腹減り少女はSEED世界で爆発少女にレベルアップする   作:サボテンダーイオウ

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御無沙汰しております。ポケモンやったり仕事に専念したりと忙しい毎日ですが、こっそりと更新再開いたしました。
ガンダムSEED後日譚となっております。Destiny編までのつなぎですがゆっくりと更新していきますのでよろしくお願いします。


SEED帰還編
PHASE-α1 旅立ち


 

ぬるま湯のような日々。

心地よく、けれどどこかで終わりを告げるもの——そんな言葉が、アマキの脳裏に静かに浮かんだ。

 

いつまでここにいるか、決めていたわけじゃない。

それでも、いつまでもこの世界に浸っているわけにはいかない。

アマキには、やり残してきたことがある。

異世界から来た者の宿命——その時が、ついに訪れたのだ。

この空間を居心地よく感じるようになったのは、いつからだろう。

 

最初に受け入れてくれたヤマト家。

 

共に世界を救うと誓ったラクス親子。

 

同じ志を持つ仲間たち。

 

戦争で親を失った子供たちと、彼らを導く導師様。

 

こうして過ごした時間は、何にも代えがたい尊いものだった。

 

オーブ首長として歩み始めたカガリ。

彼女を支える護衛として影に徹するアスラン。

 

頻繁ではないが、交流はある。

 

かつてのアークエンジェルの仲間たちも、忘れてはいない。

アマキが築いた絆は、決して揺らぐことはない——そう信じている。

 

けれど、彼らもまた、どこかでアマキが去ることを知っている気がする。

それが明日か、明後日かはわからない。

ただ、無視を決め込んでいる。

 

それが、日常を守るための嘘だから。

彼らは、アマキがずっとここにいると信じてくれている。

その信頼に応えたい——そう願うほどに、胸が痛む。

 

だが、それは叶わない。

アマキには、帰るべき場所がある。

 

伸ばし伸ばしにしてきた生活も、ついに終わりを迎える。

夕暮れの光が差し込む、住み慣れた邸宅。

いつものメンバーで賑やかな食卓。

この言葉を口にするのは残酷だ。

けれど、言わなければ前に進めない。

 

夕食を終え、子供たちはマルキヨ様にお願いして部屋へ戻してもらった。

今は、大人だけで話したい。

食器を片付け、一息ついた頃——アマキは口を開いた。

 

「……そろそろ、向こうの世界に帰ろうと思う」

 

「……え?」

 

キラとラクスの表情が、凍りついた。

他の皆も同様に、言葉を失う。

 

アマキは「やばい」と思いつつ、取り繕うように続けた。

 

「ほら、だいぶ落ち着いただろ? このままってのも駄目だし、だから一旦帰ろうと思う。少し気になることもあるしな」

 

情勢は安定し、生活にも慣れてきた。

だからこそ、帰るべきだとアマキは思った。

 

隣にいたキラは、動揺を隠せず、持っていたカップをテーブルに落としてしまう。

 

「え、いやちょっと待って……それ、は…」

 

「アマキ、様……」

 

食器を拭いていたラクスは手を止め、瞳を震わせ、口元に手を添えてショックを隠しきれない。

 

「ラクス、ごめんね」

 

ラクスはふるふると体を震わせ、言葉にならない。

ああ、泣かせたかったわけじゃない。

いつからだろう、彼女の涙に弱くなったのは。

いや、それだけじゃない。

アマキにとって彼らは、大切な人たちだ。

傷つけたくないほど、心の奥深くに入り込んでいる。

他の皆も同じ。

アマキとて、別れは辛い。

それでも、言葉にしなければならない。

 

「だからみんなとはおわか——」

 

「じゃあ急いでパーティーの準備しなくちゃ!」

 

パンッ!と手を打ち、カリダが満面の笑みで立ち上がった。

 

「……はい?」

 

アマキは呆然とした。

さっきまでの空気、どこ行った?

ウキウキした声音でアマキの言葉を遮ったカリダは、両手を打ち鳴らして楽しそうに声を弾ませる。

マリューとムウも立ち上がり、準備を始める。

 

「そうね! お土産も用意しなくちゃ」

 

「んじゃ買い出し行ってこなくちゃだな。マリュー、行こうぜ。大荷物になるぜ」

 

「ええ」

 

シーゲルは椅子に座るアマキの横に来て、少し腰をかがめ、両手でアマキの手を握った。

 

「アマキ君、私の大切なラクスをよろしく頼む。少々手がかかるが、君なら大丈夫だ」

 

「え? あ、はい?」

 

理解が追いつかないアマキ。

そこへ、音もなくラクスが背後に立つ。

並々ならぬ闘志を瞳に宿し、シーゲルに宣言する。

 

「アマキ様の御両親には、しっかり気に入られるよう頑張りますわ」

 

「うむ。私も挨拶したいが、ここはラクスに任せよう。頑張ってくるんだよ」

 

「はい。お父さま。わたくしの全力をもって、アマキ様の心を射止めてまいります」

 

……獲物じゃないが、ラクスにとっては最高の獲物なのだろう。

この親子の会話には、誰も口を挟めない。

ヤマト家でも同じことが起きていた。

カリダがキラに声援を送る。

 

「キラ! 貴方も負けちゃダメよ。彼氏として、アマキちゃんをしっかり守れることアピールしてきなさい」

 

ハルマも父らしく、もっともなことを言う。

 

「そうだ。私達も応援しているからな。手土産も忘れないように。あと、未来のご両親の前だ。礼儀正しくな」

 

「ありがとう、母さん、父さん。頑張ってアピールしてくるよ。アマキの彼氏としてね」

 

キラは胸を張り、男らしさを表現する。

 

そんな素晴らしい親子の姿を、バルドフェルドとアイシャは少し離れた場所から、仲睦まじく寄り添いながら見守っていた。

 

「いやー、いいねぇ。親子ってさ。僕たちも、早く子供が欲しいなぁ、アイシャ」

 

「やだ、アンディったら!」

 

いつかは——と夢見てはいるものの、今はまだ恋人でいたいアイシャ。

照れ隠しに、愛しい恋人へ強烈な拳をお見舞いする。

ゴスッ。

 

「ぐはっ」

 

「あっ、ごめんねっ!」

 

脇腹に一撃を喰らい、バルドフェルドは絨毯の上に吹っ飛ぶ。

慌てて駆け寄るアイシャ。

 

どこまでも仲の良い二人である。

一方その頃、アマキは状況をまったく理解できていなかった。

いや、完全に取り残されている。

本人の話なのに、放置されているのだ。

 

「あの……一体どういうことで?」

 

困惑するアマキをよそに、キラとラクスは当然のように言い返す。

 

「何言ってるの? 僕たちも行くんだよ」

 

「だ、誰と?」

 

「もちろん、アマキ様とですわ」

 

「はぁ!? ど、どうしてそんなことに!」

 

ガタンッ!

 

アマキは机に両手をつき、椅子を倒す勢いで立ち上がった。

キラとラクスは、どっこいしょと大きく膨らんだリュックとパンパンに詰め込まれた旅行鞄を運んできて見せつける。

 

いつの間に旅支度を?

 

いや、アマキがいずれ帰ることは想定済みだったのか。

 

やはり、粘着力のあるキラとラクス。

もし逃げようものなら、地の果てまで追いかけてきそうだ。

 

「こんなこともあろうかと、準備してたんだ」

 

「はい。わたくしたちもご一緒しますので、よろしくお願いいたします」

 

あっさりと同行が決定され、アマキは困惑するしかない。

というか、さっきの態度は演技だったのか?

軽くショックである。

それにしても、異世界だぞ?

夢物語みたいな話なのに、抵抗ゼロってどういうこと。

少しは警戒しようよ。

 

「え? ええ!? ちょ、ちょっとよく考えて? もしかしたら、二度とこっちに帰ってこられないかもしれないんだよ!?」

 

脅すようで悪いが、そうでも言わないと軽く考えすぎなのだ。

だが、アマキの意見など彼らには関係ないらしい。

 

「考えたよ。しっかりと」

 

「はい。それを踏まえて、付いていくと決めました」

 

キラとラクスは、迷いのない表情で頷く。

 

「ええ……?」

 

二人の意思は鋼よりも固い。

説得しても変わることはない。

置いて行かれるくらいなら、付いていく。

そんな大胆な選択をした二人は、何があってもアマキを離す気はないらしい。

 

「大体、首根っこ引っ掴んで一緒に帰るよ。というわけで、よろしくね」

 

「はい。逃がしませんので、一緒に参りましょうね」

 

にっこりと微笑む二人に、アマキは脅されたも同然。

拒否権など、あるはずもない。

 

「やなかんじぃー……」

 

そうぼやくアマキの背に、二つの影がぴたりと寄り添う。

こうして、異世界への旅路は三人で始まることになった——予想外の、けれど温かな旅立ちとして。




アマキ・カンザキ

ある日、誰かの気まぐれで“種”の世界に落とされた、時を超えて生きる少女。
紫の瞳に黒髪の長髪。運動神経は抜群だが、他人の好意には鈍感で、恋愛には疎い。
そんな彼女も、ようやくキラと“恋人(仮)”として距離を縮め始めた。
戦闘を好む一面もあり、ラクスから恋人候補として名乗りを上げられ、困惑している。
日常に浸るうち、「このままではいけない」と気づき、己の世界へ帰る決意を固める。
本作は『DESTINY編』の前日譚。今回は“お家に帰る”オリジナル編。
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