腹減り少女はSEED世界で爆発少女にレベルアップする   作:サボテンダーイオウ

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PHASE-07敵軍の歌姫

「ラクス・クラインっていうの?あの子」

 

「そうみたい」

 

「それでどうしてアマキさんまで?」

 

「なんか指名されたみたい、彼女から」

 

訳もわからぬままラクスに選ばれ、アマキは部屋へ連れて行かれた。

マリューたちは「アマキなら問題ないだろう」と共に話を聞くことに。

外で待つクルーたちは様子が気になるものの、扉は固く閉ざされている。仕方なく待機する中、キラは不満げに吐き出す。

 

「……別にアマキさんがいなくても、事情くらい聞けるのに」

 

ミリアリアが笑いながら肩をぽんぽんと慰めた。

 

「まぁまぁ、落ち着いて」

 

「そうよ、キラ!アマキさんは同性にモテると見たわ。彼女もその類かも」

 

フレイの推察は的中だった。

しかしキラは反論せずにはいられない。

 

「フレイだって、アマキさんのカップちょうだいって間接キス狙ってたじゃないか!」

 

「ち、違う!喉が渇いてたからアマキさんのを借りただけよ!」

 

キラが追撃する。

 

「隣の席サイだったよね?」

 

「……いいの。アマキさんがくれるって言ったんだから」

 

「詰め寄られて断れなかっただけだろ」

 

ミリアリアは胸を張る。

 

「私は“布教活動”なの。アマキさんの魅力を広めたいという尊い願いよ」

 

艦内娯楽の少ない中、ミリアリアの活動は静かな人気を集めていた。

愛嬌もあり、優しく、見た目も完璧。

女性や子どもにも自然体で接するその姿は、まるで“身近なアイドル”だった。

 

「お前たち、うるさいぞ!」

 

バジルール少尉の一喝が飛ぶ。

その瞬間、ドアが開き――ラクスが笑顔で手を振って現れる。

アマキの腕にしっかり組みついて、まるで捕らえた獲物のように。

 

「ずるい……」

 

「さっさと持ち場に戻れ!」

 

「はーい……」

 

三人は蜘蛛の子を散らすように消えた。

バジルール少尉は、ドアをそっと閉めながら呟く。

 

「全く、アイツらは……」

 

苦笑するマリューとフラガの前で、ラクスは静かに名乗った。

 

「わたくし、シーゲル・クラインの娘です」

 

「こりゃまいったな……」

 

ユニウスセブンの追悼式で地球軍と会話する機会を持ったラクス。だが、意見の違いからいざこざが起き、救命ポッドに入れられて放り出されたという。

民間船の残骸があったことを口にする者は誰もいない。ただ、

 

「無事だといいな……」

 

「はい……」

 

ぽんとラクスの頭に手を置き、アマキが優しく撫でる。

その仕草にラクスは、少しだけ悲しげな笑みを見せた。

 

以降、アマキがラクスの担当となる。

艦内の“ファン連合”は猛ブーイングを上げたが、再びバジルール少尉の一喝で場は鎮まる。

 

「ずっと部屋にいるのも退屈ですわ」

 

ラクスは士官用の部屋でハロを転がしながらつぶやく。

拘束とは言え、そこは安全な空間。食事も運ばれてくる。

そんな中、アマキが衣類を届けに訪れる。

ラクスは不意に問いかけた。

 

「……アマキ様は、わたくしが恐ろしくはないのですか?」

 

この問いに、アマキは平然と答える。

 

「なんで?君は普通の女の子じゃん」

 

ラクスの瞳が揺れる。

 

「……わたくしが出会うナチュラルはコーディネーターを怖がる人ばかりでしたわ」

 

「私は普通に接してるだけだよ。見た目や能力が違うって理由で怖がるなんて、つまんないから」

 

「……アマキ様は不思議な方ですね」

 

「それ、褒め言葉?じゃあ君の髪も可愛いよ。お姫様みたいだ」

 

しゃがんだアマキが、一房のピンク髪を指先でなぞる。

ラクスの頬がほのかに染まった。

 

「……アマキ様は、女たらしですわね」

 

「それ褒めてないよね!?」

 

このやり取りに、ラクスは思わず笑った。

“ラクス・クライン”ではなく、ただの少女として見てくれる。

それが嬉しかった。

彼女はもっと――アマキという存在を知りたくなっていた。

 

「私が行くわ!」

 

「フレイ!私が行くって言ってるでしょ!」

 

女子二人の言い争いが食堂の入り口から聞こえてくる。

その場にいたトールたち男子は、呆れ半分で黙って様子を見守っていた。

そこへ、キラが合流する。

 

「……どうしたの?」

 

トールが肩をすくめて答える。

 

「ああ、ミリアリアが例の女の子に食事を持っていこうとしてたんだけど、フレイが『私が行く』って譲らなくてさ」

 

「……同類っぽいから挨拶に、だって」

 

「同類……」

 

キラは思わず苦笑した。

 

「まったく、ミーハーな女子にも困ったもんだ」

 

そう言いながらも、喉元まで「僕も行きたい」という言葉が込み上げていた。

けれど、寸前でのみ込む。

 

「だってあの子、コーディネーターのくせにアマキさんを独り占めしてるのよ!? 少しくらい脅しても罰は当たらないってば!」

 

「やめとけ、フレイ!」

 

……“挨拶”って、そっちの意味か。

男子たちは口には出さずとも、心の中で静かにツッコんでいた。

そこへ――涼やかな声が、背後から届いた。

 

「まあ。ご挨拶をしてくださるんですの?」

 

場が凍る。

一斉に振り返ると、そこに立っていたのは噂の少女――ラクス・クライン。

ピンクの髪を優雅になびかせ、ハロを抱えた彼女は柔らかく微笑んでいた。

 

「驚かせてしまってごめんなさい。お腹が空いてしまいまして」

 

フレイが一歩前に踏み出す。視線が鋭い。

 

「なんで、アンタがここにいるのよ?」

 

食ってかかるその声を、ミリアリアが静かに制する。

 

「まーまー、落ち着いて。フレイ」

 

ラクスはその様子も微笑で包みながら、言葉を続ける。

 

「アマキ様がなかなか戻ってこられませんでしたので……出て参りました」

 

「勝手に出てきちゃ駄目だよ」

 

キラが少し慌てた様子で部屋に戻そうと近づく。

 

「……三回も“出てもよろしいですか”と尋ねましたのに」

 

「アマキさんは用事で席を外してるだけだから。トレー持って部屋で食事を」

 

「皆さまと一緒に、ここでいただきたいですわ。……アマキ様もいらっしゃるでしょうし」

 

その一言で、フレイの堪忍袋が破裂した。

 

「ちょっと!!」

 

「やめろ、フレイ!」

 

サイの制止も間に合わず、フレイが怒声を放つ。

 

「アンタ!コーディネーターのくせに、私たちのアイドルを勝手に取るんじゃないわよ!」

 

ラクスは微笑を崩さない。

 

「……アマキ様がそう望まれたのでしょうか?押し付けられたのではなく?」

 

「はぁ!?何様のつもりよ!」

 

「ラクス・クラインですわ。――アマキ様を敬愛する仲間とでも……おっしゃっておきましょうか」

 

「結局、同類じゃない!」

 

その瞬間――ガシッ。

手を取り合った二人。

 

「フレイ・アルスターよ」

 

「ラクス・クラインですわ」

 

絶対に相いれないはずだった二人が、ここに共同戦線を組んだ。

共通の“推し”に向けて――動機は違えど、手を組んだ。

男子たちは既に席に着いて静かに食事を取っている。

 

「美味いな」

 

「うん」

 

「カロリー……ちょっと多いかも」

 

キラも席に向かおうとしたが、ラクス・フレイ連合+ミリアリアの気圧に押され、言葉が喉で消えた。

そして――部屋を探していたアマキが到着。

食堂の空気が……さらに激化したのだった。

 

フレイとラクスはすっかり仲良くなっていた。

最初こそ、コーディネーターということに身構えていたフレイも、アマキの自然体な振る舞いに影響されたことで、肩の力が抜けたようだった。

今ではキラに対しても、以前より素直に接するようになっている。

第8艦隊からの通信も、距離はあれど安定して届くようになり、先行きにはわずかだが希望の光が差していた。

ラクスの処遇は依然として不明瞭だったが、食事はフレイかミリアリアが部屋へ運ぶ手配となり、彼女はその時間を少し楽しみにしているようだった。

 

「ラクス、勝手に出ないでよ」

 

「……ごめんなさい。でも、探してくださっていたのですね?」

 

なぜ、そこで頬を染める。

 

「……はぁ……そりゃ心配するだろ、当然じゃん」

 

「アマキ様は、やはり優しい方ですのね」

 

「優しいかどうか知らないけど……私の手は、真っ赤なんだよ」

 

アマキは、ゆっくりと自分の手を見つめた。

その手が、どれほどの命を奪ってきたか――心の奥で重さが響く。

 

「……アマキ様?」

 

「……なんでもないよ」

 

「お疲れのようですね」

 

ラクスは小さく微笑むと、ベッドに腰掛けて自分の膝をぽんぽんと叩いた。

 

「さぁ、こちらへどうぞ」

 

「……何?」

 

「膝枕ですわ」

 

彼女は無邪気に手招きする。アマキは反射的に後退した。

 

「いや、なんで」

 

「いいからどうぞ」

 

「遠慮するって」

 

「アマキ様?」

 

すると――ハロが飛んでくる。

 

「テヤンデー」

 

「痛いって……」

 

沈黙と圧が迫ってくる。無言のプレッシャーが、一番怖い。

 

「……圧が怖い。……重いって」

 

「はい」

 

膝の上に頭を預けると、驚くほど柔らかくて、ふわりといい匂いがした。

アマキの呼吸が、自然に深くなる。

まぶたが落ちていく。

その様子を見守るラクスは、優しく彼女の髪に指先を添えた。

歌うように、でも静かに。

アイドルではなく、一人の少女として。

彼女に向けて――ただ、一人の人間として。

 

「どうぞ。今だけでも、お休みください。アマキ様」

 

その言葉は、ささやかな祈りのように、部屋の空気を包み込んだ。




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