腹減り少女はSEED世界で爆発少女にレベルアップする   作:サボテンダーイオウ

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「ラクス・クラインが舌打ちした!?」


PHASE-39ラクス出撃

思い切った考えだった。確かに単身乗り込むのは分かる。だがやり方を間違えたような気がする。

どうしてその選択肢をしてしまったのか。ノリか。ノリなのか。問うたとてその訳にこたえる者はいない。むしろ賞賛して送り出すだろう。

四次元買い物袋に入る前、キラ達に送り出されるアスランは入念に体操などして余念がない。カガリは渋々といった様子でまだ納得しかねない表情ではあるが、もう本人の意思は固く止めようがないことは分かっている。キラがぽんとアスランを肩を叩いた。

 

「アスラン」

 

「ん?」

 

「ラクスとニコルさんによろしくね」

 

「ああ」

 

それからアマキも自分が知っているであろう情報を付け足した。

 

「きっとラクスも動き出す頃だろう。あんまり怒らないであげてね」

 

「ん、どういうことだ?」

 

アマキはなんと返せばいいかと言葉を選びながら気まずそうに頬を掻いた。アスランの中のラクス像を傷つけずに伝えるにはどうすればいいのか、一応悩んだのだ。

 

「んー。いや、ラクスって行動派タイプだからさ。大胆なのよ、常に」

 

「ああ、だから」

 

「だからね、その。いやアスランが自分で体験してくるはずだから,いいや。まぁとにかく気を付けてー」

 

「なんだ、曖昧な奴だな」

 

このまま何も言わない方が実際体験してきた方が本人のためと思いアマキは誤魔化して終わらせた。

アスランはこの後身を持って体験するだろう。アスランの中で歌姫としてのイメージしかないラクス像が見事に崩れることを。アマキはあえて教えずに自分で気づけと促したのだ。キラから脅しともとれる言葉が出てくる。

 

「アスラン、まだ死ねないよ僕たちは」

 

「……わかってる。絶対ルルの手を離さないからな」

 

「うん。離したらシーゲルさんみたいに放浪する羽目になるからね」

 

アマキの容赦ない脅しにアスランの決意が揺らぐ。

俺、このまま行って大丈夫か?ほんとに、正気を失ってないか?シャトル一機借りて行った方がよくないか?

絶対捕まるだろうけど、でもどうする、俺。

自問自答が繰り広げられる。

出た、結論は。こうだ。キラに縋り付いて涙ながらに訴えた。

 

「……まだ…俺は死にたくない!」

 

「うん。知ってる」

 

縋り付くアスランを振り払うこともなく優しく背中を撫でてあげるキラは優しい。アマキと反比例して本当に優しい。けれど内心は早くいってこいと思われていることをアスランは知らない。

じゃあ行かなきゃいいじゃないかとは言わないキラは優しいのだ。

 

「……じゃ…、」

 

でもアマキはつい喉元まで出かかったがやめた。どうせラクスのことだから新造艦奪取してくるはずだしとこれも彼女なりの優しさだ。自分で経験した方が得難いものになるのは実体験済みである。その体験談をぜひ後で聞かせてくれ。

アマキの心情など知る由もなく、アスランは行く間際になって緊張感に額に汗を浮かべていたりしていた。

 

「キラ!俺をしっかりと覚えておいてくれっ!」

 

「大丈夫、気を付けてね」

 

そう言ってアスランを買い物袋の中に突っ込もうとするキラ。ちょっとは手加減してあげなよと言いたくなるくらい潔いものだ。アスランはまだ伝えたいことがあるようでキラの手を押しのけディアッカに言葉をかけた。

 

「ディアッカ……もし、俺が戻らなかったらジャスティスは君が使って「いや、帰って来いよ。あんなの乗れるか」…わかった」

 

「ちゃんと帰って来いよ、お前」

 

次いでカガリが心配そうにそう声を掛けた。アスランも真剣な表情で答えるが、キラはなおもぐいぐいと押し込んでいる。

 

「……ああ。そのつもりだむぎゅ」

 

「行ってらっしゃい!」

 

アスランは買い物袋の中へと吸い込まれるように消えていった。実は少し後悔していたアスランだがもう遅い。後は覚悟を決めて異次元を泳ぐだけだ。旅立ったアスランを見送った四人はそれぞれコメントを残した。

 

「何度見てもシュールだね」

 

「ああ。俺これが現実なのが受け入れるのキツイぜ」

 

「大丈夫、現実」

 

「「そうだね」な」

 

アスラン無事にたどり着くか。皆の心配は、終わらない。

プラントでは厳戒態勢が敷かれ、道路は封鎖されザフト兵が24時間体制で不審者への対応にあたっている。ザラがクライン派を徹底的に潰したい考えのもとにあることが見て取れる。

クライン派をあぶりだそうとザラの指示の元、イザークの母、エザリアが誘導の演説を行って町中の画面にて市民に訴えかけていた。画面に映る彼女の表情はまさに悲愴そのもので迫真の演技であった。一般市民の心に揺さぶりをかけるなら彼女にはもってこいの立場だろう。

 

『ラクス・クラインは利用されているだけなのです!その平和を願う心を。そこのことも私達は知っています。だから私達は、彼女を救いたい。彼女までをも騙し、利用しよとするナチュラル共の手から。その為にも、情報を、手掛かりを、どうか彼女を愛する人々よ。…』

 

そのプロバガンダの大本、パトリック・ザラはナチュラルを根絶やしにするための次なる手を仕込もうとしていた。

ザラ議長の元では新たな新造艦の艦長にある男が抜擢されたのだ。その男とは砂漠の虎と言われるアンドリュー・バルトフェルド。そう、彼は地球を離れプラントへ進出していたのだ。ある目的の為に。

ザラ議長の部屋にはオーブ戦にてフリーダムとスノーホワイトの二機の姿が大画面の映像にて確認されている。

 

「ああそうだ。クルーゼが情報を持ち帰った。何故フリーダムとスノーホワイトがオーブに渡ったのかなど分からんよ。アスランが何か掴んだかもしれんが、あのバカめ、報告一つ寄こさん」

 

そのアスランは今異次元にさ迷っているとはザラでも想像できないだろう。

ザラの反対側に立つ男は黒いサングラスをかけ慣れている様子で憤りを隠せないザラをまぁまぁと落ち着かせながら言った。

 

「極秘で命じられた任務でありましょう?迂闊な通信も、情報漏洩の元ですからな」

 

「調子に乗ったナチュラル共が、次々と月に上がってきておる。こんどこそ叩き潰さねばならんのだ。徹底的にな」

 

「解っております。存分に働かせてもらいますよ。議長閣下の為にも」

 

そう言って敬礼をした彼の口元にはいつもの笑みが浮かんでいたが、これはどんな意味があるのだろうか。

 

舞台は移りある隠れ家では賑やかなハロ達が暗い部屋の中を跳ね回っていた。狭い室内に彼らの賑やかな声が響き、時々窘めたりしているが効果は薄い。むしろ構われて余計はしゃぐループに突入している。仲間の男たちがそれぞれパソコンに向かって情報収集に勤しんでいる中、時々ダコスタやニコルに体当たりしてくるので地味にイラつくがラクスの可愛いペットロボットたちだ。無碍にもできない。

 

「テヤンデイ!」

 

「御苦労様です。どうですか?街は」

 

ラクスが町の状況を尋ねると画面から目を離したダコスタから思わしくない様子が声に現れていた。

 

「上手くないですねぇ。エザリア・ジュールの演説で市民はかなり困惑しています」

 

「エザリア様ですか……。あの方の影響力はかなりありますからね」

 

ニコルがそう言うとラクスの表情も暗くなる。

 

「………厳しいですわね」

 

「シーゲル様のこともまだ公表されてませんから」

 

「………シーゲル様って確か買い物袋に突っ込まれてたような」「シッ、トップシークレットだぞ!」

 

後ろで護衛らがつい声を漏らしていて相方を嗜めた。ダコスタは少し気にしながらもラクスに予定を早めるよう進言する。

 

「予定より少し早いのですが動かれた方がいいだろうと」

 

ダコスタの意見にラクスは頷き返した。

 

「分かりました。では参りましょうか。アマキ様たちもきっと待っていてくださいますわ」

 

「ラクス様、少しうきうきしてますね。そんなに彼女に会いたいものですか?」

 

ニコルとしてはもう振り回されるのはごめんだが、どうにも彼女に惹かれる理由は分かる気がする。なんとなくだが。

彼からの問いにラクスはそれはもう思い出し笑いのように嬉しそうに答えた。

 

「フフ、あの方は特別ですわ。わたくしにとっても」

 

「ミトメタクナイ!」

 

ピンクハロは納得しかねると声を上げると、なんとラクスが大切に肩にかけていた空の買い物袋から突然!

 

「ぷはっ!」

 

と声と共に頭が沸いた。それは見慣れた顔付きでラクスは目を瞬かせて呑気そうな声を出した。

 

「あら?アスランではありませんか」

 

「ラクス!?ということは無事に着いたのか!?」

 

ラクスが買い物袋を床に広げてくれたのでアスランはそこからにょきにょきと出てくることができた。ニコルは呆れたような視線を向けた。類は友を呼ぶとはこのことか。

 

「アスラン!なんでまたそんなところから……アマキさんの影響ですか……」

 

「ニコル!?ああ、良かった俺はまだ死んでないよな!?俺を殴ってくれっ」

 

「いきなり出てきて何気持ち悪いこと言ってくるんですか?殴れるわけないでしょ」

 

「ああ、ニコルだ!優しいニコルだっ!」

 

アスランは両腕を伸ばしてニコルに抱き着く。ラクスは微笑んでその光景を見守りたいところだったが、今は時間が押している。

 

「ちょ、アスラン!離れてくださいっ」

 

「フフフ、仲が良いのはよろしいですが時間が迫っておりますわ。とにかく急ぎましょう。ダコスタさん」

 

「もう何があっても驚きませんよ。とにかく行きますよ!」

 

それなりに耐性ができていたダコスタは驚くことなくすんなりと受け入れて皆を誘導することにした。護衛の中に紛れながらラクス達は目的の場所へ急ぎ向かうのであった。

 

そしてラクスの元へ向かったアスランの無事を祈りつつ、それぞれが準備に徹しているとアマキの買い物袋からルルが飛び出してきて、無事にアスランを向こうに置いてきたことを告げるとラクスからの直筆の手紙を受け取った。

 

「ルル、頑張ったー」

 

「よしよし。あとで労ってやるからな。……ラクスから連絡だ。向こうも準備が整っているようだ。合流地点に私達も向かう」

 

ラクスからの手紙の内容をキラに伝えると彼はすぐにブリッジへ向かうといった。

 

「わかった。マリューさんたちに伝えてくるね」

 

「ああ。私は先に機体に行ってる」

 

これでラクスとの再会が一歩進んだことになる。

アスランの苦労も報われるというものだ。

エターナルでは役者がそろったようでその合図が入る。バルドフェルドの艦内放送によりそれが合図となる。

 

『さてと、あー本艦はこれより、最終準備に入る。いいかぁ、本艦はこれより最終準備に入る。作業にかかれ!』

 

作業員の中に紛れてクライン派の工作員達がザフト兵たちを銃で脅してエターナルから追い出す作戦だ。

 

「あぁ!」

 

「ちょっと…」

 

「貴様等…」

 

「どういうことだ!」

 

「ただ降りてくれればいいんだよ!」

 

荒事ではあるが、死者やけが人は出ておらずラクスからのお願いでもある。極力死者は出さずハイジャックを行うという。

そして、途中で市街を脱出したダコスタを先頭にラクス達もブリッジに続々と入室する。ラクスは気合を入れて別室で衣装を着替えたがその手伝いはアイシャが行った。ピンク色の髪が後ろで高く結い上げられ、まるで戦に赴く女武将のような恰好だった。

 

「隊長!」

 

「お待たせ致しました」

 

ラクスが席に腰かけるとバルドフェルドがにこやかに迎え入れる。

 

「いえいえー。御無事で何より。おや、いつの間にかメンバーが豪華になりましたな。よぉ!初めまして。ようこそ歌姫の船へ。アンドリュー・バルトフェルドだ。では、行きましょうか」

 

アスランとニコルに軽く挨拶をするバルドフェルド。アイシャも指定の席に座り補助に回る。

ラクスに促され二人も席に着く。

 

「はい!アスランとニコルさんもこちらへ」

 

「あ、ああ」

 

「新造艦に乗れるなんてすごいですね。やり方はずるいですけど」

 

これから少々荒事があるとは思えないほど艦内は賑わっていた。ニコルは興味津々にいろいろ視線を巡らせるがアスランはラクスがハイジャックした事実に驚きを隠せないようだ。

 

「いやー、彼女たちに会えるのが楽しみですなー」

 

「本当にね」

 

インカムをつけたアイシャもキラとアマキに会えるのを楽しみにしているようで、表情も以前と会った時よりも晴れやかだ。しがらみから解放された恋人と同様にクライン派の方が肌に合っているようだ。操縦士の操縦の元、バルドフェルドの部下たちがサクサクとエターナル発進の準備に入る。

 

「出航プランCをロード!強行サブルーチン、1920、オンライン!」

 

「ロジックアレイ通過。セキュリティ解除確認。オールシステムズ、ゴー!」

 

許可なく動き出すエターナルに対して管制官が突然の事態に驚きながら停止するよう言ってくる。

 

『おい!何をしている!貴艦に発進命令など出てはいないぞ!』

 

『どうしたのだ!バルトフェルド隊長!応答せよ!…ぅ…』

 

「メインゲートの管制システム、コード変更されました!」

 

オペレータの報告にバルドフェルドは一旦顔をしかめて、後ろにいるラクスに振り向くとどこか楽し気に言った。

 

「チィ!優秀だねぇ。そのままにしてくれりゃぁいいものを。ちょっと、荒っぽい出発になりますなぁ。覚悟して下さい」

 

「仕方がありませんわね。私達は行かねばならないのですから」

 

それに軽く頷くとラクスとしてもこのくらいは想定内らしい。それを許可と受け取るとバルドフェルドは指示を飛ばす。

 

「主砲!発射準備!照準メインゲート!発進と同時に斉射!」

 

「主砲発射準備、照準、メインゲート!」

 

主砲が動き狙いを定める。そこでまたバルドフェルドがラクスへ振り向いて一つ頷いた。それに頷き返し声高らかにラクスが最初の指示を出す。

 

「エターナル、発進して下さい!」

 

エターナルのエンジン点火と共に少しずつ進みだす艦に管制官らが慌てだす。

 

「何をするエターナル!艦を停めろ!」

 

「本部へアラート発令!」

 

「てぇ!」

 

バルドフェルドの掛け声と共に緑色の主砲が展開し、メインゲートが派手に破壊され、爆発と共にエターナルが宇宙空間へ飛び出る。

 

「推力最大!こいつは速い!振り切る!」

 

エターナルがハイジャックされたことはすぐにヴェサリウスのクルーゼの元にも伝えられた。

 

「何だと!エターナルが!?」

 

「追撃命令が出ていますが…」

 

「このヴェサリウスでも今から追ってあの速度に追い付けるものか。ヤキンの防衛軍に任せるしかなかろう」

 

「はぁ…」

 

どこか他人事のように扱うクルーゼにオペレータは不思議に思った。

 

(しかし傑作だな。ザラ議長殿。)

 

エターナルでは前方にてジン二機が待機していたがその速さに圧倒され追うことも忘れてしまうくらいだった。

 

「ああ!」

 

「は、速い!」

 

エターナルのオペレータが敵影を確認する。

 

「前方にモビルスーツ部隊!数50!」

 

「ヤキンの部隊か。ま、出てくるだろうな。主砲発射準備!CU作動!」

 

「この艦にモビルスーツは?]

 

アスランがそう尋ねるとバルドフェルドは軽口で否定する。

 

「あいにく出払っててねぇ。こいつは、ジャスティスとフリーダム、スノーホワイト専用運用艦なんだ」

 

「ぁぁ…」

 

そこへラクスがバルドフェルドに突然驚きの指示を出す。

 

「全チャンネルで通信回線を開いて下さい」

 

「ラクス?」

 

「了解」

 

アスランは戸惑いバルドフェルドは戸惑うことなくすんなりと受け入れた。ラクスはザフト軍らに語り掛けるようにしゃべりだした。

 

『「わたくしはラクス・クラインです。願う未来の違いから、わたくし達はザラ議長と敵対する者となってしまいましたが、わたくしはあなた方との戦闘を望みません。どうか船を行かせて下さい。そして皆さんももう一度、わたくし達が本当に戦わなければならぬのは何なのか、考えてみて下さい』

 

当然歌姫からの演説行為に部下たちは戸惑いはするが、隊長クラスとなるとそう簡単に止まりはしない。

 

『隊長!』

 

『ええい!惑わされるな。我々は攻撃命令を受けているのだぞ!』

 

バルドフェルドもラクスの演説終えて難しい顔になる。簡単に受け入れてもらえないことはわかっていた。

複数のジン相手に戦闘は避けられない。ジンたちから一斉に放たれるビームも迎撃しなければならない。

 

「難しいよなぁ、いきなりそう言われたって。んー…迎撃開始!」

 

 

エターナルから複数の迎撃が放たれる。それがバババン!と大きな音とともに爆発の連鎖が起こる。

 

「コックピットは避けて下さいね」

 

ラクスからの付け加えのお願いに極力こたえたいところではあるが、こちらとしては生きるか死ぬかの瀬戸際だ。当たったらごめんなさいというやつだろうか。

 

「それも難しいことでねぇ、主砲、てぇ!」

 

主砲が真ん中に撃たれるとジンたちはそれぞれ散開して四方八方から攻めてこようとする。

 

「ブルーアルファ5、及びチャーリー7より、ジン6!」

 

「来るぞ!対空!」

 

大型ミサイルも撃ち込まれ、すれすれで撃ち落とすも次から次へとジンから撃たれるミサイルの数には到底間に合わない。

 

「ブルーデルタ12に、尚もジン4!ミサイル、来ます!迎撃、追いつきません!ミサイル、当たります!」

 

「ええい!」

 

「うっぅ…」

 

「ぁ…」

 

絶対絶命かと思いきや、一つまた一つとどこからかビーム鼻たれがミサイルを撃ち落とされていく。そしてが閃光のごとく駆けつけたのはフリーダム、スノーホワイト。この二機がエターナルの危機的状況を覆す。次々へと見事にミサイルが撃ち落とされ形勢があっという間に逆転していく。

アスランが咄嗟に二人の名を叫んだ。

 

「キラ、アマキ!」

 

後方からミサイルがエターナルに直撃し、艦体が大きく揺れ、ラクスが衝撃から椅子から飛ばされようとするのをアスランが身を挺して守った。

 

「あ!」

 

「くっ!」 

 

「ありがとう、アスラン」

 

「ああ」

 

二機の圧倒的な戦力の前に戦意を削がれたジンたちは最終的にフリーダムのハイマットフルバーストにて、ほとんどの機体がコクピットを外した部分を撃ち抜かれ爆破されるという最後を迎えた。キラの操縦テクニックがしっかりと彼らに見せつけられた戦いとなっただろう。

それでもなお向かって来ようとする酔狂な機体には直接スノーホワイトが相手となり、完膚なきまでに恐怖を植え付けるようなやり方で戦意を喪失させた。

そしてエターナルと並ぶ形で二機が近づくと二人のパイロットから通信がエターナルに入る。

 

『こちらフリーダム。キラ・ヤマト』

 

『こちらスノーホワイトだ。ラクス!久しぶり!』

 

「アマキ様!キラ!」

 

満面の笑みで出迎えるラクスにアマキは感心するように彼女に言った。

 

『ラクス…すごいの乗ってきたね。衣装も変わった。可愛いね」

 

「はい!頑張りましたわ。もっと褒めてくださいな、アマキ様」 

 

キラにはラクスの背後に尻尾がぶんぶん振って見えた気がした。

 

『うん、すごいすごい。それでさ、こっちにシ』「あー!そうでしたわ!わたくしの脱出を手伝ってくださった方がいますの。ご紹介いたしますわ!」

 

「ラクス、わざとらしいね」

 

言わせまいと言葉を被せてくるラクスに対してキラは容赦なく突っ込んだ。そこに次いでバルドフェルドが待ちきれずに二人に挨拶をしてきた。

 

「よおー少年少女。助かったぞ」

 

『!…バルトフェルド…さん?に、アイシャさんまで…』

 

「はあい♪」

 

ひらひらと口元に笑みを浮かべて手を振るアイシャ。見慣れた顔ぶれにアマキは大半の兵士がバルドフェルドと共に宇宙に上がってきたのだと悟った。

 

『ラクスのとこにに再就職したんだね。そっちの方が気楽でしょ。自由だし』

 

「確かにな。この歌姫には毎度驚かされるよ、もちろん君にもね。アマキ君」

 

バルドフェルドはそう言ってウインクしてみせた。

 

場所はスペースコロニー、メンデルに移った。隠れ家として選んだところだが艦を隠すにはうってつけの場所だった。

エターナル一行は艦を降り、アークエンジェルのメンバーと顔合わせをした。

 

「初めまして、と言うのは変かな。アンドリュー・バルトフェルドだ」

 

「マリュー・ラミアスです。しかし驚きましたわ」

 

敬礼して返すマリューは何とも複雑を顔をして彼らを出迎えた。まさか、命のやり取りをしていた相手とこうして共に戦う仲間として再会したのだから。お互いなんだかんだあったがここまで無事に生きてこれたというのも奇跡ということか。

 

「お互い様さ。な、少年少女」

 

「アンディ、ちゃんと名前で呼んであげないと可哀そうよ」

 

アイシャが軽くたしなめるとバルドフェルドはしまったという風に笑い、キラとアマキに言い直した。

 

「そうだな、キラ、アマキ。よろしくな」

 

「よろしく!バルドフェルドさん」「よろしくお願いします」

 

二人はしっかりと彼らと握手を交わしこれから共に戦う同士として受け入れられた。

 

クサナギから来たカガリとアスランを出迎え、少し話をすることにした。彼と出会った時のことをカガリは思い出し、つい言葉にでてしまった。

 

「今回は怪我してないな」

 

「ああ、…石が護ってくれたよ。あの異空間はやっぱり二度と入りたくない」

 

自分の体を抱きしめ、身震いをするアスランにカガリも頷いた。

 

「そっか。私も入りたくない。しかし、あんなもんで飛び出してくるとはね。すごいな、あの子」

 

「ああ」

 

「いいのか?お前の婚約者だろ?」

 

そう言ってカガリが言う先にはキラ、アマキとラクスがいた。どうやら深刻な話なのかラクスがアマキに寄り添うように身を寄せていた。

カガリはどちらかというとアマキにくっついているけどいいのかと尋ねたが、アスランはラクスの気持ちはキラ寄りにあると勘違いしていて苦笑しながら答えた。

 

「ぅ…元ね。俺はバカだから…」

 

「…(どっちかというとアマキだと思うけどな)ま、今気付いただけ、いいじゃないか」

 

「え?」

 

「でも、キラもバカだと思うぞ。うん。やっぱコーディネイターでもバカはバカだ。しょうがないよ、それは」

 

「そうか。そうだな」

 

潔く馬鹿だというカガリの表情は晴れやかでアスランは深く考えることが馬鹿らしくなって共に笑いながら同意していた。

一方、キラ達はというとラクスはさめざめと涙を零しながらアマキの胸に泣きついた。

 

「……父が…!」

 

そう言ってアマキにひしっとしがみ付くが、キラの突っ込みがはいる。

 

「シーゲルさんなら来てるけど」

 

「…っチ…」

 

「ラクス・クラインが舌打ちした!?」

 

驚くアマキと同時にドアが開きシーゲルが飛び込んでくる。

 

「ラクス!」

 

「お父様っ!」

 

それは嬉しそうな親子の再会だった。ばっと腕を大きく広げる父の中に飛び込む少女は皆の尊敬を集める歌姫ではなく一人の親を想う娘そのものだった。二人は涙の再会と共に熱い抱擁を交わしあう。

 

「さっきの黒ラクスが消えた!」

 

またアマキが驚く中、ラクスの肩を抱き温和な表情になるシーゲル二人がアマキとキラに向き直った。

 

「お父様を助けてくださってありがとうございます。アマキ様。このお礼はわたくしの一生をかけて恩返しいたしますわ」

 

「いや別に一生かけなくてもいいよ。ただルルが拾ってきただけだから」

 

意気込むラクスにどうどうとまったをかけるが、おさまるどころではない。むしろさらにラクスの気持ちは固まった。

今なら押せる!と。

 

「わたくしの気持ちがおさまりません!父もきっと認めてくださいますわ」

 

「いやだからね」

 

キラキラと期待込めたまなざしでシーゲルを見つめると父も娘と似た思考だったようだ。

ラクスの中でシーゲルの株がまた上がった。ナイスですわ、お父様!なんて思ってたり。

 

「私もラクスに賛成だよ。私達親子を助けてくれた君はどのように報いればいいかわからないが」

 

「いやシーゲルさんまで調子乗らないで」

 

「わたくしの」「じゃあ引き渡しも済んだし僕たちは行こうか」

 

良いところでキラがアマキの腕を引っ張って連れて行こうとする。絶対わざとだとラクスは確信した。

 

「ちょ、キラまで私を引っ張らないで」

 

ここでラクスの雰囲気が一気に冷たくなる。ラクスはアマキの反対の腕を取りいかすまいと自分の胸に抱き込む。

そしてキラをにらみつける。睨む睨む。怖い怖い。

 

「キラ。今までアマキ様と共におられたのですからわたくしに譲っていただけませんか」

 

「いやだ。それに僕達恋人だから、離れるとかおかしいよね」

 

ぎゅうぅぅぅと二人に力強く腕を捕まれアマキの顔がゆがむ。

 

「痛い痛い私に同意を求めるな!体半分こになっちゃうっ!!」

 

「恋人!?アマキ様!どういうことですか!?いつの間にそのような展開へ?聞き捨てなりませんわ!わたくしというものがありながらっ!」

 

くわっとラクスの顔が鬼気迫るものになる。怖すぎ怖すぎ。

 

「いや、キラとは仮の交際をするってことになってるから。恋人と言えば恋人というか仮?」

 

「仮でしたらわたくしも立候補いたしますわ!」

 

「ラクス、横やりはいけないよ。キラ君もいるんだ」

 

「お父様!?」

 

助かったラクス父!まともな思考持っていたか。

 

「まずは手順を踏んで了解を得てから順々に進んでいきなさい。交際とはそういうものだ」

 

「シーゲルさん!?」

 

余計な入れ知恵するなっ!

 

「わかりましたわ、お父様。必ずやアマキ様の心を手に入れてみせます」

 

「僕の前で決意表明しないでくれる?」

 

キレそうなキラと新たな決意を勝手に決めたラクスとの間に挟まれアマキは生きた心地がしない。頼みの綱であるシーゲルは娘の成長に涙していたり、問題解決に向けてまったく役立ちそうになかったのでアマキはオワタと顔を絶望に染めた。

 

その頃、遠くからガチャガチャした四人のやり取りを見守っていたカガリとアスランは心底巻き込まれなくて良かったと思っていた。

 




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