腹減り少女はSEED世界で爆発少女にレベルアップする 作:サボテンダーイオウ
ではお楽しみください。
ヘリオポリスが崩壊した。
つい数時間前まで営まれていた日常が、いまは虚無の宇宙に静かに散らばっている。
歪んだ外壁、破裂した居住区の残骸、その間を漂う生活品。音のない悲鳴が響いてくるようだった。
アマキはコクピット越しに見える星の影に、カリダさんやハルマさんの無事を願った。
それ以上に、キラの姿が見えないことに胸が騒いでいる――あの繊細な少年がこの惨状に耐えられているだろうか。
すると通信が入り、ミリアリアの緊迫した声が響いた。
「アマキさん! 応答してください!」
「……こちらエリス。損傷なし、無事だ」
『よかった……キラはまだ応答がなくて』
「了解。捜索する。見つけ次第、帰投する」
『お願いします。気を付けてくださいね』
通信を切ると、アマキは頬を軽く叩いて気合を入れた。
「よし……まずはキラだ」
操縦桿を握り直し、推進機を起動。エリスは滑らかに宇宙空間へと飛び出す。
数分後――破片の海に紛れて、ストライクのシルエットと救命ポットが浮かんでいるのを確認。
アマキは目を細めてコースを修正。接近し、通信を開く。
「キラ! 無事だったか!」
画面越しにキラが現れた。表情に疲労が色濃く残っている。
『アマキさん……よかった。あの、救命ポット拾ってて……』
「よくやった。避難民の扱いは艦長に確認してみよう。こんな時だ、追い返すなんてことはないだろう」
『……だよね…』
キラの肩がほっと緩む。どこか怯えた様子だった彼に優しい言葉が届いたようだった。
アマキはすぐミリアリアへと通信を送り、状況を報告。救命ポットの受け入れ許可も無事に得られた。
ストライクとエリスは併走しながら帰投コースへ乗る。
着艦後、アマキはハッチを開いて真っ先に外気へと身を晒す。無重力下で髪がふわりと広がり、静かな動きで腕を回しながら関節の張りをほぐす。
そこへ、キラが宙を泳ぐように飛んできた――。
「アマキさん!」
「おっと……キラ。お疲れさま」
そのままアマキの胸元に飛び込むキラ。
彼女は反射的に両腕で抱きとめ、軽く背を撫でた。髪に指が絡む。キラはそのまま数秒、何も言わずに静かに抱きついていた。
やがて息を整えたキラが顔をあげ、少し照れながら微笑んだ。
「……うん。アマキさんが無事でよかった」
そして、キラの服の隙間からトリィがぴょこっと顔を出す。
くるりと羽ばたいてアマキの肩へと乗り、その頭をアマキが指先でくすぐるように撫でた。
「トリィもお疲れ様。無事でよかったな」
キラが小さく笑みを漏らし、肩の力を抜く――その様子に、アマキも自然と笑顔になる。
キラが何か言いたげに、言葉を飲み込んだままアマキの横顔を見つめていた。
「アマキさん、あの、後で僕……その……」
声には震えが滲んでいる。目の奥には迷いがあり、瞳が彷徨っている。
アマキは足を止め、ゆるく首をかしげたあと、微笑んで言葉を返す。
「あのイージス、のことだろ?」
「!」
キラの目が見開かれる。驚きと、どこか安堵が入り混じった表情。
親友のことは一切言っていない。それでもアマキには伝わっていた。
そのこと自体が、キラの心をそっと包んだ。
「落ち着いたらちゃんと聞くよ。無理に話すことじゃない。今は、少し休もう、な」
言葉に寄り添うような柔らかさが滲んでいる。
アマキは、キラの肩にそっと手を置き、力の抜けた温度で微笑んだ。
「うん……」
キラはうつむき気味に頷いた。顔は見えないが、少し前の恐怖や混乱より、随分落ち着いていた。
そのまま、ふたりは並んで歩き出す。歩調は自然と揃っている。
宇宙の死と喪失が背後にあるとは思えないほど――そこにあったのは、やさしい静寂だった。
食堂へ向かうとそこは避難民で溢れていた。だか皆の表情は疲れ切っていて雰囲気も暗い。これからのことを考えると頭を抱えている状況だ。そんな中、見慣れた顔ぶれが座っていた。
「おーい!キラ、アマキさん!」
「あ、みんな」
トールが手を振って二人を呼んだ。
「デッキから離れていいのか?」
「今ちょっと休憩、やっぱりキンチョーするよー」
ミリアリアがアマキの腕を引っ張る勢いで椅子に誘導し、自分の肩をすり寄せるようにちょんと重ねる。アマキは片手でミリアリアの頭をぽんぽんと優しく叩き、「よしよし」と微笑む。
「あー癒されるー」
キラがその様子を見て唇をきゅっと結ぶ。けれど目線だけはアマキに吸い寄せられている。服の裾をぎゅっと握る指先には、無言の嫉妬と安心感が滲んでいる。
「ミリィ顔が緩んでるよ」
「いいのー」
キラの指摘をスルーし、ミリアリアの独占力は増すばかり。
キラの応援と意気込んだもののアマキの隣は居心地が良い。気持ちが安定するというか、彼女といれば安全圏というか。
「そういえば、サイは?」
アマキがふと尋ねると、トールが手に持ったスープをすする手を止める。
「なんかフレイが救命ポットに乗ってたらしくて、迎えに行ったよ」
「フレイ? サイの婚約者だっけ。乗ってたんだ…」
「誰? フレイって?」
アマキが素朴に首を傾げると、ミリアリアがニヤリと笑って顔を寄せる。
「同じアカデミーの子。キラが気になってた子だよね〜?」
「なっ!?」
キラの顔が真っ赤になる。フォークを落とし、視線を泳がせる。
一方でアマキはテンション急上昇。瞳をキラキラさせてテーブル越しに身を乗り出す。
「恋バナか! 私そういう話好きだよ。キラ、恋の相談ならいつでも乗るからな!」
キラは慌てて両手をブンブン振って否定する。
「違うっ!違うからアマキさん!」
「そうだよねー、今は違う人だもんね〜」
「ミリアリア〜!!」
半泣きになって突っ伏すキラ。耳まで真っ赤。
トールは吹き出し、アマキは口を手で押さえてクスクス笑っている。
「若い時なんて目移りするものだ。恋せよ乙女ってな」
「アマキさん、いちいち年寄りくさいよな…」
「誰が年寄りだって?」
その瞬間、アマキはトールに素早い動きでヘッドロックをかます。
「ぎゃー!やめろって、アマキさんっ!」
そのタイミングで、サイが赤い髪の少女を連れて現れる。
「みんな!」
「フレイ!無事でよかった!」
再会に湧く一同。けれどキラはひとり沈黙し、輪に加わろうとしない。
アマキは不思議そうに彼の肩をちょんと指差して尋ねる。
「いいの?」
キラは少し拗ねた顔で目を伏せながら答える。
「……違うから。フレイは」
そしてアマキの服の裾を、ぎゅっと握る。小さな抗議のような、でも頼るようなその仕草。
流石にからかいすぎたか、とアマキは苦笑しながら肩をすぼめた。
「ごめん。ナイーブな話だったな」
「……そうじゃない。アマキさんは分かってないよ」
「?」
キラは小さくため息をついたあと、ちらりとアマキを見て、いたずらっぽく言う。
「もういいよ。あとでチョコちょうだい。それで今回は許してあげる」
「チョコ?いいよ。いくらでも」
ぽんとキラの頭を撫でるアマキ。その様子を見て、ミリアリアがひとり頬を押さえて悶える。
「青春だわ〜……!」
その後、アマキは食料支援のチョコを手に、仲間全員に「よしよし」と配りまくっていた。
甘い匂いと、少し甘すぎる空気が、静かだった食堂にほんの少し希望の味を運んだ。
◇◇◇
アークエンジェルの行き先はユーラシアの軍事要塞アルテミスとなった。ただ、こちらは認識コードもないのですんなりとはいかないかもしれない。避難民を抱えて物資も武器も心許ない。
ガンダム2機とメビウスゼロ。
戦力差は圧倒的に不利だが、アマキの戦闘能力はずば抜けている。
あのクルーゼを圧巻させ勝利へと導いている。
そしてキラの存在も大きい。消極的ながらアマキの為、友達のためと奮起している。ただ精神面の負担が大きいのでできるだけフォローに回ってもらえたらとアマキは考えるが相手がそれを許さないだろう。
第一戦闘配備を告げるアラームが戦艦に響き渡った瞬間、
食堂に漂っていた穏やかな空気は、見る間に戦場の匂いへと変わっていく。
トールたちは隊服に着替え、ブリッジへ向かう。
フレイは幼児を連れた避難民に囲まれながら、何か言いたげな様子で待機へ。
キラとアマキはパイロットスーツを身に纏い、静かに準備を進める。
アマキはスーツの襟元をぐっと引き、背中から髪をまとめ上げる。
その仕草が艶やかで、キラは思わず視線を泳がせてしまう。
「キラは水色か、似合ってるよ」
「アマキさんも似合ってます!」(アップにした髪…うなじ……)
「ありがと。胸がちょっとキツイけど、仕方ないな」
「………」(落ち着け、僕……今は戦闘前だ……)
内心の混乱を隠しながら、インナースーツのファスナーをいじるキラ。
その横でアマキは「サラシでも巻くか…」などと呟きながら微調整している。
そこへ、フラガ大尉がヘルメットを携えて現れる。
「よう、お二人さん。決まってんじゃん」
「フラガ大尉、女性用のスーツ、もっとサイズ展開してくださいよ! キツすぎる!」
「元々女性パイロット少ねえんだよな。ま、嬢ちゃんは……育ちが良さそうだし」
上から下までジロジロ見てくる大尉の視線に、アマキは眉をひそめる。
それを見たキラがすかさず身体を割り込ませ、アマキをぐいと引き寄せる。
「説明してください!」
その口調にフラガは肩をすくめ、「はいはい、わかったって」と気の抜けた返事を返す。
──そしてブリーフィングの後、静かに発進準備へ。
ムウ・ラ・フラガはひと足先にメビウスゼロで発進し、敵の裏をかく奇襲へ向かう。
『ムウ・ラ・フラガ出る! 戻るまで沈むなよ』
キラはアークエンジェルの後方支援に徹する。ヘルメットを装着し、息を整えて深く頷く。
『キラ・ヤマト。ガンダム行きます!』
アマキは前方防衛に向かう。
自機エリスのコクピットに乗り込むと、静かに呟いた。
「アマキ・カンザキ、エリス……いくぞ」
照明の落ちた格納庫から、機体が連なるように順に飛び出す。
三機が闇を裂いて飛び出す姿はまるで、それぞれの想いが引き絞られた矢のようだった。
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