腹減り少女はSEED世界で爆発少女にレベルアップする 作:サボテンダーイオウ
最終局面に突入してまいりました。
誰もが、その巨大な脅威の前に戦慄し、恐怖に包まれた。
ジェネシスから放たれた“死の光”は、すべてを内側から破壊する圧倒的な威力を見せつけ、戦場を恐怖のどん底へ叩き落とす。
「「「!!」」」
その場に居合わせた者すべてが息を呑み、言葉を失った。
地球軍艦は次々と艦内から爆発を起こし、軍人たちは木っ端みじんに。
それも一隻だけではない。爆発の連鎖は止まらず、ドミニオンもその例外ではなかった。
巻き込まれる寸前、艦長が的確な指示を飛ばす。
「取り舵いっぱい!ロール角、左35、全速!宙域を離脱!」
指示によりドミニオンは辛うじて難を逃れたが、被害は甚大だった。
ジェネシスの破壊力を目の当たりにしたエザリアたちは、ただ呆然と立ち尽くす。
「……あぁ……」
もしこの威力が地球に向けられたなら——それは、世界の終焉そのもの。
アマキもまた、その目撃者の一人となった。
背筋が震えるほどの恐怖。
どこまでも前向きなことが取り柄の彼女でさえ、このスケールの前では無力だった。
実際に操縦桿を握る手は、わずかに震えている。
キラたちも同様に、言葉を失っていた。
だが、そうしている間にも事態は進行していく。
ヤキン・ドゥーエでは、オペレーターが冷静に発射情報を読み上げる。
「ジェネシス、最大出力の60%で照射」
「敵主力艦隊、半数が消滅」
だが、この結果に満足していないのはパトリック・ザラだった。
彼は次の一撃で、すべてを終わらせるつもりでいる。
「まだまだだ。目にものを見せてやる……ナチュラルどもめ!」
その瞳には、もはやアスランの姿など映っていない。
憎しみだけが、彼を突き動かしていた。
妻——レノアを奪われた日から、彼は狂ってしまった。
すべてを滅するまで、止まることはない。
◇◇◇
エターナルからの乱れた通信が届き、バルトフェルドはマリューに撤退を促す。
「ラミアス艦長!こちらも一旦退くしかない。モビルスーツ全機、呼び戻せ!」
「くっ……!」
声を聞きながら、マリューは冷や汗を拭い、ミリアリアにキラたちの帰還を伝えるよう指示を出す。
「信号弾、放て!」
ドン!ドン!と立て続けに放たれる信号弾に、キラたちはハッと我に返る。
艦に戻ろうとするが、あの悲惨な出来事が起きたばかりだというのに、ザフト軍はこれを好機と捉え、さらなる追撃に入ろうとしていた。
目の前で繰り広げられる殺戮の戦いに、キラの胸に怒りが湧き上がる。
ゲイツやジンのパイロットたちが憤りのままに地球軍MSへ猛攻撃を仕掛ける姿を、黙って見ていることはできなかった。
「うおぉぉ!」
「よくも、再び核など!」
「うわぁ!」
フリーダムが戦場に割って入り、ゲイツやジンを撃退する。
無論、パイロットを傷つけないように——それがキラの信念だった。
「止めろ!戦闘する意志のない者を!」
「キラっ!」
スノーホワイトも続いて戦闘に介入する。
アマキは敵味方を問わず、同時にビームを叩き込んで動きを止めるという大胆な戦法を取る。
ジャスティスもそれに続き、戦闘を止めようと刃を振るう。
「ええい!」
「うわぁ!」
「止めろ!」
「くっ!」
「それ以上、犠牲を増やすな!」
どれだけ血が流れようと、人々の心から憎しみが消えない限り、この争いは終わらない。
まるで悪夢のような世界だ。
一方、ヤキン・ドゥーエでは、パトリック・ザラの鼓舞がザフト軍の怒りをさらに煽っていた。
「新たなる未来、創世の光は我らと共にある!この光と共に、今日という日を——我ら新たなる人類、コーディネーターの輝かしき歴史の始まりの日とするのだ!」
「おー!プラントのために!ザフトのために!」
一同の声が高まり、勢いは加速するばかり。
そして、バルトフェルドの呼びかけが三機に届く。
「フリーダム!ジャスティス!スノーホワイト!」
その声に応えるように、三機は苦々しい表情を浮かべながら、ようやくエターナルへと帰還した。
◇◇◇
ドミニオンは戦況の最中、見事な撤退を果たし、怒り狂うアズラエルを乗せたまま、混沌とした宙域で他艦からの救援要請に応じていた。
負傷者、すでに事切れた者、手の施しようもない者——艦内は混乱と血にまみれ、まさに地獄と化していた。
「艦長。チャーチルより救援要請です」
「了解。すぐに向かうと返信しておけ」
オペレーターにそう伝えた瞬間、案の定アズラエルが噛みつくように声を荒げる。
「おい!ふざけるな!救援だぁ!?なんでこの艦がそんなことする必要がある!」
「はぁ?仕方ないっしょ。劣勢なんだから」
艦長が呆れたような視線を向けると、アズラエルは吐き捨てるように言い返す。
「そんな暇はない。無事な艦はすぐにでも再度の総攻撃に出るんだ!」
「……一度脳みそかっぽじってみてぇな。屑が」(ぼそっ)
艦長の呟きには気づかず、アズラエルは爪を噛みながら悔しげに愚痴をこぼす。
「月本部からすぐに増援も補給も来る!あそこに、あんなもの残しておくわけにはいかないんだよ!何がナチュラルの野蛮な核だ!くっ……あそこからでも地球を撃てる奴らの兵器の方が遥かに野蛮じゃないか!そしてもう、いつその照準が地球に向けられるか分からないんだぞ!討たれてからじゃ遅い!奴らにあんなもの作る時間を与えたのは、お前たち軍なんだからな!無茶でも何でも、絶対に破壊してもらう。あれとプラント、地球が討たれる前に!」
確かに正論ではある。だが、それでは解決には至らないことを、彼は真に理解していない。
「撃てば討たれる。討たれれば撃つ。終わりがないって、なんで分からないかねぇ……人間は、さ」
「ああ?なんか言ったかい」
「いーえ。何も。じゃあ地獄の手前までお付き合いしますよ。ただし——『俺たちは』アンタと一緒に地獄には行きませんからね。そこんとこ、覚えておいてください」
謎めいた忠告を残す艦長。アズラエルは自分の意見が正しいと信じて疑わず、従うなら何でもいいらしい。
「なんでもいい。さっさと準備してくれ」
手で「急げ」とジェスチャーしながら部屋へ戻るアズラエルの背中に、中指を立てて見送った艦長は、彼がいなくなると皆の顔を見渡し、動揺した様子もなく言った。
「と、いうーことなんで、もう少し頑張れ。諸君」
「艦長……」
不安げな操縦士やオペレーターたちに向かって、艦長はニカッと白い歯を見せて口角を上げる。
「大丈夫。心配しなさんな。俺に任せておけって」
それは部下を安心させるための演技だったのか、それとも彼なりの作戦があるのか。
何にせよ、死地に赴くことだけは、間違いなかった。
◇◇◇
いつ戦闘が再開されてもおかしくない状況の中、他のパイロットたちが準備に勤しむ一方で、エターナルのブリッジには主だったメンバーが集まっていた。
シモンズの説明に、皆神妙な面持ちで口を噤む。
「発射されたのはガンマ線です。線源には核爆発を用い、発振したエネルギーを直接コヒーレント化したもの。つまり、あれは巨大なγ線レーザー砲なんです。地球に向けられれば、強烈なエネルギー輻射が地表全土を焼き払い、あらゆる生物を一掃してしまうでしょう」
「撃ってくると思いますか?地球を……」
アークエンジェルから急遽エターナルに来たマリューが、不穏な質問を投げかける。
ラクスは何も返せず、黙り込んだ。
「撃つだろうさ。あの人なら。ナチュラルの殲滅は、彼の悲願だからな」
代わりに答えたのはクルーゼだった。
無益な戦争から悲劇しか生まれないことを知る彼は、今更ながらも力になろうと艦で奮闘している。
「強力な遠距離大量破壊兵器の本来の目的は抑止だ。だが、もう撃たれちまった。核も、あれも……どちらも、もう躊躇わんだろうよ。戦場で初めて人を撃った時、俺は震えた。だが、すぐ慣れると言われて、確かにすぐ慣れたな」
「あれのボタンも、核のボタンも同じと……」
「違うか?」
「……」
そこへキラたちがブリッジに入ってくる。
アマキはラクスの隣に移動し、気を落としている彼女の肩にそっと手を置いた。
「アマキ様……」
「人はすぐ慣れるんだ。戦いにも、殺し合いにも」
「あれは、地球に向けられるのは確定なんだな」
「ああ。君は望まないのだろう?」
アマキの問いに、クルーゼは静かに頷いた。
ラクスは悲観を抱いた様子で、小さな声で呟く。
「兵器が争いを生むのでしょうか?それとも、人の心が……」
「そのどちらもだな。人である限り、きっと未来永劫続くだろう問題だ」
アマキははっきりと答えた。
嘘を言ったところで意味はない。それはラクスも理解している。
だが、理解することと受け入れることは、まったく別の話だった。
「……そんな……」
「核にも、あの光にも。絶対に互いを討たせちゃ駄目だ」
「………」
「そうなってからじゃ、すべてが遅い」
「ああ」
キラとアスランのはっきりとした意思に、アマキは口角を上げて言った。
「ならば、やることは一つだ。ぶっ壊そう」
「!」
即決断のアマキの言葉に、皆が息を呑んだ。
「何を驚く必要があるんだ。それ前提で話してたんだろう?」
「いや、あまりにも簡単に言うからさ。君はいつもそうだな、アマキ」
「何言ってんですか、バルトフェルドさん。使える状態にあるなら、ぶっ壊す以外に選択肢ないでしょ」
「そうあっさりと言えるから、君は凄いのさ。なぁ、皆」
バルトフェルドの問いかけに、皆がそれぞれ頷き返す。
先ほどまでの暗い雰囲気は、どこかへ吹き飛んでいた。
シモンズの説明によれば、ジェネシスは連射がきかないらしい。
ミラー交換に時間を要するとのこと。
問題点は多いが——やると決めたら、やるしかない。
◇◇◇
全艦発進準備が始まる中、マリューたちがブリッジを後にする。
その後を追おうとしたアマキの背に、急ぎ立ち上がったラクスの声が届いた。
「アマキ様!」
「ラクス?」
ラクスはキラの方へ向き直り、少し不安げな表情で言葉を紡ぐ。
「……キラ、どうか気をつけて」
「ありがとう」
キラが微笑みながら応じると、ラクスはアマキの方へ向き直り、両手をぎゅっと握りしめた。
その瞳には、言葉にできないほどの不安が滲んでいた。
「……アマキ様…」
「僕、先行くよ」
キラは気を遣ったのだろう。静かにドアを開けて先に出ていく。
「え、キラ?」
アマキが戸惑う中、ラクスは心の中でキラに感謝しながら、そっとアマキに歩み寄る。
そして、少し躊躇いながらも、両手に乗せた銀色の指輪を差し出した。
「…アマキ様…どうか…これを……受け取ってください」
ネックレスに通された指輪には、繊細な模様が刻まれていた。
「……これは? 指輪だ」
「わたくしの母のものです。お守り代わりに、御傍にいさせてください」
「いいの? 私で? キラじゃなくて」
アマキが自分を指差すと、ラクスは優しく頷いた。
「はい。キラにはアマキ様がいますもの」
その言葉に、アマキの胸が少しだけ熱くなる。
ラクスの瞳は、ただの信頼ではない。
それ以上の、言葉にしない想いが宿っていた。
「そっか。じゃあ、帰ってきてちゃんと返さないとだね」
アマキがネックレスを手に収めるのを見つめながら、ラクスは声を震わせて懇願する。
「………どうか、ご無事で…帰ってきてください。わたくしの元に」
「勿論。ラクスのケーキ、まだ食べ足りないからね」
冗談めかした言葉に、ラクスは微笑みを浮かべる。
だがその瞳には、深い思慮と心配の色が滲んでいた。
アマキはその瞳を見つめ、そっと顔を近づける。
ラクスは自然と目を閉じると、アマキはおでこに親愛と約束を込めてキスをした。
その距離は、ほんの一瞬。
けれど、二人の心には確かに残る温度だった。
「…………」
「行ってきます」
そう言ってアマキはドアの向こうへと消えていく。
ラクスは追いかけたい衝動をぐっと抑え、閉じるドアを見送る。
そして、二人の無事を祈るように両手を組み、自分が座るべき場所へと、しっかりと前を向いて戻っていった。
◇◇◇
部屋を出た少し先のところで、キラは壁に背を預けてアマキを待っていた。
彼もまた、彼女と話しておきたかったのだ。——最後にならないために。
アマキがキラに気づくと、手を軽く挙げて先ほどのことに礼を伝える。
「お待たせ。ありがとう」
「大丈夫。ラクスにもちゃんと話させたかったし」
「ふーん。じゃあラクスが恋人候補になってもいいんだ」
なんて、意地悪を言ってみる。
死地に赴く前の戯れか、気持ちが高揚しているのか。
アマキが経験してきた戦場でも、いつもそうだった。
死ぬつもりはない。けれど仲間たちは次々と命を落としていく。
自分だけは——死ぬわけにはいかない。
この世界で得た、大切な人たちの未来を守るために、戦わなければならない。
(君に、言わなきゃならないことがある)
この私に“ド緊張”させる者は、そうそういないぞ——なんて、心の中で苦笑する。
案の定、アマキのからかいにキラは真剣に受け止めてしまったようだ。
「それは困る!」
その困った顔も、可愛いと思ってしまうのは……失礼だろうか。
「………」
「………?」
何か言いたげなアマキに、キラは不思議そうな顔を向ける。
「その、なんだ。無事に帰ってこような」
「うん。アマキは守られるのが嫌だって言ってたよね」
「うん。それは今もある。けど——」
「けど?」
アマキはキラの瞳をまっすぐに見つめて、静かに言った。
「キラに、私の背中を守ってほしい」
「!」
その言葉にキラは目を見開いた。
最初の頃、彼女は“守られるのが嫌”だと言っていた。
けれど今は——キラのことを信じて、受け入れようとしている。
その変化を与えたのが自分であることが、嬉しかったのだ。アマキははにかみながら伝えた。
「キラなら、私は、安心して一緒に戦えるんだ」
「……結構、嬉しいかも」
キラは照れたようにそっぽを向く。
アマキはそんな彼の頬を指先でつついて、くすくすと笑った。
「照れてますねぇ、キラ君」
「そりゃそうだよ」
「へへへ。おりゃ!」
不意打ちのように、アマキはキラにキスを送る。
幼稚なキス——けれど、それでも彼女なりの精一杯の気持ちの表れだった。
ちゅ。
「わっ!」
「へへへ。隙ありぃー!」
照れ笑いしながら、アマキは先に飛び出していく。というか、逃げた。
キラは呆然と頬に手を当て、先ほどの柔らかな感触が夢だったのではと疑う。
でも——夢じゃない。
その感動の余韻の中、アマキはさっさと先に進んでしまう。
できれば、もうちょっと別の場所が嬉しかったのだが。
「ちょ、ちょっと待って!」
「待たなーい!」
キラはアマキの後を追いかけながら、心の中で静かに誓った。
——必ず、共に帰る。そして今度は、唇にキスを。
◇◇◇
そして——カガリとアスランもまた、僅かな時間の中で互いの絆を確かめ合い、
ムウとマリューも「必ず戻る」と、静かに約束を交わしていた。
恋人たちの短い逢瀬とは裏腹に、両軍の激突はさらに過激化していく。そこへ、第三勢力としてキラたちが再び戦場へ介入する。
「オレンジ25、マーク12、アルファにドミニオンです!」
「モビルスーツ、発進してください!」
「全艦、モビルスーツ発進!」
バルトフェルドの声を皮切りに、次々とMSが発進していく。
「ムウ・ラ・フラガ、ストライク、出るぞ!」
「ストライク、発進どうぞ!」
「ディアッカ・エルスマン、バスター、発進する!」
「バスター、発進どうぞ!」
「ストライクルージュ、いくぞ! うっ!」
「アスラン・ザラ、ジャスティス、出る!」
「アマキ・カンザキ、スノーホワイト、行くぞ!」
「キラ・ヤマト、フリーダム、行きます!」
「ミーティア、リフトオフ!」
フリーダムとジャスティスにミーティアが装着され、争いが激化する宙域へと高速で突入していく。
それに続いて、スノーホワイトも形態を変え、戦場へと舞い降りる。
「これで終わらせるっ!」
その叫びは、決意と祈りの入り混じったものだった。
そしてヤキン・ドゥーエでは、ジェネシスの再照射に向けたカウントダウンが始まっていた。
無慈悲なる核の力が、再び世界を焼き尽くそうとしている。
「カウントダウン開始。射線上の全軍に退避勧告」
「Nジャマー・キャンセラー起動。ニュークリアカートリッジに接続。全システム接続、オールグリーン」
「発射!」
二度目のジェネシスが、今まさに撃たれようとしていた。
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