腹減り少女はSEED世界で爆発少女にレベルアップする   作:サボテンダーイオウ

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PHASE-41螺旋の邂逅

キラの種割れによって戦況は一気に拮抗し、アマキもその勢いに呼応するように調子を取り戻し、スノーホワイトでフリーダムの背を追う。先ほどまで押され気味だった二機は、今や執念深くスノーホワイトを狙うが、その性能も操縦技術も、明らかに彼女が一枚上手だった。

静寂の宇宙を滑るように進むスノーホワイト。その白い装甲は星々の光を受けて淡く輝き、アマキの紫の瞳は鋭く敵の動きを捉えて離さない。フリーダムが先陣を切って激しく動く中、アマキもまた冷静に敵機を一つずつ撃墜していく。

 

「てりゃあ! 滅殺ッ!!」

 

レイダーが鉄球ミョルニルを豪快に投げつけてくる。だがアマキは動じず、スノーホワイトを巧みに操ってそれを回避。瞬間、ワイヤー部分を両手で掴み取り、火花が散るのも構わず力任せにレイダーを引き寄せる。

 

「うりゃぁぁあああーーー!!」

 

気合とともに、レイダーをカラミティへと叩きつける。豪快さはいつも通りだが、今日の一撃は特に見事だった。

 

「ようは残ってりゃいいんだろ!? って、うおおっ!?」

 

ドゴォォン!!

 

吹き飛ばされた二機はフリーダムの目前を通過し、キラは一瞬目を見開くがすぐに反応し、フルバーストで追撃を加える。

 

「がぁっ!」

 

「ぐがっ!!」

 

装甲は限界寸前まで削られ、あと一撃で沈むかという瀬戸際。ジャスティスもまた、フォビドゥン相手に大鎌を叩き割り、盾に深い傷を刻んで後退させる。

 

「くあぁぁ!!」

 

戦場は混沌としていたが、アマキとキラの連携は完璧だった。地球軍のMS部隊にも的確に攻撃を加え、次々と撃墜していく。敵パイロットたちは次第に焦りを見せ始め、能力差に苛立ちを募らせる。

 

「こいつらムカつく!クロト!」

 

「チィ、ぶっ壊すと怒られるぞ!」

 

暴走しかけるオルガを、クロトが一応は制止する。だが、捕獲命令など既に頭から消え去っていた。怒りのままに三機はスノーホワイトへ集中攻撃を仕掛ける。特にカラミティは、胸部のエネルギー砲を連発しながら執拗に狙いを定めてくる。

 

「アマキ!」

 

「逆恨みじゃんか、ダサッ!」

 

冷静に吐き捨てるように言い放ち、アマキは両手にビームサーベルを構えて正面から迎え撃つ。

 

「うらぁぁあああ!!」

 

「死ねぇ!」

 

「アマキ!!」

 

その瞬間、ジャスティスが盾となるように飛び出してくる。エネルギー砲を強引に受け止めつつ、カラミティの胸部へと突撃。爆発が起き、機体は大きく損傷する。

予想外の援護に、アマキは一瞬言葉を失う。嫌われていると思っていたアスランが、まさか自分を守るために動いたのだ。彼の中にある仲間への想いが、アマキの心に静かに響く。

 

「アスラン…」

 

「大丈夫だ」

 

その言葉は短くても、確かに届いた。

 

戦場は激しさを増し、ドミニオンとアークエンジェルの戦闘も熾烈を極めていた。ブリッジでは、戦闘中にもかかわらず自分のペースを貫くアズラエル。彼は味方の機体にも構わず撃ちまくれと命令を下す、まさに鬼畜の如き振る舞いだ。

 

「あクソ!何やっているんです?ほらドンドン討って下さいよ」

 

「いいんすか?じゃ遠慮なく」

 

艦長も悪乗りし、アズラエルの命令に従う。

 

「そうそう。ケチらないでドンドンいってくださいっ。当たったって大丈夫ですよ。トランスフェイズ装甲なんだから」

 

「なるほど」

 

だが内心、死ぬときは死ぬよなと少しだけ考えるが、心底どうでもいいと思い、どんどん撃とうとする。だが、突如オペレーターが報告する。

 

「アークエンジェル接近!」

 

マリューは追撃の手を緩めず猛攻撃を続けていた。艦体が斜めになりながらも的確に照準を合わせゴッドフリートが放たれる。

 

「ゴットフリート照準、てぇ!」

 

だが、艦長による回避指示ですれすれで避けられ、マリューは舌打ちをする。

 

「回避!」

 

「チッ!」

 

舌打ちするマリューに対し、アズラエルはにやりと笑みを浮かべる。

 

「やるねぇ」

 

艦長同士の譲らない戦いが続く中、それぞれのチームの士気は高まり続けている。果たしてこの戦闘の行方はどうなるのか、緊張感が高まるばかりだ。

 

◇◇◇

 

出撃準備に追われるエターナルの甲板上空を、ストライクとバスターが低空で滑るように通過していく。機体の影が一瞬、整備員たちの頭上をかすめ、風圧が資材を揺らした。

 

「ん?おい!なんだ!?」

 

バルトフェルドは眉をひそめ、咄嗟に通信を開く。視線の先には、バスターのコックピットから慌てた様子で応答するディアッカの姿が映し出される。

 

『ザフトが居るって言うんだ…えー、おっさんが!』

 

その言葉に、バルトフェルドとラクスは同時に息を呑む。バルトフェルドは思わずモニターに身を乗り出し、ラクスは手元の端末を握りしめる。

 

『ともかく確認してくる。マジだったらヤバい!…』

 

ディアッカの声が途切れ、画面が一瞬乱れたかと思うと、通信が完全に途絶えた。

 

「反対側の港口か。チッ!」

 

バルトフェルドは舌打ちしながら、すぐに周囲の状況を確認する。整備員たちは慌ただしく動き、エターナルの発進準備はまだ完了していない。焦りが表情に滲む。

そんな彼に、ラクスが静かに声をかける。

 

「エターナルは兎に角発進を急いで下さい。騒いでいたって動けないのではお任せするしかありませんわ。」

 

「ですってよ、アンディ」

 

バルトフェルドの隣で、恋人が余裕たっぷりに笑みを浮かべる。彼女の落ち着いた態度に、バルトフェルドは一瞬肩の力を抜き、冷静さを取り戻す。

 

「ごもっともな意見だな。ダコスタ!」

 

バルトフェルドは感謝の気持ちを込めて微笑み、ブリッジにいるダコスタへと声を飛ばす。彼の声に応じて、エターナルの艦内が一斉に活気づき、発進準備が加速していく。

 

◇◇◇

 

場面は変わり、静寂と不気味な残響が漂うメンデル内部。廃棄された研究施設の通路を、シグーとデュエルが慎重に進んでいた。壁面には過去の痕跡が残り、時折漏れる機械音が緊張を煽る。

イザークはコックピット内で目を鋭く光らせ、周囲の動きを警戒していた。レーダーに映る微細な反応に指先が反応し、操縦桿を握る手に力が入る。

対照的に、クルーゼは余裕の笑みを浮かべていた。彼の視線は前方に向けられ、まるで何かを待っているようだった。すでに、ある人物がこちらに向かってくることを予測していたのだ。

そして次の瞬間、クルーゼとムウ・ラ・フラガが同時に叫ぶ。

 

『『来るぞ!』』

 

『『はっ!?』』

 

その声に反応して、イザークとディアッカの身体が一瞬硬直する。緊張が走り、視線が画面へと向けられる。

そこに映し出されたのは、撃墜されたはずのストライクとバスターだった。機体の輪郭が光の中から現れ、スラスターの噴射音が施設内に響き渡る。

 

『ストライク!…バスター!?』

 

イザークが驚きの声を上げる。目の前の光景に、過去の記憶が一気に蘇る。

 

『デュエル?』

 

ディアッカもまた、思わず声を漏らす。目の前に現れたのは、かつて共に戦った仲間の機体だった。

四方八方にビームが飛び交い、機体同士が交差する。スラスターの軌道が空間を切り裂き、金属音と爆発が混じり合う。クルーゼの相手はもちろんムウ。二人の因縁が再び火花を散らす。

 

『ほぉ、今度は貴様がそれのパイロットか。ムウ・ラ・フラガ!』

 

クルーゼの声には皮肉と興味が混じっていた。ムウは新型機体の性能に驚きながらも、冷静に応じる。

 

『新型か!くっ!この装備じゃぁ!』

 

機体の反応速度に追いつけず、ムウは一瞬の隙を突かれそうになるが、巧みな操縦で回避を続ける。

一方、イザークは怒りに震えながらバスターを睨みつける。かつての仲間が敵として現れたことに、混乱と憤りが入り混じる。だがその中にディアッカが搭乗していることには、まだ気づいていない。

機体同士が交錯するたび、過去と現在がぶつかり合い、メンデルの空間は戦火に包まれていく。

 

◇◇◇

 

キラたちの活躍により、敵ガンダム三機はタイムリミットぎりぎりまで追い詰められていた。連携の取れない三機は、互いの攻撃に巻き込まれかける場面もあり、キラたちを困惑させるほどだった。フリーダムが敵機の間を縫うように飛び交い、ジャスティスが盾となって援護する中、スノーホワイトも冷静に敵の隙を突いていく。

一方、クサナギではアサギの果敢な操縦により、罠からの脱出に成功。カガリはすぐさま指示を飛ばす。

 

「ドミニオンを追え!」

 

その声に応じて、クサナギの砲門が次々と展開される。アークエンジェルではマリューとナタルが交互に指示を飛ばし、ドミニオンを的確に追い詰めていた。

 

「ヘルダート、てぇ!」

 

「バリアント、てぇ!」

 

袋の中のネズミとはこのことか。ドミニオンは逃げ場を失い、艦内に緊張が走る。

 

「距離20、オレンジ15マーク1アルファに、オーブイズモ級接近してきます!」

 

「あらら?自由になっちゃったか」

 

クサナギからはゴッドフリートが順々に発射され、ドミニオンの艦体をかすめていく。艦橋では艦長が鋭い声を上げた。

 

「まずいんで一時撤退する!信号弾!」

 

アズラエルが不服そうに声を上げる。

 

「ええ!?」

 

艦長は冷静に状況を説明する。というより、説明してあげたという方が正しい。

 

「状況は既にこちらに不利なんすよ」

 

「ここまで追い詰めたのに?」

 

アズラエルはまだ深追いできると考えているようだったが、艦長は首を振る。

 

「三機のパワーもそろそろ危ない。撤収しないと痛い目みるっすよ?」

 

アズラエルは納得できない様子で眉間にしわを寄せながら尋ねる。

 

「そう言うからには、今退けば次は勝てるんでしょうね?」

 

「そりゃ三機のコンディション次第っしょ」

 

他人事のように言う艦長の言葉に、アズラエルの苛立ちは募る。そこにさらなる攻撃がアークエンジェルから放たれた。

バリアントが直撃し、ドミニオンの艦体が大きく揺れる。ブリッジでは悲鳴が上がり、アズラエルもついに危険を察知した。

 

「ええい!」

 

「信号弾、撃て!面舵10、戦闘宙域を離脱するぜ!」

 

撤退信号が発せられ、三機はごちゃごちゃと言い合いながら渋々戦域を離れていく。

 

「ムカつく男だったけど引き際は弁えてるわね」

 

マリューはその潔さに、皮肉混じりの賞賛を送った。

 

敵機が撤退していく中、アスランが通信を開く。

 

『キラ!アマキ!』

 

『アマキは大丈夫?』

 

「うん。アスランが守ってくれたからね」

 

『アスランもアマキを守ってくれてありがとう』

 

キラがアマキ関連でキレるとろくなことがないと知っているアスランは、守っておいて正解だったと内心安堵していた。キラから礼を言われると、

 

『いや、当たり前だ』

 

と短く返す。そして息を整えてから、真剣な声で続けた。

 

『しかし、あのパイロット達…』

 

『うん。オーブの時もそうだったけど』

 

キラも同じ疑念を抱いていた。彼らはそれぞれ独断で動くことが多く、ある程度の時間が経過すると一斉に撤退する。アスランは眉をひそめ、さらに言葉を続ける。

 

『ちょっと正規軍とは思えないな』

 

「自由すぎるな、あとチームワークがまるでなってない」

 

キラはアマキの言葉に頷きながら、さらに疑念を深めていく。

『それに…ナチュラルでもないみたいだね』

 

「なんにせよ、また相手するだけだ」

 

ふぅと息をついて、アスランは二人に声を掛ける。

 

『そうだな、とりあえず戻ろう』

 

三機はメンデルへと帰還することにした。だが戻った先で、ストライクとバスターが未帰還であることを知らされるのだった。

 

◇◇◇

 

戦闘を終えたばかりのアークエンジェルでは、疲労の色が濃く滲むメンバーたちがブリッジに集まっていた。誰もが一息つく間もなく、次の指示を待っていたその時、バルトフェルドからの通信が入る。

 

「ストライクとバスターから、まだ連絡がない」

 

その報告に、ブリッジ内の空気が一瞬で張り詰めた。マリューはモニターを見つめながら、眉を寄せて不安げな表情を浮かべる。沈黙が続く中、キラが声を上げた。

 

『僕が行きます。みんなは今のうちに、補給と整備を』

 

その言葉に続いて、アマキもすぐに名乗りを上げる。

 

「私も行くよ。ちゃんと連れ戻してくるから大丈夫!マリューさんは帰ってきたら叱ってあげて」

 

モニター越しに映るマリューへ、アマキは余裕たっぷりにウインクを送る。その仕草に、マリューの表情がわずかに緩み、ほっとしたような笑みがこぼれた。キラとアマキなら、きっと無事に見つけてくれる——そんな希望が胸に灯る。

アスランは二人の決意を受け止め、静かに言葉を返す。

 

『オレはここに残るぞ。まだ来るとも限らないからな』

 

『うん、お願いアスラン。アマキは、一緒に行こう。その方が暴走しなさそうだから』

 

キラの言葉に、アスランは苦笑しながら頷いた。

 

『まぁ、アマキはキラといた方がいいな。うん。二人とも無茶はするなよ』

 

本音では「アマキといると胃がキリキリする」と思っているが、それは口にしない。代わりに、少しだけ優しさを滲ませる。

 

『うん。無茶はしないよう頑張るよ。アマキは暴走するかもしれないけど』

 

『そうなったら仕方ない。なるようになるはずだ』

 

『うん』

 

うんうんと頷き合う二人のやり取りに、アマキが小さくツッコむ。

 

「ちょっと酷いこと言ってない?」

 

だがその声は、軽く流されてしまう。もはや、なるようになれ——そんな空気が漂っていた。

その時、ラクスが全艦へ向けて通信を発信する。彼女の声は澄んでいて、しかし芯の強さを帯びていた。

 

「各艦は、補給、整備を急いで下さい。向こうの港にザフトが居るとなれば、事態は再び切迫します。わたくし達は、今ここで討たれるわけにはいかないのです」

 

その言葉に、艦内の空気が再び引き締まる。フリーダムとスノーホワイトは並んで格納庫を飛び出し、メンデルの内部へと急ぎ向かっていく。二人の背中には、仲間を取り戻すという強い意志が宿っていた。

 

◇◇◇

 

まさか死んだはずの友との再会が、こんな形で訪れるとは——イザークは予想を大きく裏切られた。

地球軍に乗っ取られたと思っていたバスターから、聞き慣れた声が届いた瞬間、彼は縋るように問いかけずにはいられなかった。

 

『ディアッカ…本当に貴様なのか…?』

 

『ああ…そうさ』

 

その答えに、イザークの胸中で驚きと怒りが同時に爆発する。生きていたことは嬉しい。だが、今こうして敵として対峙している現実は、彼の中で許しがたいものだった。

 

『…それが何故、ストライクと共に居る!?どういうことだ!貴様!生きていてくれたのは嬉しい。…が、事と次第によっては貴様でも許さんぞ!』

 

『イザーク…』

 

ディアッカも、こうなることは覚悟していた。言葉を尽くしても、今のイザークには届かない。どうすればいいのかと迷っていたその時——

上空から、フリーダムとスノーホワイトが颯爽と現れる。

 

『ディアッカ!』

 

「イザークがいるー」

 

『キラ!アマキまで!』

 

『あれは!?なぜ俺の名前を…くぅぅ…』

 

モニターに映るのは、かつてパナマで自分の機体に蹴りを入れて脱出を促した、あのザフト奪取機——フリーダムとスノーホワイト。屈辱の記憶が蘇り、イザークは怒りに任せて攻撃態勢に入ろうとする。

だがその瞬間、ディアッカが機体を割り込ませ、強く制止する。

 

『止めろ!イザーク!キラ、アマキも!』

 

三機は手前で動きを止め、空間に一瞬の静寂が訪れる。

 

『元より攻撃するつもりはないよ。ただ無事でよかった』

 

「挨拶していいかな」

 

『駄目』

 

『ああ、こいつは俺に任せてくれ。それとアマキは放し飼いしとくなよ。こえーからな』

 

キラはディアッカの無事を確かめたかったし、アマキは挨拶したかった。だが、ここで余計な火種を生まないよう、キラは判断し、スノーホワイトの手を取る。

 

『アマキに関しては大丈夫。僕がしっかり捕まえてるから』

 

『じゃあ、おっさんの方よろしくな』

 

「キラ、挨拶は?」

 

『フフ、あとでしようね。じゃ行こうか。あ、僕とアスランみたいにはならないでね』

 

『は!?アスラン!?』

 

「あーあ、せっかくの挨拶がー。イザークー!ニコル生きてるからねーまた後で会おうねー」

 

『はぁ!?』

 

余計な一言を残して飛び去るスノーホワイト。ディアッカは内心「説明しなくちゃいけねーだろ…」と愚痴りながらも、先ほどまでの緊張感は少し和らいでいた。

 

フリーダムに引っ張られ、スノーホワイトはあっという間に高速で飛び去っていく。残されたディアッカは覚悟を決め、ハッチを開いた。

 

「銃を向けずに話をしよう。イザーク!」

 

イザークもまた、ディアッカとの対話を望み、ハッチを開く。そして、飛び去った方向を指さしながら唾を飛ばして叫んだ。

 

「というか、さっきのはなんだあの女は!!」

 

「ああ、アレ、エリスのパイロットだよ」

 

「ああん!?」

 

ついヤンキー化してしまうイザークだった。

 

◇◇◇

 

その頃、探し人であるムウ・ラ・フラガは、クルーゼとの激戦の渦中にあった。機体性能の差は歴然としており、ストライクは徐々に押され始めていた。だがムウは、諦めることなく喰らいついていた。

 

『くぅぅ!』

 

『貴様に討たれるならそれもまた…とも思ったがね、ここで!』

 

『う!』

 

クルーゼのゲイツが接近し、力任せにストライクの腹部へ蹴りを叩き込む。衝撃で機体が後方へ跳ね、距離が開く。

 

『だがどうやら、その器ではないようだ』

 

冷酷な言葉とともに、シグーがビームライフルを連射。ストライクの装甲をかすめる光が、ムウの視界を焼く。機体の重さが動きを鈍らせていると判断したムウは、ランチャーパックを切り離し、両手にアーマーシュナイダーを装備して応戦の構えを取る。

だがその瞬間、ビーム砲内蔵型ロケットアンカーが襲いかかる。ストライクの右腕と腹部に直撃し、爆発が起きる。衝撃はコクピット内部にまで達し、計器が軋み、破片がムウの身体に突き刺さる。

 

『なに?うわっ!がっ!』

 

『やはり運命は私の味方だ。…何!?』

 

クルーゼが勝利を確信したその時、空からフリーダムとスノーホワイトが急降下してくる。

 

『ムウさん!』

 

「援護はまかせろっ!」

 

スノーホワイトのビームがゲイツの腕部に命中。爆発が起き、続けざまに頭部を吹き飛ばす。フリーダムが高速で降下し、ビームサーベルを振り抜いてゲイツの胴体を真っ二つに切断。機体は地面に墜落した。

 

「ぅぅ…」

 

『ムウさん!』

 

「チィ!」

 

クルーゼはゲイツの損傷を確認すると、即座にハッチを開き、コクピットから軽やかに脱出。瓦礫の間を縫うように逃走を図る。その姿を視界の隅で捉えたムウは、負傷した身体を押して銃を手に取り、コクピットから身を乗り出してクルーゼに銃口を向ける。

引き金を引くと、弾丸が空を裂く。クルーゼも応戦の構えを見せ、容赦なくムウに向けて発砲する。

 

「今日こそ付けるかね?決着を!」

 

数発撃ち込みながら、クルーゼは廃棄された建物の奥へと姿を消す。ムウはその背を追い、執念を燃やしていた。

 

「くっ…あの野郎、何を…」

 

「ならば来たまえ!引導を渡してやるよ。この私がな!」

 

「くっそー!」

 

「ムウさん!」

 

キラが呼び止める声も、ムウには届かない。彼は迷いなく、廃棄施設の中へと足を踏み入れていく。

その様子を見ていたアマキは、胸の奥に嫌な予感を覚えていた。だが「ムウを連れて帰る」と宣言した以上、引き下がるわけにはいかない。コクピット内から銃と短剣、そしてなぜか買い物袋を肩に掛けて、降りてきたキラと合流する。

 

「仮面って蒸れないかな、あの人」

 

「後で聞いてみればいいよ!ほら!僕たちも行くよ!」

 

「はーい」

 

あまり乗り気でないアマキに対して、キラは銃を手に追いかける気満々だった。二人は駆け足で、ムウの後を追って廃墟の闇へと消えていく。

 

◇◇◇

 

一方、イザークとディアッカは地上に降り、互いに距離を取ったまま対峙していた。風が吹き抜ける荒野の中、二人の間には言葉にできない重い空気が漂っていた。

 

「イザーク…」

 

「くっ!」

 

「あっ!」

 

イザークが銃を構えた瞬間、ディアッカは思わず声を漏らす。やはり警戒されるか——そう思い、少し落胆するが、それを表情には出さない。自分がイザークを傷つけてしまったことは、否定できない事実だった。

 

「敵のそんな言葉を信じるほど、俺は甘くない!」

 

イザークの声は鋭く、冷たく響いた。その瞳には怒りと疑念が宿っている。だが、ディアッカは逃げなかった。深く息を吐き、真剣な眼差しで問いかける。

 

「…ニコルは生きてるし、アスランもちゃんと俺たちと一緒にいる。…なぁ、俺はお前の敵か?」

 

その言葉に、イザークの表情が揺れる。戸惑いと怒りが交錯し、拳が震える。

 

「敵となったのは貴様の方だろうが!」

 

「俺はお前の敵になった覚えはねぇよ」

 

イザークは苛立ちを隠せず、声を荒げる。今の彼には、すべてを受け入れる余裕などなかった。何を信じるべきか——その道を、彼は迷っている。

 

「ふざけるな!貴様も裏切り者だ!」

 

「プラントを裏切ったつもりもない!」

 

ディアッカの声は静かだが、芯が通っていた。彼にとってプラントは故郷であり、守るべき場所だ。だが、憎しみの連鎖を断ち切らなければ、戦いは終わらない——そのことを、彼は痛感していた。

 

「なんだと!」

 

イザークの怒りはさらに高まり、拳を握りしめる。だが、ディアッカは一歩も引かず、言葉を続ける。一瞬、言葉に詰まりながらも、彼は自分の信念を貫こうとした。

 

「けど、ただナチュラルを…黙って軍の命令に従って、ナチュラルを全滅させる為に戦う気も、もうないってだけだ。俺は、俺たちは操り人形じゃない」

 

その言葉に、イザークは目を見開き、沈黙する。銃を握る手がわずかに震え、彼の心には混乱と怒りが渦巻いていた。信じたい気持ちと、裏切られた痛みがせめぎ合い、彼はまだ答えを出せずにいた。

 

◇◇◇

 

中に入ると、何発か銃撃音が壁に反響しながら響いた。キラとアマキは即座に身を低くし、互いに目を合わせてアイコンタクトで頷き合う。足音を殺しながら階段を駆け上がり、音の発信源へと向かう。

 

「ここがなんだか知っているかね?ムウ」

 

「知るか!この野郎!」

 

ムウは壁際に身を寄せながら叫ぶ。血の滲む腰を押さえ、顔をしかめている。クルーゼの言葉に苛立ちを隠せず、声を荒げた。

 

「罪だな、君が知らないというのは」

 

クルーゼは薄く笑いながら、ゆっくりと歩を進める。ムウは銃を構えようとするが、腕が震えてうまく持ち上がらない。傷の痛みが限界に近づいていた。

そこへ、物陰からキラとアマキが飛び出す。アマキが先にムウを見つけて声を上げる。

 

「ここにいたっ!怪我してるしー」

 

「ムウさん!」

 

キラは駆け寄り、ムウの肩に手を添える。アマキは買い物袋を肩から外し、しゃがみ込んで中身を漁る。

 

「キラ、アマキ…きちまったのかよ」

 

ムウは苦笑しながら顔を向ける。二人の姿に、わずかに表情が和らぐ。

クルーゼはその会話を聞きながら、キラという名前に反応する。目を細め、視線を鋭く向ける。

 

(キラ?ヤマト、生きていたのか…。アマキ、とは……例のパイロットか…)

 

アマキはキラに周囲の警戒を頼み、ガーゼと包帯を取り出してムウの腰に巻き始める。手際は早く、無駄がない。さらに、怪しげな瓶を取り出して蓋を開ける。その瓶のラベルにはイタミトレール君と書いてあった。

 

「グハッ!まずっ」

 

「全部飲め」

 

「鬼かよ」

 

ムウは顔をしかめながらも、言われるがままに飲み干す。アマキは満足げに笑う。

 

「まだあるから怪我したらもっと飲ませるよ」

 

ムウは「遠慮します」と小声で返し、試しに手をワキワキと動かしてみる。痛みが少し引いたような気がして、眉をひそめる。

 

「君まで来てくれるとは嬉しい限りだ、キラ・ヤマト君」

 

「チィ…」

 

「そうか…君がフリーダムのパイロットか。そして、彼女がスノーホワイトの…、アマキ・カンザキ」

 

クルーゼはゆっくりと歩きながら語り始める。キラは眉をひそめ、アマキはすでに銃を腰に構えていた。

 

「さぁ遠慮せず来たまえ。始まりの場所へ!キラ君、君にとってもここは生まれ故郷だろ?」

 

「はぁ!?」

 

「引っかかるんじゃない!奴の言うことなんか、一々気にすんな!」

 

「行くよ!」

 

アマキが先頭を走り、扉の隙間から顔だけ覗かせてキラたちに指先で「来い」と合図する。ムウは銃を握り直し、キラはアマキの背を追って走る。

中に入ると、そこは水が張られた実験施設のような空間。筒状の物体が並び、天井から冷たい光が差し込んでいた。

アマキは足を止め、眉間に深い皺を寄せて周囲を睨む。

 

「………」

 

「何だここは?」

 

「……キラっ!…」

 

その瞬間、銃弾が飛んできてアマキは反射的にキラに飛びつき、押し倒して庇う。キラは床に背中を打ちつけながらも、アマキの腕の中で目を見開く。

ムウはすぐに銃を構え、発砲するが、クルーゼの姿はすでに消えていた。足音だけが遠くに響く。

 

「ごめん」

 

「大丈夫、でもよそ見はしないで」

 

アマキはキラの頬に手を添えながら、釘を刺すように言う。キラは頷き、立ち上がる。

三人は慎重に奥へ進み、やがて開けたフロアに出る。そこにはクルーゼが待ち構えていた。銃弾が飛び交い、三人はソファの裏に身を隠す。

「懐かしいかね?キラ君」

 

「いえ全然」

 

キラの即答に、クルーゼは一瞬言葉に詰まるが、すぐに調子を取り戻す。

 

「!……君はここを知っているはずだ」

 

キラは隣のアマキに顔を寄せてこそこそと話しかける。

 

「なんか言ってるよ。あの人。怖いね」

 

「そうね、自分を語りたいんだよ、きっと」

 

「ぶっ!!」

 

ムウが思わず吹き出す。クルーゼは苛立ち、数発銃を発砲する。ソファの背が弾丸で裂け、布が舞う。

 

「やべ、聞こえたか」

 

「怒ってるね」

 

「お前ら静かにしろ」

 

三人がそれぞれ喋る中、クルーゼは冷淡な笑みを浮かべながら続ける。

 

「少し黙っていてもらえるかね?せっかくここまできたのだから、全てを知ってもらおうではないか」

 

そう言って、クルーゼは一枚の写真を投げてよこす。キラがそれを拾い上げると、そこにはカガリから見せてもらった母親と双子の赤ちゃんの姿が写っていた。

 

「なんでこれが」

 

「可愛いね二人とも」

 

「ん?」

 

続けて投げられたのは、大きなファイルと数枚の写真。ムウはそれを見た瞬間、息を詰まらせる。

 

「…親父!?」

 

写真には、幼いムウと息子を肩車して微笑む父親、アル・ダ・フラガの姿。破棄された施設に残されたファイル、胎児のような遺体、実験施設——それらが繋がる真実。

クルーゼは不敵な笑みを浮かべながら語り続ける。

 

「君も知りたいだろう?人の飽くなき欲望の果て、進歩の名の下に狂気の夢を追った、愚か者達の話を。君もまた、その息子なのだからな」

 

「は?」

 

キラは怪訝そうな視線を向けるが、クルーゼはその反応に気づかず、語りを止める気配はなかった。

 

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