腹減り少女はSEED世界で爆発少女にレベルアップする 作:サボテンダーイオウ
アルテミスを無事に脱したものの、補給を得られず事態は深刻だった。問題は山積みで、焦りは静かに艦内を蝕んでいく。
「メンテナンスも大変だな」
「限られた物でやるしかないからキツイよね」
ガンダムの整備を終えた二人が食堂へ向かう途中、フラガ大尉とすれ違う。
「メシ食ったらブリッジ集合なー」
「……ブリーフィングですか?」
「おう。不可能を可能にする男、見せ場だぜ?」
ちゃかしてはいるが、その言葉には確かな実績がある。幾千の困難を切り抜けてきた男の“提案”は、確かに気になる。昼食を終えてブリッジに向かうと、すでに主なメンバーは集まっており、二人が最後だった。
「補給って……」
「受けられるんですか?」
「どこで?」
矢継ぎ早の質問に、フラガ大尉は思わずたじろぐ。
「調達っていうか、補給っていうか……」
言葉を濁す彼に代わって、マリューが口を開いた。
「私たちは今、デブリベルトへ向かっています」
その一言に、空気が揺れる。目線が交錯し、表情がこわばる。
「まさか……デブリから?」
「デブリって宇宙のゴミのことだよね?」
アマキが、誰よりも落ち着いた口調で呟く。
マリューが静かに頷く。
「そう。デブリベルトには、戦闘で沈んだ戦艦、破損した補給艦……多種多様な“残骸”が眠っています。そこには、未使用の物資が残っている可能性も」
「……まさか、そこから補給を?」
「そうするしかないのか」
「でも……!」
反発の声が上がる。倫理観が葛藤を引き起こしていた。
その時、アマキが一歩前に出る。
静かで、確かな声。誰もが耳を傾けざるを得ない。
「抵抗があるのは当然だ。……倫理的にも、精神的にも。だけど、私たちは生きなきゃならない。自分だけじゃない。他の人の命も背負ってる。綺麗事だけじゃ、もう通用しない。がむしゃらにでも前に進まなきゃ、生きるために」
その眼差しに、誰もが言葉を失った。
飢え、破壊、殺し合い――それらの予兆は、すでにすぐ隣にあった。
綺麗なだけじゃ生きられない。
それほど、自分たちは追い詰められているのだ。
物資探索の最中、キラたちはユニウスセブンの一部に辿り着いた。
瓦礫に覆われた区域。崩れかけた建物。その中に、比較的原形を保つ一棟が残っていた。
静かに扉を開けて入った一室――
浮かんでいたのは、幼い子供を抱きしめるように亡くなっている親子だった。
ミリアリアが叫ぶ。
「きゃあ……!」
誰もが言葉を失った。
アマキは即座に視線を逸らす。
心が痛い。息が苦しい。ユニウスセブン。
あの日、一瞬で命を奪われた者たちは、今も故郷に帰れず漂っている。
無抵抗の人間の命を奪う。
奪われたら奪い返す。やられたらやり返す。
戦いは止まることなく繰り返されている。
——終わりなど、果たしてあるのか。
目の前の「死」に触れたことで、アマキの思考はざわめいた。
自分が関わってきた世界も、もしかしたらこうなっていたかもしれない。
怖かった。何もかも他人事のようにふるまってきた自分。
いずれはこの世界を離れる存在だと――そう思い込んでいた。
けれど、もしあの親子が……自分の大切な人だったら?
「……アマキさん」
「ごめんね……大丈夫、大丈夫だから」
頭を振り、アマキは呼吸を整える。
心を立て直そうとしていた。
のまれてはいけない。ぶれてはいけない。
私は、私の信念で生きている。
この世界にはこの世界のルールがある。
だから、自分が飲まれてしまうわけにはいかない。
震える手を押し隠すように、キラに向かって言った。
「大丈夫だよ、キラ」
——笑えていたのだろうか。自分でもわからない。
アマキの様子がおかしくなったのは、このユニウスセブンに足を踏み入れてから。
キラが何度問いかけても、アマキは言葉を閉ざした。
返ってくるのは「大丈夫」という言葉ばかり。
その後、凍った水や物資が発見され、主だったクルーが調達へ動き始めた。
死者への手向けとして、ミリアリアたちは合間を縫って折り紙で花を作り始める。
アマキも、何も言わずに折り続けた。
まるで、何かから逃げるかのように。
一枚、また一枚。指先にだけ、彼女の感情が残っていた。
物資回収任務の護衛として、アマキとキラはデブリ空域の哨戒に当たっていた。
膠着した沈黙の中――キラが低く息を吸う。
『なんで……こんなところに!』
通信越しに漏れた声と同時に、キラがビームライフルの装填を開始。
視線の先には、一機のジンが漂っていた。何かを探しているような様子――その動きには明確な目的が感じられる。
アマキも遅れて異変に気づき、スコープに捕らえる。
「なぜ……ザフトのジンが? 捜索部隊?」
咄嗟にライフルを構え、照準を合わせる。
撃つべきか――迷っている余裕はなかった。
その瞬間、物資回収用の機体がジンの視界に入ってしまった。
敵が動く。こちらへ照準を――!
「くそっ!」
アマキが即座に一発撃ち込み、敵の装甲を貫く。
続けざまにキラが二発目を放ち、ようやくジンが爆散。
敵の排除には成功したものの、後味は苦い。
「ごめん……爪が甘かった。トドメ、任せてしまった」
『アマキさんばっかりに背負わせないから』
「キラ……」
その顔には以前のあどけなさはもうなかった。
戦場の中で成長している。仲間を守ることに、確かな覚悟を帯びていた。
守る存在でありたかったはずの自分が――逆に守られている。
その事実が、アマキの心にそっと影を落とした。
そんな中、キラはまたも救助ポットを拾ってきた。
バジルール少尉が、やれ“拾い物好き”だと皮肉めいた小言を飛ばす。
だが、今回ばかりは彼の“拾い癖”こそが光った。
あのポットには、後の戦局を左右する人物が乗っていたのだから。
「ありがとう、ご苦労様です」
ポットから現れたのは、ピンク色の長い髪を宙にたゆたわせる少女と、彼女を守るように寄り添う不思議なロボット。
「ミトメタクナイ!」
「あらあら」
「よっと」
勢いで流されかけたところを、アマキが反射的に少女の腕を掴んで止める。
「ありがとうございます。――あら?ザフトの船ではありませんのね?」
隊服に気づき、さらりと爆弾発言を投下する彼女。
名は――ラクス・クライン。
この一瞬が、アマキとキラの運命を、大きく揺るがす始まりとなった。
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