腹減り少女はSEED世界で爆発少女にレベルアップする 作:サボテンダーイオウ
なんだかんだで無事に帰ることができた三人はカガリが手配してくれた車で家族が待つ家に帰ることができるらしい。
あとで詳しい話聞くからまずは皆を安心させてこいと送り出され、心が広いなぁと誉め言葉を送ればカガリにすぐさまグーで殴られるという暴挙にアマキは涙目になった。その際、アスランに一言余計なんだよと突っ込まれ、二人は余計な火種を生まないようにうんうんと頷くのみ。
「お前だけ特別に事情聴取受けさせてやってもいいんだぞ」
「それだけは勘弁して~!」
「なら、さっさと行け!」
「はーいっ!」
慌てて車に乗り込むと、はぁと呆れたようにため息をつくカガリと、よく耐えたと労うアスラン。
キラとラクスは二人に挨拶をした。
「じゃあまた」
「ああ」
「カガリさんとアスランも無理なさらないでくださいね」
そういえばカガリとアスランの冷たい視線はアマキに向けられる。
「ああ。ソイツが新たな問題を発生させなければな」
「同意見だ」
「ピエッ!?」
「フフ、わたくしたちがしっかりと見張っておりますわ。では失礼します」
「気をつけて」「またな」
続けて車に乗り込んだ二人に手を振って見送るカガリとアスラン。これでとりあえずの問題点は何とかクリアした。
「…ふぅ……」
カガリとて、いつもの喧嘩相手がいなければ本調子もでない。
あれだけ心配していたことはおくびにも出さないカガリもまた、アスランにはアマキと似た者同士だと内心思っていた。
「さ、中に入ろう」
「……ああ」
「さぁこれで憂いもなく仕事に専念できるな」
「……ぐ…」
やっぱり、もうちょっと引き留めておけば良かったかと少し後悔したカガリであった。
◇◇◇
無事に家族が住む家に到着したころには、すでにカガリからの連絡を受けて今か今かと待ち望んでいたみんなの姿があった。
皆歓喜の表情にある中、カリダに至っては三人の無事な姿を見て目に涙を浮かべて口元を抑えていた。
「みんな、ただいま!」
「キラ、アマキちゃん、ラクスちゃん!」
「母さん、父さん!」
キラは両親と抱き合い、ラクスは嬉しそうに父シーゲルの胸に飛び込んでいく。
「ラクス、お帰り」
「お父様っ」
アマキは自分に向かって走ってきたマリューから抱擁されるかと思ったら、腕の動きが変わり、タックルからのエルボーを受けて背中を地面に強打する。
抱擁かと思いきや、マリューの腕がタックルに変化。
「ぐげっ!」
「もう!本当に心配ばかりかける子ね!」
背中を地面に強打されたアマキは、まさかのキャメルクラッチを受ける羽目に。
「いだい”””~~~~!」
なぜだ!?帰ってきてなぜこの仕打ち!?
だがいつもなら避けれるだろうこの攻撃に対してアマキは無防備の状態で受けてしまった。逃げようにもマリューの豊満な胸が頭の上で押しとどめる役割を果たす。ラクスは少しむっとした表情になる。キラは無言で合唱した。
「がががっ!?」
「おいおい、マリュー、アマキに会えて嬉しいからって皆が見てる前で格闘技披露するなよ~」
「こんな時じゃないとお仕置きを披露するなんてないでしょ?悪いことをすると痛い目にあうってわからせないとね」
「いだい””””~~~~」
ぐぎぎぎと顎をしっかりホールドされアマキは全身でお叱りを受ける中、バルドフェルドとアイシャは仲睦まじげに寄り添いながら一応マリューのフォローに回った。
「君たちがいなくなってから彼女もすっかり落ち込んでしまっていてね。帰ってきたら披露するんだと、ムウ相手に練習に励んでいたんだよ。いやー健気だったねぇ」
「マルキオ様は子供たちに見られないようになんて過剰に反応してたけどね。教育上真似するのは良くないし」
「そうそう。俺なんていっつも実験台だぜ。良かったな!アマキ」
ニカッと励ますように親指を立てるムウに対してアマキは殺意を覚えた。
「……!!」(後で覚えてろ)
だが絶賛お仕置き中のアマキは痛みに耐えかねて途中で気絶してしまい、そのまま大事そうにマリューとムウに運ばれて部屋に軟禁された。これにはキラとラクスも仕方ないと納得する。どうせ形ばかりだろうし、何よりそれだけの心配をかけたのだ。
アマキはそろそろ自分が皆にとって特別であることを学ぶべきであると考える。
どうせ、自分のことは一般市民辺りと勘違いしているだろうが、先の大戦で最も活躍した英雄の内の一人であり、それぞれの国の重鎮たちにも一目置かれる存在である。その存在を明かし、自国に取り込もうとする輩も少なくはない。
そうなればまたあの戦場へ逆戻りとなる。もし、キラ達の誰かが人質ともなればアマキは喜んで戦場へ赴くだろう。それだけ彼らはアマキにとって大切であり、アマキも皆にとって大切なのだ。
あれだけのことを成しえたのだ。
つかの間の平穏を彼女に与えたい。ここにいる誰もがそう願うことだ。
だがきっと、いつか戦場に戻る時が必ずやってくるだろう。
つかの間の平穏はきっと終わりを迎える。それまでは気づかないふりをしてこの平和を守ろう。
仮初だとしても、平和はここにあるのだから。
◇◇◇
マルキヨ様と子供らは気絶したアマキの部屋にいる。どうせ顔に落書きでも施しているのだろう。起きた時が見ものだ。
キラ達は場所を食堂へ移動し、少し一服しながら、
「………ってことがあったんだ」
これまであったことを掻い摘んで説明をしたキラとラクス。その説明は奇想天外で何とも言えない表情になる皆にそりゃそうだよなと苦笑してしまう。まるで夢物語のような話だったが、実際にキラとラクスが体験してきた事実だ。
ムウが代表してまとめて感想を言った。やや表情は硬い。
「…あー、まぁ、アスランのおやっさんも元気だってことだな。良かったじゃねぇか」
「そうね。元気なのはいいことね」
マンドラゴラに変化させられたしまった点については触れないらしい。無理やり話題を変えるバルドフェルド。
「それでラクス様がある能力に目覚めたってことだが……一体どんな力があるんだい」
「それは…お父様がよくご存じかと思われますわ」
そう言ってラクスは静かにシーゲルを見つめ、シーゲルは苦渋に満ちた表情で皆の視線を受け止めた。
「……妻との約束だった。決してラクスに知られることがないよう、私が墓場まで持っていくと死に際の彼女に告げたのだ。だが……よもやラクスが目覚めてしまうとは」
シーゲルなりの葛藤もあったのだろう。顔を片手で覆いながらもなんとか声を絞り出す。ラクスはそんな父を労り寄り添いながら話を促した。
「……お父様、お母様は一体、何をなさっていたのですか」
「ラクスの母、アリアはコロニー・メンデルに研究員として所属していた」
「「「!?」」」
一同に衝撃が走り、言葉を失う。ただ静かにシーゲルの説明が続けられた。
「そこは皆知っての通り、遺伝子研究が行われていた場所だ。アリアはユーレン・ヒビキと同僚でもあり、禁忌に値する研究をしていたのだ」
「「……」」
ヤマト夫妻は暗い表情になる。今まで秘密にしていたことが明るみに出されるのだ。
「僕とカガリの産まれた場所……」
あの激戦の最中で廃棄されたメンデルの様子を思い出す。あそこが元々キラの産まれた場所であることはわかっている。
そこでラクスの母が働いていたということは……。
シーゲルは深く息を吸って、一呼吸おいてから告白した。
「ラクス……お前も、キラ君と同じくメンデルで産まれたのだ」
「わたくしが……?」
「ああ。お前は“アコード”——コーディネーターを統率するために生み出された、新たな種族の一人だ」
「!!」
これにはラクスが息を呑んでただ驚くばかりだ。コーディネーターとして生きてきた自分が、まさかメンデル出身だったとは。
動揺で震えるラクスの手。
そっと重ねられたキラの手が、彼女を現実へと引き戻す。
「落ち着いて。僕がいるよ」
ラクスはこくりと頷き、再び父の方へ視線を向けた。
「アコードとはコーディネーターを統率する者を示す。その特別な能力もそのためだ。お前以外にもアコードは存在しているはず。あの日、私達は運命の分かれ道をした。それにコーディネーターを統率するものとしてお前の対が存在するのだ」
「対?」
「世界を導く者。対、配偶者というべきか」
「わたくしにはアマキ様がおります。対などと不確かな者など到底受け入れられません!」
つい反射的に声を荒げ席を立ちあがったラクスに対してシーゲルは苦笑しながら、分かっていると手で制した。
「分かっているよ。話として聞いてくれ」
「……はい。申し訳ありません」
ついカッとなってしまい、ラクスは恥ずかしそうに体を縮こまらせて座りなおした。
アマキ以外の恋人の存在を押し付けられそうになるのかと思いつい気持ちが高ぶってしまった。そんな豹変ぶりにシーゲルは眩しいものをみるように、ラクスの成長を誰よりも喜んでいた。
「アコードたちを引き取ったのは、アウラ・マハ・ハイバルという女性だ。今は消息不明だが、現議長ギルバート・デュランダルもメンデル出身の研究者だ。……彼には、十分な警戒が必要だ」
シーゲルからの忠告に引き笑いをするムウに対してバルドフェルドは思案顔になる。
「姫さんの能力の話が別方向に大きくなってきたな……」
「ギルバート・デュランダルねぇ。放浪中の彼にでも連絡でも取ってみるか」
「……それで、ラクスさんはそのアコードの能力を制御できているのかしら?」
マリューから率直な質問に対してラクスはすぐには答えられなかった。色々と秘密が明かされたことでラクス自身もキャパオーバーしてしまい、頭痛を感じていたのだ。こめかみを抑えながらなんとか声を絞り出す。
「……今は、制御が難しいようです……。頭が、少し痛くて……」
キラはすぐに立ち上がり、ラクスの肩に手を添えた。
「ラクス、無理しないで。少し休もう」
「……ありがとう、キラ」
キラの手を借りて椅子から立ち上がったラクスにマリューも気遣い、声を掛けた。
「気が付かなくてごめんなさいね。ラクスさんもゆっくり休んで」
「はい」
「それじゃあ、僕はラクスを部屋に連れていくから」
キラはそう言ってラクスを伴い、食堂を出て行った。二人が出ていくのを見送りながら、残された大人組は色々と積み重なった問題に深いため息をついた。
「なんだかんだと子供たちには辛い思いをさせてばかりだ」
「シーゲル様、そのように思いつめたことを言わないでください。私達はあの子たちを支える為、共にあるのですから」
カリダの一言に皆、同じ意見と頷き合う。
「そうだな。……ありがとう。皆」
シーゲルは目じりに皺を作り嬉しそうに礼を言った。
問題は山積みである。だが一人で抱えるわけではない。キラ達を支えてくれるのは自分たちだけではなく協力者もたくさんいる。
滅入ることよりも手段を探し対策を練ったほうが現実的だ。そうやって励まし合いながらここまできたのだ。