腹減り少女はSEED世界で爆発少女にレベルアップする   作:サボテンダーイオウ

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PHASE-06宇宙(そら)の傷跡

アルテミスを無事に脱したものの、補給を得られず事態は深刻だった。問題は山積みで、焦りは静かに艦内を蝕んでいく。

 

「メンテナンスも大変だな」

 

「限られた物でやるしかないからキツイよね」

 

ガンダムの整備を終えた二人が食堂へ向かう途中、フラガ大尉とすれ違う。

 

「メシ食ったらブリッジ集合なー」

 

「……ブリーフィングですか?」

 

「おう。不可能を可能にする男、見せ場だぜ?」

 

ちゃかしてはいるが、その言葉には確かな実績がある。幾千の困難を切り抜けてきた男の“提案”は、確かに気になる。昼食を終えてブリッジに向かうと、すでに主なメンバーは集まっており、二人が最後だった。

 

「補給って……」

 

「受けられるんですか?」

 

「どこで?」

 

矢継ぎ早の質問に、フラガ大尉は思わずたじろぐ。

 

「調達っていうか、補給っていうか……」

 

言葉を濁す彼に代わって、マリューが口を開いた。

 

「私たちは今、デブリベルトへ向かっています」

 

その一言に、空気が揺れる。目線が交錯し、表情がこわばる。

 

「まさか……デブリから?」

 

「デブリって宇宙のゴミのことだよね?」

 

アマキが、誰よりも落ち着いた口調で呟く。

マリューが静かに頷く。

 

「そう。デブリベルトには、戦闘で沈んだ戦艦、破損した補給艦……多種多様な“残骸”が眠っています。そこには、未使用の物資が残っている可能性も」

 

「……まさか、そこから補給を?」

 

「そうするしかないのか」

 

「でも……!」

 

反発の声が上がる。倫理観が葛藤を引き起こしていた。

その時、アマキが一歩前に出る。

静かで、確かな声。誰もが耳を傾けざるを得ない。

 

「抵抗があるのは当然だ。……倫理的にも、精神的にも。だけど、私たちは生きなきゃならない。自分だけじゃない。他の人の命も背負ってる。綺麗事だけじゃ、もう通用しない。がむしゃらにでも前に進まなきゃ、生きるために」

 

その眼差しに、誰もが言葉を失った。

飢え、破壊、殺し合い――それらの予兆は、すでにすぐ隣にあった。

綺麗なだけじゃ生きられない。

それほど、自分たちは追い詰められているのだ。

 

物資探索の最中、キラたちはユニウスセブンの一部に辿り着いた。

瓦礫に覆われた区域。崩れかけた建物。その中に、比較的原形を保つ一棟が残っていた。

静かに扉を開けて入った一室――

浮かんでいたのは、幼い子供を抱きしめるように亡くなっている親子だった。

ミリアリアが叫ぶ。

 

「きゃあ……!」

 

誰もが言葉を失った。

アマキは即座に視線を逸らす。

心が痛い。息が苦しい。ユニウスセブン。

あの日、一瞬で命を奪われた者たちは、今も故郷に帰れず漂っている。

無抵抗の人間の命を奪う。

奪われたら奪い返す。やられたらやり返す。

戦いは止まることなく繰り返されている。

 

——終わりなど、果たしてあるのか。

 

目の前の「死」に触れたことで、アマキの思考はざわめいた。

自分が関わってきた世界も、もしかしたらこうなっていたかもしれない。

怖かった。何もかも他人事のようにふるまってきた自分。

いずれはこの世界を離れる存在だと――そう思い込んでいた。

 

けれど、もしあの親子が……自分の大切な人だったら?

 

「……アマキさん」

 

「ごめんね……大丈夫、大丈夫だから」

 

頭を振り、アマキは呼吸を整える。

心を立て直そうとしていた。

 

のまれてはいけない。ぶれてはいけない。

 

私は、私の信念で生きている。

この世界にはこの世界のルールがある。

だから、自分が飲まれてしまうわけにはいかない。

震える手を押し隠すように、キラに向かって言った。

 

「大丈夫だよ、キラ」

 

——笑えていたのだろうか。自分でもわからない。

アマキの様子がおかしくなったのは、このユニウスセブンに足を踏み入れてから。

キラが何度問いかけても、アマキは言葉を閉ざした。

返ってくるのは「大丈夫」という言葉ばかり。

その後、凍った水や物資が発見され、主だったクルーが調達へ動き始めた。

死者への手向けとして、ミリアリアたちは合間を縫って折り紙で花を作り始める。

アマキも、何も言わずに折り続けた。

まるで、何かから逃げるかのように。

一枚、また一枚。指先にだけ、彼女の感情が残っていた。

 

物資回収任務の護衛として、アマキとキラはデブリ空域の哨戒に当たっていた。

膠着した沈黙の中――キラが低く息を吸う。

 

『なんで……こんなところに!』

 

通信越しに漏れた声と同時に、キラがビームライフルの装填を開始。

視線の先には、一機のジンが漂っていた。何かを探しているような様子――その動きには明確な目的が感じられる。

アマキも遅れて異変に気づき、スコープに捕らえる。

 

「なぜ……ザフトのジンが? 捜索部隊?」

 

咄嗟にライフルを構え、照準を合わせる。

撃つべきか――迷っている余裕はなかった。

その瞬間、物資回収用の機体がジンの視界に入ってしまった。

敵が動く。こちらへ照準を――!

 

「くそっ!」

 

アマキが即座に一発撃ち込み、敵の装甲を貫く。

続けざまにキラが二発目を放ち、ようやくジンが爆散。

敵の排除には成功したものの、後味は苦い。

 

「ごめん……爪が甘かった。トドメ、任せてしまった」

 

『アマキさんばっかりに背負わせないから』

 

「キラ……」

 

その顔には以前のあどけなさはもうなかった。

戦場の中で成長している。仲間を守ることに、確かな覚悟を帯びていた。

守る存在でありたかったはずの自分が――逆に守られている。

その事実が、アマキの心にそっと影を落とした。

そんな中、キラはまたも救助ポットを拾ってきた。

バジルール少尉が、やれ“拾い物好き”だと皮肉めいた小言を飛ばす。

だが、今回ばかりは彼の“拾い癖”こそが光った。

あのポットには、後の戦局を左右する人物が乗っていたのだから。

 

「ありがとう、ご苦労様です」

 

ポットから現れたのは、ピンク色の長い髪を宙にたゆたわせる少女と、彼女を守るように寄り添う不思議なロボット。

 

「ミトメタクナイ!」

 

「あらあら」

 

「よっと」

 

勢いで流されかけたところを、アマキが反射的に少女の腕を掴んで止める。

 

「ありがとうございます。――あら?ザフトの船ではありませんのね?」

 

隊服に気づき、さらりと爆弾発言を投下する彼女。

名は――ラクス・クライン。

この一瞬が、アマキとキラの運命を、大きく揺るがす始まりとなった。




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