腹減り少女はSEED世界で爆発少女にレベルアップする 作:サボテンダーイオウ
「ラクス・クラインっていうの?あの子」
「そうみたい」
「それでどうしてアマキさんまで?」
「なんか指名されたみたい、彼女から」
訳もわからぬままラクスに選ばれ、アマキは部屋へ連れて行かれた。
マリューたちは「アマキなら問題ないだろう」と共に話を聞くことに。
外で待つクルーたちは様子が気になるものの、扉は固く閉ざされている。仕方なく待機する中、キラは不満げに吐き出す。
「……別にアマキさんがいなくても、事情くらい聞けるのに」
ミリアリアが笑いながら肩をぽんぽんと慰めた。
「まぁまぁ、落ち着いて」
「そうよ、キラ!アマキさんは同性にモテると見たわ。彼女もその類かも」
フレイの推察は的中だった。
しかしキラは反論せずにはいられない。
「フレイだって、アマキさんのカップちょうだいって間接キス狙ってたじゃないか!」
「ち、違う!喉が渇いてたからアマキさんのを借りただけよ!」
キラが追撃する。
「隣の席サイだったよね?」
「……いいの。アマキさんがくれるって言ったんだから」
「詰め寄られて断れなかっただけだろ」
ミリアリアは胸を張る。
「私は“布教活動”なの。アマキさんの魅力を広めたいという尊い願いよ」
艦内娯楽の少ない中、ミリアリアの活動は静かな人気を集めていた。
愛嬌もあり、優しく、見た目も完璧。
女性や子どもにも自然体で接するその姿は、まるで“身近なアイドル”だった。
「お前たち、うるさいぞ!」
バジルール少尉の一喝が飛ぶ。
その瞬間、ドアが開き――ラクスが笑顔で手を振って現れる。
アマキの腕にしっかり組みついて、まるで捕らえた獲物のように。
「ずるい……」
「さっさと持ち場に戻れ!」
「はーい……」
三人は蜘蛛の子を散らすように消えた。
バジルール少尉は、ドアをそっと閉めながら呟く。
「全く、アイツらは……」
苦笑するマリューとフラガの前で、ラクスは静かに名乗った。
「わたくし、シーゲル・クラインの娘です」
「こりゃまいったな……」
ユニウスセブンの追悼式で地球軍と会話する機会を持ったラクス。だが、意見の違いからいざこざが起き、救命ポッドに入れられて放り出されたという。
民間船の残骸があったことを口にする者は誰もいない。ただ、
「無事だといいな……」
「はい……」
ぽんとラクスの頭に手を置き、アマキが優しく撫でる。
その仕草にラクスは、少しだけ悲しげな笑みを見せた。
以降、アマキがラクスの担当となる。
艦内の“ファン連合”は猛ブーイングを上げたが、再びバジルール少尉の一喝で場は鎮まる。
「ずっと部屋にいるのも退屈ですわ」
ラクスは士官用の部屋でハロを転がしながらつぶやく。
拘束とは言え、そこは安全な空間。食事も運ばれてくる。
そんな中、アマキが衣類を届けに訪れる。
ラクスは不意に問いかけた。
「……アマキ様は、わたくしが恐ろしくはないのですか?」
この問いに、アマキは平然と答える。
「なんで?君は普通の女の子じゃん」
ラクスの瞳が揺れる。
「……わたくしが出会うナチュラルはコーディネーターを怖がる人ばかりでしたわ」
「私は普通に接してるだけだよ。見た目や能力が違うって理由で怖がるなんて、つまんないから」
「……アマキ様は不思議な方ですね」
「それ、褒め言葉?じゃあ君の髪も可愛いよ。お姫様みたいだ」
しゃがんだアマキが、一房のピンク髪を指先でなぞる。
ラクスの頬がほのかに染まった。
「……アマキ様は、女たらしですわね」
「それ褒めてないよね!?」
このやり取りに、ラクスは思わず笑った。
“ラクス・クライン”ではなく、ただの少女として見てくれる。
それが嬉しかった。
彼女はもっと――アマキという存在を知りたくなっていた。
「私が行くわ!」
「フレイ!私が行くって言ってるでしょ!」
女子二人の言い争いが食堂の入り口から聞こえてくる。
その場にいたトールたち男子は、呆れ半分で黙って様子を見守っていた。
そこへ、キラが合流する。
「……どうしたの?」
トールが肩をすくめて答える。
「ああ、ミリアリアが例の女の子に食事を持っていこうとしてたんだけど、フレイが『私が行く』って譲らなくてさ」
「……同類っぽいから挨拶に、だって」
「同類……」
キラは思わず苦笑した。
「まったく、ミーハーな女子にも困ったもんだ」
そう言いながらも、喉元まで「僕も行きたい」という言葉が込み上げていた。
けれど、寸前でのみ込む。
「だってあの子、コーディネーターのくせにアマキさんを独り占めしてるのよ!? 少しくらい脅しても罰は当たらないってば!」
「やめとけ、フレイ!」
……“挨拶”って、そっちの意味か。
男子たちは口には出さずとも、心の中で静かにツッコんでいた。
そこへ――涼やかな声が、背後から届いた。
「まあ。ご挨拶をしてくださるんですの?」
場が凍る。
一斉に振り返ると、そこに立っていたのは噂の少女――ラクス・クライン。
ピンクの髪を優雅になびかせ、ハロを抱えた彼女は柔らかく微笑んでいた。
「驚かせてしまってごめんなさい。お腹が空いてしまいまして」
フレイが一歩前に踏み出す。視線が鋭い。
「なんで、アンタがここにいるのよ?」
食ってかかるその声を、ミリアリアが静かに制する。
「まーまー、落ち着いて。フレイ」
ラクスはその様子も微笑で包みながら、言葉を続ける。
「アマキ様がなかなか戻ってこられませんでしたので……出て参りました」
「勝手に出てきちゃ駄目だよ」
キラが少し慌てた様子で部屋に戻そうと近づく。
「……三回も“出てもよろしいですか”と尋ねましたのに」
「アマキさんは用事で席を外してるだけだから。トレー持って部屋で食事を」
「皆さまと一緒に、ここでいただきたいですわ。……アマキ様もいらっしゃるでしょうし」
その一言で、フレイの堪忍袋が破裂した。
「ちょっと!!」
「やめろ、フレイ!」
サイの制止も間に合わず、フレイが怒声を放つ。
「アンタ!コーディネーターのくせに、私たちのアイドルを勝手に取るんじゃないわよ!」
ラクスは微笑を崩さない。
「……アマキ様がそう望まれたのでしょうか?押し付けられたのではなく?」
「はぁ!?何様のつもりよ!」
「ラクス・クラインですわ。――アマキ様を敬愛する仲間とでも……おっしゃっておきましょうか」
「結局、同類じゃない!」
その瞬間――ガシッ。
手を取り合った二人。
「フレイ・アルスターよ」
「ラクス・クラインですわ」
絶対に相いれないはずだった二人が、ここに共同戦線を組んだ。
共通の“推し”に向けて――動機は違えど、手を組んだ。
男子たちは既に席に着いて静かに食事を取っている。
「美味いな」
「うん」
「カロリー……ちょっと多いかも」
キラも席に向かおうとしたが、ラクス・フレイ連合+ミリアリアの気圧に押され、言葉が喉で消えた。
そして――部屋を探していたアマキが到着。
食堂の空気が……さらに激化したのだった。
フレイとラクスはすっかり仲良くなっていた。
最初こそ、コーディネーターということに身構えていたフレイも、アマキの自然体な振る舞いに影響されたことで、肩の力が抜けたようだった。
今ではキラに対しても、以前より素直に接するようになっている。
第8艦隊からの通信も、距離はあれど安定して届くようになり、先行きにはわずかだが希望の光が差していた。
ラクスの処遇は依然として不明瞭だったが、食事はフレイかミリアリアが部屋へ運ぶ手配となり、彼女はその時間を少し楽しみにしているようだった。
「ラクス、勝手に出ないでよ」
「……ごめんなさい。でも、探してくださっていたのですね?」
なぜ、そこで頬を染める。
「……はぁ……そりゃ心配するだろ、当然じゃん」
「アマキ様は、やはり優しい方ですのね」
「優しいかどうか知らないけど……私の手は、真っ赤なんだよ」
アマキは、ゆっくりと自分の手を見つめた。
その手が、どれほどの命を奪ってきたか――心の奥で重さが響く。
「……アマキ様?」
「……なんでもないよ」
「お疲れのようですね」
ラクスは小さく微笑むと、ベッドに腰掛けて自分の膝をぽんぽんと叩いた。
「さぁ、こちらへどうぞ」
「……何?」
「膝枕ですわ」
彼女は無邪気に手招きする。アマキは反射的に後退した。
「いや、なんで」
「いいからどうぞ」
「遠慮するって」
「アマキ様?」
すると――ハロが飛んでくる。
「テヤンデー」
「痛いって……」
沈黙と圧が迫ってくる。無言のプレッシャーが、一番怖い。
「……圧が怖い。……重いって」
「はい」
膝の上に頭を預けると、驚くほど柔らかくて、ふわりといい匂いがした。
アマキの呼吸が、自然に深くなる。
まぶたが落ちていく。
その様子を見守るラクスは、優しく彼女の髪に指先を添えた。
歌うように、でも静かに。
アイドルではなく、一人の少女として。
彼女に向けて――ただ、一人の人間として。
「どうぞ。今だけでも、お休みください。アマキ様」
その言葉は、ささやかな祈りのように、部屋の空気を包み込んだ。
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