腹減り少女はSEED世界で爆発少女にレベルアップする   作:サボテンダーイオウ

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PHASE-06世界の終わる時

誰かが言い出したのだ。ユニウスセブンを落とそうと。

落してナチュラルに自分たちと同じ思いをさせてやろうとと。最初こそ、声は小さく吹けば消し飛ぶような火だった。その火に魅入られし者が続々と現れた。

皆、家族や近しい者を殺され奪われた者だった。その声が大きく広がり、一つの動きへと変化した。普段軍の中で動く者は表面を取り繕って日常を過ごした。

いつか、報いを受けさせるため、仮面をかぶっていた。そして脱走犯として追われ、廃コロニーに潜み活動していた。

 

そしてついに決行の時がやってきたのだ。

 

『こんなヒヨッコ共に!』

 

メテオブレイカーでユニウスセブンを破砕しようとたくらむゲイツ達にジンで容赦なく襲い掛かりその機体を霧散させる。自分たちの腕は確かでぬるま湯につかった彼らよりは圧倒てきに戦意が違うのだ。背負うものも悲しみも。

 

『我らの想い、やらせはせんわ!いまさら!』

 

守る者を失ったものは、死を恐れない。

そして復讐の炎は決して消えることはない。

 

◇◇◇

艦橋に緊張が走る。

 

「ジンを使っているのか、その一群は?」

 

デュランダルの声が鋭く響く。モニターに映る敵影は、既知の型とは異なる挙動を見せていた。

 

「ハイマニューバ2型のようです。付近に母艦は?」

 

タリアからの問いにメイリンが焦りながらも冷静に情報を解析する。

 

「見当たりません!」

 

即座に返された報告に、艦内の空気がさらに張り詰める。

「けどなぜこんな…。ユニウスセブンの軌道をずらしたのはこいつらってことですか?!」

 

アーサーが声を荒げる。画面の向こうには、ユニウスセブンが、地球へ向かって徐々に

 

「え……!?」

 

誰かが息を呑む。

 

「一体どの馬鹿が!」

 

タリアが拳を叩きつけるように叫ぶ。怒りと焦燥が混じった声が艦橋に響き渡る。

 

「でもそういうことならなおさらこれを地球へ落とさせるわけにはいかないわ。レイたちにもそう伝えてちょうだい」

 

静かに、しかし確固たる意志を込めて、艦の後方にが口を開いた。金色の瞳が、スクリーンの向こうを見据えている。

 

「姫」

 

デュランダルがカガリに気づき視線をそちらへ向ける。

 

「私の護衛二人は?」

 

彼女の声には、わずかな不安が滲んでいた。

 

「おや、ご存じなかったのですか?」

 

デュランダルの口元に、わずかな皮肉が浮かぶ。

 

「……まさか!」

 

カガリの瞳が見開かれる。

 

「ええ。今、彼らはあそこですよ」

 

デュランダルが指し示した先には、破砕作業へと向かう機体たちの姿があった。

カガリは息を呑み、拳を握りしめた。なぜなら、

 

(一言、言っていけ!)

 

と心の中で強く叫んでいたからだ。

 

◇◇◇

破砕作業の仲間たちが複数のジンにやられていく。ディアッカは長距離砲をジンに向けるが倒したと思わされたところで軽やかに回避されてしまう。

 

『くっ!どういうやつらだよ、いったい!ジンでこうまで……!』

 

自分たちは赤服というエリートだった。イザークとて同じ。だが敵である奴らは自分たちの攻撃をしっかりと躱した上で攻撃を仕掛けてきている。並みの敵ではない。歴戦を潜り抜けた自分たちと同じ存在。もしくはそれ以上か。

 

『工作部隊は破砕作業を進めろ!これでは奴らの思うつぼだぞ!』

 

そこへスラッシュザクファントムで駆けつけたイザークが指示を鋭い声で飛ばす。これにより工作部隊に動きが活性化し始めた。だがジンの攻撃により生き延びたゲイツが再びメテオブレイカー作業に入ろうとする。だがそれを阻止せんとジンがイザークに襲いかかった。だがパイロットの能力が違いすぎる。瞬く間にジンはビーム銃によって撃墜された。

敵はこれだけかと思いきや、今度はディアッカのコクピット内でけたたましい警告音が鳴る。それにイザークも反応し、モニターを確認すると、かつて友軍機、現奪取された敵の機体が三体やってきた。

 

『『!?』』

 

彼らもまた地球へ向けられた脅威に対して動き出した結果の邂逅であった。

 

『冗談じゃないぜ!こんなところでドタバタと!』

 

『お前らのせいかよ!こいつが動き出したのはっ!』

 

『っ!』

 

スノウの指示により戦闘へと投入された三機はその怒りを露わにイザークとディアッカにぶつけようと襲いかかる。

 

『なんだ!?カオス、ガイア、アビス?!』

 

『アーモリーワンで強奪された機体か!?』

 

突然の介入に動揺するものの、迎え撃つ敵が増えただけだ。冷静に対処するのみと二機は三機を迎え撃つべく動き出した。そして別地点から三機を確認したシンとルナマリアは散々してやられた依然の戦闘を思い出し、ユニウスセブン破砕作業のことなど頭からすっぽりと抜けさり、我先にと意気込んだ。

 

『ちぃ!あいつらっ!』

 

『あの三機、今日こそ!』

 

そんな二機に対してアスランが冷静に呼び掛ける。

 

『目的は戦闘じゃないんだぞ!』

 

だがそれに食って掛かったのはルナマリアだった。反抗的に言い返す。

 

『わかってます!けど撃ってくるんだもの。あれをやらなきゃ作業もできないでしょう!?』

 

『くっ』

 

乱暴だが正論ではある。足止めは必要だ。二機がアスランの言葉を待たずに先へ向かってしまうのを見送りながら、レイ、アスラン、アマキはユニウスセブンへ向けて移動を開始した。

 

『厄介なことになったねぇ』

 

ザクでどこまで踏ん張り切れるか。

アマキは最悪のことも想定しながらジンを駆った。

 

◇◇◇

「ユニウスセブン、さらに効果角プラス1・5!加速4%!」

 

「ジュール隊、カオス、アビス、ガイアの攻撃を受けています!」

 

次々と上がる報告に艦橋に緊張が走る。

どうやっても間に合わせなければならない、巨大な構造体が、地球へ向けて加速していた。だが謎の部隊にボギーワンの出現と目まぐるしく敵が出現してくることで破砕作業が思ったように進まない。むしろ、悪化するばかりだ。

 

副艦長アーサー・トラインがモニターを睨みながら声を上げる。

 

「これでは破砕作業などできません!艦長、本艦もボギーワンを!」

 

タリアが眉をひそめ、背後を振り返る。

そこにはデュランダルが静かに椅子に腰掛けていた。

背筋を伸ばし、組んだ指を顎の下に添え、ただ黙して状況を見つめている。

そのさらに脇、艦橋の一角。カガリもまた、椅子に腰掛けていた。

腕を組み、背筋を伸ばしながら、スクリーンに映るユニウスセブンと交錯するMS群を見つめている。その瞳は鋭く、しかしその奥には焦りと祈りが滲んでいた。

 

「議長、現時点でボギーワンをどう判断されますか?」

 

タリアの問いに、議長はゆっくりと視線を上げた。

その眼差しは穏やかでありながら、鋭く状況を見通していた。

 

「海賊と?それとも―――地球軍と?」

 

「難しいな……。私は地球軍とはしたくなかったのだが…」

 

「どんな火種になるかわかりませんものね?」

 

「だが状況は変わった」

 

議長は椅子に深く身を預けたまま、静かに言葉を紡ぐ。

その声は決して大きくない。だが、艦橋の誰もが耳を傾けていた。

 

「ええ。この非常時に際し、彼らが自らを地球軍、もしくはそれに準する部隊だと認めるのなら、この場での戦闘には何の意味もありません」

 

「逆に、あのジン部隊を庇っているとも思われかねんか」

 

「そんな!」

 

アーサーが思わず声を上げる。

 

「しかたないわ。あの機体がダガーだったら、あなたも地球軍の関与を疑うでしょう?」

 

カガリはそのやり取りを、椅子に座ったまま固唾をのんで見守っていた。

拳を握ることも、声を上げることもせず、ただ静かに。

だが、その胸の奥では、アスランとアマキの名が何度も脈打っていた。

 

「ボギーワンとコンタクトが取れるか?」

 

「国際救難チャンネルを使えば」

 

「ならばそれで呼び掛けてくれ。我々はユニウスセブン落下阻止のために破砕作業を行っているのだと」

 

「はい」

 

通信が切り替わり、オペレーターの指が走る。その声は、世界ボギーワンに向けて放たれた。

議長は椅子に座ったまま、静かに目を閉じた。

その姿は、嵐の中心にいる者のように、微動だにしなかった。

そしてカガリもまた、椅子の上で静かに息を吐いた。

――どうか、無事で。

 

◇◇◇

シンはアビスと、ルナマリアはガイアと、そしてアスランとアマキはカオスを相手に戦うことになる。限られた時間の中でどれだけのことができるか。その時間さえ今は惜しいというのに、望まない戦闘は早く終わらせるに限る。

アスランとアマキが相手となればカオスにとって劣勢を強いられることは分かり切っていたが、それでもしぶとくカオスは喰らいついてきた。

 

◇◇◇

 

宇宙での激しい戦闘は、地球の人々にもさまざまな波紋を広げていた。

錯綜する情報の中、テレビでは連日報道が続き、街には不安と混乱が渦巻いている。

その報せは、隠居生活を送るキラたちのもとにも届いていた。

宇宙(うえ)に上がったアマキたちの身を案じながら、彼らもまたシェルターへの避難をいずれ余儀されている。

だが今は、ただ静かに、事態の推移を見守るしかなかった。

 

「……やっぱり、僕も一緒に行くべきだったのかな」

 

「いいえ。でもきっとアマキなら大丈夫ですわ」

 

「そう……だね。無理してなければいいけど」

 

「ええ。何事も全力で向き合う方ですもの。帰ってきたらたくさん褒めてあげましょうね」

 

キラは小さく頷き、テレビに映る様々な映像を見つめた。

その瞳には、遠く離れた愛しい彼女や仲間たちへの祈りが宿っていた。

 

◇◇◇

 

戦闘が続く中、破砕作業は止まることなく進められていた。ゲイツ隊が起動させたメテオブレイカーが地中へと深く突き刺さり、パイロットたちが歓声を上げる。ユニウスセブンの大地には確かに亀裂が走るが、まだその威力は十分とは言えない。

 

『くそっ!』

 

舌打ちしながら、イザークは所属不明のジンを一機撃墜する。別のゲイツがメテオブレイカーの起動を試みるが、それを阻止しようとジンが襲いかかる。

 

『ええい!』

 

イザークは咄嗟に長方ビーム砲を放ち、ジンの片足を撃ち抜いた。仲間を守りながら、叱咤激励の声を飛ばす。

 

『急げ!モタモタしてると割れても間に合わんぞ!』

 

さらにメテオブレイカーが作動し、大地が大きく揺れた。その衝撃は戦う者たちを一瞬、動きを止めるほどだった。

 

『グレイト!やったぜ!』

 

ディアッカの歓喜の声が響き、仲間たちにもその感動が伝染する。ユニウスセブンの大地が真っ二つに裂け、砕けた岩塊がいくつも飛び出す。イザークたちはそれを避けるため距離を取り、敵のジンたちも自然と後退していく。

だが、これだけでは地球への被害は防げない。崩壊したコロニーの残骸は、なおも地球へと落下を続けていた。その質量と速度は、もはや壊滅的な衝突を避けられない段階に近づいている。

 

『だが、まだまだだ。もっと細かく砕かないと……』

 

冷静な声が通信越しに届く。アスラン・ザラだった。彼のザクは滑らかな動きで破砕作業を続けている。もう一機のザクも同様だ。

そんな中、別の声が割り込んできた。女の声だった。

 

「根性で何とかするしかないっしょ!」

 

飄々とした調子のアマキだった。その場にそぐわない軽さが、逆に場の緊張を一瞬だけ和らげる。というか、彼女にとってはこれが平常運転だ。常に全力で行動する彼女は、キラたちのために命懸けで破砕作業に臨んでいる。だからこそ、あの台詞が飛び出す。

即座に反応したのは――

 

『根性で何とかなるか!?』

 

アスランだった。脊髄反射のようなツッコミである。そしてそのやり取りに気づいたのは、やはりツッコミ気質の彼だった。

 

『アスラン!?それに、その能天気な声は……アマキか!?』

 

イザークが驚きと怒気を含んだ声を上げる。それにアマキは軽く挨拶してみせた。

 

「やっほー!イザークにディアッカ!」

 

『よ!元気そうじゃん』

 

『貴様らっ!漫才している場合か!アマキ、貴様本当にダイエットしてるのかっ!? 以前と変わりすぎているぞ!』

 

ディアッカがフランクに挨拶すると、イザークは辛辣な言葉を投げかける。だが、見た目が変わりすぎている件についてはディアッカも同意だった。布教活動に勤しむミリアリアから誘われて面白半分で加入した「アマキ様ファンクラブ」の定期通信で近況はそれなりに把握していたが、まさか本当にぽっちゃりちゃんになっているとは思わなかった。幸せ太りともいうのか。以前の面影は多少あるものの、顔が大きくなってヘルメットがパンパンである。

 

『漫才などしていない!それよりも今は作業を急ぐんだ』

 

アスランが割って入る。

 

『わかってるって』

 

ディアッカが苦笑しながら応じる。

 

『しかし相変わらずだな、イザーク』

 

アスランが軽く笑った。ツッコミが懐かしいらしい。

 

『貴様もだっ!』

 

イザークが即座に返すが、その声に怒気はなかった。

 

『やれやれ……アマキ、お前ってマジでトラブルメーカーだな』

 

ディアッカが肩をすくめるように言いながら、アマキに冗談交じりの言葉を投げかける。

 

「それさ、出会った皆必ず一言は言うんだよね。なんで?」

 

『てかさ、パイロットスーツぎゅうぎゅうじゃね?大丈夫か?』

 

「うん。吐きそう」

 

『おわっ!まてまてっ!?そこでやめとけよ!自分の吐しゃ物で死ぬぞっ!』

 

「ダイジョウブダイジョウブ」

 

『片言だし!』

 

通信の向こうで、誰かが盛大にため息をついた。それでも、誰もがわかっていた。

アマキがそこにいるだけでなんとかなるというジンクス。

この空気こそが、彼らの“らしさ”であり、極限の戦場で生き延びるための、ささやかな呼吸だった。

 

◇◇◇

見惚れるような連携プレーにシンは一瞬意識がそれてしまい、その瞬間アビスを見失ってしまう。その隙にアビスはメテオブレイカーを運ぶジンへ突っ込もうとする。

 

『しまったっ…!』

 

だがメテオブレイカーを守っていたザク三機がアビスの前に盾の如く立ち塞がる。

 

『イザークっ!アマキ!』

「よしー!」

 

意気込んで見せるアマキに対してイザークはアスランから指示を出されたようで気に入らないと怒鳴り返す。

 

『うるさいっ!今は俺が隊長だっ!命令するなっ、民間人がっ!』

「ぷぷっ。必死〜」

『笑うな!!』

 

なんだかんだと言いながら三機は抜群の連係プレーでアビス、カオスを打ち負かしていく。シンでさえ簡単に一手を取れなかったというのに、赤子の骨を捻るごとく負傷させていく。

 

『あれがヤキン・ドゥーエを生き残ったパイロットの力かよ……。アマノさんもすげー』

 

『シン!何をしているっ』

 

レイから通信越しに叱咤され、続いてアスランからお叱りを受ける。

 

『作業はまだ終わっていないんだぞ!』

 

『わかってますよ!』

 

つい怒り返すシンだが、今更ながらに彼らと格が違うというのを見せつけられた。

そのあとすぐにバギーワンから帰還信号が打ち上げられたのだった。

◇◇◇

艦橋には緊張が満ちていた。

ユニウスセブンの落下は加速し、破砕作業は限界を迎えつつある。

 

その中で、デュランダル議長は静かに呟いた。

 

「ようやく信じてくれたのか……」

 

タリア・グラディス艦長は、議長の言葉に微笑を返すことなく、冷静に答えた。

 

「そうかもしれませんし、別の理由かもしれません」

 

「別の理由?」

 

「高度です。ユニウスセブンとともにこのまま降下していけば、やがて艦も地球の引力から逃れられなくなります。我々も命を選ばねばなりませんわね」

 

彼女の声は静かだったが、その言葉は重かった。

 

「助けられるものと、助けられないものと」

 

議長は眉をひそめる。

 

「艦長…?」

タリアは一歩前に出て、議長に向き直った。

 

「こんな状況下に申し訳ありませんが、議長方はボルテールへお移りいただけますか?」

 

「え?」

 

「ミネルバはこれより大気圏に突入し、限界まで艦手砲による対象の破砕を行いたいと思います」

 

「ええっ!?」

 

アーサーが思わず声を上げる。

 

「艦長、……それは…」

 

議長の声に迷いが滲む。

 

「どこまでできるかわかりませんが、でも、できるだけの力を持っているのにやらずに見ているだけなど、後味が悪いですわ」

 

「タリア、しかし…」

 

「私はこれでも強い女です。お任せください」

 

議長はしばし沈黙し、やがて静かに頷いた。

 

「……わかった。すまない、タリア。ありがとう…」

 

「いえ。議長もお急ぎください」

 

議長は立ち上がり、カガリに視線を向ける。

 

「では、代表」

 

タリアが即座に指示を飛ばす。

 

「ボルテールにデュランダル議長の移乗を通達! モビルスーツに帰還信号!」

 

そのとき、カガリが椅子から立ち上がった。

 

「私はここに残る。アスランとアマノが戻らない。それに、ミネルバがそこまでしてくれるというのなら、私も一緒に行こう」

 

タリアが一瞬だけ目を見開く。

 

「しかし、為政者の方にはまだお仕事が…」

 

デュランダルは静かに言った。

 

「代表がそうお望みでしたのなら、御止めはしませんが…」

 

艦橋の空気が、静かに変わった。

 

◇◇◇

 

『何をやってるんですか、アンタらはっ!』

 

シン・アスカの怒声が通信を突き破った。

インパルスの操縦席で、彼は歯を食いしばる。帰還信号は出ている。通信も通じている。

それなのに、まだ破砕作業を続ける者たちがいる。おバカ一人と真面目君──ザク二機がメテオブレイカーを支え、巨大な破片を地表へセットしようとしていた。

 

『帰還信号、出てるでしょうが!通信も入ったはずだっ!』

 

焦り、怒り、そして恐怖がシンの声に混じる。

このままでは、誰かが死ぬ。

それがわかっているからこそ、叫ばずにはいられなかった。だというのに、シンの想いを無視するかのように動き続ける二人に、苛立ちは募る。

 

『ああ。わかっている』

 

アスランの声が静かに返る。

 

『君は早く戻れ。アマノ、君もだ』

 

「い・や・だ」

 

アマキの返答は、短く、鋭く、揺るぎない。

シンは目を見開き、思わず声を荒げた。

 

「アスラン一人残していくなんて、できるわけないでしょ!それに、地球に被害が出る可能性があるなら潰す!今までだって多少の無茶はやってきたんだから!」

 

『一緒に吹っ飛ばされますよ!いいんですか!?』

 

『ミネルバの艦首砲でも、外からの攻撃じゃ確実とは言えない!これだけでもっ!』

 

「……シン!見てるなら手伝って!」

 

『あーもう!分かりましたよっ!』

 

アマキに促され、シンは流されるように手伝うことにした。

 

「……お客さんだよ」

 

アマキが気配を察知し、メテオブレイカーを背にしてトマホークを抜き構える。

そこへ、諦めの悪い三機のジンがビームソードを抜いて襲い掛かってきた。

彼らはそれぞれ、自分たちの正義を掲げて力を振り絞ろうとしていた。

 

『我が娘の墓標、落として焼かねば世界は変わるまい!』

 

インパルスに襲い掛かろうとするジンに対し、アマキは先制攻撃。

トマホークを華麗に投げつけ、機体を四散させる。

 

「ユニウスセブンの関係者か?」

 

『娘?』

 

『なにを……』

 

通信越しに聞こえた言葉に、シンもアスランも動きを止める。

その声には、怒りと悲しみが混じっていた。

残る二機のパイロットも、同じ思いなのだろう。

断固としてユニウスセブンを地球に落とそうと、自らの命を賭して仕掛けてくる。

 

『ここで無残に散った命の嘆き忘れ……! 撃った者らとなぜ偽りの世界で笑うか、貴様らは!』

 

『軟弱なクラインの後継者どもに騙され、ザフトは変わってしまったっ!』

 

『なぜ気づかぬかっ!』

 

その叫びは、過去の亡霊のようだった。怒り、悲しみ、そして復讐。それはもはや、理性では止められない。

 

『我らコーディネーターにとって、パトリック・ザラのとった道こそが正しきものと!』

 

だが、アマキは冷静に言い切った。

 

「それはアンタらの正義であって、私のじゃない!誰も彼もが同じだと思うなっ!」

 

アンタらに奪われたものがあるように、今の私には守らなきゃならないものがある。

たとえ阿修羅と呼ばれようと、落とさせるわけにはいかない。

 

『貴様ぁ!!」

 

激高したジン二機がアマキを目指して突撃してくる。

アマキは防御しながら叫ぶ。

 

「アスラン! メテオブレイカーを作動させろっ!」

 

『わかった!』

 

アスランは作業に入り、シンも援護に回ろうとするが、もう一機のザクに組み付かれ、自爆されてしまう。

 

『くっ!』

『シン!』

 

爆発でインパルスが吹き飛ばされる中、その衝撃に乗じて最後のザクが雄叫びを上げながら突進してきた。

 

「我らのこの思い、今度こそナチュラルどもにぃーーー!」

 

「くそっ!」

 

胸部に組み付かれ、アマキは身動きが取れなくなる。

このままでは自爆される──そう思った瞬間、アスランが敵の背へトマホークを斜めに叩き込み、横から蹴り飛ばす。その隙にアマキを引き抜き、二人は阿吽の呼吸で叫ぶ。

 

『アマノ!』

 

「おっけー!」

 

バーニアを吹かして地上から離脱。

だが、大気圏突入の限界が迫っていた。

 

(……こんなところで死んでたまるかっ……! キラ、ラクス!!)

 

アマキは歯を食いしばり、耐え忍んだ。

 

◇◇◇

 

避難警報が鳴り響く中、ラクス・クラインは子供たちの手を引きながら、シェルターへと向かっていた。

その表情は穏やかに見えたが、内心は張り詰めた糸のように緊張していた。

子供たちの不安を和らげるために、彼女は微笑みを絶やさない。

だが、ふと気づく。

――キラの姿が、ない。

 

「キラ?」

 

振り返っても、彼の姿はどこにもなかった。

 

◇◇◇

海辺。波の音だけが、静かに耳を打つ。

キラ・ヤマトは、ひとり佇んでいた。

視線の先には、夜空を覆うように降り注ぐ無数の光――ユニウスセブンの破片。

そのひとつひとつが、ゆっくりと、確実に地球へと落ちていく。

その中に、もしかしたら――アマキがいるかもしれない。

 

「………」

 

言葉は出なかった。

 

胸の奥で、何かが軋むように痛む。

彼女の声が、笑顔が、耳の奥に残って離れない。

 

どうか、無事でいて、アマキ。

 

キラは拳を握りしめ、夜空を見上げた。

祈りにも似たもどかしさだけが、胸の中を静かに満たしていく。

 

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