腹減り少女はSEED世界で爆発少女にレベルアップする   作:サボテンダーイオウ

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こちらのお話ではタリア艦長とデュランダル議長は不倫してません。
タリアは一人で息子を育てている立派なシングルマザーであり、昔の男に懸想することはなく、現実を生きる女です。つまりデュランダル議長の独り相撲。
これがどう今後原作と変わっていくのか見どころだと思います。


PHASE-05癒えぬ戦場

 

ミネルバの士官室。

艦内の照明はやや落とされ、壁面のモニターには地球周辺の軌道図が映し出されていた。

その中央に、赤く点滅する一点――ユニウスセブン。

議長ギルバート・デュランダルと艦長タリア・グラディスが並んで立ち、室内の空気は張り詰めていた。

 

「なんだって!? ユニウスセブンが動いてるって? 一体なぜだ!」

 

カガリの声が室内に響く。その表情は驚愕と困惑に満ちていた。

 

「それは……まだ分かりません。ですが、確かに動いているのです。かなりの速度で、しかも――もっとも危険な軌道を通って」

 

議長の言葉に、室内の空気がさらに重くなる。

 

「それはすでに本艦でも確認いたしました」

 

タリアが静かに頷き、モニターの軌道図を指し示す。

ユニウスセブンの軌道は、地球の重力圏に向かってわずかに傾いていた。

 

「しかし、なぜこんなことに? あれは百年単位で安定軌道にあるとされていたはずのものだろう……」

 

カガリが眉をひそめる。

 

「隕石の衝突か、あるいは……他の要因かもしれない」

 

アスランが低く呟く。その声には、過去の記憶を呼び起こすような重さがあった。

アマキは黙ったまま、壁際に立ち尽くしていた。表情は曇り、視線はモニターの赤点に釘付けになっている。

 

(……キラ、ラクス、みんな……)

 

胸の奥で、何かがざわめいた。

 

「ともかく、動いているのですよ。今この瞬間も、地球に向かって」

 

議長の声が静かに、しかし確実に場を支配する。

 

「……何か策はあるのか?」

 

カガリが問いかける。

 

「原因の究明と回避手段の模索に、今プラントも全力を挙げています。そしてこのアクシデントに際し、姫には大変申し訳ないのですが――私は、間もなく修理を終えるミネルバに、ユニウスセブンへの調査任務を特命いたしました」

 

「!」

 

カガリが息を呑む。アスランとアマキも、わずかに身を乗り出す。

 

「さいわい、現在地からの距離も近い。姫にも、どうかご理解いただきたい」

 

「無論だ。これは私たちにとっても重大な問題だ。私にもできることがあるなら、何でも言ってくれ」

 

「ありがとうございます。お力をお借りしたいことがあれば、こちらから改めてご連絡いたします」

 

「難しいとは思うが……お国元とも、直接連絡が取れるよう試みてみます」

 

「すまない。感謝する」

 

議長は静かに頷き、タリアと共に士官室を後にする。残された空気は、重く、そして静かだった。モニターの赤点は、ゆっくりと地球へ向かっていた。

◇◇◇

 

「けど、なんであれが!?」

 

レクルームに集まった仲間たちの間でも、ユニウスセブンの話題で持ちきりだった。

誰もが不安を抱えながらも、それを冗談めかして打ち消そうとしていた。

 

「隕石でも当たったか、何かの影響で軌道が外れたか」

 

「地球への衝突コースだって……ホントなのか?」

 

シンが深刻そうに尋ねると、メイリンが頷いた。

 

「バートさんがそう言ってた」

 

ルナマリアが髪をかき上げながら、ため息をつく。

 

「アーモリーでは強奪騒ぎだし、それもまだ片付いてないのに、今度はこれ。どうなっちゃってんのよ」

 

「――で、今度はそのユニウスセブンをどうすればいいの?」

 

ルナマリアの率直な問いに、場が一瞬沈黙する。

誰もが、答えを持っていなかった。

 

「砕くしかない」

 

レイの静かな声が、空気を切り裂いた。ヴィーノとヨウランが顔を見合わせる。

 

「砕くって……?」

 

「……あれを?」

 

「すでに地球の引力圏に引かれているというのなら、軌道の変更は不可能だ。衝突を回避したいのなら、砕くしかない」

 

レイは淡々と告げる。

その冷静さが、逆に事態の深刻さを際立たせた。

 

「そんなもん、どうやって砕くのぉ!?」

 

「だが、衝突すれば地球は壊滅する」

 

「そうなれば、何も残らないぞ。そこに生きるものは」

 

真っ先に反応したのはシンだった。ほとんど無意識に、言葉が口をついて出た。

 

「そんなの、駄目だ」

 

「シン?」

 

ルナマリアがいぶかしげに振り返る。

 

「だって……もしかしたら、あの人がいるかもしれない……!」

 

「お前の、憧れの君か?」

 

レイが静かに尋ねると、シンは小さく頷き、拳をぎゅっと握りしめた。

 

「……駄目だろ。絶対、何とかしなくちゃ!」

 

そうだ。あの人がいるなら、絶対に阻止しなければならない。奮起するシンの横で、ヴィーノが言葉にしてはいけないことを口にした。沈黙が落ちたあと、ヴィーノが軽く笑って言った。

 

「これってさ、もしかして地球めつぼー?」

 

「だな」

 

その言葉に、シンの表情が一変する。

 

「おい!」

 

立ち上がりざま、怒気を帯びた声が響いた。

 

「それを冗談でも本気でも言ってるなら、俺はお前たちを心底軽蔑するぞ!」

 

その瞬間、レクルームの空気が凍りついた。

ヴィーノとヨウランが目を見開く――が、それ以上に場を制したのは、別の声だった。

 

「……それは、私も同感だ」

 

鋭い声に、皆が一斉に入り口を振り返る。

 

そこに立っていたのは、カガリ・ユラ・アスハ。金色の瞳に、静かな怒りが宿っていた。

その背後には、アスランと、サングラスをかけた少女――アマノ・シノザキが控えていた。

二人とも、無言のまま鋭い視線を向けている。

レイだけが動揺を見せず、すっと立ち上がって敬礼を送った。

 

誰もが、カガリの怒声を覚悟した。だが、彼女は静かに言った。

 

「……たちの悪い冗談だ。聞かなかったことにはできない。地球に着いたら、厳重に抗議させてもらう」

 

その言葉に、ヴィーノたちは顔を伏せた。

国家元首としての責務。告げ口のように見えるかもしれないが、無視することはできない。

カガリは、あくまで冷静にその場を収めようとしていた。

その姿に、アマキは小さく感嘆の息を漏らす。だが、内心では――

 

(腸が煮えくり返ってる。地球には、私にとって大切な人たちがいるんだ)

 

「やるね。私だったら半殺しの刑に処すのに」

 

「なっ……!」

 

「君たちに大切な人がいるように、私たちにも、地球に大切な人たちがいる。軽はずみな言葉が、戦争の火種になるってこと――覚えておきな」

 

アマキはサングラス越しにヴィーノを見据える。

 

「君の名前、確か……ヴィーノ・デュプレ、だったよね。覚えておくよ」

 

その言葉に、ヴィーノは青ざめた。

 

「カガリ、行こ」

 

「……あ、ああ」

 

アスランが軽く頭を下げる。

 

「おい、すまない。連れが失礼をした」

 

その場を離れようとしたとき、背後から声がかかった。

 

「あ、あの!」

 

アマノが振り返る。

 

「ん?」

 

シンが思わず追いかけて声を掛けてきたのだ。

 

「……あの、貴方も……さっきの……」

 

「……君、家族は?」

 

「え、えーと……プラントに」

 

シンはしどろもどろになりながらも言葉にする。

どうしてだろうか、妙な緊張感に包まれてしまうのは。アマノはシンの言葉を聞いて納得したようだった。

 

「そっか。……私もさ。地球に、大切な家族が待ってるんだ。だから、絶対に――守ってみせるよ」

 

「……俺も。俺も、頑張ります!……オーブ、嫌いじゃないし……俺を助けてくれた人が、いるかもしれないから」

 

その決意に、アマノはふっと口元を緩めた。

 

「……そっか。じゃあ、一時的な仲間だね。えーと」

 

「シン! シン・アスカです!」

 

元気よく名乗ると、アマノはスッと手を差し出した。

ぷにぷにとした白い手が、まっすぐに差し出されている。

 

「アマノ・シノザキ。よろしく、シン」

 

「……はい!」

 

――あの時、助けてくれた人と、同じ声だと思った。

 

◇◇◇

 

ユーラシア西部、山脈の裾野に広がる穏やかな谷。

そこは、都市の喧騒から遠く離れた、静謐と緑に包まれた土地だった。

乗馬を楽しむ者たちがいる中、ひと際目を見張るのがとある邸宅。そこには乗馬服姿で地球連合の要人たちが集まっていた。ビリヤードなどする者もいる。

空気は重く、誰もがユニウスセブンの軌道図を睨みつけている。

 

「さてと、とんでもない事態じゃ」

 

老練な年配の要人が口を開く。それに対して他の要人たちも心にもないことを言ってみせる。

 

「まさに未曽有の危機。地球滅亡というシナリオですな」

 

「ふん! そんなシナリオを書いた者がいるのかね」

 

男が鼻を鳴らす。

 

「それはファントムペインに調査を命じて戻らせました。いちおう」

 

ロード・ジブリール。若い年代でありながらこの邸宅の持ち主でありブルーコスモスの新たな盟主であった。彼の目は冷たく、どこか楽しげですらある。

 

「大丈夫なのか?」

 

「大丈夫ですよ」

 

「いまさら、何ぞ役に立つのか。そんなものを調べて」

 

「それを調べるんです」

 

「しかし、招集はなんだ。ジブリール。まぁ、大西洋連邦をはじめとする各国政府が、よもやあれをあのまま落とすとも思ってはおらんが……いちおう、避難や対策に忙しいのだぞ、みな」

 

「この度のことには、正直申し上げて私も大変ショックを受けましてね」

 

「ユニウスセブンが……まさか、そんな。いったいなぜ?まずは思ったのは、そんなことばかりでした」

 

「前置きはいいよ、ジブリール」

 

「いえ、ここが肝心なのです」

 

「む?」

 

「やがてこの事態、世界中の誰もがそう思うこととなるでしょう。ならば我々は、それに“答え”を与えてやらねば」

 

「プラントのデュランダルは、すでに地球各国に警告を発し、回避・対応に自分たちも全力を挙げるとメッセージを送ってきました」

 

「早い対応だったな。奴らも慌てていた」

 

「ならば、これは本当に自然現象ということかの……だが、それでは……」

 

「いえ、そんなことはどうでもいいんですよ。重要なのは、この災難のあと――『なぜこんなことに?』と嘆く民衆に、我らが与えてやる“答え”の方でしょう」

 

「やれやれ、もうそんな先の算段か?」

 

「むろん」

 

ジブリールは立ち上がり、スクリーンに映るユニウスセブンを指差す。

 

「原因がなんであれ、あのぶざまで馬鹿な塊が、間もなく地球に――我等の頭上に落ちてくることだけは確かなんです!」

 

ジブリールは吐き捨てるように言った。

 

「どういうことなんです、これは?!あんなもののために! この私達までもが顔色を変えて逃げ回らねばならないとは?!」

 

徐々にその口調が過激さを増していく。

 

「この屈辱は、どうあっても晴らさねばなりますまい。誰に? 当然、あんなものをドカドカ宇宙に作ったコーディネーターどもにです。違いますか?」

 

「ふむ、それはかまわんがの」

 

「だがこれでは、こうむる被害によっては、戦争するだけの体力すら残らぬぞ」

 

「だから、今日お集まりいただいたんです」

 

ジブリールはゆっくりとメンバーを見渡す。

 

「避難も脱出もよろしい。ですが、その後には我等は一気に打って出ます。例のプランで。そのことだけは、皆様にもご承知いただきたくてね」

 

「なるほど、強きだねぇ」

 

「コーディネーター憎しで、かえって力が湧きますかな。民衆も」

 

「……残っていればね」

 

「残りをまとめるんでしょう? 憎しみという名の“愛”で」

 

協議というなの集まりは終了した。

 

「皆、プランに異存はないようじゃの。ジブリール」

 

ジブリールはかしこまったように会釈をした。

 

「では、地祇は事態のあとじゃな。君はそれまでに詳細な具体案を」

 

「はい」

 

これを機に次々と立ち上がる者たち。

 

「しかし、どれほどの被害になるのかね……」

 

「戦争はいいが、どれほどの被害になるのかね……」

 

「どちらにしろ、“青き清浄なる世界”のためにさ」

 

「避難は、どちらへ――」

 

要人たちは緊張感に欠ける様子で呑気そうに談話しながら邸宅を出ていく。ジブリールは彼らの姿を見送りながら苛立ちを覚えずにはいられなかった。

 

あの老人たちがどうなろうと知った事ではない。

だが憎むべきコーディネーターらの所為でジブリールは穴倉生活を強いられるのだ。

これから地球に向けて降るであろう岩塊から逃れなければならないのだから。

 

苛立たしさからジブリールはスヌーカーの球を横に投げつけた。それが飛んだ方向にはマイセンの食器があり球が当たると粉々に砕けた。

 

◇◇◇

 

ミネルバのブリッジは、修理を終えたばかりの艦とは思えないほど整然としていた。

モニターにはユニウスセブンの軌道が赤く表示され、警告音が低く鳴り続けている。

タリアは議長ギルバート・デュランダルがブリッジに入ってくるのを確認すると、すぐに立ち上がり報告を始めた。

 

「ボルテールとルソーが、メテオブレイカーを携えてすでに先行しています」

 

デュランダルは頷き、ゆっくりと指揮官席に腰を下ろす。

その動作ひとつで、ブリッジの空気が引き締まった。

 

「……ああ、こちらも急ごう」

 

ミネルバは、ひとまずの修理を終え、ユニウスセブンへ向けて再び動き出していた。

艦内の振動がわずかに伝わり、推進音が低く響く。

アーサーが控えめに口を開いた。

 

「地球軍側には、何か動きはないのですか?」

 

その声には、焦りと不安が滲んでいた。

彼の視線は、モニターに映る軌道図に釘付けになっている。

デュランダルは一度目を閉じ、言葉を選ぶようにして答えた。

 

「何をしているのか、まだ何の連絡も受けていない。だが……月からでは、艦船を出しても間に合わないだろう」

 

タリアが眉をひそめる。ユニウスセブンの速度は、予想を遥かに超えていた。

 

「残された手段は、地表からのミサイルによる迎撃くらいだが……」

 

デュランダルは一瞬、言葉を切る。その先にある現実を、誰もが理解していた。

 

「それでは表面を焼くだけで、さしたる効果は望めまい」

 

ユニウスセブン――あの惨劇の地。コーディネーターにとっては、決して忘れられぬ墓標。

その巨大な質量を、地上からのミサイルで砕くなど、現実的ではなかった。

ブリッジに集うクルーたちへ、デュランダルは静かに語りかける。

その声は穏やかでありながら、確かな重みを持っていた。

 

「ともあれ、地球は我々にとっても“母なる大地”だ。その未曽有の危機に、我々もできる限りのことをせねばならん。この艦の装備では、できることも限られているかもしれない。だが――全力で、事態にあたってくれ」

 

「はっ!」

 

クルーたちの声が重なり、ミネルバのブリッジに決意の響きが満ちた。

 

◇◇◇

 

ボルテール艦のブリッジは、ユニウスセブンへの進路を維持しながら、張り詰めた空気に包まれていた。各オペレーターは無言のまま端末に向かい、軌道計算や通信確認に追われている。

操作音と警告灯の点滅が、静かに緊迫を刻んでいた。

中央の観測スクリーンには、ユニウスセブンの影が映っていた。

その輪郭は歪み、黒い巨岩のように空を覆っている。

まるで、過去の亡霊が地球へと落ちてくるかのようだった。

 

「こうして改めて見ると……デカいな」

 

金髪の青年――ディアッカ・エルスマンが、腕を組みながらスクリーンを見上げて呟いた。

その制服は一般兵士のものだが、どこか場慣れした余裕がある。

だが、その言葉には、ほんのわずかに震えが混じっていた。

 

「当たり前だ。住んでたんだぞ、俺たちは。同じような場所に」

 

噛みつくように返したのは、銀髪の青年――イザーク・ジュール。

指揮官服に身を包み、端末の前で腕を組んでいたが、ディアッカの言葉に反応して顔を上げる。

その瞳には、過去を見据えるような鋭さが宿っていた。

 

「それを砕けってさ。今回の仕事がどれだけ重大か、改めてわかったって話だよ」

 

ディアッカは肩をすくめながら言う。

だがイザークは冷たく言い返す。

 

「お前は先の見通しが甘いんだ。へらへらしてないで、もっと危機意識を持て」

 

その言葉に、ディアッカは苦笑しながらも視線をスクリーンに戻す。

ユニウスセブンは、確かに“砕く”にはあまりにも巨大だった。

その質量と速度は、冗談を許さない現実だった。しばしの沈黙のあと、ディアッカが声を落とす。

 

「……そーいや、やばーい話を小耳に挟んだんだけどよ。……アマキ、こっちに来てるらしいぜ」

 

「ファ!?」

 

イザークの声が裏返った。端末に向けていた視線が跳ねるようにディアッカへ向き直る。

その反応は、あまりにも素直すぎた。

 

「そうなるよな。反応がさ」

 

ディアッカは「わかるぜ」と言いたげに肩を落とす。

その表情には、同情とも諦めともつかない色が浮かんでいた。

 

「……アイツ、一体何しに来たんだ?」

 

「知らないけど……絶対、何か起こる気がするよ、オレは」

 

イザークは黙り込む。表情は読めないが、眉間の皺だけが深く刻まれていく。ブリッジの空気が、わずかに揺れた。

それは戦場の勘ではない。

もっと個人的な、胸の奥に沈んだ記憶がざわめくような、そんな予感だった。嫌な予感しかしない。というか、絶対何か起こる。

 

アマキが絡むとろくなことがない――それはイザーク自身の体験からくる確信だった。

 

──『イザーク~~♪』

 

馴れ馴れしく人の名前を呼び捨てにし、今まで自分にした仕打ちをすっかり忘れている能天気な女。

 

散々振り回された挙句、勝手にキラ・ヤマトと隠居生活を始めたことも、どうにも気に入らない。いや、気に入らないどころではない。とにかく、気に入らない!

 

人の心を散々かき乱しておいて、なんて自分勝手な女だ――

 

最初は文句ばかり飛ばしていたが、そういう女だと理解できても、すぐに受け入れられるほど単純ではなかった。

 

胸の奥に残った妙な感情に支配されながら、イザークはどうしても一抹の不安をぬぐえなかった。

 

◇◇◇

 

ブリッジでは、ボルテール艦との回線接続を試みていた。ユニウスセブンは、確実に地球へと近づきつつある。

 

「ボルテールとの回線、開ける?」

 

「いえ、通常回線はまだ繋がりません」

 

緊張が漂う中、エレベーターの扉が開き、アスランとアマキが姿を現す。

議長ギルバート・デュランダルが気づき、振り返った。

 

「どうしたのかね、アスラン。いや――アレックス君とアマノ君」

 

アスランの名を口にした瞬間、タリアの表情がわずかに強張る。だが、ここで下手に口を挟めば交渉がこじれる。アマキはそれを察し、黙って一歩前に出た。

 

「無理を承知でお願いします。私たちにMSをお貸しください」

 

「お願いします」

 

アスランも深く頭を下げる。タリアが静かに、しかし厳しく言い放つ。

 

「確かに無理な話ね。今は他国の民間人であるあなた方に、そんな許可が出ると思って?

――カナーバ全議長のせっかくの計らいを、無駄にでもしたいの?」

 

脱走者であるアスランが、今ここで名乗りを上げれば、タリアは軍人として彼を拘束しなければならない。それを避けるためにも、あえて“民間人”として扱っている――それは、アスランもアマキも重々承知していた。

 

「わかっています。でも、この状況をただ見ていることなどできません」

 

「使える機体があるのなら、どうか――お願いします」

 

アマキはしっかりと頭を下げた。自分のプライドなど、キラたちの無事に繋がるのなら、どうでもいい。彼らは、アマキにとって命に等しい存在だ。守らなければならない。どんな手段を使ってでも。

 

「気持ちはわかるけど……」

 

「いいだろう。私が許可しよう」

 

「議長!」

 

タリアが思わず声を上げる。

 

「議長権限の特例として」

 

「ですが、議長……!」

 

「戦闘ではないんだ、艦長。出せる機体は、一機でも多い方がいい」

 

デュランダルは静かに言い切る。

 

「腕は確かだ――それは、君も知っているだろう?」

 

タリアは黙り込む。

その沈黙が、許可の証だった。

 

◇◇◇

 

ディアッカたち作業員を出迎えたのは、識別不能のジンからの一方的な攻撃だった。

警告も、交信もない。

ただ、いきなりの砲火。

赤い閃光が空を裂き、爆音と衝撃が機体を揺らす。

 

「なんだよ、これは?!」

 

ディアッカ・エルスマンが叫んだ。

モニターには、複数の敵影が映し出されている。

だが、どれも識別コードが読み取れない。

味方でも敵でもない、どこにも属さない“何か”が、こちらを狙っていた。

 

「ええい! 下がれ! ひとまず下がるんだ!」

 

指揮官の怒号が通信回線を通じて響く。

現場の混乱を抑えるため、作業員たちに一時撤退の指示が飛ぶ。

だが、すでに数機が被弾し、煙を上げていた。

 

『ゲイツのライフルを射出する! ディアッカ、メテオブレイカーを守れ! 俺もすぐ出る!』

 

イザーク・ジュールの声が、怒気を孕んで響く。

端末を叩き、武装の射出を指示するその手は、わずかに震えていた。

焦りと怒り、そして責任感――すべてが混ざり合い、彼の声を鋭くする。

 

「ちっくしょう!」

 

ディアッカが歯を食いしばり、拳を握る。

メテオブレイカー――ユニウスセブン破砕の要となる兵器。

それを守る任務は、今や命懸けの防衛戦へと変貌していた。

 

そして今回の首謀者たちが故意にユニウスセブンを地球へ落とそうとしている事実を直感した。

 

◇◇◇

 

「粉砕作業の支援って言ったって、何すればいいのよ」

 

ルナマリアが不満げに声を上げる。

目の前の端末には、ユニウスセブンの軌道と破砕計画が表示されていたが、どこか現実味が薄い。

 

「へぇ。ま、MSには乗れるんだもんね」

 

ルナマリアが軽口を叩く。

だがその直後、ブリッジに緊急通信が響いた。

 

『MS発進一分前……発進停止!状況変化!』

 

『ユニウスセブンにてジュール隊が不明機と交戦中』

 

「イザーク?もしかしてボルテールってイザークの部隊かな?」

 

『各機、対MS戦闘用に装備を変更してください』

 

『さらにボギーワン確認!グリーン25デルタ!』

 

空気が一変する。支援任務は、突如として戦闘任務へと変貌した。

管制官へ問いただすように言うアスラン。

 

「どういうことだ!?」

 

しかし赤髪の少女メイリンも困惑している様子だった。

 

『わかりません。しかし本艦の任務がジュール隊の支援であることに変わりなし。換装終了次第各機発進願います!」

 

ただの岩砕きが戦闘へと変わるなど誰が予想できようか。自分たちの装備も戦闘用に変更されることになった。

シンのコアスプレンダーが先に発進し、三つのユニットも後を追うように射出される。

続いてレイのザクファントム。続いてルナマリア機がカタパルトに運ばれる。作業中、アスランの元に回線が開きルナマリアが発破をかけてきた。

 

「状況が変わりましたね。危ないですよ、おやめになります?」

 

ルナマリアが皮肉めいた笑みを浮かべて言う。

だが、アスランは即座に睨み返した。

 

「馬鹿にするな」

 

その瞳には、揺るぎない決意が宿っていた。

 

『アスラン・ザラ・出る!』

 

その背を見送るのは、アマキだ。最後の出撃者となり緊張感は一気に高まっているはずなのだが、どうにもあいにくサイズの合っていないパイロットスーツは、ぎっちぎちで動きづらい。首元が締め付けられ、呼吸すら浅くなる。

だが、そんなことはどうでもよかった。

早々に終わらせればいい――それだけだ。

 

「………ふぅ……」

 

アマキは一度、深く息を吐いた。

その吐息は、胸の奥に沈んだ焦りと決意を押し出すようだった。

 

(キラ、ラクス……皆…!)

 

彼らの顔が浮かぶ。彼らの尊い命。守らなければならない。どんな手段を使ってでも!

 

「アマノ・シノザキ、行くぞ!」

 

ヘルメットを被り、視界がクリアになる。

その先に広がるのは、終わりのない広い星空。そして、戦場だ。

守る者のため、再びアマキは宇宙(そら)へ飛び出す。

 

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