腹減り少女はSEED世界で爆発少女にレベルアップする 作:サボテンダーイオウ
怪しげな動物の鳴き声や気色悪い色の草花など地元の人から絶対入りたくない森林ランキング上位に入っている、雪彦が所有する土地の中にある古ぼけた屋敷の前ににて、すっかり旅支度を整えた三人はこの屋敷の主である雪彦と巧に別れの挨拶をしようとしていた。
「それじゃあ、行くよ」
「お世話になりました」
「あの、パトリック様のことをよろしくお願いいたします」
アマキはさらっと淡泊に挨拶をした。彼女にとってはいつもの通りなのだろう。だがキラはしっかりと頭を下げ丁寧に挨拶をした。なんせ未来の親族である。
ラクスはあの改造マンドラゴラに変化させられた反逆親父の身を案じ雪彦に頼み込んだ。戦犯ではあるが、元婚約者の父親なのだ。気遣いはしてあげなくては。
それ以上弄られなければいいが、雪彦とて鬼ではない。可愛い女の子に頼まれた変なことはしないはず。
そこらへんはアマキも心配の種だった。自分が連れてきた所為で死んでしまったなんてことになったら、あのアスランがわざわざ頭を下げて頼み込んできた願いが無駄になってしまうし、彼のメンタルも非常にヤバくなるはず。
雪彦は珍しく口元に笑みを浮かべ、自信満々に答えた。
「ああ。任せてくれ。今度は脱走できないように特製の檻にいれよう」
「……できるだけ労わっていただけると嬉しいですわ」
大体の雪彦の性格は把握したのか、ラクスも譲歩できる部分は譲歩して伝えた。
そういう意味で言ったわけではないが、まぁ本人にはお灸をすえる必要がある。自分よりも格上は必ずいると身を持って知らなければ。今回は教訓として受け入れてもらうほかない。
そしてアマキと巧も最後のやり取りを交わした。今回は雪彦の誘導によりヘンテコな世界に連れてこられてしまったが、巧も悪気があったわけではなく、それなりに気遣いを見せた。
「今度はあっちの家に帰れるよう繋げとくぜ」
「うん。あ、もし狗楽が帰ってくるようだったら連絡頼める?今度、君尋君を紹介してって」
「ああ。帰ってきたらな」
アマキは巧から視線を逸らしつつ、頬をかりかりと指先でかきながら、少し言葉を選びながら言った。
「……えっと、…あーっとその。……迎え、来てくれてたんだって?自分で落としておいて迎えに来るとか過保護だったなんて知らなかったわ」
「あのなぁ、そりゃスパロボの世界じゃいくらお前だって死ぬかもしれないだろ。だから一応だよ」
アマキの軽口に巧は真面目な顔でいう者だから、アマキは面食らい、言葉を詰まらせた。
「……………そうですか……。ありがとう」
「………やべ、洗濯物干しっぱなしだったわ」
「雨なんか降らんわっ!」
「……精々、死なないようにな」
「分かってるよ。キラとラクスがいるんだもん。死なないわ」
二人の他愛のないやり取りはいつも通り。付き合いが長い分、お互いに素直になれない似た者同士。
遠い親戚だが血の関係は誰よりも濃い。その絆も深い。
「ところで……どうやって帰れば?」
「ああ。こっち来た時と同じ感じにしてやるよ」
そう言って巧は意地悪そうに笑みを浮かべて指パッチン!をした。すると、
足元が、突然“ブゥン!”と鳴って消えた。
真っ暗な大穴が現れ、三人は一斉に青ざめる。
「ほえ」「え」「あら」
もう落ちるしかない。浮遊感が体を包み、キラはすでに諦めの境地。
アマキは最後の抵抗として、にこやかに手を振る男二人をギッと睨みつけた。
「「お達者で~」」
そして、
「覚えとけコンチクショーーー!!」
と文句を飛ばして暗闇の中へ落ちて行った。
こうして三人の異世界帰省旅はまた暗闇移動で幕を閉じるのであった。
◇◇◇
カガリ邸
その頃、アマキ達が旅立ってから半年は過ぎていた。最初こそその内戻ってくるだろうと気にしていなかった皆はソワソワと落ち着きを失くし、しまいにはもう戻って来ないのではないかと悲観していた。その内の一人がカガリである。突然三人が異世界へ行ったなどと教えられた時には顎が外れそうだったカガリ。確かにアマキが異世界からやってきた話は耳にしていたが、まぁそんな感じの人柄なので普通に受け止めていたが、まさかキラとラクスまで付いていくとは思わないだろう。そこまでアマキに惚れているのか心底驚いたものだ。
しかし、異世界が相手では捜索のしようもない。ただひたすら帰ってくることだけを祈っているくらいしかできることはない。
かといってカガリには国政が待っている。ウズミはすでに完全に政界から引退しており、後継者としてカガリを立てる側に回っている。
若輩者の身としては頼りないと高官らに影で言われるかもしれないが、アスランの精神的な助けもあり日々勉強と精進している。
朝食の席でアスランが先に席に着いており、カガリはあくびを噛み殺しながら「おはよう」と挨拶をした。
「カガリ、昨日もあまり休めていなかっただろう?」
「ん、ああ。いや、大丈夫だ。これくらいはな……、それでアイツらはまだ?」
「………」
アスランは軽く横に頭を振った。まだ見つかってはいないという意味だ。
「そうか…」
肩を落とし落胆してしまう。
毎度毎度同じ質問を投げかけては返される無言の答え。わかってはいるのだ。カガリも、意味がないことを。
だが尋ねずにはいられない。アマキ達の無事が何よりも大切なのだ。大切な弟と友人と……悪友と。
気心知れる友人などカガリには手で数えるしかない。しかも自分がオーブ代表ともなればまた意味も違ってくる。なのに、アマキ達はまったくそんな立場など関係なくずかずかと遠慮なしに割り込んで素で接することができる。そんな対等な人間関係はカガリにとって新鮮でとても大切な絆だ。
カガリも日々オーブの為に身を粉にして尽くしている。けれど、……ほんの、ほんの少しだけの時間が欲しかった。
友の無事をこの目で確かめたい。
アマキ達が消えたという穴を自分の目で確かめに行きたい。そう、衝動にかられ、カガリはアスランの方を向いて言いかけた。
「アスラン、今日はさ…」
最初の違和感に気づいたのはアスランだった。
自分たちの頭上部分で何か微かな音が発生しているのだ。まるで静電気が起きるバチッという発生音。
「なんだ?……ん?」
「……なんかバチバチ言ってるような……」
二人の戸惑いは驚きへと変わっていった。なんとなんと、部屋の中にブラックホールのような真っ暗な大穴が出現したのだ。
そこからぺっと吐き出されるように現れる、噂の三人。
「へ」「あ」「まぁ」
それぞれ突如現れた外の世界に戸惑いを隠せない様子だが、それはカガリとアスランとて同じだ。頭の上に捜索中の三人が現れたのだ。しかも。
「んな?」「なっ!?」
今までは当然落ちてきていたのだから物理的に下の落ちるのは当たり前で、三人も真下のテーブル付近に落ちてくる。
「くそっ!」
「わっ!」
アスランは舌打ちしながら咄嗟にカガリを腕に抱き込んで踏みつぶされる前に素早く避けることができた。
どがしゃぁんんーー!!
だがテーブルの上に三人が一気に落ちてきて盛大にテーブルとテーブルの上の朝食は全て吹っ飛んだ。
テーブルは粉砕、朝食は宙を舞い、床はぐちゃぐちゃ。まさに“異世界帰還”の大惨事である。
「ぐぎぎぎ!」「さすがアマキ様」
「ぐへっ」
そんな中、アマキはラクスをお姫様抱っこして何とか着地に成功した。キラは転がって何とか受け身は取れていた。
「…はぁ……お前ら、一体どこから帰ってくるんだ……」
「いや~、まさかカガリのとこに繋がってるとかわからなかったよ。よ、カガリとアスラン。お久しぶり~」
呆れるアスランに対してアマキはラクスを無事に床に降ろすと悪びれた様子もなくへらへらと笑って挨拶をして見せた。
プルプルと肩を震わせていたカガリはキッと般若となりアマキを底冷えさせるような睨みでツカツカと小走りにアマキ目指して近づいてきた。声を荒げまるで怒りで我を忘れているように。
「じゃねーよ!!」
「ぐげ!?」
彼女の首元を両手で締め上げた。思い切りシェイクさせる。というか怒りのシェイクである。無抵抗なアマキをいいことにカガリの暴走は止まらない。あれだけ心配させてタイミングよく出てくるとかコントか。コントなのか。タイミング狙いすぎだろう。
というかこの抑えようがない怒りをぶつけるしかない。本人に。
「テメェー!!皆に散々心配させといてどっから現れてんだっ!っていうか今までどこに居やがったんだよっ」
精一杯のアマキの抵抗にさらにカガリの怒りは加速する。
「ずっとも音信不通で、どこから湧いて出てきたんだよっ!っていうか人ん家に変な穴繋げるなっ!」
「暴力反対~~~!!」
「やかましいぃ!」
普段から暴走気味なのはどっちだ!
アマキを締め上げなくては気が済まないカガリに近づいて何とか抑えようとする男子たち。
「カガリ!やめろっ!首相にあるまじき行為だぞ」
「カガリその辺で勘弁してあげて!さっきまで白目で気絶してたんだからっ」
「あんっ!?」
「「スイマセン」」
振り返ったカガリの睨みに男子たちは恐れを抱き一瞬にして引き下がった。
「ぐるじい!たしゅけて」
「ゴメン無理」「諦めて受け入れろ」
助けを求めるアマキにキラとアスランは無情にも見捨てた。
ラクスは仕方なくカガリに声を掛けた。
「カガリさん、とりあえずアマキ様を離してくださいませんか。どうやらわたくしたちとこちらでは時間の誤差があるみたいですから」
「……っチ…」
ラクスにそう言われてしまえばカガリも従うほかない。悔しそうに手を離し、解放されたアマキは「はふぅ」と息をついた。
ところでカガリはアマキ達がいなくなってから半年も経っていることをラクスに説明しただろうか。
否、まったく説明はしていないが、例の力でラクスはなんとなく事情は察したらしい。便利ではあるが、まだ打ち明けるには早い段階だ。ラクスは、まだ話すべき時ではないと判断した。
今は、静かに見守るだけ。
このあと、父・シーゲルへの“突撃インタビュー”が待っている。
自分の出生、そして隠された真実——それを知るために。