腹減り少女はSEED世界で爆発少女にレベルアップする 作:サボテンダーイオウ
誰もが夢を見る。
もし、たった一つの才能で名声を手にできるなら。
もし、誰よりも優れた頭脳を持てるなら。
容姿端麗、頭脳明晰、運動神経抜群──そんな理想を叶える存在、それが「コーディネーター」だ。
人の願望を形にする、神の領域に踏み込んだ技術。
だが、その夢には影がある。
美しさの裏には歪みがあり、完璧の裏には闇が潜む。
その闇の中で育った男──ラウ・ル・クルーゼ。
彼にとってキラ・ヤマトは、手の届かない存在だった。
完璧に創られた“完全体”であるキラに、嫉妬しない日はなかった。
壮絶な幼少期、歪んだ心。
クルーゼの中で、キラへの憎悪と羨望が渦を巻き、今まさに爆発しようとしている。
彼はキラにすべてをぶつけることで、自らの存在を証明しようとしていた。
──だが、クルーゼは知らない。
キラ・ヤマトが“本当の意味で”彼の知るキラではないことを。
その真実が、彼の運命を大きく狂わせることになるとも知らずに。
暗く閉ざされた室内。
重たい空気の中、クルーゼの芝居がかった声が静寂を切り裂くように響いた。
「ここは禁断の聖域──神を気取った愚か者たちの夢の残骸だ。
君は知っているのかね?今の両親が、君の“本当の親”ではないということを」
彼は、キラの顔が絶望に染まる瞬間を待っていた。
だが──
「知ってます」
キラは真顔で即答した。
一切の動揺もなく、まるで天気予報でも聞いたかのような反応。
そのあまりの冷静さに、クルーゼは逆に戸惑った。
「ぬんっ!?……あ、そ、そうか……そういうこともあるものだ。フフ、さすがキラ・ヤマト。これくらいで動揺などしないということか」
思わず奇妙な声を漏らしてしまったクルーゼは、気を取り直して話を続けようとする。
だがその隙を、アマキが軽やかに突いた。
「ねー。とっくに教えてもらったもんねー」
「うん。アマキがいるから、そんなに気にならないけどね。それより、前置き長いです。結論をどうぞ」
アマキには柔らかな笑顔で、クルーゼには再び無表情で。
キラの「早く帰りたい」オーラは隠しきれていない。
ムウから見ればいつものキラだが、あまりに動じない姿に、逆にムウが動揺していた。
クルーゼは信じられないという顔でキラを指差し、ムウに向かって叫ぶ。
「なんなのだ!コイツは!」
「いや、俺に言われても……キラは前よりポジティブになったからな」
頬をぽりぽり掻きながら、ムウが苦笑する。
「ポジティブになりすぎだろう!?……フ、失礼。私としたことが取り乱したようだ。
てっきり死んだものだと思っていたよ。あの双子──特に君はね。
ヒビキ博士と共に、当時のブルーコスモスの最大の標的だったのだからな」
「へぇ、なるほど。で?」
キラの淡々とした切り返しに、クルーゼはめげずに話を続ける。
頑張れ、クルーゼ。
「ぐぅぅう……!だが君は生き延び、成長し、戦火に身を投じてなお存在し続けている。なぜだ?なぜ君は……!」
彼は言いたいのだ。
キラは“ここ”で生まれたから、普通のコーディネーターとは違うのだと。
だが、その思いはキラにはまったく伝わっていなかった。
敵を前にして、キラは一歩踏み出すと、アマキの手をそっと両手で包み込んだ。
その瞬間、空気がふっと変わる。
彼らの視線が絡み合い、周囲の緊張感をまるで無視するように、静かな微笑みが交わされる。
──なんという余裕だ。
だがキラの脳裏には、あの衝撃的な出会いが鮮明に蘇っていた。
「はらへった」と女子に言われた、人生初の衝撃。
あの瞬間のインパクトは、今でも心に深く刻まれている。
キラはアマキを見つめながら、ふわりと笑った。
「それはアマキを拾った運命だったからかな。えへ、これも愛の力だね」
「キラ、それ今関係ないから!」
アマキは顔を赤らめ、キラの手を引こうとするが、キラは離さない。
そのまま彼女の目を見つめ続ける。
まるで敵の存在など眼中にないかのように。
クルーゼはその様子に耐えきれず、仮面を剝ぎ取ると、怒りに任せて床へ叩きつけた。
金属音が室内に響き渡る。
「グァァー!!」
「俺もこれ見せられると塩吐きそうだわ…」
ムウは額に手を当てて目を伏せる。
クルーゼはムウそっくりの素顔を晒しながら、肩を上下させて荒く息を吐いていた。
怒りと混乱が入り混じり、しばし言葉を失う。
だが、彼は髪をかき上げ、最後の切り札を放つ。
「だが、これならどうかな!君は人類の夢──最高のコーディネイターだっ!」
「はぁ、そうですか。それで?」
──ガビーン。
クルーゼ、膝をついて崩れ落ちる。
拳を床につけ、震える肩。
心が折れた。折れるしかなかった。
「ええっ!?それで?それだけか君は!もっとこう…あるだろう!?」
キラは首を傾げ、しばし考え込む。
そして、アマキの手を握ったまま、ふと笑顔を浮かべた。
「あ、そうか。いやでも考えようによっては僕ってすごいのか。だったらこれで堂々とアマキの隣に立てるね」
「「「ええっ!?」」」
キラ以外の全員が同時に驚愕。
ムウは椅子から半分立ち上がり、アマキは一歩後ずさる。
クルーゼはその場で硬直した。
「一応僕、気にしてたんだよ。アマキって何でもできるでしょ?だから少し不安だったんだ。でも僕もこれで“選ばれた存在”だから、なおさらアマキに相応しいよね。ね?」
「ポジティブすぎて怖いっ!」
アマキはキラの手を振りほどこうとするが、キラは笑顔のまま握り続ける。
そして──
「ガハッ!!」(血反吐)
クルーゼ、精神攻撃により物理的ダメージを受ける。
口元から血が滴り、彼は床に手をついてうずくまる。
「ええ!?精神攻撃喰らって血吐いたぞ!?大丈夫か?」
ムウが思わず駆け寄りそうになるほど、クルーゼは疲弊していた。
キラのアマキへの愛の深さに。
その愛に、彼は──勝手に、敗北した。
◇◇◇
その頃、戦場の空気は一変していた。
ナスカ級戦艦が3隻、背後から迫る。
アストレイ三人娘はモニターを見て絶句する。
『後ろにナスカ級3隻なんてどうすりゃいいのよ!』
『M1じゃドミニオンの3機はちょっと辛いって!』
『ちょっとどころじゃないわよ!死ぬわよ!』
機体を急旋回させながら、三人は叫び合う。
通信回線は悲鳴と怒号でいっぱいだ。
一方その頃、イザークとディアッカは別の意味で動揺していた。
モニターに映る味方の顔ぶれに、イザークは目を見開く。
「ラクス・クラインにバルトフェルド隊長、そしてアスランまでもか…」
「ああ」
「何故だディアッカ!何故なんだ!」
「こっちにはさ、女の子がいっぱいいるんだよ。ガンダム三人娘とか、金髪のお姫様とか…艦長と副艦長とか、ヤバいぜ」
「アア!?」
イザークは拳銃を握りしめながら、叫ぶ。
ディアッカは肩をすくめて笑う。
そして、エターナル。
艦内ではキラ達がなかなか戻らないことに、アスランが苛立ちを募らせていた。
ジャスティスのコックピットに飛び乗ろうとする彼を、ラクスの声が制する。
「認めません。アスランは指示があるまで待機していて下さい」
アスランは足を止めるが、眉間に深い皺を寄せたまま振り返る。
『しかし…4機とも戻ってこないと言うのは…』
「ならば尚のことです。これ以上迂闊に戦力は割けません。ドミニオンの攻撃もいつ再開されるか分からないのです」
『くっ…』
「アマキ様達は必ず戻ります。わたくしたちは信じて戦うのみですわ」
ラクスの声は静かだが、確信に満ちていた。
その瞳には、アマキへの絶対的な信頼が宿っている。
──そして、確かにその信頼は正しかった。
キラはアマキへの愛が深すぎて、敵の挑発にもへこむどころか、すんなりと受け入れてしまう。
ポジティブの極み。
それはもはや、精神防御を超えた“愛のバリア”だった。
これも、愛ゆえである。
◇◇◇
場所はメンデルの片隅。
瓦礫の間にスペースを見つけた四人は、丸くなって腰を下ろした。
戦場の喧騒から一歩離れたその空間は、奇妙なほど静かだった。
クルーゼは、静かに口を開いた。
その声は、メンデルの静寂に溶け込むように低く、しかし確かに響いた。
「僕は──人の自然そのままに、ナチュラルに生まれた者ではない。受精卵の段階で人為的操作を受けて産まれた、造られた命だ」
その言葉に、場の空気が一瞬止まる。
だが、アマキはさらりと笑って言った。
「キラの仲間だって。すごいね」
クルーゼは目を見開いた。その反応は予想外だった。アマキにとって自分が守る者か、敵かそれだけで区別になる。
彼にとって“仲間”という言葉は、遠い世界のものだったからだ。
「え、仲間?この僕が、すごいだと?」
ムウが肩を揺らして笑う。
「おー、すごいぞお前ら。クルーゼの目が点になってるぞ」
クルーゼは言葉を探すように視線を泳がせた。
「すごい…僕が凄い?何を突然……。僕は失敗作だ」
その言葉に、キラが優しく微笑みながら続ける。
「人に失敗作もなにも関係ないよ。ナチュラルだけどコーディネーターの中に紛れてその地位までこれたなんて、もうそれだけで彼の実力だもんね。貴方は凄いですよ」
クルーゼは拳を膝の上で握りしめ、肩を震わせた。
その瞳に、初めて光が差し込む。
「!!わ、私は、私は……僕は褒められたかった、ただ褒められたかった」
アマキはそっと彼の肩に手を置き、笑顔でサムズアップする。
「そうだね。貴方は頑張ったよ。その頑張りを無駄にしちゃいけない。戦争を企ててる奴らの手のひらで踊るなんて嫌じゃない。アイツらを逆にギャフンと言わせなくちゃ楽しくないでしょ」
その言葉に、クルーゼは目を潤ませながら見上げた。
彼女の姿が、まるで後光を背負っているように見えた。
「……あぁ、君は運命の女神、フォルトゥナの再来か」
ムウは腕を組みながら冷静に言う。
「あ、これはオチたやつだな」
沼にハマったら戻ってこられない。
戻りたいと思う者がいないのが今の現状だが、彼はどの程度のレベルなのか──。
クルーゼは膝を抱え、虚空を見つめながら呟いた。
「だが僕は長生きできない。不完全な命だからな。フッ、所詮紛い物だ。だから僕は全てをうら──」
「寿命を伸ばすことだったらできるかも」
「「はい?」」
あまりにも軽すぎる一言に、キラとムウが同時に声を上げた。
人類の夢が、そんなノリで出てくるのか。出てくるのか。
アマキは買い物袋に頭を突っ込んで、ガサガサと探り始める。
「いや、知り合いから前にお試しでもらった『命ノビールくん』って怪しげな薬があってさ。臭そうだから飲まなかったけど、今アイツ魔法使いになってるから頼めば実験対象として協力してくれるかも。そういうの好きで研究してるし。試しに飲んでみる?味は保証しないけど」
キラはさらっと受け止める。
「へー、なんでもありだね」
ムウは額を押さえて呻いた。
「やめとけ、クルーゼ、絶対死ぬフラグだぞ」
だがクルーゼは、もう迷いのない顔になっていた。
目がキラキラしている。
気分は完全にハイ。
「……もはや先のない僕に、死ぬことなど怖くはない。試させてもらおうか」
キラに続いて、クルーゼも前向きになった。
前向きの連鎖である。
だが袋の中には見つからず、アマキは髪を手櫛で整えながら言った。
「エターナルの部屋に置いてきたから一緒に来るか。戦争止めないとだね」
クルーゼは「ふむ」と頷き、片手を差し出す。
「共に行こうか」
その瞬間、アマキは懐から手錠を取り出し、ガシャンと掛けた。
一切の躊躇なし。
まるでこの瞬間を待っていたかのように。
「……あ」
クルーゼは手錠を見つめて呆然。
だがすぐに諦めたように肩を落とす。
「銃ちょーだいね。あと武器とか持ってない?」
アマキが手を伸ばすと、キラがすかさず止める。
「僕がやるよ」
「俺もやる」
男二人に囲まれ、クルーゼは不快そうな顔をしつつも、武器はすべて没収された。
アマキは手錠にロープをくくりつけ、その端を手に巻き付ける。
「じゃ、帰ろう」
キラはすんなりと答える。
「うん」
三人は並んで出口へ向かって歩き出す。
クルーゼはアマキの後ろに続いた。
(あーあ、俺知らねーぞ)
ムウは頭を抱えた。
これは絶対マリューに叱られるパターンだ。
しかも怪我してる分、二倍怒られる。
帰り道、アマキから「けがなおるんちゃん」を渡され、ムウは鼻をつまみながら飲んだ。
意外にもフルーティーな味だったが、飲んだ後で副作用の腹痛を聞かされ、叫びたくなった。
◇◇◇
一方ドミニオンではクルーゼ不在のままやきもきしているアデス率いるナスカ級を警戒していたが、アズラエルが後ろでピーピーわめくので仕方なく発進の号令をかける艦長によりドミニオンはアークエンジェルへ向かうことになった。
そしてイザークとディアッカは、まだ涙の再会を続けていた。
「フリーダムのパイロット、あいつが前のストライクのパイロットさ。そしてエリスは……ナチュラルの女の子だ」
「はぁ?!」
あのクソ生意気なエリスのパイロットが、さっきの呑気そうな声の女だなんて──イザークには到底信じられなかった。
だが、今のディアッカに嘘をついている様子はない。
次々と明かされる真実に、イザークは戸惑いを隠せなかった。
「キラはコーディネイターだ。アスランとは、ガキの頃からの友達だってよ」
「……なんだと……」
「オレには奴らほどの業も覚悟もねぇけどさ……見ちまったから。あいつら見て、アラスカやパナマやオーブ見て、それでもまだザフトに戻って、軍の命令通りに戦うなんて事、オレには出来ねぇよ」
「ディアッカ!」
「女の子、ウハウハだしさ」
「きっさま~~~!!」
にやけた顔が、イザークの逆鱗に触れた。
自分よりも自由で、恵まれた環境にいることが、どうしようもなく腹立たしい。
その横っ面を、今すぐはたきたくて仕方がなかった。
◇◇◇
アークエンジェルのブリッジに警報が鳴り響いた瞬間、空気が一変した。補給を終えた三機とドミニオンの接近が確認され、乗員たちは一斉に端末へと手を伸ばす。椅子が軋み、ブーツが床を打つ音が重なる。
「艦長!」
「来たわね」
マリューは目前を見据え、
「…動き出したな!」
ナタルは立ち上がり、帽子をキュッと被り直す。視線は前方スクリーンに釘付けだ。ミリアリアが素早く指を走らせ、情報を読み上げる。
「ドミニオン、距離50。グリーンブラボーにて接近中!」
「総員、第一戦闘配備!」
警報が赤に切り替わり、艦内の照明が戦闘モードへと移行する。乗員たちは走り、跳ねるように持ち場へ。金属の床が振動し始める。
「熱源3、接近中。照合完了――あの3機です!」
メンデルから飛び立ったジャスティスが先頭を切り、後方にはアストレイ三機が編隊を組む。
アスランは艦の外壁を滑るように飛びながら、通信を開く。ヘルメット越しに鋭い視線を向け、三人娘に指示を飛ばす。
「君たちは艦の防衛を」
「「「了解!」」」
三機が即座に散開し、アークエンジェルとクサナギの周囲を守るように旋回する。機体のスラスターが青白く輝き、空間に軌跡を描く。
艦内では、ナタルの指示のもと、迎撃準備が急ピッチで進む。
「ナスカ級の動きに注意!」
「ゴットフリート照準、コリントス装填!」
砲塔が回転し、主砲が唸りを上げる。エターナルも出撃準備を完了し、艦体が振動とともに加速する。
「主砲、発射準備完了。アンチビーム爆雷、投下開始!母艦を沈める!」
一方、ドミニオン側のパイロットたちは、ジャスティスを捕捉するも、スノーホワイトの姿がないことに舌打ちを漏らす。
『赤いのか…』
『おいおい、1機だけかよ。白い奴はどうした?』
『つまんねぇな。ま、暴れられるならそれでいいか』
アスランはその声を聞くことなく、コックピットの中で静かに“種割れ”を起こす。視界が冴え渡り、指先の感覚が研ぎ澄まされる。彼は一気に加速し、敵陣へと突入する。
ドミニオンからは、ゴットフリートが一撃必殺の勢いで放たれ、ミサイルが四方から飛来する。空間が爆発の光で染まり、衝撃波が艦体を揺らす。
「次は墜とすぞ。ゴットフリート、発射!」
マリューが即座に指示を飛ばす。
「回避!」
「ミサイル4、グリーンアルファ!」
「取り舵10度!」
アークエンジェルが急旋回し、爆雷を撒きながらミサイルを迎撃する。砲火が交差し、空間が戦場へと変貌する。アスランは敵機の間を縫うように飛び、ビームサーベルを抜き放つ。
戦いは、今まさに始まった。
その頃、事態の急変を察知したディアッカとイザークの元へ、手錠をかけられたクルーゼを伴ってキラたちが戻ってきた。
「隊長!?なぜそいつらとっ」
イザークが目を見開き、思わず一歩踏み出す。だがクルーゼは冷静に、まるで何事もないかのように答えた。
「イザーク。私は彼らと共に行く。アデスには悪いと伝えておいてくれ」
その言葉のあっさりさに、イザークは言葉を失う。唖然としたまま、口を開けて固まる。
「なっ…!!」
その隙を突くように、アマキがくるりと振り返り、いたずらっぽく笑って声をかける。
「イザークも一緒に来る?別に構わないけど」
「な、なにをっ!!」
思わず顔が赤くなるイザーク。エリスのパイロットと意識した瞬間、胸がドキリと鳴った。見た目は麗しい少女――だが、腹ペコ野生児というギャップを知る者には複雑な感情が湧く。
ディアッカが肩をすくめて苦笑しながら、手をひらひらと振って先を促す。
「あー、今は急いだほうがいいぜ。戦闘も始まってるしな」
「あ、そうだね。じゃあクルーゼさん連れてくから、あとで合流しようねー」
アマキはロープをしっかりと握り直し、手をぶんぶん振って挨拶すると、くるりと踵を返して駆け出した。髪がふわりと舞い、足音が遠ざかる。
キラも軽く会釈をしてそれに続く。
「すみません、失礼します。ムウさんも行きますよ」
「あ、ああ。じゃあな」
「い、いやちょっと待て!!」
イザークの制止も虚しく、四人はまるで嵐のように駆け足で去っていく。残されたイザークは、ただ呆然と立ち尽くす。
ディアッカは最後にバスターへ乗り込みながら、ヘルメット越しに声を投げた。
「そういうことなんで、よかったら来いよ」
機体が浮き上がり、スラスターの光が壁を照らす。イザークはその背を見送りながら、拳を握りしめて叫んだ。
「説明せんとわからんだろうがーーーー!!」
怒鳴り声が通路に響き渡る。だがその胸の奥には、確かに何かが芽生えていた。
混乱、苛立ち、そして――妙な期待。
◇◇◇
ミリアリアが通信席で指を走らせながら、必死に呼びかける。
「アマキさん!ディアッカ!キラ!ムウさん!応答して!」
その声がブリッジに響く中、外では激しい戦闘が続いていた。
ドミニオンから放たれたゴットフリートが空間を裂き、アークエンジェルの艦体を狙う。
「ゴットフリート、てぇ!」
マリューは即座に指示を飛ばす。
「回避しろ!艦首下げ、ピッチ角20!へっ、どうだ~?」
ドミニオン艦長の指示により艦が滑るように傾き、砲撃がかすめていく。ブリッジの床が軋み、乗員たちがバランスを取りながら操作を続ける。
その頃、ジャスティスは三機を迎え撃つべく前線へ。
レイダーのミョルニルが唸りを上げて飛来するが、アスランは機体をひねってかわし、ビームライフルを連射。
『こらあぁぁ!!』
『ええぃ!』
フォビドゥンがレイダーを庇い、二枚の盾を展開。曲がるビームが空間を歪ませる。
『はん!』
ジャスティスはその軌道を読み切り、反撃に転じる。だが次の瞬間、カラミティの砲門が火を吹く。
『どけお前ら!』
強烈なビームがジャスティスを狙い、アスランは急加速で回避するも、機体が一瞬揺れる。
その様子をモニター越しに見ていたラクスが、バルドフェルドに声を飛ばす。
「ジャスティスの援護を!ミーティアはまだ使えませんか?」
「起動完了まであと1分30秒!」
アークエンジェルでは、ナスカ級の動きに注目が集まっていた。
「デブリを盾に回り込んで!ナスカ級は?」
「依然、動きありません!」
マリューは眉を寄せる。何かが起きている――その勘が、アマキ関連では特に鋭くなる。
その時、ミリアリアが声を上げる。
「艦長!4機が戻ってきました!ストライクが損傷しています!」
「なんですって!?」
通信が開かれ、キラの声が入る。
『すいません。マリューさん。…クルーゼさんを連れてきました』
ブリッジが一瞬静まり返る。マリューの顔が凍りつき、周囲の空気がひやりと冷える。
「は?」
絶対零度の艦長が降臨した。戦闘中にも関わらず、鳥肌を立てる乗員が続出する。
「悪いことは言わないから元の場所に捨ててきなさい」
『えー?もう約束したしー悪いことしないって言ってるしーいいじゃん!』
アマキのぶーたれた声が返り、マリューの手元のひじ掛けに力が入り――めきっとヒビが入る。
「艦長!アマキがああも言っているのですから許して差し上げては」
ナタルがまさかの援護射撃。マリューは目を見開き、顎が外れそうになる。
「ナタル!アレは捨て猫じゃなくて敵の大将みたいなものよ!?」
「しかし…」
眉を八の字にしてなおも食い下がるナタル。マリューは頭を抱えたくなる。
「しかしもかかしもなぁいー!!」
そのやり取りに、ムウが苦笑しながら通信に割り込む。ストライクの損傷は激しく、機体の表面は焦げ、装甲が剥がれていた。
「落ち着けって、マリュー。まず俺とコイツはバスターに手伝ってもらって収容してもらう。この通りなんでな」
「ムウ!怪我は!?」
「アマキが手当してくれたからな、大丈夫だ」
「……そう。良かったわ」
マリューは深く息を吐き、渋々ながらも判断を下す。
「……わかりました。とりあえず許可します。クサナギに連絡をして。キラ君とアマキさんはすぐにアスラン君の援護に!」
『『了解!』』
キラとアマキが声を揃え、機体を旋回させてジャスティスの元へ急行する。スラスターが火を噴き、空間を切り裂いて飛び去る。
クルーゼはその様子をモニター越しに見ながら、静かに呟いた。
「まさか、こうなるとは…」
「まぁ、乗りかかった船だ。ようこそ、だな」
ムウが肩をすくめながら、少しだけ優しく言った。
こうして、クルーゼは一時的に仲間たちと行動を共にすることになった。
だが、戦場の緊張はまだ完全には解けていない。
この先、何が待ち受けているのか――誰にもわからなかった。
アークエンジェルの外――
アスランのジャスティスが敵の猛攻に押され、機体が煙を引きながら後退する。ビームが空間を裂き、爆風が周囲のデブリを巻き上げる。
その瞬間、空を切り裂くように高速で飛来する二機。
フリーダムが青白い軌跡を描いて戦場に突入し、続いてスノーホワイトが白銀の閃光を纏って現れる。
『アスラン!』
『よく頑張ったね、アスラン!』
『キラ!アマキ!』
モニター越しに仲間の姿を見たアスランの表情が一瞬で歓喜に変わる。
その瞳に再び闘志が灯る。
キラは種割れを起こし、意識が研ぎ澄まされる。フリーダムが急加速し、カラミティの砲門が火を吹く直前――
キラはビームサーベルを抜き放ち、真正面からその砲撃を薙ぎ払う。
ビームが弾け、空間が震える。敵機が一瞬たじろぐ。
『チィ!』
レイダーはスノーホワイトを獲物と定め、MA形態へと変形。機体が回転しながら100mmエネルギー砲ツォーンを発射する。
『出たな、白いの!抹殺!!』
だがスノーホワイトのコックピットでは、アマキが眉間にしわを寄せていた。
マリューに叱られたばかりで機嫌は最悪。八つ当たり気味に叫ぶ。
『しつこいってーの!その翼切り落としてやるっ』
両手にビームサーベルを装備し、スノーホワイトが急旋回。機体がレイダーの背後を取るように滑り込み、斬り落とす三秒前の距離まで接近する。
『こいつはぁ!!』
『させるか!』
フォビドゥンがレイダーを庇うように割り込み、盾を展開。だがその前にジャスティスが再び飛び込み、ビームライフルを連射しながら牽制する。
空間に交差する光の軌跡。
戦況は、アスランの劣勢からキラたちの流れへと確実に傾き始めていた。
お気に入り、評価等よろしくお願いします。励みになります!
ガンダムSEEDDESTINYも読んでみたいか?
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別に興味ない。