ」

「それは誉め言葉か?」

「うん。骨あるね」

「ああ、うん。よろしく」

 

こうしてアスランは四次元の穴に旅立っていった。実は中に入ることがわくわくしてたことは内緒だ。

 

「さてアマキ。お仕置きしようか」

「しっかり覚えてた!?」

「僕、しつこいの知ってるよね。こうなったんだからちゃんと責任とってよ」

「ひえ~~~!!」

 

今度はクルーたちを巻き込んでの鬼ごっこになったのはご愛敬。

 

一方、地球軍の月面基地では、新たな動きがあった。

アークエンジェルの姉妹艦、ドミニオンの艦長にある人物が抜擢されたのだ。

 

「君にアークエンジェル級2番艦、ドミニオン艦長を命ずる。よろしく頼むよ、カンザキ中佐」

「タクミ・カンザーキ中佐。喜んでお引き受けしますよ。犬のように尻尾振ってね」

 

軽薄そうな態度に上官を敬う態度など一切ない中肉中背の男にどうしてこのような大役を当てたのか、上層部の人間の考えることが理解できないが、彼には反対する権限はない。精々皮肉たっぷり言ってやるだけだ。

 

「……精々頑張ってくれたまえ。君の腕を見込んでの大役だ。しっかりと任務に励むがいい」

「りょーかいです」

 

軽く敬礼し上官からどやされる前にその場を後にする。

さて、タクミ・カンザーキと名乗る男、口元に笑みを浮かべて

 

「楽しみじゃん。宇宙戦なんて。……アイツは果たしてどうでるかな」

 

それはそれは楽しそうに彼女との再会を心待ちにしていた。

 




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