腹減り少女はSEED世界で爆発少女にレベルアップする 作:松魚
ラストまで残り一話となりました。最後までお付き合いください。
偽りではあったが——
二度目のジェネシスは、地球ではなく月基地へと照準を定めた。
可視化された光の渦が大きくうねりを上げ、凄まじい速度で発射される。
その光が基地を貫いた瞬間、内部にいた人間はすべて、体の内側から爆発し、命を落とした。
その惨状を生き延びた者は、誰一人としていない。
その光に気づいた時——いや、気づいた瞬間、誰もが息を呑み、言葉を失った。
「「あっ!」」
「っチ!」
巨大なガンマ線は、ドミニオンからもはっきりと視認できた。
艦長はどこか他人事のように、呆れたような口調でつぶやく。
「あーあ、また撃つ気だな。おい、目標は?」
オペレーターが慌てて報告する。
「照準は月! プトレマイオスクレーターと思われます!」
「………これでも地球軍は核を使うのかねぇ」
「使うしか……終わりがないだろうがっ!」
ダンッ!
肘掛けを拳で叩きつけ、アズラエルは吐き捨てるように叫んだ。
その巨大なガンマ線は、月基地から応援に駆けつけた増援艦ごと飲み込んでいく。
乗組員たちは、風船のように内側から爆発し、命を散らす。
そして最後には、戦艦そのものが内側から崩壊し、連鎖的に爆発が広がっていく。
月基地は、光の奔流に飲み込まれ、壊滅へと至った。
最後には巨大な爆発と噴煙が巻き起こり、その惨状は一目で理解できるほどだった。
マリューたちも映像でその様子を確認し、圧倒的な破壊力に言葉を失う。
「月基地が……」
「……ぁあ……」
報復攻撃の連鎖が、ついに始まった。
月基地壊滅の映像を見たパトリック・ザラは、満足げに口角を上げる。
「ジェネシスは目標を撃破」
「ミラーブロック換装、急げ!」
その声には、次の一撃で“根絶やし”にするという意気込みが滲んでいた。
「二号ユニットは廃棄軌道へ。三号、スタンバイ」
次なる照準は——地球。
◇◇◇
ジンと交戦中だったアストレイが隙を見せ、ビームサーベルで貫かれようとしたその瞬間——
『アァ!?』
風を斬るように、スノーホワイトが颯爽と現れ危機に駆けつける。
即座にジンの腕を斬り落とし、さらに頭部を蹴り飛ばす。
ジンは頭部を吹き飛ばされ、機体ごと弾き飛ばされた。
だがそれだけでは終わらない。
スノーホワイトはマシンキャノンで地球軍MAを牽制しつつ、アストレイを庇う。
「気をつけろっ!」
『あ、ありがとうございますっ!』
「君はクサナギの援護に。前には出るな。下がれ!」
『はいっ!』
マユラ、アサギ、ジュリはアマキの指示により後方へ回された。
人手が足りないからといって、無謀に突っ込ませることはしない。
その分、アマキが敵を落とせばいいだけだ。
だが、ジェネシスを目指そうにも敵は二軍から次々と現れる。
「殺さずに生かす」——この戦場では、あまりにも難しい。
単身で突っ込めるほど甘くはない。
戦況は目まぐるしく変わり、味方が窮地に陥る可能性も常にある。
「月基地を失っては、地球軍はもう退くしかないわ!」
「これ以上、あれを撃たせてはなりません!」
「矛先が地球に向いたら終わりだぞ!」
マリュー、ラクス、バルトフェルドの叫びに呼応するように、キラたちも奮闘していた。
ミーティアを駆使してザフト軍・地球軍双方を撃ち落とし、ジャスティスは戦艦を斬り落とす。
ストライクルージュも不慣れながらジンを撃墜し、バスターも地球軍MSに応戦する。
一方、ドミニオンでは血走った目のアズラエルがオペレーターからインカムを奪い、サザーランドと通信を繋げる。
『アズラエル様』
「核攻撃隊を出せ!目標はプラント軍だ!」
怒鳴りつけるアズラエルに、艦長は無言で冷ややかな視線を投げかける。
「………」
「あの忌々しい砂時計!一基残らず叩き落とすんだ!奴らを呼び戻して道を開かせろ!」
『了解しました』
(さて、どのタイミングで切り捨てようか)
艦長の中では、すでにアズラエルへの見切りがついていた。
今はタイミングを見ているだけだ。
サザーランドの指示により、各艦の核弾道は着々と準備に入る。
「ピースメーカー隊、発進準備。各員は速やかに作業を終了せよ。繰り返す——」
アークエンジェルでは、サイからの情報を受けてマリューが的確な指示を出す。
「インディゴ43、マーク2チャーリーにローラシア級!」
「回頭30、艦首上げ、ピッチ角15、ヘルダートてぇ!」
「ドミニオン、他数隻転進します!」
ドミニオンの目標がプラントに切り替えられたことに、キラたちは驚愕する。
「えっ!」
「くっそー!プラントか!?」
エターナルも激しい攻撃の中、衝撃に耐えながらバルトフェルドが悔しげに言う。
マリューはすぐにエターナルへ通信を繋げる。
「追います!エターナルとクサナギはジェネシスを!」
「了解!」
アークエンジェルはドミニオンの対応を任され、バルトフェルドは頷き返す。
ラクスはハロをしっかりと両手で掴みながら、戦場をまっすぐに見つめていた。
ピースメーカー隊はアズラエルの指示により次々と発射され、プラント総攻撃に入る。
その一行に気づいたキラたちは叫ぶ。
「あの部隊は!」
「急ぐぞっ!」
「やらせるか!」
「おう!」
「くっ!」
スノーホワイトはネオバード形態になり、皆より先に前方を飛ぶ。
通信でキラたちに呼びかける。
「皆!援護頼む。少し荒事になるが許してほしい!」
「アマキ!何をするつもり?」
「射程範囲には絶対入らないように!」
そう宣告すると、スノーホワイトは高速でプラント前に辿り着く。
ネオバード形態から通常モードに戻り、ツインバスターライフルを前方に構える。
目前に迫る核の嵐——
「来るぞ!散開!プラントへ放たれる砲火、一つたりとも通すんじゃない!」
「はっ!」
「ん?あれは!?」
イザーク率いるザフト防衛軍が核の嵐からプラントを守ろうとする中、スノーホワイトの姿に釘付けになる。
白き両翼を広げ、ツインバスターライフルを構え、後方の部隊に声をかける。
「今から撃つから、私より前に出るなよ」
『な、なに!?』
「当たれぇーー!!」
掛け声と共に放たれる巨大なビーム砲。
横にスライドさせながら、プラントへ向けられていた核を連鎖的に爆破していく。
膨大な光が視界を奪い、直視できずに手で目を覆う者もいた。
この破壊力は、使用するのは二度目。
最初は砂浜をえぐり、地形を変えてしまうほどだった。
ためらいはあった。だが、それでは守れるものも守れない。
犠牲が出たとしても、守るための汚名は背負う覚悟だった。
「なっ!?」
「全て破壊しただと!?」
「おいおい、ヤベェ武器持ってやがるな……」
「アマキ……」
畏怖すら抱きつつある周囲。
だが、敵はまだ残っている。問題児三機が——
「キラ!まだ敵のガンダムがこっちに来るぞ!」
『わかった! アスラン!』
『ああ!』
形勢は逆転した。
護衛として三機が付いていたにも関わらずの失態。
アズラエルに脅されるのは明白だ。
三人の怒りはスノーホワイトへ向けられる。
八つ当たりとも言えるが、感情を制御できない彼らは、むき出しの怒りのまま襲いかかる。
「お前のせいでー!」
「やっぱコロス!」
「消えちまえよっ!!」
だが、スノーホワイトを守ろうと、フリーダムとジャスティスが立ちはだかる。
「アマキは僕が守る! アスラン!」
「ああ。プラントはやらせないっ!」
ミーティアを駆使し、スノーホワイトの盾となるべく多数のビームを同時発射し敵を撃破していくフリーダム。
キラは、愛しい人を守るためならば——修羅となる覚悟を持っていた。
この戦場で無益な争いを避けるため、急所だけを狙っていた。
だがそれは、殺し殺される覚悟があるからこそできる選択。
もしアマキを失うことがあるなら——キラは必ず暴走する。
それを自分でも理解している。
だからこそ、本気で殺しに来る相手には、キラもまた命を奪うだろう。
そうでなければ、守れないのだから。
「ゴットフリート、バリアント照準!目標、地球軍アガメムノン級!」
アークエンジェルは、ドミニオンを標的に最後の大勝負に出ようとしていた。
一方、ドミニオン艦内では、アズラエルが突如銃を取り出し、クルーたちを脅し始める。
「ドゥーリットルを討たせるな!前へ出ろ!何をやってる!」
「艦長……」
縋るような視線を向けるクルーたちに、アズラエルは唾を飛ばして怒鳴り散らす。
「撃て!撃たなければ討たれるぞ!」
艦長は深くため息をつき、正面を見据えて静かに指示を出す。
「推力最大、回頭20。アンチビーム爆雷発射。ゴットフリート照準!」
マリューと艦長が、それぞれの艦で同時に指示を出す。
「てぇ!!」
その声が重なった瞬間、ゴットフリートが両艦から放たれた。
アークエンジェルは右舷を撃たれ、ドミニオンも直撃を受け、艦内に激しい衝撃が走る。
クルーたちはうめき声をあげ、全身でダメージを受けながら体を揺らした。
それでも、マリューは攻撃の手を緩めない。
ここで沈める——その覚悟があるからだ。
「てぇ!」
「うわぁ!」
もはや、気概の違いである。
ドミニオンにとって、敗北は確定していた。
そしてヤキン・ドゥーエでは、次なる照射に向けて着々と準備が進められていた。
「照準ミラーブロック換装まだか?」
「光軸偏差の修正値を転送」
「三号ユニット、最終撃発座標へ」
次なる最終目標は——今度こそ、地球。
スノーホワイトの活躍により、核魚雷の数は確実に減っていた。
だが、まだ完全に消えたわけではない。
サザーランド率いるドゥーリットルでは、オペレーターが状況を読み上げる。
「核魚雷、残弾数8」
「ピースメーカー隊2、交信途絶」
「あの白い機体を落とせ!砲火を集中させろ!」
サザーランドの怒号が響き、スノーホワイトへ向けて集中砲火が始まろうとしていた。
だが、フリーダムが身を挺して防御に入り、砲火を阻む。
アスランもミーティアからミサイルを発射し、レイダーを狙う。
「なんなんだよ!お前たちは!なに必死にやってんだ!」
「お前たちこそ何だ!一体何のために戦っている!操られているままだとなぜ理解できないっ!」
激しいやり取りが二人の間で交わされ、火花が散る。
「そんなこと知らないね!やらなきゃやられる、それだけだろうが!!」
「なに……?」
「やられないけどね」
「くっ!」
結局のところ、言葉だけで分かり合うことは難しかった。
彼らは薬漬けにされ、操り人形のように使い捨てられる運命。
彼ら自身がその違和感に気づかなければ、救いようがない。
そこへ、シャニが搭乗するフォビドゥンが勢いよく現れる。
一隻を落としたばかりのストライクルージュに突っ込んでいく。
「えぇーー!」
「あっ!」
レイダーは確実にストライクルージュを狙っていた。
曲がるビームが背後から放たれ、避けることはできなかった。
そこへ、イザークのプロヴィデンスが背後に現れ、ビームを防ぐ。
さらに、頭上からバスターの連携攻撃がフォビドゥンの装甲に亀裂を入れる。
その隙を逃さず、プロヴィデンスがビームサーベルで最後の一撃を放つ。
「でやぁぁ!!」
「うわぁぁ!!」
ビームサーベルが機体中心に突き刺さり、レイダーは胴体を裂かれ、数秒後に爆散した。
「シャニ!! チィ!」
レイダーが墜とされたことで、オルガは焦りを感じる。
だが、その焦りが隙を生む。
「ヘルダート、てぇ!」
「ローエングリン2番、てぇ!」
愚鈍なカラミティの動きでは、ミーティアの俊敏さに追いつけず、MA-Xビームソードで横から切断され、撃破された。
「ぐわぁぁ!!」
そして、プロヴィデンスがドゥーリットルのブリッジ前に降り立つ。
やや躊躇いながらも、イザークは銃口をブリッジに向けて引き金を引いた。
「ん? ぁ!」
「くっ!」
「うわぁぁ!」
サザーランド率いるドゥーリットルは、核魚雷と共に撃沈した。
頼みの綱であった核魚雷——
その指揮官サザーランドが戦死したことにより、アズラエルは言葉を失い、呆然と立ち尽くす。
仲間たちは次々と戦艦を撃沈していく。
その中で爆破されていく機体、人間。
命が、あまりにも簡単に奪われていく現状に、ラクスは深く憂いた。
「わたくし達人は……おそらくは、戦わなくとも良かったはずの存在。
なのに、戦ってしまった者達。何のために?守るために?何を?……自らを?未来を?
誰かを討たねば守れぬ未来、自分を。それは何?なぜ?
そして、討たれた者にはない未来。では、討った者達は……」
ラクスがこの戦の理由を問う。
だが、それに答えられる者はいない。
なぜなら——答えが出ないから、人は戦うのだ。
ムウも合流し、アークエンジェルと共に行動を開始する。
『マリューさん!』
「必要な機体は補給を!ドミニオンは私達が抑える!ジェネシスへ!!」
『……うん!!』
「行こうっ!」
『任せたぜ、お前ら!』
四人は頷き合い、ジェネシスへ向けて機体を飛ばした。
「その手に掴む、この果ての未来が——幸福?」
数ある選択肢の中で、一つしか選べないのなら。
「本当に?」
それを決めるのは、人自身。
☆
「今だ!撃て!早くあいつを沈めろ!ローエングリン照準!」
アズラエルの無茶な指示に、クルーたちは艦長へすがるような視線を向ける。
「………」
艦長は、きっぱりと言い切った。
「撃たなくていい。総員、直ちに退艦しろ」
「!!」
クルーたちは驚き、固まる。
「貴様ァ!」
「急げ!」
艦長の剣幕に押され、クルーたちは慌ててブリッジを出ていく。
アズラエルは彼らに向けて発砲しようとするが——なぜか、トリガーを引けない。
指が、一切動かないのだ。
奇妙な現象に、アズラエルの怒りは艦長へ向けられる。
「うわっ!くっそー!お前ぇ!!」
怒鳴り散らすアズラエルの前で、クルーたちは無事にエレベーターへ乗り込み、扉は閉じられた。
「もう、お前の世迷言には付き合ってられん」
「ええい!僕にこんなことをして!どうなるか分かってるんだろうな!!」
アズラエルの脅しに屈するような男ではない。
艦長は、最後まで責任を全うする主義だった。
偽りであっても、艦長としてクルーの安全を第一に考えた。
だからこそ、彼らを逃がしたのだ。
その一部始終は、アークエンジェルでも確認されていた。
「ドミニオンより脱出艇!艦を放棄するようです!」
「え?」
思わず聞き違いかと思ったマリュー。
だが、モニターには確かにパージされた避難艇の姿が映っていた。
先ほどから動きに乱れがあると思えば、まさかの仲間割れか、トラブルか。
何にせよ、攻撃の手を緩めるつもりはない。
だが、戦闘を放棄するというなら、救出の必要がある。
それに名乗りを上げたのは、ムウだった。
『俺が回収するぜ』
「頼むわ、ムウ」
ドミニオンは一方的な攻撃を受け、艦がいつまでもつか分からない状況。
アズラエルは半ばパニックに陥りながらも、銃を艦長へ向けて連発する。
だが、弾は見えないバリアに弾かれるように、艦長の体を貫くことはなかった。
「ふざけるな!ドアを開けろ!!」
「いい加減、負けを認めろ。艦、沈んじまうぞ?」
呆れた声で白旗を勧める艦長。
だが、アズラエルが頷くはずもない。
彼は、自分を貶めたコーディネーターに一矢報いることを生涯の目標としていた。
そうすんなりと応じるほど、彼の人生は楽なものではなかった。
「く……貴様〜!こんなところで死んでたまるかっ!!」
「往生際の悪い男だな」
つくづく、彼の下についていた人間の苦労が知れる。
醜い執着心など、捨ててしまえばいいものを——
それもまた、人間の業なのだ。
「僕は勝つんだ。そうさ、いつだって……」
「ああ、そうだな。だが、お前は負けだ。他の奴らは俺に付き合ってもらった。地球に転移させといた。けど、お前は駄目だ。この戦争の責任は取らなくちゃな。だって偉いんだろ?お前」
「何を馬鹿なことをっ、お前ぇぇ!!」
パン、パン!
乾いた音が数発響くが、艦長には一切のダメージがない。
「じゃあな」
艦長はアズラエルへ帽子を投げつけ、突如現れた黒い虚空へと体を沈め、消えていった。
そして、誰もいなくなったドミニオン。
一人で操縦できるわけもなく、アークエンジェルは最後の引導を渡そうとしていた。
「ドミニオン、尚も接近!」
「ローエングリン照準……てぇーーー!!」
マリューはドミニオンを見据え、腹の底から声を響かせ、最後の指示を出す。
「くっそー!!う゛わぁぁぁぁーーーー!!」
アズラエルの断末魔と共に——
ドミニオンは、爆散した。
続編としてガンダムSEED FREEDOM編を読んでみたいですか?
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